木走日記

場末の時事評論

山本太郎氏の目指すのは、平壌市民だけが特権市民として優遇されている北朝鮮そのもの

ここに「財政力指数」という自治体の財政力を示すひとつの指標があります。

財政力指数

財政力指数(ざいせいりょくしすう)とは地方公共団体の財政力を示す指標として用いられるもので、基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値の、通常は過去3カ年の平均値を指す。

財政力指数が1.0を上回れば地方交付税交付金が支給されない不交付団体となり、下回れば地方交付税交付金が支給される交付団体となる。したがって、地方交付税交付金地方公共団体間の財政力の格差を調整するために支給されるものであることからすると、その性質上必ずしも全ての地方公共団体地方交付税交付金が支給されるわけではないことになる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8A%9B%E6%8C%87%E6%95%B0

財政力指数とは財政収入額を財政支出額で除した数値でありますから、1以上ならば黒字、1未満ならば赤字自治体という単純な指標なのであります。

そして1未満ならば赤字自治体として、地方交付税交付金が支給される交付団体となるのです。

47都道府県の決算内容は総務省の「平成30年度決算状況(都道府県)」を調べれば「財政力指数」も含めて詳細を押さえることができます。

総務省の公開資料によれば、その財政力によって47都道府県は、F、B1、B2、C、D、Eの6つのグループに仕分けされています。

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https://www.soumu.go.jp/main_content/000681603.pdf

より視覚的にご覧いただけるように直近3年の各都道府県の財政力指数を図表にまとめてみます。

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※情報ソース
総務省地方財政状況調査関係資料|平成30年度決算状況(都道府県)
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/h30_todohuken_00001.html
※上記情報ソースより『木走日記』作成

ご覧いただけるように、財政力指数が1以上の黒字自治体は、1.17884の東京都(グループF)だけであり、残りの46道府県はすべて赤字自治体であり国から地方交付税交付金が支給されなければ自治体の財政需要を満たすことはできないのです。
グループB1、B2の21府県はまだ財政力指数が0.5以上ですが、C、D、Eの3グループ25道県は、その財政力が脆弱であり、特に鳥取、高知、島根のグループEの3県は、財政力指数0.3未満であります。

これは県の独自の財政収入では、その財政支出の3割も満たすことができない状況なのです。

ここから本題です。

さて唯一の黒字自治体である東京都ですが、今回の新型コロナウイルス関連の緊急対策への支出で、総額1兆円の巨費を緊急に支出いたします。

(関連記事)
東京都、コロナ対策費1兆円に 追加協力金などで補正予算案―緊急事態宣言

 東京都は19日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言延長に伴う休業要請の追加協力金930億円などを含む5832億円の2020年度補正予算案を発表した。新型コロナ対策費の総額は、4月に想定した8000億円から約1兆円に拡大。都の貯金である財政調整基金を取り崩して対応するが、さらに支出が増えれば財政悪化も懸念される。

 協力金はまず、緊急事態宣言の当初の期限だった今月6日まで休業などに応じた中小事業者に最大100万円を支給。今回の補正予算案では、今月末までの延長期間分を手当てし、2回目として同額を提供する。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051900998&g=pol

この第一波の新型コロナウイルス対策で、一兆円を超えていた東京都の「貯金」にあたる財政調整基金が、17年ぶり1000億円割れになり、一気に底を突きます。

20年度末の基金残高は493億円に縮小する見通しです。

(関連記事)
東京都の「貯金」17年ぶり1000億円割れ コロナ対策で
2020/5/19 19:11

新型コロナウイルス関連の緊急対策への支出が膨らみ、東京都の「貯金」にあたる財政調整基金が急減している。今年度は17年ぶりに1000億円を割る見通し。さらに支出が生じる可能性もあり、薄氷の財政運営が続く。

19日発表した補正予算案には財政調整基金から5000億円近くを充てる。20年度末の基金残高は493億円に縮小する見通し。過去20年で1000億円を割ったのは財政再建の途上にあった03年度だけだ。

財政が改善した近年は景気回復で税収も伸び、基金残高は拡大する傾向にあった。19年度末の残高は9032億円と1963年度の基金設置以来の最高額を見込むが、これまでの緊急対策で蓄えのほとんどを使うことになった。

