木走日記

場末の時事評論

徹底検証!小泉首相靖国参拝速報〜マスメディアは自己主張しすぎ

 TVおよび各新聞ネット配信によれば、小泉首相は本日午前10時、東京・九段の靖国神社を参拝を決定したそうです。



●各紙速報〜小泉首相本日午前に靖国神社参拝

 各紙とも速報で伝えております。

朝日新聞

小泉首相、17日午前に靖国神社を参拝へ

 小泉首相は17日午前、東京・九段の靖国神社を参拝する。首相としての参拝は5年連続5回目。首相の靖国参拝を巡っては、A級戦犯がまつられていることや、憲法政教分離原則の観点から内外に批判が根強い。特に太平洋戦争終戦60年の今年は、中国、韓国両首脳が強い懸念を繰り返し表明。国内では野党はもとより、連立を組む公明党からも参拝自粛を求められた経緯があり、批判が強まるのは必至だ。

2005年10月17日08時26分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/1017/005.html

読売新聞:

小泉首相、きょう午前靖国参拝
 小泉首相は17日午前、東京・九段の靖国神社を参拝する。

 同日から始まる靖国神社秋季例大祭に合わせての参拝とみられる。

 小泉首相靖国参拝は2004年1月1日以来で、2001年4月の首相就任以降、5回目。

 首相の靖国参拝については、A級戦犯が合祀(ごうし)されていることを理由に、中国や韓国が参拝中止を求めていた。

(2005年10月17日9時3分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051017it02.htm

毎日新聞

小泉首相:今日午前、靖国神社に参拝へ 
 小泉純一郎首相は17日午前、東京・九段北の靖国神社に参拝する。首相参拝は04年1月1日以来で、通算5回目。首相参拝には中国、韓国など近隣諸国が強く反発しているため対応が注目されたが、「年1回参拝」の公約を優先した。首相は同神社の秋季例大祭期間であることを参拝理由として説明するとみられるが、中韓両国が反発を強めることは必至だ。

 同神社では17日から21日まで秋季例大祭が行われる。

 首相は01年4月、自民党総裁選の公約として終戦記念日の8月15日の参拝を掲げ、同年は8月13日に実行した。02年は春季例大祭の初日の4月21日、03年は1月14日、04年は元日に参拝したが、今年は中国で「反日デモ」が発生したことや日韓関係が冷え込んだ事情もあり、参拝を先延ばししていた。

毎日新聞 2005年10月17日 8時29分 (最終更新時間 10月17日 9時02分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051017k0000e010003000c.html

産経新聞

小泉首相靖国参拝へ きょう午前、就任以来5回目

 小泉純一郎首相は17日午前、東京・九段下の靖国神社を参拝する。首相周辺が明らかにしたもので、2001年4月の首相就任以降、5回目。中国と韓国は靖国神社A級戦犯が合祀(ごうし)されていることを理由に、参拝中止を強く求めていた。

 首相は、就任以来「過去の戦没者を追悼する自然の気持ちと、二度と戦争を起こしてはいけないという不戦の誓い」との理由で、毎年1回の靖国参拝を続けてきた。

 中韓両国の中止要求に対しては「どのような追悼の仕方がいいかは他の国が干渉すべきではない」と不快感を表明。今年の参拝については「いつ行くか、適切に判断する」としていた。(共同)

(10/17 08:03) 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/051017/sei022.htm

日経新聞

首相、靖国神社を参拝へ・就任以来5回目
 小泉純一郎首相は17日午前、東京・九段北の靖国神社を参拝する。就任以来5回目で、毎年参拝するとの公約を堅持した。首相は今年が戦後60年にあたることを考慮して参拝時期を昨年の元日から先送りしてきた。ただ中国や韓国が強く反発するのは必至で、今後の外交日程などへの影響は避けられない。

 首相は午前10時過ぎに靖国に到着。首相秘書官を伴い、公用車を使用する見通しだ。

 首相がこの時期の参拝を選んだのは9月の衆院選で大勝し、政権の最重要課題である郵政民営化法が14日に成立したことを踏まえた判断とみられる。17日は靖国神社の秋季例大祭(17―20日)。11月中旬には韓国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)、12月初旬にはマレーシアで東南アジア諸国連合ASEAN)首脳会合と第1回東アジアサミットが予定され、当面の外交日程のすきまを探った要素も強い。

(09:23)  日本経済新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051017AT1E1700317102005.html

 ええい、ついでに中国の国営通信社の動きも載せておきます。

中国情報局:

小泉首相:17日靖国神社参拝へ、中国メディアも速報

  時事通信社は、小泉純一郎・首相が17日午前10時に、首相官邸を出発し、靖国神社を参拝すると速報した。中国の国営通信社である中国新聞社は、現地時間7時57分時点で、日本メディアを引用して、このニュースを伝えた。(編集担当:田村まどか・如月隼人)

