木走日記

場末の時事評論

赤字自治体は今こそ無駄な県会議員数を削減せよ〜不正に対しなんの役にも立っていない各県議会の無駄を徹底検証する

●国民・県民をなめくさった県議会〜高額な税金を食いつぶしているくせに不正に対しなんの役にも立っていない県議会

 昨日の日本テレビのニュースから・・・

受託収賄の疑い 宮崎県知事を来月、立件へ

 宮崎県談合事件で、都内の設計会社が安藤忠恕知事(65)の指南役だった元国会議員秘書に提供した約1000万円について、警察は安藤知事へのワイロだった疑いが強いとみて、来月、知事を受託収賄容疑で立件する方針を固めた。
 宮崎県の談合事件では、「ヤマト設計」社長・二本木由文容疑者(56)と元国会議員秘書で安藤知事の指南役だった石川鎮雄容疑者(68)らが逮捕されている。

 警察のその後の調べで、安藤知事から依頼を受けた二本木容疑者が石川容疑者に毎月80万円、総額約1000万円を提供していたことがわかった。

 警察は、この1000万円が業務受注の見返りとして知事にあてたワイロだったとの見方を強めていて、来月、安藤知事を受託収賄容疑で立件する方針。
[日テレ]
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http://news.fs.biglobe.ne.jp/social/nv061121-200611210610.html

 「警察は安藤知事へのワイロだった疑いが強いとみて、来月、知事を受託収賄容疑で立件する方針を固めた」そうであります。

 すでに逮捕者も複数出ている受託収賄事件なのでありますが、供述から警察は「業務受注の見返りとして知事にあてたワイロ」であると確信を深めたのでありましょう。

 本件に対し宮崎県議会はなんとも情けない動きを示します。

 朝日新聞記事から・・・

知事への辞職勧告見送り 宮崎県の談合事件で県議会
2006年11月21日00時13分
 宮崎県発注の災害復旧工事設計の入札をめぐる官製談合事件で、安藤忠恕(ただひろ)知事は20日、県議会(42人)の全員協議会に出席し、「談合はまったく知らない」「福島、和歌山と同一視してもらっては困る」などと強い口調で事件への関与を改めて否定した。その後、各会派は知事への辞職勧告について協議したが、与党的立場の最大会派・自民が「捜査が進んでいる現段階では拙速」などと主張し、現段階での勧告は見送られた。

 談合があったとされる県発注工事について、知事は「いわゆる『天の声』は一切出していない」と述べた。進退については「今後とも知事としての職務に務め、県政の発展に全力を傾注したいと考えている」と明言した。

 自民県議団の永友一美会長は辞職勧告を見送った理由について、「知事を擁護しているわけではないが、知事の言い分は『まったく関与していない』。捜査が進んでいる以上、見守るしかない」と説明した。

http://www.asahi.com/politics/update/1121/001.html

 「「談合はまったく知らない」「福島、和歌山と同一視してもらっては困る」などと強い口調で事件への関与を改めて否定した」安藤忠恕(ただひろ)知事なのでありますが「自民県議団の永友一美会長は辞職勧告を見送った理由について、「知事を擁護しているわけではないが、知事の言い分は『まったく関与していない』。捜査が進んでいる以上、見守るしかない」と説明」したのだそうです。

 いやはやなんとも情けない宮崎県議会なのでありますが、それにしてもすでに官製談合事件で逮捕されている福島県知事、和歌山県知事に続くこの宮崎県知事が絡む談合疑惑ですが、47しかない都道府県の知事の中で、こうも談合疑惑が続出するとは、これは異様としか言いようがありません。

 当事者である知事の責任が最も問われるのは当然ですが、まったくあきれてしまうのは各県議会が本来そのつとめである地方行政に関するチェック機能をまったく喪失してしまっている事実であります。

 宮崎県議会の議員構成ですが定員45名(現在欠員3名)のうち自民党県議団が32名を占めています。

宮崎県議会会派別議員一覧
http://www.gikai.pref.miyazaki.jp/hsrc/meibo.html

 宮崎県の場合、県発注の災害復旧工事設計の入札をめぐる官製談合事件なのでありますが、知事がどんなに「福島、和歌山と同一視してもらっては困る」と否定しようが、国民・県民の税金一部業者との工事入札に絡めての高額の不正金という点で、福島、和歌山とまったく同じ腐った構図が浮き彫りなのであります。

