木走日記

場末の時事評論

道路特定財源問題:日本のメディアスクラムにあえて反論してみる〜一般財源化するならばまず暫定税率を廃止するのが筋だ

特定財源 道路延びて、国滅ぶ〜8日付け朝日新聞社

 本日(8日)の朝日新聞社説から・・・

特定財源 道路延びて、国滅ぶ

 これでは全面降伏ではないか。構造改革の「目玉」として道路特定財源の見直しに強い意欲を示していた安倍首相が、大盤振る舞いを求める自民、公明両党の要求に屈したのだ。

 08年に法律を改正することで、税収のすべてを道路整備に使うという旧来の仕組みを改めることになった。

 これだけなら一歩前進にも映る。だが、焦点となっていたガソリン(揮発油)税を何にでも使える一般財源に振り向ける点については、明記されないままのあいまい決着だ。

 それだけではない。道路整備計画を来年中にまとめ、必要な事業量を示すことになった。使い道を広げるといいながら、高速道路料金の値下げなど道路関連に絞る方向だ。

 道路建設を抑え込まれまいとする与党が、「道路が足りない」と叫ぶ地方自治体と二人三脚で骨を抜いた。年間5兆8千億円の財源の大半を食いつぶすような整備計画を国土交通省に作らせれば、一般財源化も看板倒れに終わる。

 特定財源の制度ができた半世紀前、道路造りは復興のための優先課題だった。しかし、今や地方に新しく道路を通してもさしたる経済効果は望めない。多くは土建業者を通じて、地域に税金がばらまかれるのと違いがない。

 すでに国と地方で800兆円を超える借金を抱えている。このままでは財政の破綻(はたん)に、さらに近づいてしまう。しかも道路に限らず特定財源は利権の温床となり政官業の癒着につながりがちだ。

 道路整備計画を作るのなら、まず耐用年数の限界にきた道路や橋の更新と補修に予算を回すべきだ。新設分についてはどのくらいの経済効果が望めるか、情報を公開し、そのうえで優先順位をつけて限られた財源を振り向けたい。

 やみくもに道路を延ばすのでなく、自動車が社会に及ぼす悪影響を減らすために、税収を生かすことだ。交通事故を防ぐ歩道の整備や、鉄道や海運といった地球環境への負荷が少ない交通手段への切り替えを促す施策なども進めたい。

 高速道路の通行料引き下げに使うのは税の無駄遣いでしかない。経営努力を通じて高止まりの料金を低くするために道路公団を民営化したのだ。各社の努力で引き下げるのが筋だろう。

 税率の引き下げについては、慎重に考えたい。かえって自動車利用をあおることになりかねないからだ。国民生活を豊かにする使途を示すことで納税者の理解を広げ、最終的に税率を維持したまま一般財源にすべきだ。

 構造改革に取り組んだ小泉前首相も、高速道路の建設を止められなかった。既得権益が根を張る道路問題の解決は至難のわざである。

 安倍首相が改革の旗手であり続けようと考えるのなら、このまま引き下がるわけにはいかないだろう。整備計画を厳しくチェックし、一般財源への道筋をしっかりと付けなければならない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 社説の冒頭。

 これでは全面降伏ではないか。構造改革の「目玉」として道路特定財源の見直しに強い意欲を示していた安倍首相が、大盤振る舞いを求める自民、公明両党の要求に屈したのだ。

 道路特定財源の見直しが骨抜きにされ、これでは「大盤振る舞いを求める自民、公明両党の要求に屈した」事実上の阿倍首相の「全面降伏」であるとしています。

 この論説のポイントはここでしょう。

 特定財源の制度ができた半世紀前、道路造りは復興のための優先課題だった。しかし、今や地方に新しく道路を通してもさしたる経済効果は望めない。多くは土建業者を通じて、地域に税金がばらまかれるのと違いがない。

 すでに国と地方で800兆円を超える借金を抱えている。このままでは財政の破綻(はたん)に、さらに近づいてしまう。しかも道路に限らず特定財源は利権の温床となり政官業の癒着につながりがちだ。

 「今や地方に新しく道路を通してもさしたる経済効果は望めない。多くは土建業者を通じて、地域に税金がばらまかれるのと違いがない。」のであり「しかも道路に限らず特定財源は利権の温床となり政官業の癒着につながりがち」であるわけです。

 年間5兆8千億円にもなるガソリン(揮発油)税を中心とした道路特定財源一般財源化を計ろうとした阿倍内閣なのですが、自民党自治体、自動車関連団体の強い反対に遭い、事実上「骨抜き」の見直しでごまかしたという朝日社説の主張なのであります。



