木走日記

場末の時事評論

ホリエモン・ゴキブリ仮説〜ホリエモンは決して一人ではない

 先日防虫剤を製造しているさる会社の経営者と昼食を共にしました。

「木走さん、ゴキブリは実は生きた化石とも言われる生物なのです。数億年間もその形状をほとんど進化させることもなく生き延びてきたことは驚異と言うほかありません」

 うーん、ランチを食しながらのゴキブリの話とは少々閉口しました(苦笑)が、まあ、害虫駆除が本業のお方なので先方は意に介さずゴキブリ談義をするのでした。

「研究をすればするほど彼らの生命力には驚かされます。他の多くの昆虫が人工的な人間の住環境にはなじめない中で彼らが我々人間の住環境に寄生できたのは、彼らの並外れた生命力の賜物なのですよ」

 うーん、そうですか・・・

「ある時事評論家が悪い冗談で、自分は殺虫剤を作っている会社は秘密の地下工場で大量にゴキブリを繁殖させ密かにばらまいているのではないかと疑っていると、対談で私を挑発したことがあるのですが、私としては苦笑するしかありませんでした」

「その時事評論家はゴキブリというイキモノの生命力に全く無知なんです。ゴキブリは、秘密の地下工場で大量製産などしなくても人類文明が存続する限り繁栄し続けるでしょう。いや、もしかすると人類文明が滅んでも彼らはそれなりに環境に適応しながら生存し続けるのではないかと思います。」

 なにやら、しだいにゴキブリ賞賛の論に展開していったのですが、興味深いことは興味深い話なのですが、ゴキブリ嫌いの不肖・木走はいっこうに箸が進まなくなってきたのでした(いや、中華料理を食しながらのゴキブリ談義はけっこうキツイです(苦笑))

「木走さん次の事実をご存知ですか。今の都会にいるゴキブリ達は、50年前の殺虫剤ではびくともしない連中なのですよ。彼らはどんな強力な殺虫剤を開発してもその耐性を持つ子孫を必ず生み出して来るのです。殺虫剤メーカーはそんなゴキブリの驚異の適応性といたちごっごするようにどんどん強い殺虫剤を開発せざるを得なかったのです。」

「お陰で現在のゴキブリ用殺虫剤は強力な毒性を持つようになってしまったのです。これだっていつまで効力を発揮するのかわかりませんけどね」

 うーん、なるほどこれは一種の人口淘汰によるゴキちゃんの進化なのか・・・

「ですから、地下の秘密工場など妄言なんですよ。そんな必要性は全くないんです。」

 うーむ、そうですか。

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 で、この話を聞いて私が思ったことは三つであります。

 ひとつは二度とこの方とは中華料理店にはご一緒するまいと強く決意したこと(爆

 で、もうひとつは、これはコンピュータ業界で置き換えてみると、コンピュータウィルスや悪意あるハッカー達と、防御する側のファイアウオールやワクチンソフトの技術的イタチごっごに酷似しているなあということであります。

 コンピュータウィルスなど作れる高度な技術力があるのならもっと建設的なソフト開発にその力を注げばいいモノをと私などは思ってしまうのですが、現状としては今も毎日のように新種のウイルスが世界のどっかで作られているわけで、これはもう、性善説とか性悪説とかの理屈をこまねいていても否定のしようのない現実でありまして、ネットが発達していく限りこのイタチごっこも続いていくのでしょう。

 そして最後に考えたのはホリエモンこと堀江氏のことでした。


 ・・・



●昨日の堀江氏逮捕を一斉に取り上げている各紙社説を検証する

 昨日(23日)、堀江氏が遂に逮捕されました。
 で、今日(24日)の各紙社説は一斉に堀江氏逮捕を取り上げています。

【朝日社説】堀江社長逮捕 人の心はお金で買えぬ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】[堀江社長逮捕]「あっけなくはがれた“虚業”の仮面」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060123ig90.htm
【毎日社説】堀江社長逮捕 「すべてはカネ」が足をすくった
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060124k0000m070166000c.html
【産経社説】ライブドア事件 堀江流を終わらせよう 「時代の寵児」メッキ剥げた
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm
【日経社説】堀江社長逮捕が突きつけた課題(1/24)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20060123MS3M2300823012006.html

