木走日記

場末の時事評論

大阪市解体を断固支持する理由

 さて、大阪府議会は17日午後の本会議で、大阪市を5つの特別区に分割し、府と再編する「大阪都構想」の協定書(構想案)を地域政党大阪維新の会」と公明党の賛成多数で可決、承認する見込みです。

 これで、構想の是非を問う住民投票の実施が決まります。日程は「5月17日投票」となる見通しで、投票権を持つのは20歳以上の大阪市民約215万人です。

 さて当ブログは東京都在住で大阪府大阪市とは何の因果関係も有しません。

 本件では従って原則は大阪市民の意思を尊重いたします。

 そのうえでですが、当ブログは「大阪都構想」が実現できるかわかりませんが、政令指定都市大阪市」解体に限れば、断固支持する者であります。

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 そもそも橋下氏の『大阪都構想』がなぜ生まれたのか、原点に戻った議論が必要です。

 よもや大阪市民は忘れてはおられないと思いますが、当ブログ読者とともに過去を検証しておきましょう。

 話は11年前、平成16(04)年11月に戻ります。

 すべての発端は、大阪のMBS毎日放送:TBS系列)のテレビの夕方のニュースワイド番組において地味なスクープ報道を流したのがきっかけでした。

 それは「大阪市役所職員のカラ残業の実態」を報道するものでした。

 最初はよくある公務員の不正事件ぐらいの報道だったのですが、MBSの情報源はおそらく内部告発者だったのでしょう、その後も精度の高い不正情報が次々に報道され、やがて他のメディアも追随、全国レベルでの大報道合戦となっていきます。

 その不正内容は、条例に規定のないヤミ退職金・ヤミ年金、五種類のヤミ昇給、厚遇のヤミ福利厚生費、ヤミ組合専従、さらには大量の天下り団体の発覚などなど、もうやりたい放題、最終的には全国紙の社説でも大阪市および市職員は厳しく糾弾されることになります。

 多くの国民が激怒したのはこの一連の不正が役所ぐるみ組合ぐるみで巧妙に行われてきたことに対してだけではありませんでした、財政破綻ギリギリの当時の赤字自治大阪市において、報道によって大阪市職員の厚遇ぶりも報道されたからです。

 優良企業でもありえないこのような高待遇や不正が財政破綻寸前の自治体で行われていることに、国民やメディアがこぞって批判したのであります。

 では当時大阪市はどのような財政状況だったのでしょうか、公式の資料で具体的検証しておきます。

 平成16年当時、全国の政令指定都市は北は北海道・札幌市から南は九州・福岡市まで13存在しました。

 その中でもお荷物的存在というか特に財政悪化が顕著だったのが、大阪市と神戸市の関西政令2都市だったわけです。

 当時(平成16年)の政令都市の財政状況を比較する詳細資料は総務省サイトにあります。

〈財政比較分析表(平成16年度決算)一覧〉
http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/bunsekihyo.html#LinksSeireishi 

 この内容を一枚の表にまとめてみました。

 この表では6つの指標・インデックスによって13の政令都市の財政状態を比較しているのですが、ほとんどの指標の最下位を関西の神戸市と大阪市が争うように占めていることが理解できます。

 6つの指標・インデックスは地方自治体の財務の健全性を図る上でどれも重要と思われるので簡単に説明しておきます。

(1)まず一番左の【財政力】(財政力指数)ですが、これは地方税などのその自治体の歳入を行政サービス費用や人件費などのその自治体の歳出で割った指標であり、

 財政力指数 = 歳入 / 歳出

 の式で表します、当然ながら財政力指数が1.0を超えれば、歳入のほうが歳出より大きい「黒字自治体」であり、1.0未満なら逆に「赤字自治体」、つまりこの財政力指数が小さい自治体ほど体力がないことを示しています。

 表で確認できますが1位の川崎市ですら1.0のトントン、あとの12の市はすべて赤字自治体、大阪市は0.86で7位、神戸市は0.65で12位にあります。

(2)次の【財政構造の弾力性】(経常収支比率)(%)ですが、これは自治体において自由に使えるお金のうち、人件費や生活保護費、借金返済などの避けられない支出にどれだけ充てているかを示しています、したがって値が低ければ低いほど、懐に余裕があり、独自の政策のために使うことができるのです。

 表で確認しますと、最下位の大阪市と、その次の神戸市だけが100%を超えていますね、これは本来なら自治体独自で使用可能なお金がまったくない状態であることを示しています。

(3)3番目の【公債費負担の健全度】(起債制限比率)(%)ですが、この起債制限比率は、地方税収など経営的な一般財源のうち地方債の返済に充てる割合をさします、そして起債制限比率が20%を超えた場合には、一般単独事業における地方債の発行の許可が制限されるのです。

