木走日記

場末の時事評論

新聞休刊日の七不思議〜北朝鮮も真っ青なスバラシイ言論統率!

 本日は日本の新聞の全国一斉休刊日であります。



●全国いっせいに仲良く報道の自由を放棄する「新聞休刊日」の不思議

 新聞がもし「社会の公器」を自認するならば、この全国一斉休刊日を私たち国民はどう考えたらいいのでしょう。

 現在、年に10日あるこの新聞休刊日では、発行部数1000万部を誇る全国紙から数万部の地方紙まで一律になかよく休刊してしまいます。

 この新聞休刊日、皮肉なことに、別に新聞が一斉に休刊してもテレビもあるしネットメディアもあるし全然国民生活に差し障りがないことが証明されており、実はいかに新聞がすでに「社会の公器」ではなく国民にとり必要性が薄まっているなによりの証左にもなってはいるのであります(苦笑)。

 しかし、全国のTVが一斉に放映休止日を設けたり、公的交通機関例えば航空各社が一斉に飛行休憩日(?)を設けることなどは、聞いたことがありません。

 ・・・

 この新聞休刊日ですが、調べると不思議なことだらけなのです。



●新聞休刊日の七不思議〜全ては「偶然」の産物です by 日本新聞協会

【不思議1】その年の新聞休刊日は誰が決めるの?

 答えは「誰」も決めていません。

 業界団体の日本新聞協会によると、「休刊日は、各社の自主性に任されており、新聞協会が、ガイドラインを設定したり、指導したことはない」のであります。

日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/index.htm

 つまり誰かが音頭をとって強制的に決定しているのではなく、あくまでも新聞各社が「自主的」に「独自判断」で決定しているのだそうです。

 不思議なこともあるモノです。

【不思議2】どうして全国紙も地方紙も新聞休刊日が同じ日なの?

 ここに朝日新聞販売社の新聞休刊日のサイトを見てみましょう。

  新聞休刊日

下記の日は朝刊がお休みになります。
2006年新聞休刊日
1月2日(月) 元旦の翌日 記事
2月13日(月) 第2月曜日
4月10日(月) 第2月曜日
5月6日(土) 第1土曜日・子供の日の翌日
7月10日(月) 第2月曜日
8月14日(月) 第2月曜日
9月11日(月) 第2月曜日
10月10日(火) 第2火曜日・体育の日の翌日
11月13日(月) 第2月曜日
12月11日(月) 第2月曜日

国政選挙・その他の事態により、日程が変更になる場合があります。
http://www.ync-net.co.jp/?%5B%5B%BF%B7%CA%B9%B5%D9%B4%A9%C6%FC%5D%5D

 次に秋田の地方紙のサイトから

平成18年 新聞休刊日

休刊日
1月 2日(月)付朝刊
2月13日(月)付朝刊
3月13日(月)付朝刊
4月10日(月)付朝刊
5月 6日(土)付朝刊
6月12日(月)付朝刊
7月10日(月)付朝刊
8月14日(月)付朝刊
9月11日(月)付朝刊
10月10日(火)付朝刊
11月13日(月)付朝刊
12月11日(月)付朝刊

※ 選挙など緊急の場合は発行することがあります。
http://www.sakigake.jp/saki/kyukanbi/kyukanbi.jsp

 備考の補足説明まで似ていますが・・・

 発行部数800万部の全国紙である朝日新聞も数万部であろう秋田魁新聞も「偶然」にも同じ休刊日でありますね。

 すごい「偶然」なのであります。

【不思議3】休刊日に駅の売店でスポーツ紙などは売っているのは何故?

 これも「偶然」です。

 あれは特別版といって、駅売りだけを目的としたモノで宅配はされない版です。

 スポーツ紙の特権でありますが、これも各社独自の判断で「偶然」にも各スポーツ紙が「独自判断」した結果です。

【不思議4】休刊日を勝手に増やしても、月決め定期購読者の価格に反映されないのは問題ないの?

 問題ありません。

 普通一般的に考えれば、休刊日が増えたら月に届ける商品(新聞)数は当然減るわけですから価格に反映されそうですがそうはなりません。

 まあそんなこといったら、コストの差を正しく価格に反映などそもそもできていたら、スタンド売り(店頭販売)の新聞はもっと安くできるはずです。ところが日本の新聞価格は配達料込みの宅配の方が安くなっています。

 なぜなら、独禁法特例と再販制度により法律で守られているからです。

 ですからいくら休刊日が増えても新聞の契約料は安くなりません。

 不思議な商品もあるものですね。

【不思議5】海外の新聞にも休刊日はあるの?

 世界の一般紙で新聞の「休刊日」というのは聞いたことがありません。

 もっとも専門誌ならば、例えば米国のウォール・ストリート・ジャーナルや英国のフィナンシャル・タイムズなどの経済専門紙は、土曜と日曜を休刊日にしている例はあります。

 どうやら日本の休刊日は日本独特の宅配の購読者がほとんどという特殊事情によるものなのであります。

 つまり販売店の休暇を取りやすくするための制度なのであります。

 いずれにしても国中の新聞が特定の日に休んじゃうなんて北朝鮮も真っ青な言論統制が実現されているのは、我が日本国のみであります。

 しかも「自主的」に「偶然」にであります。

 素晴らしいじゃないですか(苦笑

【不思議6】抜け駆けして休刊日に発行した新聞はないの?