 例によって各紙社説の結語を抜粋してその論説をリテラシーしてみましょう。

【朝日社説】堀江社長逮捕 人の心はお金で買えぬ

 一方で、その知名度に便乗するような動きもあった。自民党は、総選挙で亀井静香氏の対立候補として支援し、竹中総務相武部幹事長が強力に後押しした。応援にも駆けつけている。

 今になって武部幹事長は「公認したり推薦したりしたわけではない。個人的な応援だった」などと弁明しているが、まったく納得できない。もう一度、ことの経緯や反省点について、きちんと説明する義務があるだろう。

 今回の逮捕で崩れたのは、株価や政界の思惑だけではない。彼が呼び起こした期待感も、金の魔力で実力以上に膨らんではいなかっただろうか。犯罪の捜査にとどまらず、検証すべき点は多い。

【読売社説】[堀江社長逮捕]「あっけなくはがれた“虚業”の仮面」

 テレビに出演し、派手な言動を繰り広げた堀江容疑者は、バブル崩壊後の閉塞(へいそく)感を打破する指導者、と期待を集めた。だが、インターネット企業とされるライブドア・グループのネット関連売上高は全体の20%もない。実態は買収した企業の金融部門に大きく依存している。

 グループの時価総額は4000億円弱まで目減りした。ほとんどが個人とされる株主は、ストップ安で売るに売れない状況が続いている。ライブドアの暴落を契機とする売りの殺到は、東証のシステムをマヒさせた。高すぎる授業料だ。

【毎日社説】堀江社長逮捕 「すべてはカネ」が足をすくった

 貯蓄から投資へと政府は誘導しているが、市場への不信とその影響は長期に及ぶ。監視体制の強化など金融犯罪への抜本的な対策が必要だ。

 影響は経済だけにとどまらない。昨夏の総選挙に刺客として立候補した堀江社長を応援した自民党幹部の責任を問う声は一段と強くなるだろう。

 下流社会や、勝ち組という言葉が流行し、派遣やパート労働が増え、ニートが深刻な問題になっている。

 その一方で、都心の地価や株価が急騰しミニバブルと呼ばれている。勝ち組を目指して株式による利殖をめざす若者も増えている。

 こうした環境の変化は日本人の勤労意識にも変化を与えているが、ライブドアショックは、株価だけでなく、堀江社長が強調してきたカネがすべてという考え方にも冷水を浴びせた。

【産経社説】ライブドア事件 堀江流を終わらせよう 「時代の寵児」メッキ剥げた

 ある種の後ろめたさを伴ってしかるべき「万事お金」という拝金思想を、恥ずかしげもなく大声で唱える。聞く側も深く考えもせずに「これこそが資本主義」と受け入れてしまう。そんな危うい日本社会を映していないか。

 ライブドアの経営実態の本格解明はこれからだ。逮捕はされても起訴されるかどうかはわからない。起訴されたとしても、裁判所がどう判断するかはまだ予想できない。

 しかし、時価総額を上げることに腐心し、そのためにルールすれすれの行為を繰り返していた点は否定しようもない。ルールや制度の不備を突くやり方を自慢げに語る。そんな堀江流をほめそやすのは、もう幕にしたい。

【日経社説】堀江社長逮捕が突きつけた課題(1/24)

 違法行為が繰り返された疑いが濃い企業買収で、ライブドアグループは、証券市場の番人役である証券取引等監視委員会金融庁が当時すでに問題視した大幅株式分割を重ねている。監視委や金融庁が、この時に機敏かつ深く、ライブドア側の行動を調査していれば、逮捕容疑になった事実をつかみ得た可能性が強い。そうすれば、この1週間の市場の混乱もなくてすんだはずだ。

