木走日記

場末の時事評論

久しぶりにプロの政治家同士の舌戦が期待できる〜世論を背景にした巧みな小沢戦略

靖国神社へのA級戦犯合祀は「間違いだ」〜「小泉さんのはだめだ」と首相参拝批判

 いや驚きました、「剛腕」が売りの小沢新代表がいきなりの「クセ球」、靖国A級戦犯合祀批判を繰り出してきました。

 朝日新聞から・・・

小沢氏、「靖国に戦争指導者をまつるべきでない」と発言

 民主党小沢一郎代表は9日、NHKの番組に出演し、首相の靖国神社参拝自体については「賛成だ」とする一方で、「小泉さんの(やり方)はだめだ。戦争を指導した人たちは靖国に本来祀(まつ)られるべきではない。戦争で亡くなった御霊を祀る本来の靖国神社に帰すべきだ」と述べた。しかし、具体的にどうすべきかについては、番組後記者団に「政権を取ったらすぐやる、そのとき教える」と明言しなかった。

 小沢氏は、靖国神社参拝について「天皇陛下にも行っていただきたい」とした。そのうえで戦争指導者が祀られていることについては「(極東軍事裁判での)A級戦犯という言葉は認めない。勝った国が勝手に裁判したからだ。しかし、日本国民に対して戦争を指導した大きな責任がある」とした。

2006年04月10日12時05分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0410/002.html

 毎日新聞から・・・ 

小沢・民主代表:A級戦犯、「靖国に祭られる資格ない」と明言−−毎日新聞と会見

 民主党小沢一郎代表は10日、代表就任を受け党本部で毎日新聞のインタビューに応じ、靖国神社へのA級戦犯合祀(ごうし)について「そもそもあそこに祭られるべき筋合いではなかった。間違いだった」と改めて批判した。A級戦犯については「日本人に対し、捕虜になるなら死ねと言ったのに、自分たちは生きて捕虜になった。筋道が通らない。戦死者でもなく、靖国神社に祭られる資格がない」との認識を明らかにした。(3面にクローズアップ、2面に関連記事、5面に一問一答)

 小沢氏はA級戦犯分祀論については「分祀は合祀を前提にしている言葉だ」と否定的な考えを示した上で、合祀問題の解決策として「事実上(合祀状態を)なくせばいい。(靖国神社戦没者を記帳した)名札みたいなものがある。それがなくなればいい」と指摘した。

 同神社には、合祀されている戦没者らの氏名を記した「霊璽(れいじ)簿」が安置されており、ここからA級戦犯の氏名を削除する考えを示したとみられる。

(後略)

毎日新聞 2006年4月11日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/archive/news/2006/04/11/20060411ddm001010053000c.html

 読売新聞から・・・

小沢代表、首相の靖国参拝を批判…A級戦犯合祀に問題

 民主党の小沢代表は9日のNHKの報道番組で、小泉首相靖国神社参拝問題について「小泉氏の(参拝で)は駄目だ」と批判した。

 その理由として、「俗にA級戦犯と言われる人たちは戦争で死んだわけではない。日本の国民に対し戦争を指導した大きな責任があり、本来靖国神社に祭られるべきではない」とA級戦犯の合祀(ごうし)に問題があることを挙げ、「戦争で亡くなった人たちの御霊(みたま)を守る本来の靖国神社の姿にかえり、天皇も首相もちゃんと参拝すればいい」と述べた。

 来年の参院選に関しては、「参院選で与党側の議席過半数割れを何としても実現する。そうすれば、与党は片側(だけの過半数)になる。『ポスト小泉』がだれでも大して変わらない。我々がしっかりすれば、国民は支持してくれる」と語った。

(2006年4月10日11時0分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060410i202.htm

 うーん、さっそくメディアは大騒ぎしていますが、まさかいきなり本陣である「靖国問題」で「くせ球」を投げてくるとは予想もしませんでした。

 小沢氏の今回の一連の発言は、国民的人気を維持している小泉首相の唯一の政策的弱点とも言える冷え切った対東アジア外交政策を、しかもその核心とも言える首相の靖国参拝問題を鋭く突いてきたわけです。

