木走日記

場末の時事評論

[社会]一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(4)〜「構造計算のことはわからない」と断言した「総合経営研究所」の胡散臭さ

 以下のエントリーの続きであります。

●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか〜民間委託問題にすり替える邪論を排する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051129/1133237798
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(2)〜『しんぶん赤旗』と『報道ステーション』と『JANJAN』にダメ出しする
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051201/1133417121
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(3)〜最大手検査会社日本ERIの醜態
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051201/1133434839

 今回は建築コンサルタント会社総合経営研究所を検証しておきます。



●業界のカリスマが率いる建築コンサル「総合経営研究所」の胡散臭さ

 前回のエントリーで最後に触れた1日付け読売新聞の業界内部告発記事ですが、大きな波紋を呼び、マスメディアの報道でもようやくコンサルタント会社「総合経営研究所」を取り上げ始めたようです。

「不正知りながら放置」不備通報の業者、ERIを批判

 マンションなどの耐震強度偽装問題で、2004年4月の段階で姉歯秀次・1級建築士(48)による構造計算の不備に気付き、民間の指定確認検査機関最大手「日本ERI」(東京都港区)に通報していた横浜市内の設計会社社長(47)が読売新聞の取材に応じた。

 社長は「ERIは不正を知りながら放置した」などと、ERIの当時の対応を批判した。

 この社長によると、社長は03年春、港区内のオフィスビル(10階建て)の設計を受注、構造計算書は別の設計業者(44)が作成した。しかし03年秋、施工会社が「これでは高すぎる。コストダウンが必要だ」と主張。

 その後、「木村建設」の東京支店長、コンサルタント会社「総合経営研究所」(東京都千代田区)の幹部姉歯建築士を連れて来て、「この男なら安くなる」として、姉歯建築士による構造設計のやり直しを提案した。ERIは04年1月、姉歯建築士が作成し直した構造計算書などを審査し、建築確認を出していた。

 しかし、ビルの総工費が約7億円から約3000万円も安くなったことを不審に思った社長が、姉歯建築士の計算書を設計業者に点検させたところ、地震の力を約4分の1に減らして計算していたことが判明。社長らはERIを訪れ、「単なる計算ミスではなく、作為的なものだ。他の物件も調べた方がいい」と強く対策を求めたが、その後、ERI側からは何の連絡も来なかったという。

 姉歯建築士の計算書を点検した設計業者は「目を疑った。この規模の建物なら柱は最低一辺90センチは必要だが5〜10センチも細かった」と読売新聞に証言している。

 この設計業者は今年10月、姉歯建築士が関与した都内のマンションの設計図を見る機会があり、計算書の偽造を確信、建築確認を行った民間の指定確認検査機関「イーホームズ」(新宿区)に通報して、問題発覚につながった。

 昨年4月以降に着工された物件で、構造計算書の偽造が判明しているマンションやホテルは少なくとも15棟。社長は「もし1年半前に真相を解明していれば被害の拡大を抑えられたのではないか」と話している。

 ERIは「応対者が、上司に報告する必要がないと判断したようだ。結果として被害を拡大させ申し訳ない」としている。

(2005年12月1日3時6分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe5500/news/20051201i201.htm

 すでに新聞・TVでもさかんに報道されて既知の読者も多いとは思いますが、一応当ブログとしても「総合経営研究所」についてまとめておきましょう。

 上記読売記事でも、「総合経営研究所」の幹部が姉歯建築士を連れて来て「この男なら安くなる」として提案したとされていますが、一部報道によれば、この総合経営研究所とそのカリスマ所長内河健氏が一連の今回の騒動の影の『黒幕』であると指摘されています。

 そこらあたりの事情を、読売九州版がわかりやすく記事にしていますのでご紹介いたしましょう。

「業界のカリスマ」が木村建設にコストダウン指導

 参考人質疑では、多くの強度偽装マンションを設計、施工していた木村建設熊本県八代市)と、東京の経営コンサルタント会社「総合経営研究所(総研)」の関係についても取り上げられ、木村建設が総研の経営指導を受け、東京支店を総研所有のビルに入居させていることなどが明らかにされた。

 読売新聞の調べでは、総研は東京都千代田区平河町に本社を構え、ビジネスホテルの開業指導を中心に建設業者向けの経営相談を専門的に行ってきた。関係者によると、主に地方の中小業者を指導。10階程度のホテルを半年で建設する工法を提唱し、タイルなどの材料を海外メーカーから安く買ってコストダウンを図る指導が売り物という。

 所長でゼネラル・マネージメント・コンサルタント内河健氏は、建設業界で「歯にきぬ着せぬ物言いで利益追求を語る業界のカリスマ的存在」(業界関係者)とされ、業者を対象に各地でセミナーを開いている。

