日本マスメディアの鑑(かがみ)であるフジサンケイグループ〜「風説の流布」など気にするな
●産経新聞報道からフジサンケイグループの日枝久会長の発言をトレースして検証しておく
19日産経新聞から・・・
フジ、ライブドアとの提携解消も視野
フジテレビジョンは18日、資本・業務提携関係にあるライブドアが証券取引法違反容疑で強制捜査を受けていることに関連し、関係の見直しに向けた検討を始めた。公共性が求められる放送局として問題が出かねないと判断したためで、捜査の結果を見極め、提携解消も視野に入れた最終判断を下す。ニッポン放送株取得をめぐって対立していたフジとライブドアは昨年4月に和解し、提携関係を結んだ。資本面ではフジがライブドアの12.75%を引き受けて第2位の株主となり、業務面ではミュージカル共同主催や無線LAN(構内情報通信網)利用の映像配信実験への協力−など4分野で提携。また、フジはライブドアに非常勤取締役も派遣している。
しかし、違法行為が判明した場合、業務提携の中止や役員辞任も検討する。
また、資本提携についても日枝久会長は同日夜、「状況を見て適切に判断する」と述べ、資本引き揚げの可能性を示唆した。440億円で引き受けたライブドア株は、平成19年9月末まで基本的に第三者譲渡ができない契約だが、特約条項があり、損失を抑制できる可能性がある。
フジテレビは1株329円でライブドア株を引き受けており、含み損が発生しかねない状況。これを懸念してフジ株の売り圧力が強まっており、18日は前日比1万円安の28万2000円となった。
【2006/01/19 東京朝刊から】(01/19 11:09)
http://www.sankei.co.jp/news/060119/kei027.htm
強制捜査が行われたのが16日の夕刻(午後7時すぎ)なのですが、中1日おいてフジサンケイグループの日枝久会長は興味深いコメントを残しております。
「状況を見て適切に判断する」と述べ、資本引き揚げの可能性を示唆した。440億円で引き受けたライブドア株は、平成19年9月末まで基本的に第三者譲渡ができない契約だが、特約条項があり、損失を抑制できる可能性がある。
この特約条項とは後にわかるのですが、堀江社長が退任のときは契約そのものを破棄できるという内容だったわけです。
で、翌20日の産経新聞記事から・・・
ライブドアの取締役辞任 フジ、業務全うできない
ライブドアは19日、業務提携などを推進するためフジテレビジョンから社外取締役として迎えていた山田良明常務の辞任届を受理したと発表した。山田氏は同日付で取締役を辞任した。フジの日枝久会長によると、山田氏から「こんな状況では業務を全うできない」と辞任の申し出があり、同日夜にライブドア側に通告したという。ライブドアの証券取引法違反事件が、フジによる役員引き揚げという形に波及した。捜査の進展によっては業務提携の解消や、フジによるライブドア株の保有に影響が出てくる可能性もある。
ニッポン放送株争奪戦で激しく対立したフジとライブドアは、昨年4月に和解。山田氏が両社の提携を進める役割を担ってきた。
日枝会長は、提携関係について、ライブドアが持つ公衆無線LAN(構内情報通信網)サービスの活用など実務面でメリットがあるものについては「続けてもいいのではないか」と指摘。一方で違法行為などがはっきりすれば、全面的な見直しも検討する考えを示した。
フジはライブドアとの資本提携で発行済み株式の12.75%を保有している。(共同)
(01/20 02:10)
http://www.sankei.co.jp/news/060120/kei012.htm
フジサンケイグループの日枝久会長はより踏み込んだコメントを残しております。
フジの日枝久会長によると、山田氏から「こんな状況では業務を全うできない」と辞任の申し出があり、同日夜にライブドア側に通告したという。ライブドアの証券取引法違反事件が、フジによる役員引き揚げという形に波及した。捜査の進展によっては業務提携の解消や、フジによるライブドア株の保有に影響が出てくる可能性もある。
山田氏から「こんな状況では業務を全うできない」との報告を受けたのだそうです。
で、24日の産経新聞記事から・・・
フジテレビジョンの日枝久会長は23日夜、ライブドア社長の堀江貴文容疑者らが逮捕されたことを受け、24日にフジの取締役会を開き、ライブドアとの資本提携解消を緊急協議する方針を明らかにした。
フジは、保有するライブドア株の急落で23日時点で100億円近い含み損が発生しており、株売却などで損失が確定した段階で損害賠償請求を検討する方針だ。