 しかし、他の親中派政治家と違い小沢氏の巧みなところは、中国や韓国の批判には一切ふれずに、日本の「国内問題」として議論を吹っ掛けてきているところです。

 また、「戦争で亡くなった人たちの御霊(みたま)を守る本来の靖国神社の姿にかえり、天皇も首相もちゃんと参拝すればいい」という言い回しで、靖国神社参拝行為自体を否定しない言い方に終始しているわけです。

 このあたりの発言は、実に巧みに世論を計算していて小沢氏らしいのですが、外国の言いなりで反対するのではないと印象づけをしているようにも見えます。

 もちろん小沢氏のA級戦犯分祀発言の内容には、いったい全体、政治が一宗教法人に介入できるのか、あるいは介入してよいのか、といったかなりきわどい内容が含まれており、さっそく自民党や保守派論客から反論されております。

 ・・・

 前々回のエントリーで当ブログとしては指摘させていただいたことですが、小沢氏の岸元総理をはじめとする戦争責任者への批判は、実は彼の若い頃からの政治信条でありました。

(前略)

 しかしその奥そこに、現自民党中枢部である旧福田派から現森派に至る保守本流勢力に対する彼の拭いがたい拒否感情があることを忘れてはなりません。

 彼のこの感情は岸信介首相率いる岸派に対する反発まで遡るのです。

 ここに珍しく彼がこのあたりの赤裸々な感情を吐露しているインタビューがあります。

(前略)

――う〜ん。岸さんが「戦犯」だったからですか。

「『戦犯』ということばは、連合国軍が作ったものだから、それはともかくとして、敗戦ということ、300万同胞の死という結果をもたらした責任者の一人という事実は消えないわけです。あの誤った政治によって国民の血が流れ、明治以来の財産を失ったと、私は思います。その人がまた次の時代を指導するという生きざまは、わたしの生き方とは相容れない」

――終戦と共に政界からおさらばすべきだったと…‥。

「ええ、頭をまるめて山のなかで英霊を弔(とむら)っているべきだったと思う」

――そうですか。これは全く予期せざることばでした。

「たとえどんなに優秀であろうが、どんなに有能であろうが、あの生き方は賛成できない。岸先生だけのことではないが、あの人は当時商工大臣だった。単なる一官吏とはちがう。後生畏(おそ)るべし、人材はいくらでもいるんです」

――そこまで過去をさかのぼって人間を見るんですか。

「だって、ささいなことじゃないでしょう。300万人の命が散ったんですよ。その重荷というのは、非常に大きい。岸さんの能力をいってるんじゃないんです、政治家としての生きざまをいってるんですよ」

――しかし、岸さんが手掛けた安保条約というのは、大変なことだった。あれが、今日の日本の繁栄を構築したと思います。

「それはべつに岸さんだけがやったわけではない。多くの人たちの力なんです」

小沢さんにお会いしたのは、これが最初で、その後はありません。あとで同席していた秘書が、「先生がこういう話をするのは初めてです」と、語っていました。

(後略)

正論編集部ブログ
政治家の生きざま より抜粋引用
http://seiron.air-nifty.com/seiron/2006/04/post_350b.html

 ・・・

 現在、小沢氏はこの戦後保守政治中枢に対する激しい反感・批判を口にすることは封印しているようです。

 しかし彼のたどった政治家としての歩みをただ「二大政党制の実現」という手段の実現だけで解釈するのは本質的ではないと私は考えます。

 (後略)

■[政治]燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや〜小沢一郎氏の隠された政治信条 より抜粋
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060408

 考えてみれば、このインタビューで小沢氏が批判している岸元首相の率いる岸派が、その後福田派、安倍派、現森派と繋がるわけでして、かつ岸元首相のお孫さんが安倍官房長官であることを考えると、小沢氏の仕掛けた小泉・安倍氏へのこの靖国論争には、旧田中派VS旧福田派の角幅戦争を彷彿とさせる因縁めいたモノを感じてしまいます。

 とはいえ、「現在、小沢氏はこの戦後保守政治中枢に対する激しい反感・批判を口にすることは封印している」と、この8日の時点では分析していた不肖・木走なのですが、いや、いきなり小沢氏がこの「封印」を解いてくるとは、お見それしました。