●朝日から産経まで全紙「特定財源」廃止で揃い踏みの新聞社説

 この一週間主要メディアはこの問題を一斉に社説で取り上げてきました。

【12月8日付け朝日社説】特定財源 道路延びて、国滅ぶ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【12月6日付け朝日社説】道路財源 安倍改革が試される
http://www.asahi.com/paper/editorial20061206.html
【12月2日付け読売社説】[道路財源改革]「首相が挑む一般財源化の難路」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061202ig90.htm
【12月6日付け毎日社説】道路特定財源 改革とは特別会計の廃止だ
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20061206ddm005070132000c.html
【12月7日付け産経社説】道路財源見直し 特定財源存続への道断て
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/061207/shc061207000.htm
【12月5日付け日経社説】「道路財源」で試される首相の指導力(12/5)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20061204MS3M0400404122006.html

 例によって各社説の結語を並べてみましょう。

【12月8日付け朝日社説】特定財源 道路延びて、国滅ぶ
 構造改革に取り組んだ小泉前首相も、高速道路の建設を止められなかった。既得権益が根を張る道路問題の解決は至難のわざである。

 安倍首相が改革の旗手であり続けようと考えるのなら、このまま引き下がるわけにはいかないだろう。整備計画を厳しくチェックし、一般財源への道筋をしっかりと付けなければならない。

【12月6日付け朝日社説】道路財源 安倍改革が試される
 折も折、郵政造反議員11人の復党で、安倍自民党の改革姿勢に疑問符が突きつけられたばかりだ。ここで首相が再び党内の抵抗勢力に押し切られ、あいまいな妥協を受け入れれば、世論の視線はより冷たさを増すに違いない。

 今後、首相がどんな改革に手を付けようとしても、世論の支持を得るのは難しくなる。
 妥協を排して、一般財源化への道筋を明確に指し示す。首相は持ち前の頑固さを発揮し、その所信を貫くべきだ。

【12月2日付け読売社説】[道路財源改革]「首相が挑む一般財源化の難路」
 旧本州四国連絡橋公団が抱える借金の一部は、道路特定財源から返済されている。今年度は4500億円が支出されたが、今回限りだ。来年度からはそっくり余剰になる。これを突破口に、全体の見直しにつなげる手法もある。

 もちろん、大都市の幹線道路や地方の生活道路で、整備が待たれるケースも少なくない。地方では、一本の道路整備が経済活性化や福祉の向上に直結することがある。そうした場合は、厳正に査定したうえで、一般財源から予算をつけるのが筋であろう。

【12月6日付け毎日社説】道路特定財源 改革とは特別会計の廃止だ
 一方で、歩行者への配慮には欠け、安心して歩くことのできる道路整備では大きく後れを取っている。自動車会社やユーザー、石油会社のための行政だった。自動車が公害発生源であることも十分認識されてきたとは言い難い。

 その意味からも、道路とは何か見直す好機だ。従来型の道路整備を行ってきた道路整備特会の廃止も日程に載せる必要がある。そこまで腹をくくってこそ改革だ。

【12月7日付け産経社説】道路財源見直し 特定財源存続への道断て
 一般財源化はそもそも、無駄な道路建設に歯止めをかけることだけが目的ではない。貴重な財源を増大する社会保障費などにも充て、財政再建に不可避である増税の圧縮につなげることにある。将来、一部を環境税に組み替える手立ても考えられよう。

 国民はこの道路特定財源見直しを安倍改革の試金石とみている。一般財源化本来の意味を踏まえ、道路族と安易に妥協してはなるまい。

【12月5日付け日経社説】「道路財源」で試される首相の指導力(12/5)
 来年夏に参院選を控えて、いま結論を出すのは勇気の要ることに違いない。しかし構造改革の大きな柱の一つであるこの問題の取り扱いをあいまいにすれば、安倍首相の信頼感にも響くだろう。首相が指導力を発揮して年内に、道路整備費特例法の改正の時期などを含め揮発油税一般財源化の道筋をはっきりと決めるよう期待する。

 うーん、見事に特定財源廃止という点で揃い踏みなのであります(苦笑

 「国民はこの道路特定財源見直しを安倍改革の試金石とみている。一般財源化本来の意味を踏まえ、道路族と安易に妥協してはなるまい」(【産経社説】)なのはそのとおりでしょうし、今までの道路行政が「自動車会社やユーザー、石油会社のための行政だった。自動車が公害発生源であることも十分認識されてきたとは言い難い。」(【毎日社説】)のも正論でございましょう。