ニッポン放送をめぐって争ったライブドアとの和解で、フジは2007年9月までライブドア株を売却しない取り決めを結んでいるが、違法行為などがはっきりすれば一方的に解約できる契約。
資本提携解消の方法について、日枝会長は「株の売却も選択肢の一つだが、処理にはいろいろなやり方がある」と語った。別のフジの幹部は23日夜「(堀江社長らの退陣後の)新経営陣も見てみる必要がある」と述べた。
日枝会長はライブドアと資本提携したことへの経営責任については「専門の機関の調査で妥当性があるということで投資した」とした。(共同)
≪こんなに早く逮捕されるとは≫
フジテレビジョンの日枝久会長は23日夜、ライブドア社長の堀江貴文(ほりえ・たかふみ)容疑者が逮捕されたことについて「こんなに早く逮捕されるとはと驚いている。事実関係が早く解明されることを期待している」と述べた。
その上で「逮捕容疑の行為は(ニッポン放送株争奪戦の)1年前のことで、われわれも知らなかった。信頼感を失わせる残念なことだ。ライブドアの行為は脱法性が高いと言い続けてきたが、それが現実になった」とした。
報道陣から堀江容疑者にかけたい言葉を求められると「事実を明らかにすることが社会人としての責務。その上で法律的に裁きがあるなら受けないといけないのでは」と突き放した。
(共同)
(01/24 01:01)
http://www.sankei.co.jp/news/060124/kei004.htm
うーん、23日には「フジテレビジョンの日枝久会長は23日夜、ライブドア社長の堀江貴文容疑者らが逮捕されたことを受け、24日にフジの取締役会を開き、ライブドアとの資本提携解消を緊急協議する方針を明らかにした。」のであります。
また、産経記事によれば「日枝久会長は23日夜、ライブドア社長の堀江貴文(ほりえ・たかふみ)容疑者が逮捕されたことについて「こんなに早く逮捕されるとはと驚いている。事実関係が早く解明されることを期待している」と述べた。」そうであります。
そうですか「こんなに早く逮捕されるとはと驚いている。事実関係が早く解明されることを期待している」とは、さぞや晴天の霹靂(へきれき)、「寝耳に水」であったのでしょうね。
で、昨日(25日)の産経新聞記事から・・・
ライブドア株「安定保有も選択肢の一つ」とフジ会長
フジテレビジョンの日枝久(ひえだ・ひさし)会長は25日午前、保有しているライブドア株式の今後の取り扱いについて「安定的に保有することも選択肢の一つだ」と語った。記者団の質問に答えた。フジは2007年9月末まではライブドア側の同意がないと株を第三者に売却できないとの契約を結んでいたが、堀江貴文(ほりえ・たかふみ)容疑者の社長辞任を受け契約が24日で失効。フジの意思だけで売却が可能となっていた。
日枝会長は「(ライブドア株の保有は)投資なので株式を安定的に持ち続けることもあるし、そうでなくなることもある」などと説明した。
フジは、堀江容疑者の辞任を受けて24日に発足したライブドア新経営陣の対応を見極めた上で株の処分方法を決める方針。新経営陣から今後の経営の進め方について説明を求めることにしている。(共同)
(01/25 14:17)
http://www.sankei.co.jp/news/060125/kei055.htm
ふーん、特約事項が有効との判断で「フジは2007年9月末まではライブドア側の同意がないと株を第三者に売却できないとの契約を結んでいたが、堀江貴文(ほりえ・たかふみ)容疑者の社長辞任を受け契約が24日で失効。フジの意思だけで売却が可能となっていた。」そうであります。
日枝会長は「(ライブドア株の保有は)投資なので株式を安定的に持ち続けることもあるし、そうでなくなることもある」などと説明したそうであります。
なんか、産経新聞だけでまとめてみると至極真っ当な対応みたいですが、フジサンケイグループの日枝会長の発言のニュアンスがだいぶ装飾、「風説の流布」(爆)されているようなので違うメディアの記事も一つだけ併記しておきましょう。
24日朝日新聞から・・・
フジテレビ、ライブドア株の処分可能と発表
フジテレビは24日、保有するライブドア株について「07年9月まではライブドアの同意なしに処分できない」という両社の契約が失効したと発表した。23日に逮捕された堀江貴文社長が24日付で社長を辞任し、契約の条件が満たされなくなったためという。株の処分に制約がなくなったフジは、ライブドアとの提携関係見直しを加速させる。
契約の条件には、堀江前社長がライブドアの代表権をもち、社長を務めることが盛り込まれていた。今後の株の処分について、フジは「ライブドア新経営陣による立て直しの状況も踏まえて検討する」としている。