 県政が共産党を除くオール与党化してしまい、県議会が知事の不正チェック機能を完全に喪失してしまっている点でも、福島、和歌山のケースとそっくりなのです。

 「自民県議団の永友一美会長は辞職勧告を見送った理由について、「知事を擁護しているわけではないが、知事の言い分は『まったく関与していない』。捜査が進んでいる以上、見守るしかない」と説明」したそうですが、総勢32名の自民党宮崎県会議員の過半数が建築土木関係者である事実を考えると、何人かの自民党県議が実はこの不正に絡んでいるのではないのか、うがってしまうのは私だけではありますまい。

 まったく、県民・国民をなめくさったこの一連の知事の不祥事ですが、財政逼迫している中、高額な税金を食いつぶしているという点で、不正に対しなんの役にも立っていない各県議会もまったく同罪なのであります。

 ・・・

 果たして有権者総数938,061人の宮崎県に45人も県会議員が必要なのでしょうか。

 議員一人あたりの有権者数はわずか20846人にすぎません。

 国は違いますが例えば米国のオハイオ州は日本の北海道と四国を合わせた広さに相当するのでありますが、11,353,140人(2000年国勢調査。全米第7位、全米人口の4.0%)の人口に対し、州議会上院の定員はわずか33名なのです。

 議員一人あたりの有権者数は30万人を越えています(有権者数を1000万と推計しての計算)。

 下院の定員にしてもわずか100名であり、議員一人あたりの有権者数は10万人を越えているのです。

デトロイト日本国総領事館
オハイオ州概況
http://www.detroit.us.emb-japan.go.jp/jp/kankatsu/page3.htm

 国情も違うことはよく承知していますが、宮崎県県会議員定員45名という数はその頭数と税金を消耗するだけの価値が本当にあるのでしょうか。

 本日は各都道府県の県議会の定員数について徹底検証してみます。



●まず各都道府県の絶望的な財政力指数について押さえておく

 まずは各都道府県の財政が如何に逼迫しているのかを公的資料を基に押さえておきましょう。

 ここに「財政力指数」という自治体の財政力を示すひとつの指標があります。

財政力指数

財政力指数(ざいせいりょくしすう)とは地方公共団体の財政力を示す指標として用いられるもので、基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値の、通常は過去3カ年の平均値を指す。

財政力指数が1.0を上回れば地方交付税交付金が支給されない不交付団体となり、下回れば地方交付税交付金が支給される交付団体となる。したがって、地方交付税交付金地方公共団体間の財政力の格差を調整するために支給されるものであることからすると、その性質上必ずしも全ての地方公共団体地方交付税交付金が支給されるわけではないことになる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8A%9B%E6%8C%87%E6%95%B0

 つまり、財政力指数とは財政収入額を財政支出額で除した数値でありますから、1以上ならば黒字、1未満ならば赤字自治体という単純な指標なのであります。

 そして1未満ならば赤字自治体として、地方交付税交付金が支給される交付団体となるのです。


 各都道府県の決算内容は総務省の「平成16年度決算状況(都道府県)」を調べれば「財政力指数」も含めて詳細を押さえることができます。

「平成16年度決算状況(都道府県)」
http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/pdf/1018-15-1_4.pdf

 この資料を基に47都道府県の財政力指数順にまとめてみました。

全国の財政力指数   (平成16年度)

東京都 1.06
愛知県 0.88
神奈川県 0.81
大阪府 0.69
静岡県 0.64
千葉県 0.63
埼玉県 0.63
茨城県 0.53
福岡県 0.52
栃木県 0.49
群馬県 0.49
京都府 0.48
宮城県 0.47
兵庫県 0.47
三重県 0.47
広島県 0.46
滋賀県 0.44
岐阜県 0.43
<全国平均>0.41
岡山県 0.40
長野県 0.40
石川県 0.38
福島県 0.38
香川県 0.37
新潟県 0.36
北海道 0.35
富山県 0.35
山口県 0.34
奈良県 0.33
福井県 0.32
愛媛県 0.32
山梨県 0.32
熊本県 0.31
徳島県 0.29
佐賀県 0.28
山形県 0.28
大分県 0.28
青森県 0.26    
鹿児島県 0.26
岩手県 0.26
和歌山県 0.26
沖縄県 0.26
宮崎県 0.25
秋田県 0.24
長崎県 0.24
鳥取県 0.23
高知県 0.21
島根県 0.20