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●中国が参拝をいけないと言ってるからなのか、戦没者に哀悼の念を表するのがいけないのかよくわからない〜小泉首相

 で、さっそく安倍官房長官小泉首相がこの小沢発言に敏感に反応しています。

首相「政府言うべきでない」…安倍氏「戦犯」分祀論を否定

民主党小沢一郎新代表が靖国神社の見解に反して勝手に「A級戦犯分祀を求めたうえ、「簡単にできる」などと発言したことについて小泉純一郎首相は10日、「政府が言うべきことではない」と述べた。

安倍晋三官房長官も会見で「政府が合祀(ごうし)取り消しを申し入れるのは憲法20条の信教の自由の侵害となり、政教分離の原則に反するのではないか。靖国神社が決定すべきで、政府が介入すべき事柄ではない」と、分祀論を明確に否定した。

小沢氏が首相の靖国神社参拝を批判したことに対し、首相は「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか、戦没者に哀悼の念を表するのがいけないのかよくわからない」と首をかしげた。

2006年04月11日 更新
http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200604/sha2006041107.html

 うーん、このあたりの反論は興味深いのですね。

 まず、安倍氏の「政府が合祀(ごうし)取り消しを申し入れるのは憲法20条の信教の自由の侵害となり、政教分離の原則に反するのではないか。靖国神社が決定すべきで、政府が介入すべき事柄ではない」は、これは正論でありましょう。

 明らかに小沢氏の発言は一部暴走気味であります。

 で、小泉首相ですが、「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか、戦没者に哀悼の念を表するのがいけないのかよくわからない」とは、うまい切り返しであります。

 小沢氏の外国に批判されているからではなく国内問題として首相の靖国神社参拝を批判しているんだという一連の発言の印象操作を、おそらく本能的に察知して「中国が参拝をいけないと言ってるからなのか」とまず投げかけることで、首相は小沢戦法の術中に乗らないように「印象操作返し」をしているようにも見えます。

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●案の定、早速反応する中国・韓国メディア

 この小沢発言ですが、予想通りと言いますかすぐに中国や韓国のメディアが関心を寄せました。

 北海道新聞から・・・

中韓メディアが高い関心 小沢代表靖国発言  2006/04/11 08:46

 中国や韓国のメディアは、民主党小沢一郎代表が靖国神社A級戦犯合祀(ごうし)を問題視し、小泉純一郎首相の参拝を批判したことを相次いで報道し、関心の高さをうかがわせた。

 北京の大衆紙・環球時報は十日、靖国問題に関する小沢氏の考えについて「小泉(首相)や安倍(晋三官房長官)とは違う」と指摘。「民主党が政権を握ったら、A級戦犯が合祀されている靖国神社の現状改変にすぐに着手すると小沢氏は述べた」と伝えた。

 ただ、小沢氏の政治的立場について同紙は「麻生太郎外相や安倍官房長官と本質的な違いはないタカ派の領袖」と紹介。「短期間で自公連立政権の優位を変えるのは容易ではなく、民主党の政権奪取の難易度は大きい」とも報じた。国営新華社通信は九日、「小沢氏は、靖国神社の現状改変に着手すると述べたが、具体的なやり方は明かさなかった」と伝えた。

 一方、韓国の通信社・聯合ニュースやニュース専門チャンネルのYTNもNHK番組での小沢氏の発言を取り上げ、「小泉首相靖国神社参拝を強く批判した」と伝えた。報道は特に「戦争を主導した大きな責任がある人たちは、靖国に本来、合祀されるべきではない」との発言を強調した。

(北京・志村治、ソウル・近藤浩)

北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060411&j=0026&k=200604118869

 朝鮮日報でも早速記事になりました。

小沢民主代表、小泉首相靖国参拝を批判

 日本の民主党小沢一郎(63)新代表が9日のNHK番組で、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を批判しながら、「靖国神社からA級戦犯分祀しなければならない」と述べた。