 木村建設東京支店が入る新宿区のビルは、総研が所有。木村盛好社長(73)の妻が社長を務め、9件の偽装物件の設計を手掛けた「平成設計」の本社は、東京・神田の総研本店に同居している。

 今年8月に刊行された木村社長の評伝的な書籍の中でも「成長のきっかけになったのは内河氏との出会い」などと記されており、二人三脚ぶりがうかがえる。

 木村建設の元社員は「内河氏は、社内では『内河大先生』と呼ばれ、気軽に声をかけられる人はいなかった。3か月に1度のペースで同社を訪れ、会議に参加していた時期もあった」と話す。

 29日の参考人質疑で木村社長は、総研と内河所長の名前のほかは、「内河所長とは1年以上会っていない」とだけ発言。総研の総務担当役員は、「平成設計は関連企業だが、下請けの姉歯建築士のことは全く知らなかった。木村建設も3年ほど前まで経営指導していたが、今は直接の関係はない」としている。

11月30日 読売新聞九州版
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_05113005.htm

 記事にもあるとおり、所長でゼネラル・マネージメント・コンサルタント内河健氏は、建設業界で「歯にきぬ着せぬ物言いで利益追求を語る業界のカリスマ的存在」(業界関係者)とされていまして、知る人ゾ知る存在であったようです。

 まあ、木村建設の元社員の発言「内河氏は、社内では『内河大先生』と呼ばれ、気軽に声をかけられる人はいなかった」には苦笑せざるを得ませんが、この内川氏、建築業界では徹底的なコストダウンをはかる指導が売り物で急成長してきたようです。

 以前コメント欄でも情報提供いただきましたが、この辺りの事情をとてもよく調べていらっしゃるサイトをご紹介いたします。

天漢日乗
耐震強度偽造マンション (その50) 耐震強度偽造工法の黒幕は「総合経営研究所

http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2005/11/_50_cdca.html

 くわしくは天漢日乗さんを読んでいただくとして、あちらのエントリーの中で総研の専用スレッドからの興味深いコメントを一部引用させていただきましょう。

44 :(仮称)名無し邸新築工事 :2005/11/23(水) 13:38:50 id:jepPdUgv
総研・・1.国内の中小の建築建設会社を集めては講習会を開く
    2.そこでそれなりに国際的な建築工法を発表、
     コンサルタント依頼を公募する。
    3.欲のはったおっちょこちょい会社がその契約をする
    4.その件についての売り上げの某%が顧問料
    5.その工法で使われる特殊な材や道具や仮設材は
     ここを通して購入が義務付けられる。
    6.ただし問題が発生したとしても、責任は取らない契約。
例1 AAB工法
    カナダで発明された、半地下構造躯体RC用の断熱兼型枠材
    それを、RC造数階建てに使うことを提案、地域限定で契約
    会社の売り物にさせた。
   その評価
    たしかに型枠をはずすコストが無く、そのまま外・内の
    断熱材になる。しかし打ち上がり面を検査することが出来ず
    大ジャンカがそのままになってしまう。またその型枠の構造
    上、コンクリートがよく回らず、ジャンカを起こしやすい。
    その結果、壁からの雨水の浸入が続発。今もそのトラブルで
    その会社はノイローゼーに陥っている。
    また、隣家で火災が生じた場合、外壁材の基材がその熱で溶けて
    しまい、外壁落下の可能性が大である。

45 :(仮称)名無し邸新築工事 :2005/11/23(水) 14:06:45 id:jepPdUgv
今回の予想
  総研が木村建設コンサルタント契約
  英国の大型型枠工法を紹介し指導。
  基本的に全ての階の柱・梁の寸法を同じにする。
  すると手間を食う柱・梁の型枠を全て下の階からの
  使い回しが出来る。そのためには、地震の基準の低い
  (英国は地震がほとんどない)ならよいが、日本の基準
  では、中層階(10階建てぐらい)ではそんなことは
  インチキな構造計算をしないでは、まずならない。
  そしてつじつまを合わせたら、あら不思議、鉄筋量まで
  減った構造計算と構造図が出来てしまった。(ラッキー)
  木村建設にはこの計算を正確に見抜く人材なんていない。
  もしいたとして、社内直訴したらクビ。
  イケイケどんどんで、関東にまで進出。
  しかしこの方法での成功だから、もう後戻りできない。
  そうそうここで姉歯登場。
  この工法は、インチキをしてくれる姉歯がいなくては
  できない合理的建築工法だったのよ。
  総研が他にコンサルした建築会社も同じだよ。
  結論
  総研→おっちょこちょいの建築会社+姉歯→無能な開発販売会社
    →金儲け主義・天下りの検査機関イーホームズ
     (もしたして担当者は金をもらって見逃していた
      可能性もあるよ。こんなの昔から悪しき習慣だからね)
  姉歯は今回の一部で根は大変深いと想像するよ。