 あの需要をまったく無視して複数かけた愚かな本州四国連絡橋の借金に関しても「旧本州四国連絡橋公団が抱える借金の一部は、道路特定財源から返済されている。今年度は4500億円が支出されたが、今回限りだ。来年度からはそっくり余剰になる。」(【読売社説】)のでありますから、今が見直しの好機であることも異存ありません。

 しかしです。

 この各紙社説の「正論」には、私はなにか腑に落ちない論点のすり替えがあると感じてしまうのです。

 そもそも阿倍改革の失敗であるとしつこい朝日(苦笑)などは2度も取り上げるご執心ぶりなわけですが、それはともかく朝日から産経まで全紙「特定財源」廃止で揃い踏みなのは、私などのあまのじゃくでアンチマスメディアのブロガーにとっては気持ちが悪いことです。

 だいたい日本のマスコミがそろって意見を一致するなどという時には、「ホリエモン騒動」のときの馬鹿騒ぎもそうですが、私たち国民は逆に冷静にメディアの主張をリテラシーしなければならないと思います。

 残念ながらこういうときは必ず日本のマスメディアはテレビも新聞も異論や反論を無視して大勢に流されてしまう悪癖があるからです。

 たしかに、「道路整備費特例法の改正の時期などを含め揮発油税一般財源化の道筋をはっきりと決めるよう期待」(【日経社説】)と各紙の社説の掲げる「正論」には、財政逼迫の折り時代遅れで税金無駄使いの象徴となっている特定財源一般財源化すべしという大儀があることは認めます。

 しかしこの「正論」には、納税者の視点、税の公正平等原則からの視点がほとんど語られていないのはいかがなものでしょうか。



●道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率を廃止すべき

 私は赤字垂れ流しの地方自治体や既得権益擁護を露骨に主張する政治家達の意見に与するものでは断じてありませんが、今回の道路特定財源一般財源化問題においては、全国7800万人の自動車ドライバー(納税者)を軽視しているという点では、自動車業界の主張には強く賛同するモノであります。

 そもそも自動車ユーザーが負担している自動車重量税ガソリン税などの道路特定財源は、国が法律と国会において「使い道を道路整備に特定する」と約束し、課税しているものであります。

 しかも1954年以来現在に至るまで、戦後の荒廃から資源なき日本を技術立国として立て直すために日本列島の道路を欧米並に充実させ物流インフラを整備するためにと、本来の税率の2倍以上に引き上げられた暫定税率をも容認し続けてきたわけです。

 自動車ユーザーは道路整備のために、30年以上も本来の税率を大幅に上回る税金を負担してきたのであります。

税制 元々の税率(本則) 現在の税率(暫定が30年以上継続) 倍率
自動車取得税 3% 5% 1.7倍
自動車重量税 2,500円/0.5トン 6,300円/0.5トン 2.5倍
揮発油税 24.3円/リットル 48.6円/リットル 2.0倍
地方道路税 4.4円/リットル 5.2円/リットル 1.2倍
軽油引取税 15.0円/リットル 32.1円/リットル 2.1倍
石油ガス税 17.5円/kg 17.5円/kg

※自家用乗用車の場合。自動車重量税の0.5トン未満端数は切上げ。
(例)自動車重量税は、1台当り本来22,500円で済むところ、現在はなんと56,700円も負担しているのです。(1,800ccの標準的な車両重量1,100kgの場合、3年間)

https://www.jaf.or.jp/enquete/signature/200601sig_index.htm

 以下は道路特定財源一般財源化反対の「自動車税制改革フォーラム」の緊急共同声明です。

緊急共同声明

道路特定財源一般財源化反対

道路に使わなければ減税すべきである!!

― 反対署名数 1000万人突破 ―

 自動車ユーザーが負担している自動車重量税ガソリン税などの道路特定財源は、国が法律と国会において「使い道を道路整備に特定する」と約束し、課税しているものである。納税者である自動車ユーザーは、その「約束」を信じて税負担を受け入れてきたし、本来の税率の2倍以上に引き上げられた暫定税率をも容認し続けてきた。

 ところが政府与党はこの道路特定財源について、納税者の理解が得られていないにもかかわらず、消費税のように何にでも使え、さらにはいつでも増税できる「一般財源」にしようとしている。「一般財源化」の名のもとに、特定の納税者が納めた税金を目的以外に横流しすることは断じて許されない。われわれはこの一方的な議論だけで決定することに強い疑念を抱かざるを得ない。