 「分祀」というのは、これまで1か所で供養されてきた英霊を分離して外に出すことを意味している。

 小沢新代表は「(靖国神社は)神社の形を取っているが、元々は戦没者の慰霊のために建てられたもの」としながら、「戦争で亡くなった人のみ霊を祭る本来の姿に戻して、天皇も首相も堂々と行ける靖国神社にすればいい」と話した。

 また、「どうやって分祀するのか」という記者らの質問に、「(私が)政権を取ったらすぐやる」とだけ答えた。

 A級戦犯とは、1945年の敗戦後に連合国によって規定された戦争最高責任者らで、1978年に14人が靖国神社に合祀された。

 これを機に中国が首相の参拝を本格的に問題視し始めたほか、日本国内でも「戦後に断罪された政治的責任者たちが戦地で死んだ戦没者を慰霊する靖国神社に合祀されているのは問題」という世論をあおった。

2006/04/10 08:08 朝鮮日報
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/10/20060410000009.html

 中国国営新華社通信も高い関心を持ったようです。

中国新華社が小沢発言を報道・靖国参拝問題

 【北京9日共同】中国国営新華社通信は9日、民主党小沢一郎代表が同日、靖国神社からのA級戦犯分祀を求める発言をしたことを伝えた。

 新華社は日本の報道を引用し、A級戦犯靖国神社に本来祭られるべきではないなどと小沢代表が述べたと報道。また、小泉純一郎首相が就任以来、靖国神社を5回参拝し「アジア諸国から憤激と抗議の声が上がった」と指摘した。 (01:10)

日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060409STXKA021709042006.html

 小沢氏の思惑がどうであれ、この手の靖国参拝批判発言は、結局は海外メディアに取り上げられてしまう訳で、参拝支持派からは、小泉発言のように「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか」と批判を受けることになりそうです。

 この発言をめぐっては、さっそくネット上でも主として保守派の論客達が批判を展開しているようであります。

 当ブログとしては、小沢発言の主旨の是非の議論は、他の真面目なブログにとりあえずお譲りするとして、この発言をした小沢氏の狙いについて少し客観的に考えてみたいと思います。



●久しぶりにプロの政治家同士の舌戦が期待できる〜世論を背景にした巧みな小沢戦略

 産経新聞に掲載された昨日(10日)のフジサンケイ系FNN世論調査結果から・・・

小沢民主に期待」44% FNN世論調査

 民主党小沢一郎代表誕生を受け、産経新聞社はFNN(フジニュースネットワーク)と合同で8、9の両日、世論調査を実施した。二大政党による政権交代を訴える小沢氏だが、民主党政権担当能力に「期待する」との回答は43.8%となり、「期待できない」の38.4%を上回った。ただ、「堀江メール」問題の決着については58.3%が「納得していない」と指摘しており、党再建の道は険しそうだ。また、「ポスト小泉」候補としては安倍晋三官房長官への支持が47.0%に達し、福田康夫官房長官麻生太郎外相らを大きく引き離した。

 小沢氏に期待することとしては「民主党内の結束強化」(29.0%)が「政府・与党との論戦」(24.0%)、「政府・与党の疑惑追及」(18.4%)を上回り、党内の態勢固めが急務となりそう。また、内閣支持率は48.8%で、内閣改造直後に実施した昨年11月の前回調査に比べて8.1ポイント下がったが、政党支持率では自民党の42.1%(前回43.6%)に対して、民主党は17.4%(同18.1%)にとどまり、「堀江メール」問題のマイナスイメージから立ち直っていないことをうかがわせた。

 一方、「ポスト小泉」候補としては、安倍氏への支持が福田氏18.3%、麻生氏5.6%、谷垣禎一財務相3.3%を大きく引き離し、高い人気が続いていることを示した。ただ、小沢氏の代表就任で、9月の自民党総裁選に「影響がある」と回答したのは54.3%に上っており、後半国会での民主党の動向が注目されそうだ。

 また、自民党総裁選の最大の争点としては26.7%が「年金などの社会保障」を挙げ、「外交・安全保障」が20.5%で続いた。次期首相の靖国神社参拝については「参拝すべきではない」(43.6%)が「参拝すべきだ」(38.0%)を上回ったが、自民党支持者では「参拝すべきだ」との意見が50.1%に達した。

