今こそ、勝利の凱歌をあげよ〜秩序を破壊したホリエモン
今こそ、勝利の凱歌をあげよ〜秩序を破壊したホリエモン
●既存秩序は破壊された
破壊者ホリエモンにより既存秩序は破壊されたのである。
ニッポン放送の新株予約権発行について東京高裁もライブドアを支持する決定を行った。「新株予約権発行はフジテレビによる経営支配権確保が主要目的で、株主一般の利益を害する」と認定した。司法が三たび、ライブドアに軍配を挙げた。
ニッポン放送側は最高裁への特別抗告を断念し、ここにライブドア傘下の軍門に下ることが事実上確定的になったのである。
●「モラルなき達人」と「おろかなるダブルスタンダード」
今朝の産経新聞社説では、堀江氏のことを、「モラルなき達人」と吐き捨てている。
彼等、堀江氏率いるライブドアに攻められたフジサンケイグループにしてみれば、たしかに、その出現ぶりは、まるでテレビゲームの“達人”のように映ったのであろう。今回の問題をゲーム感覚で見ていた人々が「モラルなき達人」・堀江氏のプレーに喝采(かっさい)したのは当然かもしれないと産経社説は分析しているが、負け惜しみじみてはいるが、堀江氏支持が多数派となった世論の動向の一面をたしかにとらえてはいるのである。
しかし、おおくの人々が破壊者ホリエモンを支持したのは、今回の問題をゲーム感覚で見ていただけではないのであり、フジサンケイグループはそこを見誤ってはいけないのである。堀江氏が投じた一石は、眠れる世論を喚起させたのだ。
堀江氏に対しては「公正な報道」を理解していないなどと批判しながら、自分たちは低俗な番組を垂れ流しているという、おろかなフジサンケイグループのダブルスタンダードに、心ある者は多いに失望し、今回堀江氏が壊そうとした既存秩序・免許事業制度というぬるま湯に浸りきった放送業界の悪しき秩序に多くの人々が猜疑的にその胡散臭さに気付き始めたのである。
●畏るべき最適化された秩序破壊者ホリエモン
堀江氏が世論を味方に付ける過程において、司法の判断がライブドア側に軍配があがるたびに、堀江氏およびライブドア側の言動・態度が補正され、絶えず世論を意識しながら最適化されてきたことも、見過ごせない重要な点である。彼は、「テレビを殺す」と恫喝する生意気な「成り上がり者」から、「ラジオ・テレビ」とインターネットを融合しようとする紳士的な「理解者」に脱皮していたのである。いまも進行形で、彼が自らを環境に適合して最適化させ、周囲の環境をも最適化しつつあるのは、畏るべき驚くべきことである。
畏るべき最適化された秩序破壊者ホリエモン。
●フジの最後の反撃〜目には目を、ライブドアにはソフトバンクを
24日午後、フジテレビは驚くべき奇策に打って出た。ソフトバンク・インベストメントにニッポン放送が持つフジテレビ株式14.67%を2010年4月まで5年間貸し付けると発表したのだ。この結果、孫正義氏率いるソフトバンクグループがフジテレビの筆頭株主になる。さらに、3社は、共同でコンテンツ・メディア・ブロードバンド分野のベンチャーキャピタルファンドを設立するとの構想を明らかにした。
これは、フジテレビジョン本丸を守るために周到に準備されたフジサンケイグループの防衛策であろう。こざかしいライブドアを追い払うために、IT業界の雄ヤフージャパンをしたがえるソフトバンクに、恥も外聞もなく助けを求めたのである。
ソフトバンクという新たなアクターの登場により、事態はさらに複雑怪奇、今後の展開の予想がまったく困難な状況に陥った。
だが、フジサンケイグループをそこまで追いつめたことは、まぎれもなくライブドアの力によるものである。ここまでは、堀江氏の勝利といっていいだろう。
●今こそ勝利の凱歌を高らかにあげよ、ホリエモン
フジサンケイグループのなりふり構わぬ奇策のために、勝利の凱歌をあげるどころではなくなった感があるのは否めない。既得権益を守ることだけに執着するグループに、栄光ある勝利はすっかり泥まみれに汚されてしまった。
ソフトバンクという新たなアクターが登場した、今こそ、具体的事業プランを示すときがきたのではないのか。
しかし、ここにいたっても、堀江氏の口から具体的なメディア論は聞かれてこないは、残念なことである。
その勝利の凱歌のメロディはいかなる旋律を奏でるのか、衆目の関心はその一点にある。
あえて今こそ勝利の凱歌を高らかにあげよ、ホリエモン。
・テキスト修正(2003.03.24 18:05)新たな展開(ソフトバンク参入)により、その部分を中心に加筆、修正しましした。
(木走まさみず)