 表で確認しますと、9位の大阪市は15.9%、最下位の神戸市は26.0%で一般単独事業に地方債の発行制限を受けていることがわかります。

(4)4番目の【将来負担の健全度】(人口一人当たり地方債現在高)(円)ですが、これはそのままでその自治体の借金残高を人口で割ったもので、市民一人当たりどの位の自治体の借金が残っているかがわかります。

 表で確認しますと、最下位の神戸市が119万0719円、次の大阪市が114万8806円、市民一人当たり100万円を超える借金を抱えていることが分かります。

(5)5番目の【給与水準の適正度(国との比較)】(ラスパイレス指数)ですが、このラスパイレス指数とは、

 ラスパイレス指数 =その自治体職員の平均給与 / 国家公務員の平均給与

 であり、国家公務員とその自治体職員の給与を比較した値です、小さければ小さいほど国家公務員より給与水準は低く抑えられ、この数値が大きければ大きいほどその自治体職員の平均給与は国家公務員より高給なわけです。

 表で確認しますとこのラスパイレス指数において、当時の関西赤字政令都市である神戸市と大阪市の姿勢の違いが顕著に見えて興味深いです。

 1位の神戸市は95.6であり、この段階ですでに一人当たり人件費の削減に努力していることが推測できますのに対し、最下位から2番目の大阪市は101.4、国家公務員よりも高給であることがわかります。

(6)最後6番目、表では一番右の【定員管理の適正度】(人口千人当たり職員数)ですが、これはその自治体の職員総数そのものが自治体規模からして適正なものかを計る指標となっています。

 表で確認しますと、1位の横浜市の5.96人に対して、最下位の大阪市は12.29人と、この指標において大阪市民は横浜市民に比べて倍以上の市職員を抱えていることになります。

 神戸市も最下位から2番目の9.01人と、やはり他市と比較して職員数が多いことがわかります。

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 まとめますと、今、検証したとおり、当時つまり平成16年度(04年4月〜05年3月)における大阪市の財務状況は、赤字自治体で経常収支比率が103.6%と最悪で自治体において自由に使えるお金などまったくない状況で、かつ市民一人当りの借金も114万8806円と膨大に膨らんでいる中で、なんと国家公務員よりも高給(101.4)な職員を政令地方都市の中で一番(1000人当たり12.29人)多く抱えていたわけです。
 そしてこのようなただでさえ財政破綻状況の中の厚遇を受けているのに、さらに条例に規定のないヤミ退職金・ヤミ年金、五種類のヤミ昇給、厚遇のヤミ福利厚生費、ヤミ組合専従、さらには大量の天下り団体の発覚など、自治体ぐるみ組合ぐるみの不正が次々と発覚したのであります。
 当時、大阪市民でなくともこんなデタラメな自治体はいらないと多くの国民が憤ったのは無理からぬわけです。
 大阪市が市民ほったらかし赤字垂れ流しお構いなしで組織ぐるみで自分達だけを厚遇しこのような腐臭漂う不正を行うような体質になったのは、実は1963年からこの不正が発覚した後の2007年まで44年間、5代(中馬馨、大島靖、西尾正也、磯村隆文、關淳一)連続で前の助役が次の市長になるというひどい馴れ合い人事も遠因でありましょう。
 
 さらに当時の大阪市議会の議員達の無能ぶりも「犯罪」的です。

 大阪市大阪府と同一の地域に対し、似たようなハコモノをどんどん立て、非効率な二重の行政サービスで人件費や維持費がかさばり続けます、そこに天下り団体を乱立させそれぞれの既得権益を擁護しつつ二重の予算が府と市で計上され、無駄に無駄を重ねた結果が、さきほどの表で確認した通りの全国最悪の財政破たん政令都市の実態なのです。

 市がここまで、でたらめな都市開発を進めでたらめな予算編成をしてこれた第一の理由は、予算をチェッくすべき市議会が無能だったからです。

 市職員、市長、とともに既存政党の市議会議員は、いわば大阪市にここまで財政悪化をもたらした会計を承認し続けてきた「共犯者」なのであります。
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 大阪市のサイトはこちらです。

大阪市

大阪市予算の概要と財政の現状」について(平成25年4月)

http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000217122.html

 一般会計規模1兆6700億の自治体が4兆8713億円と3倍近くの累積債務に喘いでいる訳です。

 2007年よりは少し改善していますが、相変わらずの絶望的な財政状態であります。

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 まとめます。

大阪都構想」に関しては、賛否両論起こっておりますが、大阪市市議会、大阪市職員並びにその関係者の意見は市民の皆さんは全く聞く必要はありません。
 彼らは保身のためのポジショントークでいろいろな反対論を唱えていますが、そもそも彼らこそ「大阪都構想」の悪しき生みの親なのであり、本件で彼らに意見を言う資格があるとは思えません。
 大阪市が解体されれば全国政令都市で初めてのこととなります。
 そのぐらいの荒療治をしてもかまわないと当ブログは考えます。
 大阪市民の正しい判断を期待しております。



(木走まさみず)