(04/10 11:49) 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/060410/sei027.htm

 「民主党政権担当能力に「期待する」との回答は43.8%」にのぼったことも国民の小沢民主党に対する期待感をあらわしているのでしょうが、より注目したいのは、現内閣支持率とポスト小泉候補者としての安倍氏の支持率の高さであります。

 少し前回調査より下がったとはいえ内閣支持率は48.8%であり、政党支持率では自民党の42.1%(前回43.6%)に対して、民主党は17.4%(同18.1%)にとどまったままであります。

 また、ポスト小泉候補者としては、依然として安倍晋三官房長官への支持が47.0%に達し群を抜いているわけであります。

 小沢氏としては依然として国民からの高い支持率を誇る小泉政権は難攻不落な強敵であることには変わらないのであります。

 ここで、国民的人気を維持している小泉首相の唯一の政策的弱点とも言えるのが、冷え切った対東アジア外交政策なわけであります。

 この調査でも、「次期首相の靖国神社参拝については「参拝すべきではない」(43.6%)が「参拝すべきだ」(38.0%)を上回った」わけでありまして、次期首相候補筆頭の安倍氏靖国参拝支持派であることを考えた上で、小沢氏は今回の発言をしたのでありましょう。

 つまり、小沢氏の今回の一連の発言は、国民的人気を維持している小泉首相の唯一の政策的弱点とも言える冷え切った対東アジア外交政策を、しかもその核心とも言える首相の靖国参拝問題を鋭く突いてきたわけです。

 この議論であるならば、政党支持率における自民党42%VS民主党17%の民主党にとり不利な土俵ではなく、「参拝すべきではない」(43%)VS「参拝すべきだ」(38%)という有利な土俵で戦える、つまり多くの国民の支持が期待できるとふんでいるのではないでしょうか。

 だとすればこれはとても巧みな戦略だと言えそうです。

 ・・・

 この論戦で小沢氏が警戒しているのは、国民にくすぶる最近の嫌中感情・嫌韓感情を逆撫ですることでしょう。

 中国・韓国の言いなりになっている印象は是が非でも避けなければならないことを小沢氏は良く承知しているからこそ、終始国内問題として取り上げているのであり、まさに小泉首相もそこに気付いているからこそ「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか」と印象づけしているのでしょう。

 ・・・

 おや、小沢氏のしたたかさを示す速報記事がさっそく入ってきました。

 今日(11日)の朝日新聞電子版速報記事から・・・

対中外交を主体的に 小沢・民主代表が小泉外交を批判

 民主党の小沢代表は10日、日本の外交政策をめぐり、中国と米国について「覇権主義的なところがあり、似たようなものだ」と指摘したうえで、「米国だけでは(中国問題への対処を)やりきれない。日本がしっかりしないといけない」と語った。中国との首脳会談が途絶えている小泉政権の外交姿勢を批判し、対中外交を主体的に進める必要があるとの認識を示したものだ。朝日新聞のインタビューに答えた。

 小沢氏は「中国の数千年の歴史は、漢民族の膨張の歴史だ。米国も覇権主義的なところがある。日本が(日米中の)三角関係をうまくやらないといけない」とも述べた。発言には、対話を通じて日米中3カ国の枠組みに中国を取り込み、中国の影響力拡大に歯止めをかける狙いがありそうだ。

 一方、前原誠司前代表が唱えた「中国脅威論」について、小沢氏は10日の新聞各社などの共同インタビューで「脅威だと政治家が口にした以上、脅威を取り除かないといけない。だから政府も小泉首相も言っていない」と述べ、適切ではないとの考えを示した。

2006年04月11日10時05分
http://www.asahi.com/politics/update/0411/004.html

 さっそく「中国の数千年の歴史は、漢民族の膨張の歴史だ。」とし、オレは媚中派じゃないぞと、間接的に小泉氏の「(小沢氏の主張は)中国が参拝をいけないと言ってるからなのか」発言の印象操作を潰しにきたようです。

 ・・・

 おもしろい。

 久しぶりにプロの政治家同士の舌戦が期待できる気がいたします。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや〜小沢一郎氏の隠された政治信条
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060408