 市場の番人にふさわしい権限と陣容を持つ「日本版SEC(米証券取引委員会)」の必要性は緊急である。早急に監視委を抜本的に改組し機能を強化すべきである。

 うーん、例によって朝日社説が自民党は、総選挙で亀井静香氏の対立候補として支援し、竹中総務相武部幹事長が強力に後押しした。応援にも駆けつけている。 」と、強引に堀江氏逮捕を自民党批判に持っていってるのはご愛敬(笑)でしょうが、産経社説の以下の締めの言葉もあきれてしまいます。

 しかし、時価総額を上げることに腐心し、そのためにルールすれすれの行為を繰り返していた点は否定しようもない。ルールや制度の不備を突くやり方を自慢げに語る。そんな堀江流をほめそやすのは、もう幕にしたい。

 確かに「ほめそやす」のはいけない風潮なのでしょうが、そんな堀江氏と、いわく付きの経緯はあるモノのフジサンケイグループとして業務提携していた事実は不問なのでしょうか。

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 で、唯一の救いと思えるのが日経社説でありまして「市場の番人にふさわしい権限と陣容を持つ「日本版SEC(米証券取引委員会)」の必要性は緊急である。早急に監視委を抜本的に改組し機能を強化すべきである。 」と言う結語は正論でありましょう。

 堀江氏が突きつけた問題は、単に一人の人間の犯罪行為として語るだけでは、あまりにも多くの問題を炙り出してきたからです。

 東証システムの問題も含みですが日本の証券市場の既存システムの脆さ、その閉鎖性と危機管理能力の著しい欠落ぶり、また免許事業制度で守られてきた日本の既存マスメディアのお粗末な既得権益擁護に終始する狼狽ぶり、堀江氏は善し悪しは別として実に多くのことを我々国民に明らかにしてくれたのであります。

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ホリエモンは決して一人ではない〜ホリエモン・ゴキブリ仮説

 しかし相変わらず日本の大新聞社説は傍観者的論説に終始していて辟易してしまいます。

 【産経社説】の被害者意識丸出しのライブドア事件 堀江流を終わらせよう 「時代の寵児」メッキ剥げた」は論外としても、例えば「【朝日社説】堀江社長逮捕 人の心はお金で買えぬ 」にしろ、「【読売社説】[堀江社長逮捕]「あっけなくはがれた“虚業”の仮面」」にしろ、「【毎日社説】堀江社長逮捕 「すべてはカネ」が足をすくった」にしろ、極めて情緒的かつ表層的な論調でありこの問題の本質を捉えているとは思えないのです。

 つまり堀江氏逮捕ですべてのことが片づくわけでもなく、産経社説のようにホリエモン憎しとばかりに、「そんな堀江流をほめそやすのは、もう幕にしたい。」などと情緒的に訴えても何の意味があるのでしょう。

 彼の犯罪行為はきちんと裁かれるべきです。

 しかし彼が明らかにしてくれた日本の既成業界の深刻な問題点に目をつぶるべきではありません。

 対応期限をとうに切れているポンコツ脆弱なシステムを堂々とごまかしごまかし運用してきた世界第二位の東京証券取引市場の経営陣の国際感覚が皆無のマネジメント能力の問題。

 ホリエモンに好き放題ともいえる奇策を駆使され続けても全く無策で存在価値が大いに疑われてもしかたのない、証券市場の番人役である証券取引等監視委員会金融庁の危機管理能力と危機対応能力の完全なる欠落。

 だらしなく既得権益を守ることだけに終始し実は旧態依然とした古い業界体質をさらけ出してしまった日本のマスメディアのなさけない閉鎖的体質。

 これらは何一つ改善されているわけではないのです。

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 ゴキブリが人類社会が無駄なゴミを出し続けエネルギー浪費をし続けている限り死滅しないだろうように、これらの看過できない問題を克服しない限り、第二第三のホリエモンが必ずや近い将来登場することでしょう。

 しかも、ゴキブリがしだいに殺虫剤の耐性を強めてきたように、第二第三のホリエモンは間違いなく新たに進化し巧妙さをまして既存システムにいどんでくることでしょう。

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 ホリエモンこと堀江氏逮捕は騒動の終わりではないと思います。

 最初の一匹が捕まったに過ぎないのではないでしょうか。

 ホリエモンは決して一人ではないのでしょう。



(木走まさみず)