 うーん、なんとも胡散臭いコンサルタント会社なのであります。



●「構造計算のことはわからない」と断言した「総合経営研究所」幹部

 で、総合経営研究所はホームページ上で最初に取り上げた1日付け読売記事に反論しております。

1.平成17年12月1日付読売新聞について

姉歯建築士を「この男なら安くなる」と紹介したとの記事の件

これまでの回答では、当社の代表者である内河が、姉歯建築士と面識のない旨を回答しました。

それと平行して全社員の姉歯建築士との面識を調査しました。

その結果、1名のみ姉歯建築士と面識があったことがわかりました。

1回目は平成15年11月10日です、その時に平成設計が、姉歯建築士を同行させていました。2回目は平成16年3月8日、平成設計が設計図を提出する際に、同じく同行していました。

まず、平成15年11月、横浜市の設計会社に対し、港区のビル(オフィスビルではありません)の件に関して平成設計を紹介したことがありましたが、その際に、平成設計姉歯建築士を同行しており、当社従業員が姉歯建築士と顔を合わせました。

この時、姉歯建築士平成設計が連れてきたものであって、当社が姉歯建築士を「この男なら安くなる」などと紹介したことは、一切ありません。

平成16年3月、平成設計が設計図を作成し、提出致しました。

その際、同席していた横浜市の設計会社の関係の建築士が、姉歯建築士に対して設計についていくつか質問していましたが、それに対する姉歯建築士の対応が、「要領を得ず頼りないものであった」ため、当社は、この提案自体を取り下げるべきであると、平成設計に言い、実際この提案は白紙に戻りました。

従って当社としては姉歯建築士の計算した建築図面は、採用されていないと考えておりました。さらに以後の他のプロジェクトについても「平成設計は、姉歯建築士に構造設計を依頼すべきでない」と言い、平成設計の山口社長からも了解した旨を確認しました。

なお、当該プロジェクトは、他社設計会社及び他社施工会社の施工で完成に至っていると聞いております。

いずれにしろ、当社が姉歯建築士を設計会社に紹介してということは一切ありませんし、姉歯建築士とは直接の関係はありません。 

総合経営研究所のホームページより
http://www.gmc-sg.co.jp/

 こうなるとまたしても責任の擦り合いなのでありまして、「いずれにしろ、当社が姉歯建築士を設計会社に紹介してということは一切ありません」と断言しておりますが本当なのでしょうか?

 しかし、このホームページですが、全文お詫びと反論で終始していますが、先日まではたいそう立派な業績を誇らしげにぶら下げていたのに、全部削除して替えちゃったのであります。

 『北海道から沖縄まで日本一の実績を誇る建設業専門の実践コンサルタント団体』と銘打ってそれはもうセミナー内容とかコンサル実績とか興味深い内容満載だったので読者のみなさまにアーカイブをばらしちゃいます。

隠しちゃった昔の総合経営研究所のホームページ
http://web.archive.org/web/20041015220045/http://www.gmc-sg.co.jp/index.html

 セミナー内容は必読でございますよ。

 ・・・

 で、総合経営研究所、昨日遂に記者会見が行われたわけです。

姉歯という名、知らぬ」 「総研」所長、関与を否定

 耐震強度偽装問題で、偽装のあったホテルの建築主らに設計・施工業者として木村建設熊本県八代市)を紹介したとされる経営コンサルタント会社、総合経営研究所(総研、東京都千代田区)が2日、国土交通省で記者会見した。内河健所長(71)は構造計算書を偽造した姉歯秀次1級建築士について「姉歯という名は全然知らない」と述べ、自らは偽装にかかわっていないことを強調した。

 内河所長は会見で、偽装があったホテルのうち16軒は同社が開業指導していたことを明らかにし、「営業休止となり心を痛めている」と話した。姉歯建築士については「(木村建設の子会社の)平成設計が連れてきた。下請けに出していたことは全然知らなかった」と述べた。

 同席した総研幹部は03年11月と04年3月に姉歯建築士に会ったことを認めた上で「建築主に工期短縮の提案をする際に会った。構造計算のことはわからない」と偽装の指示を否定した。

 同社は今回の問題は信頼問題にかかわるとして、近く社員らに事情を聞く調査委員会を発足させる考えを明らかにした。

2005年12月02日22時53分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1202/TKY200512020361.html

 ・・・

 しかしお粗末な会見でした。

 特に総研幹部の「建築主に工期短縮の提案をする際に会った。構造計算のことはわからない」と偽装の指示を否定した発言ですが、ずいぶんおかしなことを堂々と記者会見で言ってしまうものですね。

 仮にも『北海道から沖縄まで日本一の実績を誇る建設業専門の実践コンサルタント団体』と日本一を自称する建築コンサルの幹部が「構造計算のことはわからない」とは、まったくもって恥知らずの笑止な発言なのであります。

 この問題もう一度だけ続きます。


(木走まさみず)



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