フジは440億円でライブドア株の12.75%を取得したが、株価下落のため含み損は24日時点で約200億円に膨らんだ。ライブドアの違法行為が明確になれば、損害賠償も求める方針だ。
2006年01月24日20時02分 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/060116/TKY200601240369.html
つまりは「ライブドアの違法行為が明確になれば、損害賠償も求める方針」なのか、産経新聞だけ読んでるとわからんのでした(苦笑)
・・・
●フジサンケイグループは「風説の流布」など気にするな〜あなたがたは日本のマスメディアの鑑(かがみ)である
しかしフジサンケイグループは極めて健全なマスメディアであり、見事な客観報道体制であることが証明されたのであります。
マスメディアの鑑(かがみ)であります。
自らの業務提携先であるライブドアの不祥事を、「心を鬼」にして強制捜査翌日から連日徹底報道し、その原因を究明すべくメディアの使命である「真実を読者に伝える」ために邁進してきたのであります。
彼らの用意周到ぶりは、とても感動的ですらあります。
16日夜の強制捜査の翌日朝刊では、早くも連載特集「【錬金術師の虚実】(上)策に溺れたIT企業 ルール無視 マネーゲーム演出」がスタートされました。
すばらしい。
朝刊原稿の締切時間を考慮すると、強制捜査実行から数時間でこの連載記事が企画され紙面一面に編集されるとは、他紙には絶対にマネできない芸当であります。
・・・
これはあらかじめ強制捜査を予期していなければ不可能な紙面編集であるなどと他紙からやっかみがあるようですが、そんな「風説の流布」を気にすることはありません。
また、一部ジャーナリストからそもそも産経新聞内でライブドア取材チームが解散もせずライブドアの経営手法をしつこく取材し続けていた事実から、実は地検にリークしたのはフジサンケイ側なんじゃないかという根拠のない噂話もあるようですが、いいがかりもいいところです。
(前略)
ある全国紙記者の話。「フジテレビと産経新聞は昨年春にニッポン放送問題が和解で決着してからも取材班を解散せず、ライブドアの不正を追い続けていた。その中で今回のライブドアマーケティングをめぐる疑惑をつかみ、司法クラブ記者を通じて東京地検にネタを持っていったという話が出ている」
(後略)
佐々木俊尚の「ITジャーナル」
ライブドアへの強制捜査にからんでのうわさ話
http://blog.goo.ne.jp/hwj-sasaki/e/df7721e0a4e9f6e7bd1dd018ffb0b401
いいかげんな「風説の流布」にはフジサンケイグループとして断固抗議すべきであります。
昨年ライブドアとの契約時に12%の株を取得し2年間保有する特約条件として「堀江社長辞任のときは契約解除できる」ことを付け足しておき、その後隠密にライブドアの商法を徹底的に過去に遡り取材し違法行為の証拠を押さえた上で地検にリーク、強制捜査翌日にはあらかじめ用意してきた特集記事の連載をぶつけ徹底的なライブドア批判キャンペーンを実施し、最終的には損害賠償を睨みつつどうころんでも損失は出ないように配慮しながら、ライブドアグループとの一切の関係を清算しつつ堀江氏に鉄槌をくらわした・・・
などという根拠もない陰謀説は、当ブログは断固として支持しません。
日枝会長ももうしているじゃないですか。
「こんなに早く逮捕されるとはと驚いている。事実関係が早く解明されることを期待している」
「逮捕容疑の行為は(ニッポン放送株争奪戦の)1年前のことで、われわれも知らなかった。信頼感を失わせる残念なことだ。ライブドアの行為は脱法性が高いと言い続けてきたが、それが現実になった」
しかし、メディアの使命として「心を鬼」にして、「泣いて馬謖を斬る」覚悟で、業務提携先であるライブドア堀江社長を「事実を明らかにすることが社会人としての責務。その上で法律的に裁きがあるなら受けないといけないのでは」と突き放したのです。
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あなたがたは日本の腐りきったマスメディアの鑑(かがみ)であります。
(木走まさみず)
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●目くそ鼻くそを嗤うとはこのこと〜フジサンケイグループがホリエモン強制捜査で大はしゃぎ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060117