いやあ、ほんとうに驚きですよね。私は、一時、堀江氏はある程度目的を達成したのだから、有利なうちにフジテレビとうまく和解して撤収すべきであると考えていたのです。なぜならば長期戦は資本力の差からライブドア側には不利になると踏んでいたのです。
しかし、その堀江氏不利の予想はここまでは見事に外してしまったようです。堀江氏は「将棋で言えばもはや詰んでいる」などと強きの発言をしていましたが、今日この決定を向かえてみると、あながちホラ話でもなかったような気がしてきました。
さあ、このあとどう展開していくのか、一部新聞の論調では、いよいよ本陣(フジテレビ)になぐり込みを掛けるのではという予想もありますが、どうなんでしょう。
ただ、ここらへんで堀江氏も具体的事業プランをしっかり出すべきであることは、木走としては強く主張したいです。世間が追い風のうちに、しっかりとした堀江氏らしい斬新なプランを披露してほしいですね。ここは期待を込めてでありますが。
みなさんのお考えはいかがでしょうか?
●追記(2003.03.24 17:30)
いやいや、孫さんがご登場になられました。
フジテレビジョンとニッポン放送は24日、ソフトバンク・インベストメントにニッポン放送が持つフジテレビ株式14.67%を2010年4月まで5年間貸し付けると発表した。この結果、ソフトバンク・インベストメントがフジテレビの筆頭株主になる。また、3社は同日、共同でコンテンツ・メディア・ブロードバンド分野のベンチャーキャピタルファンドを設立すると発表した。
毎日新聞 2005年3月24日 17時19分
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kigyou/news/20050325k0000m020003000c.html
うーん、複雑怪奇になってまいりました。
しかし、これって一種の「焦土作戦」かも知れません。株を売ったのではなく5年間の「貸し付け」の形式ですから微妙ではありますが。
しかし、孫さんしてやったりでしょうねえ。かつてテレ朝の株買収問題で挫折したわけですが、おそらく今回はフジサンケイグループから誘いがあったのではないでしょうか、確認したわけでないのですが・・・
フジサンケイグループは墜ちるところまで墜ちた感はありますね。苦し紛れに取った奇策ではありましょうが、「母屋を取られる」ようなドジはふまないようにしないとね。
不肖・木走は、孫さんとこと取り引きしたこともあるのでございますが、いやいやなんとも、ホリエモンより上手でございますよ、あの方は。
それにしても、おもしろい展開になってまいりました。
<木走よりお知らせ>
当テキストを元原稿としてインターネット新聞JANJANにて記事が掲載されました。
『今こそ、勝利の凱歌をあげよ(木走まさみず)』
http://www.janjan.jp/media/0503/0503244925/1.php
<関連テキスト>
●ホリエモン考〜最適化された秩序破壊者
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050302
●ホリエモンの元部下の話
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050223
●フジサンケイグループのダブルスタンダード
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050304
●進化を忘れた放送業界
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050305
●ホリエモンは『不死身』ではなく『破壊者』だと思います
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050307
●破壊者ホリエモンが投じた一石〜悪しき秩序は守られたか
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050308
●蟷螂(とうろう)が斧(おの)を取りて隆車(りゆうしや)に向かう〜今こそ撤収の時
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050311
●木走教授のトンデモ講義〜ホリエモン報道におけるメディアリテラシー
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050312
●胡散臭いぞ!東京電力
●最適化すすむホリエモンVS捨て身の焦土作戦
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050314