補正予算案の多くを占める中小企業の制度融資の需要は依然高く、都の支出がさらに膨らむ可能性もある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59298680Z10C20A5L83000/

黒字自治体だった東京都ですが、その「貯金」にあたる財政調整基金1兆円は、今確認したとおり、第一波の新型コロナウイルス対策で、すでに使い切っており、この先もしも第二波に見舞われても、もはや東京都に緊急対策を行う蓄えはないのです。

この先何年か、今回の経済悪化による大幅な財政収入の収縮が予測されており、さらに東京オリンピック延期による追加費用負担も見込まれます。

上記日経記事が指摘しているようにしばらく東京都の「薄氷の財政運営が続く」わけです。

この厳しい財政状況を正しく認識している候補こそに、都知事になっていただきたいものです。

さて、山本太郎氏の政策です。

② 総額15兆円で、あなたのコロナ損失を徹底的に底上げ

■まずは全都民に10万円を給付。
■授業料1年間免除。(小学校・中学校・高校・大学・大学院・専門学校等)
■中小企業・個人事業主の前年度事業収入と今年度事業収入のマイナス分を補償。
■病院を潰さないため、減収に対し、災害時と同様に前年度診療報酬支払額を補償。
■第2波、3波を考えれば再び「補償なき自粛」が行われる恐れがある。その際には、全都民に10万円給付。全事業者へ簡単なWEB申請で受け取れる「まずはサッサと100万円」を支給。中小企業・個人事業主に対し無利子・無担保・繰延可能の融資。全世帯の水光熱費を1年間免除。医療従事者やエッセンシャルワーカーへ日額2万4千円の危険手当を支給。「スピード感」ではなく、「スピード」を重視。
今回のコロナ損失の補てんについては、総額で15兆円を段階的に調達することを目指します。

山本太郎東京都知事候補特設サイト より
https://taro-yamamoto.tokyo/policy/

総額15兆円とは、東京都民1400万人で単純に割れば、赤ちゃんも含めて都民一人あたり107万余りの大盤振る舞いであります。

東京都は、手段がよくわかりませんが、一気に15兆円の借金を背負うことになります。

東京都の財政はこの記録的な「借金」により急速に悪化することでしょう。

このような実現可能性があるととても思えない政策を掲げるのは、首都の知事を目指す責任ある政治家としていかがなものかと考えますが、逆に実現したらしたで、恐ろしいことが起こります。

住んでいる場所が異なるという理由だけで、東京都民以外の国民が無視され、東京都民だけが潤うことになるからです。

東京都民とそれ以外の46道府県民の間で、一時的ではありますが、看過できないコロナ対策の「補償」経済格差が生まれ、著しい経済的不平等がその住む地域により生じてしまい、国民の平等をうたう憲法第14条第1項の「すべて国民は、法の下に平等」に抵触する疑いがあります。

日本国憲法第14条
第1項
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

そもそも山本太郎氏の公約「総額15兆円で、あなたのコロナ損失を徹底的に底上げ」は、その実現可能性はゼロに近いのですが、実現したら実現したで東京都民だけ「優遇」される、とんでもない不平等公約なのであります。

唯一の黒字自治体である東京都が他道府県に比べて財政余力がダントツにあるのは、「貯金」を使い切っているとはいえ事実ですが、その財政力で借金で15兆ものバラマキを実行すれば、都民一人当たり100万円を超える大盤振る舞いになります。

山本氏の公約によればです。

東京都民だけ、授業料1年間免除(小学校・中学校・高校・大学・大学院・専門学校等)され、東京都民だけ、中小企業・個人事業主の前年度事業収入と今年度事業収入のマイナス分を補償され、東京都だけ、病院を潰さないため、減収に対し、災害時と同様に前年度診療報酬支払額を補償され、東京都民だけ全都民に10万円給付され、東京都全事業者へ簡単なWEB申請で受け取れる「まずはサッサと100万円」を支給され、東京都だけ中小企業・個人事業主に対し無利子・無担保・繰延可能の融資されるのです。

東京都民だけ、全世帯の水光熱費を1年間免除されます。

このような大盤振る舞いは、財政余力のない他道府県はまったく追随できません。

ふう。

これではあまりに不平等です。

山本太郎氏の目指すのは、首都平壌市民だけが特権市民として優遇されている北朝鮮そのものであります。



(木走まさみず)