 驚くべきことに黒字なのは1.06の東京都だけであり、他の46道府県は軒並み赤字なのであります。

 東京都以外はすべて赤字自治体として、地方交付税交付金が支給される交付団体に成り下がっています。

 しかも深刻なのはその数値が年々悪化していることで、たとえば大阪府(0.69)はわずか14年前の平成三年には1.22の黒字団体であったのが年々悪化し平成8年に赤字転落して以来回復できていません。

 ・・・

 全国平均が0.41というのはこれは深刻な数字なのであり、つまり100万円の地方行政サービスを提供するのに自主財源は41万円しか用意できない、単純に言えばそういうことなのです。

 問題の宮崎県はどうでしょう、全国平均を大きく下回る0.25であり下から数えて6番目という、なんと必要な財源の4分の1しか収入がないという有様なのです。



●宮崎県の決算収支と議員費用を徹底検証する〜議員数削減すれば黒字になることを実証してみる

 先ほどまとめた総務省資料「平成16年度決算状況(都道府県)」の46ページ目に宮崎県の平成16年度決算の詳細があります。

 それによれば実質単年度収支-439,500千円、つまり平成16年度の単年度収支だけで、4億4千万近い赤字を垂れ流しているわけです。

 ここで問題の県議会関係の人件費を見てみましょう。

 「特別職等」の欄で知事以下の月収が載っていますので、見やすいように表にしてみました。

職種 人数 給料月額(百円)
知事 11,790
副知事 9,880
出納長 8,930
教育長 7,790
議会議長 9,880
議会副議長 8,930
議会議員 43 7,790

 議会議員の月給は77万9千円とありますので単純に期末手当(いわゆるボーナス)が年4ヶ月だとして16倍して年収としますと、1246万4千円という数字になります。

 人数が43人とありますのは欠員2名が発生していたためで本来の定員数45を掛けますと、県会議員45名の人件費(議長、副議長のぞく)だけで5億6088万円の支出があるのです。

 もちろん45名の議員に掛かる費用は人件費だけでなく、議員の活動費や議会運営上の維持費として「議会費」として1,197,768千円、つまり約12億円が別計上されています。

 単純な試算ですが、単年度収支だけで、4億4千万近い赤字を出している宮崎県の財政規模で考えれば、年間人件費と運営費用だけで17億以上も支出されている県議会をスリム化することは、極めて有効な支出削減効果を生むことでしょう。