 1000万人を越える自動車ユーザーは、反対署名をもって「道路に使わないならば税を下げるべき」との声を挙げたが、その声さえも全く無視されようとしている。

 このような声は、さらに全国に広がっており、政府与党の関係者には国民が何を望んでいるのかを自ら把握に努め、正しく理解いただくことを強くお願いする。自動車が住民の足になっている地方からも「まだ道路が必要だ」との大きな声が上がっているが、その声も無視され、地方納税者に不合理な負担を課そうとしている。これは新内閣が掲げる「地域経済の活性化」「格差是正」の取組みにも逆行するものである。

 見直しの大前提である「納税者の理解」について、「納税者」を「国民」と置き換えて解釈するのは、意図的なごまかしであり、実際に税金を納めている全国7800万人の自動車ドライバー(納税者)を軽視し、税に対する国民の信頼を失わせるものと言わざるを得ない。国民の政治に対する信頼を損なわないために政府与党は、十分な議論を経て結論を得るべきであり、拙速かつ一方的、また理屈に合わない決定は避けるべきである。

 かかる理由に基づき、1000万人を越える納税者の声を預ったわれわれは、政府に対し、道路特定財源問題が一方的に決定されることに強く反対するものである。

平成18年12月1日

自動車税制改革フォーラム

日本自動車連盟(JAF) 会長 田中節夫
日本自動車工業会 会長 張 富士夫
日本自動車販売協会連合会 会長 小栗七生
全国自家用自動車協会 会長 山下徳夫
日本自動車部品工業会 会長 鶴 正登
日本自動車輸入組合 理事長 梅野 勉
全国軽自動車協会連合会 会長 村田浩平
日本自動車リース協会連合会 会長 神谷昭男
日本自動車会議所 会長 豊田章一郎
日本中古自動車販売協会連合会 会長 小川逸樹
日本自動車整備振興会連合会 会長 坪内恊致
全日本トラック協会 会長 中西英一郎
日本バス協会 会長 齋藤 寛
全国通運連盟 会長 岡部正彦
日本自動車車体工業会 会長 内川 晋
全国乗用自動車連合会 会長 新倉尚文
全国レンタカー協会 会長 井山嗣夫
日本自動車タイヤ協会 会長 南雲忠信
日本二輪車協会(NMCA) 事務総長 中西良三
自動車用品小売業協会 会長 住野公一
全国自動車会議所連絡協議会 会長 豊田章一郎
全国石油商業組合連合会 会長 関 正夫
石油連盟 会長 渡 文明

http://www.jaia-jp.org/taxforumdata/taxforum040326/tax_seimei.html

 私は自動車業界の主張の全てを同意するものでは断じてありません。

 しかしながら、税の公正・平等原則から「本来の目的である道路整備をまずきちんと行った上で、道路特定財源に使用しない部分があるのであれば、暫定税率を本来の本則税率に戻すべき」という自動車業界のこの主張は、その一点だけはユーザーの立場から言えばまったく正しいと思います。

 道路特定財源制度は、戦後日本の立ち後れた道路の整備を早急に行うために設立されたもので、その財源とするためクルマに関して様々な税金が創設されました。さらに、日本の高度経済成長期の「道路需要」に応えるため、緊急措置として、本則より高い税率を暫定的に自動車ユーザーに課してきました。

 その経緯を無視して道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率を廃止すべきなのです。



●「欧州各国に比べ、自動車関連の税負担はまだ軽い方」という詭弁に反論しておく

 このような「道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率を廃止すべき」という正論に対して、たとえば読売社説のように「欧州各国に比べ、自動車関連の税負担はまだ軽い方」という事実を取り上げる論説が見受けられます。

【12月2日付け読売社説】[道路財源改革]「首相が挑む一般財源化の難路」 
 関連業界は、「道路整備に使わないなら暫定税率をやめて欲しい」という。だが、国民の多くは、道路にこだわって納税しているわけではあるまい。

 欧州各国に比べ、自動車関連の税負担はまだ軽い方だ。むしろ暫定税率を本則にするのが本来の姿ではないか。

 同様の主張をする見直し賛成派の大学教授の論を毎日新聞記事から抜粋いたしましょう。

闘論:道路特定財源の扱い 石井健児氏/富田俊基氏

(前略)

 ◇社会変化、見直し必要 特会改革の試金石−−中央大教授・富田俊基氏

 道路特定財源一般財源化には二つの意味がある。一つめは、特別会計改革の象徴としての意味。資金が余っている特会がある一方、国全体では巨額の赤字を抱えている。このゆがみを直すのが特会改革だ。

 18世紀の英国の政治家、エドモンド・バークは1780年の下院演説で、各部局ごとの縦割り予算を一つに統合すべきだと訴えた。当時、海軍や陸軍では部局ごとに予算編成していたため、剰余金をためこむ部局と赤字を抱える部局があった。バーク演説を受け1787年、統合国庫資金ができた。国の歳入は1カ所に集められ、そこからすべての歳出が行われるようになり特定財源はなくなった。

