木走日記

場末の時事評論

待機児童3年連続増加4万人の現状放置は政治の怠慢

 六日付け毎日新聞記事から。

待機児童:2万6275人…3年連続の増加

2010年9月6日 19時53分 更新:9月6日 21時16分

 厚生労働省は6日、認可保育所に申し込んでも満員で入れない待機児童が、今年4月1日現在で前年同期より891人増えて2万6275人にのぼり、過去2番目に多かったとする調査結果を発表した。待機児童は過去最多だった03年の2万6383人から07年には1万7926人まで減少したが、経済情勢の悪化で共働き家庭が増えたため08年以降、再び増加に転じ、3年連続の増加となった。

 同省は今回初めて、自治体独自の制度による保育施設に入っている児童のうち認可保育所への入所を希望している児童が、全国に1万2812人いると公表した。待機児童とあわせて、認可保育所に希望して入れない児童は3万9087人に上る。

 保育所数は前年同期から143カ所増えて2万3068カ所。保育所定員は2万5809人増の215万7890人だった。

 待機児童のいる自治体は、前年同期より20少ない357市区町村で、全体の2割にあたる。一方、100人以上の待機児童を抱える自治体は66市区町村で前年同期より4増加。都市部を中心に一部の自治体に集中している状況がうかがえる。年齢別では0〜2歳児が全体の8割を占めた。

 待機児童が最も多い市区町村は横浜市で1552人(前年同期比262人増)、次いで川崎市1076人(同363人増)▽札幌市840人(同438人増)▽東京都世田谷区725人(同112人増)▽名古屋市598人(同3人増)−−などだった。一方、大阪市は前年同期から403人減って205人となった。【鈴木直】

http://mainichi.jp/select/today/news/20100907k0000m040061000c.html

 厚労省の発表によれば認可保育所に入れない待機児童の数が2万6275人と3年連続の増加となったことを報じている毎日記事でありますが、「自治体独自の制度による保育施設に入っている児童のうち認可保育所への入所を希望している児童が、全国に1万2812人いると公表」とあり、「待機児童とあわせて、認可保育所に希望して入れない児童は3万9087人に上る」ともあります。

 「自治体独自の制度による保育施設」のカテゴリーが私にはよく理解できていないのですが、いわゆる民間の無認可施設もすべて含まれているということでしょうか。

 いずれにせよ、4万の待機児童が発生している現実は一刻も早く解消すべきですし、記事にも「保育所数は前年同期から143カ所増えて2万3068カ所。保育所定員は2万5809人増の215万7890人」とありますが、定員を2万5809人増やしている中での待機児童3年連続増加です、厳しい予算の中で行政の怠慢となじることは酷でありましょう。

 これこそ政治家の決断が求められます。

 現状の予算を3倍に増やせばつまり1年で定員を7〜8万人増やせば待機児童ゼロが実現します。

 その費用は総額数兆円の子ども手当を圧縮すれば実現できます。

 待機児童の増加を記事は「経済情勢の悪化で共働き家庭が増えたため」と分析していますが、現役で社会を支える子育て世代、働く若いお母さん・お父さん達こそ国は何にもまして強力に支援すべきです。

 いや子ども手当を圧縮しなくとも簡単に実現できます。

 この国の政治はジジ・ババばかりに顔を向けていびつな世代間格差を広げる施策ばかりが目だち、票にならないそして圧力団体を持たない若年世代には極めて冷たいと言わざるを得ません。

 民主党政権の予算は膨らむ一方の社会保障費の圧縮議論をタブー視してジジババ世代に媚びを売っています、情けないことに少子高齢化の中で毎年2兆円規模で膨らむ巨費を放置プレー・手を付けようとしません、

 老齢世代の増加と共に毎年増え続ける年間30兆に至らんとする社会保障費を、例えばわずか5%でも圧縮すれば、若年世代を応援し経済を活性化する施策が次々に打てるはずです。

 貴重な税金は若い世代の子育てと労働の応援にもっと使うべきです。

 財務省のサイトで平成22年度予算政府案をPDFファイルで見ることができます。

平成22年度予算のポイント
http://www.mof.go.jp/seifuan22/yosan001.pdf

 その資料より平成21年度と平成22年度の主要経費の対比表を抜粋してみました。

主要経費 21年度 22年度 増減額(対前年度) 伸率(対前年度)
社会保障関係費 248,344 272,686 24,342 9.8%
文教及び科学振興費 53,104 55,860 2,756 5.2%
恩給関係費 7,872 7,144 ▲729 ▲9.3%
防衛関係費 47,741 47,903 162 0.3%
公共事業関係費 70,701 57,731 ▲12,970 ▲18.3%
経済協力費 6,295 5,822 ▲474 ▲7.5%
[参考] ODA国費 6,722 6,187 ▲534 ▲7.9%
ODA事業量(グロス)) (18,770) (19,100) (300) (2%程度)
中小企業対策費 1,890 1,911 21 1.1%
エネルギー対策費 8,562 8,420 ▲142 ▲1,7%
食料安定供給関係費 8,659 11,599 2,940 33.9%
その他 50,642 51,968 1,327 2.6%
小計 503,810 521,042 17,233 3.4%
地方交付税交付金 165,733 174,777 9,044 5.5%

(単位:億円)
(注1) 精査の結果、計数の変更がありうる。
(注2) 歳出のうち、国債費、予備費、決算不足補てん繰戻を除いている。

 ご覧の通り平成22年度予算案では、「地方交付税交付金等」を除いた経費521,042億円のうち、実に272,686億円が社会保障関係費です、交付金を除く政府支出全体の52.3%が社会保障関係費で占められており、なおかつ平成21年度の比べて一年で24,342億円、9.8%も増加しているのがわかります。

 ご承知のように、日本の社会保障の財源は、多くが国民や企業から集めた社会保険料でまかなわれおり、一部を国と地方の税金で負担しているわけで、このうちの国庫負担分だけが上記の一般会計予算の「社会保障関係費」として計上されています。

 現状でも交付金を除く政府支出全体の5割を越える経費が社会保障関係費で占められており、今の高齢化のペースではしかも毎年2兆円増え続ける試算になっているわけです。

 せめてこの2兆円の増分だけでも抑制できれば、そして若い世代の子育てと労働の応援に回すことができれば、待機児童数などすぐにゼロにすることは可能です。

 ・・・

 政治が動き社会保障費を見直せば、待機児童数を即刻ゼロにすることは十分可能です。

 貴重な税金は若い世代の子育てと労働の応援にもっと使うべきです。

 この国の将来の財政をになう彼らを冷遇し、結果として財政を蝕む老齢世代を優遇する、この愚かな予算配分は、私は我が国の政治の無作為であると断じます。

 私はこの待機児童3年連続増加4万人の現状放置は政治の怠慢だと思います。



(木走まさみず)