 例えば、人口1100万のオハイオ州上院並の定員33名に削減したと仮定した場合、人件費、運営費で4億5千万ほどの支出削減が見込まれるのです。

 宮崎県の場合、議会定員を25%削減するだけで単年度収支は黒となります。



●全国の議会定員と財政力指数と議員一人あたり有権者数の相関を徹底的に検証

 宮崎県以外はどうなのでしょう。

 ここに全国都道府県議会議長会という団体があります。

全国都道府県議会議長会
http://www.gichokai.gr.jp/

 そこで公開されている資料「(1) 全国都道県議会議員数一覧表(平成17年7月1日現在)」で47都道府県の議会定員がわかります。

 また総務省のこの資料を見れば最新の都道府県別有権者数が出ています。

(2) 都道府県別有権者数、 投票者数、 投票率 (選挙区)
http://www.soumu.go.jp/news/pdf/040711_2-2.pdf

 この二つの資料を基にすれば、各県会議員一人あたりの有権者数が算出でき、その数により地方議会が如何に無駄な人数を抱えているのか浮き彫りになるはずです。

 以下の表は、上記の資料に基づき私が作成したものであり、各県会議員一人あたりの有権者数の少ない順に並べてみました。

 参考までに各都道府県の財政力指数及びその順位も併記してみました。

順位 都道府県 有権者 議員定数 議員一人あたり有権者 財政力指数(順位)
47 鳥取県 492,436 38 12959 0.23(45位)
46 島根県 607,970 39 15589 0.20(47位)
45 徳島県 669,529 42 15941 0.29(33位)
44 高知県 660,771 41 16116 0.21(46位)
43 福井県 655,864 40 16396 0.32(29位)
42 山梨県 703,801 42 16757 0.32(29位)
41 佐賀県 689,736 41 16823 0.28(34位)
40 香川県 833,534 45 18523 0.37(23位)
39 和歌山県 865,857 46 18822 0.26(37位)
38 秋田県 964,115 48 20085 0.24(43位)
37 富山県 911,534 45 20256 0.35(25位)
36 石川県 944,744 46 20538 0.38(21位)
35 宮崎県 938,061 45 20846 0.25(42位)
34 沖縄県 1,011,473 48 21072 0.26(37位)
33 山形県 987,236 46 21461 0.28(34位)
32 大分県 992,284 46 21571 0.28(34位)
31 岩手県 1,133,766 51 22231 0.26(37位)
30 滋賀県 1,063,922 47 22636 0.44(17位)
29 山口県 1,233,005 53 23264 0,34(27位)
28 青森県 1,193,593 51 23404 0.26(37位)
27 長崎県 1,200,535 51 23540 0.24(43位)
26 奈良県 1,157,535 48 24115 0.33(28位)
25 愛媛県 1,211,821 50 24236 0.32(29位)
24 鹿児島県 1,416,460 54 26231 0.26(37位)
23 熊本県 1,488,507 55 27063 0.31(32位)
22 岡山県 1,572,292 56 28076 0.40(19位)
21 福島県 1,674,771 58 28875 0.38(21位)
20 群馬県 1,620,993 56 28946 0.49(10位)
19 三重県 1,487,995 51 29176 0.47(13位)
18 栃木県 1,605,279 54 29727 0.49(10位)
17 宮城県 1,889,603 63 29994 0,47(13位)
16 長野県 1,768,528 58 30492 0.40(19位)
15 新潟県 1,985,756 61 32553 0.36(24位)
14 広島県 2,309,183 70 32988 0.46(16位)
13 京都府 2,093,483 62 33766 0.48(12位)
12 岐阜県 1,683,897 49 34365 0.43(18位)
−− <全国> 102,507,526 2,874 35667 0.41
11 茨城県 2,392,018 65 36800 0.53( 8位)
10 静岡県 3,032,502 78 38878 0.64( 5位)
09 北海道 4,639,372 110 42176 0.35(25位)
08 福岡県 4,021,039 88 45693 0.52( 9位)
07 兵庫県 4,474,058 93 48108 0.47(13位)
06 千葉県 4,869,418 98 49688 0.63( 6位)
05 愛知県 5,604,099 106 52869 0.88( 2位)
04 埼玉県 5,621,456 94 59802 0.63( 6位)
03 大阪府 7,012,129 112 62608 0.69( 4位)
02 神奈川県 7,008,142 107 65497 0.81( 3位)
01 東京都 10,113,424 127 79633 1.06( 1位)

 どうでしょう、一票の格差たるや参議院衆議院どころの騒ぎではないことが人目でご理解いただけるでしょう。

 東京都の79633人に対し、鳥取県では12959人、その差はなんと6.14倍にも達しているのです。

 さらにこの表から読みとれるはっきりとしている点は、財政力指数の悪化している県ほど、県会議員一人当たりの有権者数が少ない、つまり県会議員を有権者数に比し無駄に有している県ほど財政事情も悪化している、両者に強力な相関関係があることです。

 ・・・


●赤字自治体は今こそ無駄な県会議員数を削減せよ

 東京都以外はすべて赤字自治体として、地方交付税交付金が支給される交付団体に成り下がっています。

 にもかかわらず、官製談合による国民・県民の貴重な税金を財源にした知事の不正は相次ぎ、各県議会はその高給にはまったく価しない無能さをさらけだしています。

 赤字自治体は今こそ無駄な県会議員数を削減し、少しでも財政健全化を計るべきです。

 この狭い島国に、2874名もの膨大な地方議員などはいらないのです。



(木走まさみず)