2005/10/17(月) 09:04:13更新 中国情報局ニュース
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=1017&f=politics_1017_001.shtml

 中国国営通信社の中国新聞社、速報ハヤッ(苦笑

 ・・・

 しかし、おもしろいですね、速報とは本来事実報道だけに徹するべきなのに、首相の靖国参拝に対する各紙のスタンスが香ってくる微妙な言い回し・ニュアンスの違いが出ていて、これはとても興味深いです。

 さて読者のみなさん、メディアリテラシーの練習の時間ですよ。各紙の速報を読み比べて下さい。

 速報とはいえ、1社だけ顕著な特徴があります。

 読み解いてみましょう。

 ・・・

 はい、時間です(苦笑
 (↑この辺、時間を計れないからブログはつらいわね(苦笑))

 答えは、そうです産経新聞だけ、首相の言い分と外国の反応(外国と言ったって3国だけですが)についての記事中に占める割合が他者と逆転しているのですよ。

 ていうか、首相の言い分を付して報道しているの産経だけなんですけど(苦笑



●徹底的に各紙速報をリテラシーしちゃいましょう

 とてもおもしろいので徹底的に各紙速報をリテラシーしちゃいましょうか。
 各紙記事本文中の構成を分析してみましょう。
 例として朝日速報から徹底的に解剖しちゃいましょう。

 小泉首相は17日午前、東京・九段の靖国神社を参拝する。首相としての参拝は5年連続5回目。首相の靖国参拝を巡っては、A級戦犯がまつられていることや、憲法政教分離原則の観点から内外に批判が根強い。特に太平洋戦争終戦60年の今年は、中国、韓国両首脳が強い懸念を繰り返し表明。国内では野党はもとより、連立を組む公明党からも参拝自粛を求められた経緯があり、批判が強まるのは必至だ。

 本文186文字(句読点含む)中、客観的報道はわずか42文字、太字に示した批判的文章は実に144文字なんですよ。もちろん首相の言い分は0文字です(苦笑

 いや、じつにりっぱです。

 速報の中でも、靖国参拝の朝日の主張が見事に体現されている。(爆笑)

 なんだかなあ。

 で、同様の単純な手法で各紙速報を文字数で解剖してみた結果が以下の表です。

   本文  客観的 批判的 首相言い分(文字数)
朝日 186  42 144     0
読売 157  99  57     0
毎日 332 132 200     0
産経 270  65  48   157
日経 362 321  41     0

 いやあ、おもしろいなあ。
 本文中の批判的文章割合を%であらわすともっとおもしろいですね。
 次の簡単な式で批判率を求めることにしましょう

批判率=(批判的文章文字数ー首相言い分文字数)÷本文文字総数×100

朝日 +77.4%
読売 +36.3%
毎日 +60.2%
産経 −40.4%
日経 +11.3%

 うわああ見事な数字が出ましたね(汗



●突出してる産経記事構成〜日本のマスメディアは自己主張出しすぎ

 数字大きい順に並び替えちゃうと

朝日 +77.4%
毎日 +60.2%
読売 +36.3%
日経 +11.3%
産経 −40.4%

 ・・・

 靖国参拝支持の産経の「孤軍奮闘」ぶりが如実に出てますね。
 
 なんか、少し産経がけなげなのです(苦笑

 産経記事に関して補足しておきますが、当該記事は共同通信の配信記事となっておりますが、もちろん配信記事原文ではなく、産経が自らの編集権にもとづき、原文文章を削除したり追加したりして、実は産経オリジナル記事となっていることは有名な事実であります。

 ・・・

 しかし、これそのまま各紙の首相靖国参拝に対するスタンスをあらわしていますよね。
 そもそも新聞各紙の社説等の主張から各紙の靖国参拝に関するスタンスは、朝日・毎日・日経が参拝反対で、読売・産経が参拝賛成でありました。

靖国参拝問題〜大局的見地に立って考える(3)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050525

 ところが中国反日デモが発生した直後の6月頃、読売は参拝反対に主張を変更いたしまして産経は孤立してしまいました。

靖国参拝反対に寝返ったバルカン読売新聞
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050609/1118284608

 理解していただきたいのは、各紙速報を比較することで初めて見えてくる各メディアスタンスの差異は、もし一紙だけの情報しか取得していないと決して分析できないことであります。

 ・・・

 ふう。

 情報氾濫している現代、私達読者はしっかりメディアリテラシー能力を高めないといけませんね。

 しかしなあ、そもそも事実報道を重視すべき速報報道までに、日本のマスメディアは自己主張出しすぎではないですかね。

 なんだかなあ、やれやれですね。



(木走まさみず)