 塩川正十郎財務相が「母屋(一般会計)でおかゆを食べているのに離れ(特会)ですき焼きを食べている」と評したのをきっかけに始まった特会改革の試金石が道路特定財源一般財源化だ。200年以上前のバークの問題提起が今の日本に突き付けられている。

 もう一つは社会環境の変化への対応だ。特定財源の中核である揮発油(ガソリン)税は1954年に特定財源化され、日本の道路は急速に整備された。ただ、現在は道路特定財源の税収が道路予算を上回る状況だ。道路財源を確保するよりも一般財源化して財政健全化や社会保障費増大への対応などさまざまな需要との比較の中で、配分していく必要性の方が高くなった。

 道路特定財源の税金に対する上乗せ税率への批判も多いが、財政規律と環境問題を重視する欧州諸国は過去20年間、ガソリン税率を段階的に引き上げてきた。日本のガソリン税の負担率が5割なのに対し欧州は6〜7割ということを考えると、日本の負担が重いとは言えない。米国は約2割と低いが京都議定書を批准しておらず、環境対策についての考え方が違う点を考慮すべきだ。

 大事なことはお金が余っていると勘違いしないこと。日本は国内総生産の1・5倍の債務残高があるうえ、いざなぎ超えの景気回復下にありながら巨額の財政赤字を生み続けている。道路整備には、特定財源だけでなく建設国債で調達した一般財源も使われてきた。本来は限定なしの一般財源化が筋だが、国債償還に特定財源を充てる手もある。【構成・塚田健太】

(後略)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20061204ddm003070061000c.html

 ポイントはここ。

 道路特定財源の税金に対する上乗せ税率への批判も多いが、財政規律と環境問題を重視する欧州諸国は過去20年間、ガソリン税率を段階的に引き上げてきた。日本のガソリン税の負担率が5割なのに対し欧州は6〜7割ということを考えると、日本の負担が重いとは言えない。米国は約2割と低いが京都議定書を批准しておらず、環境対策についての考え方が違う点を考慮すべきだ。

 「財政規律と環境問題を重視する欧州諸国は過去20年間、ガソリン税率を段階的に引き上げてきた。日本のガソリン税の負担率が5割なのに対し欧州は6〜7割ということを考えると、日本の負担が重いとは言えない」のは事実でありますが、この大学教授の論説は実に巧みに税制の一断面をとらえるだけで自説を主張すると言った意味で詭弁に満ちたモノであります。

 日本の5%に比し欧米の消費税の高さ(10〜25%)をまったく無視して、ただ単純にガソリン税の負担率を比較しても税制議論としてはまったく片手落ちであります。

 日本の一般税である消費税に比しガソリン税率が突出している事実を無視しては、このような国際比較してもまったく意味をなさないでしょう。

 日本の自動車に掛かる9つもの税金が日本の税制度全体からいかに突出したモノなのか総合的な国際比較をすれば、日本の自動車ユーザーが過度に税負担してきたことは自明になるはずです。



●この問題はインプットとアウトプットを分けて議論するべきだ

 この問題は朝日社説のように「安倍首相が、大盤振る舞いを求める自民、公明両党の要求に屈した」などと単純化すべきではありません。

 また財政逼迫の折り時代遅れで税金無駄使いの象徴となっている特定財源一般財源化すべしという大儀だけで議論するのは反対です。

 税を誰が負担してきたのかというインプットの問題とどのように使われてきたのかというアウトプットの問題を冷静に分けて議論するべきだと思います。

 需要を無視した愚かな本州四国連絡橋や誰も利用しない高速道路の乱立などアウトプットの問題は大いに議論し徹底的に無駄を省くことは大賛成です。

 道路を増やしても経済効果のない地域にはこれ以上無意味な地域業者を潤すだけのばらまき行政はこれを契機に遮断すべきであると考えます。

 しかしその議論と税を誰が負担してきたのかというインプットの問題を混在させるべきではありません。

 道路特定財源制度は、日本の高度経済成長期の「道路需要」に応えるため、緊急措置として、本則より2倍も高い税率を暫定的に自動車ユーザーに課してきた事実を忘れてはいけません。

 その経緯を無視して道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率は廃止すべきなのです。

 ・・・

 自動車ユーザーの立場から日本のメディアスクラムにあえて反論してみます。

 道路特定財源一般財源化するならばまず暫定税率を廃止するのが筋だと主張いたします。



(木走まさみず)