 かつて一度だけ産経新聞が反乱を起こしました。

 休刊日を廻る事件

2002年は2月から4月にかけて新聞休刊日を廻る事件があった。

産経新聞は、2002年3月で首都圏向けの夕刊を休刊にする事を前年(2001年)夏に発表したが、それをPRする事を狙って2002年2月12日付け(この年は2月11日=建国記念の日が月曜日だったため翌火曜日にあたる12日の朝刊が休刊だった)にスポーツ紙の方式を採って駅売り専売の特別朝刊を発行する事を決めた。しかし、他紙がそれに疑問を投げかけたのか『ソルトレークシティーオリンピック・冬季オリンピックの報道態勢を取るため』という理由を付けて特別朝刊(通算号数加算なし)を発行し、地域によっては宅配された。

さらに翌3月10日の休刊日の翌日である11日も産経は駅売り専売の朝刊を発行したものの、他紙は通常と同じ通算号数に加算する朝刊を発行した(折りしもこの日は鈴木宗男議員の参考人質疑が開催された日でもあった。)。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E8%81%9E%E4%BC%91%E5%88%8A%E6%97%A5

 このときの「偶然」にも各紙が休刊日返上した、特別朝刊(通算号数加算なし)を発行を強行した経費ですが読売だけでも7億円の経費が掛かったといいます。

 すごいですね、「休刊日」の輪を乱すモノは徹底的に許さないということであります。
 まあ新聞協会によれば、『ソルトレークシティーオリンピック・冬季オリンピックの報道態勢を取るため』の、これも単なる「偶然」だそうですが(苦笑



【不思議7】胡散臭い「偶然」だらけの新聞休刊日って、いったいなんなのさ?

 全ての種明かしをしましょう。

 日本の新聞、特に一般紙はどの新聞社も一斉に休刊日をとるわけですが、ある新聞社が抜け駆けして発行するなんて話があると一斉に休刊日が無くなります。

 公正取引委員会カルテルの疑いがあるとクレームをつけたこともあるわけで、新聞協会、各新聞社、いずれも「独自の判断」「偶然」という建前があるわけです。

 これは日本の新聞特有の現象です。

 海外の多くの国では新聞は自分から買いに行くものだから、一社が休めば他を買えばいいわけです。

 対して日本は朝刊と夕刊の両方を1つの新聞社が発行、それを定期購読、各顧客まで宅配するのが主流で、新聞販売店にとってはものすごい負担となるのです。

 加えて、新聞販売店の中には、一紙だけでなく経済紙や地方紙など何種類もの新聞を扱うところがあります。

 一斉に休刊日にならない限り、販売店は休みにはならないわけですね。

 そんな労務問題から、あくまでも「偶然」、各社の休刊日が重なっているのであります。


●「偶然」のカラクリはこうだ

 カラクリはこうです。

 日本の最も有力なA新聞社が年の初めに「我が社の休刊日はこの日です」と、年間の休刊日を独断で発表します。

 これを見た他の会社が翌日に「うちの会社の休刊日はこの日です」と、「偶然」にも同じ日程の休刊日を独自に発表します。

 これを末端の地方紙までが繰り返しているうちに、日本全体の新聞業界の事実上「既定の」休刊日がおのずと決定されていくのです。

 確かに談合はありません。表面上、話し合って決めているわけではないのです。

 しかし、議論こそないが、ここには胡散臭い「おきて」が厳然として存在しています。

 ・・・

 公正取引委員会の公式見解が今でも「新聞休刊日」に対してカルテルの疑いがあると違法性の極めて高い「灰色」としているのも、うなずけるではありませんか。

 これでは問題になっている全国一律の購読料金と同じです。

 部数が1000万部の新聞も、2万部の新聞も同じ値段。

 20部を定期購読しようが、1部だけ定期購読しようが、1部あたりの値段は同じ。

「たくさん買うから値引きしてよ」が通じない。

 長く何十年と同じ新聞を取り続けても、これまた値引きはない。

 むしろ、3カ月ごとに契約すると、契約ごとに洗剤や映画の券がもらえたりする。

 ・・・

 公然の秘密のように、独禁法特例と再販制度に守られて、休刊日を設定し、値段を勝手に決めている、まったく競争力のない胡散臭い新聞業界。

 読者のみなさん、「新聞休刊日」、実は、日本のマスメディアが絶対に報道しない、国民に伝えない・触れないタブー中のタブーという意味では、新聞販売で実戦されている違法詐欺商法と、根は同根なのであります。

 ・・・

 読者のみなさん、北朝鮮も真っ青なスバラシイ言論統率ではありませんか?



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●これはメディア談合だ!!〜正論振りかざすなら財務諸表公開してみろ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060316
●読売社説の欺瞞〜タブー中のタブーを抱えながら詐欺師が何をほざいているのだ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060221