木走日記

場末の時事評論

ちょっと待ってよ国交省。安易な公金投入はおかしくないか?〜姉歯某は本当に一人だけなの?

 国交省の最近固めた二つの方針が猛烈に胡散臭くて変な気がするのは私だけでしょうか?



●マンション解体、全額公費で−−国交省方針

 問題になっているマンションの解体費用を全額公費で賄う方針を国交省が固めたようです。

耐震計算偽造:マンション解体、全額公費で−−国交省方針
 耐震データ偽造問題国土交通省は4日、住民に対する支援策として、危険なマンションの解体費用を当面、国と地方自治体が全額負担する方向で検討に入った。また、転居支援として公営住宅家賃の一定期間無料化に加え、民間住宅に転居する場合も一定の補助を行う方針。転居先公営住宅の確保、マンション建て替え費用のうち共用部分の3分の2を国・自治体が補助するなどすでに固めた方針と合わせ、総合的な住民支援策を6日にも発表する。

 北側一雄国交相は4日のNHKや民放の報道番組に出演。今回の問題について「買った人にも一定のリスクを背負ってもらう必要がある」と述べ、公費による全面救済は否定した。一方で、耐震強度が偽造された物件は周辺住民への危険もあり、「住民の安全を最優先にする」(北側国交相)立場から、解体は公共性が高いと判断した。ただ、司法の場で責任が認定された業者らに最終的な負担を求める考えだ。【瀬尾忠義】

毎日新聞 2005年12月5日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/taishin/news/20051205ddm001040128000c.html

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 耐震強度が偽造された物件は周辺住民への危険もあり、「住民の安全を最優先にする」(北側国交相)立場から、解体は公共性が高い』との判断は理解できます。



●3社関連の全物件を点検 国交省、全体像解明で過去5年分

 国交省は、木村建設平成設計ヒューザーに絞り過去5年分の全件洗い出し再点検する方針を固めたようです。

3社関連の全物件を点検 国交省、全体像解明で過去5年分

 耐震強度偽造問題国土交通省は5日までに、偽造が確認された多くのマンションやホテルを手掛けた木村建設熊本県八代市)など3社が、2000年度から04年度までの5年間に施工した全物件について耐震性などを点検する方針を固めた。姉歯秀次一級建築士が構造計算にかかわったかは関係なく調べる。

 姉歯建築士の個人的な問題か、他の建築士も関与しているのかを調べることで、耐震強度偽造問題の全体像を明らかにするのが狙い。

 点検対象にするのは、ホテルなどを建設した木村建設に加え、設計を担当していた木村建設の関連会社である平成設計(東京都千代田区)とヒューザー(同)の合計3社。

 姉歯建築士耐震偽造に関係したとされる約200件については、国や自治体が12月中旬までに結果をまとめる。ヒューザーの物件は、ほとんどが姉歯建築士が関係している。

 建設業者が自治体に毎年提出している工事経歴書を基に3社が5年間に関係した全物件をピックアップ。さらに、木村建設などを監督する権限がある熊本県や、東京都など自治体が、必要に応じて立ち入り検査する。

 国交省自治体とが協力し、構造計算書や構造設計図を点検、偽造の有無や耐震強度を調べる。経歴書の保管義務付けの期間は5年間。同省は、2000年度より古い物件も点検できるかも検討する。

 マンション売り主のシノケン(福岡市)については、木村建設が設計と施工を事実上、担当しており、当面、点検対象から外す考え。(共同)

(12/05 12:24) 産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/051205/sha048.htm

 姉歯秀次一級建築士が構造計算にかかわったかは関係なく調べる」のは当然でしょうし、まずは限られた点検する人数の問題・マンパワーの問題から、火の手の上がったところから集中してチェックするということも理解はできます。

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 うーん、 耐震強度が偽造された物件は周辺住民への危険もあり、「住民の安全を最優先にする」(北側国交相)立場から、解体は公共性が高い』との判断から、マンション解体を全額公費負担にするのも、「木村建設平成設計ヒューザーに絞り過去5年分の全件洗い出し再点検する」のも理解は出来ます。

 しかし、ちょっと待ってよ国交省です。

 なにかおかしいです。




●疑問1:売り主責任も明確化しないで公費を垂れ流していいのか?

 被害に遭われた方には大変申し訳ない言い方ですが、今回の事件は天災ではなく人災です。ましてや、特定の「民」対「民」の商取引に関わる、いわば詐欺事件のようなモノです。

 いままでも数々の詐欺事件や不正事件がありましたし、このような民事事件で公費負担をする場合、もっと慎重な議論が必要です。

 また、例えば昨年の中越地震における被災者への国の対応と比し、今回突出した公費負担を行うことは、行政の平等性の観点からも慎重に議論しなければならないのであります。

 専門家でもあるくまりんさんが『くまりんが見てた!』関連エントリーされていますが、その中でも以下のような民事の原則範囲内で対応せよといった記述があります。

(前略)

 今回の問題の責任は法的にも道徳的にももっとも責任が重いのは売り主のヒューザーにあることは論を待たない。そして構造計算書の偽造を続けた姉歯建築士がそれに続く。被害者への保証と責任はすべて売り主であるヒューザーが負わなければならない。そのことについては木走日記へのコメントでも表明した。しかし冷たい様だが仮にヒューザーにその支払い能力が無いことが判明したとしても被害者の救済に税金を投入するようなことはあってはならないと思う。民事はあくまで民事、取りっパグレは諦めるしかない。勿論金融機関の被害者に対する債権放棄は民事はあくまで民事の原則に納まる。
(後略)

『くまりんが見てた!』
森田建築士はホントに自殺か?

http://ngp-mac.com/kumarin/index.php?p=884

 売り主責任を明確化して法的に責任の所在を明らかにした上での公的資金投入ならばまだ理解できるのですが、国交省の今回固めた方針は、少し拙速すぎてはいないでしょうか?



●疑問2:3社に絞って済むのか?

 そして公的資金をどこまで投入するのか上限がわからないこともおかしな話です。

 今回の事件ですそ野がどこまで広がっているのか全く全貌が明らかになっていないのにもかかわらず、急いで公金投入をするのは大いに疑問です。

 しかるに、国交省は当面3社に絞り徹底的に洗い出し再検査する方針を決めたようですが、この胡散臭い3社に絞ってその中に、第二・第三の姉歯を探し出すということかも知れませんが、これはこれで当然でしょうが、もし国交省が3社以外の不正の可能性を封印するために、スケープゴートとして3社にターゲットを絞りつるし上げる作戦だとすれば、看過できません。

 つまり、問題をこれ以上拡散しないために、国交省は、公金で問題のあったマンションを取り壊すことで被害者や周辺住民の不安をガス抜きし、かつ、わかりやすい「生け贄の羊」として特定3社を徹底的に悪者として取り上げることで、実は事態の収束をはかっているのではないのかという胡散臭い疑惑が生じているのであります。

 木村建設平成設計ヒューザーの流れ以外で、第二第三の姉歯某は本当にいないのでしょうか?

 その点を検証しないうちに、安易に公金投入を決めた国交省の胡散臭さを、みなさまはどう思われますでしょうか?



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか〜民間委託問題にすり替える邪論を排する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051129/1133237798
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(2)〜『しんぶん赤旗』と『報道ステーション』と『JANJAN』にダメ出しする
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051201/1133417121
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(3)〜最大手検査会社日本ERIの醜態
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051201/1133434839
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(4)〜「構造計算のことはわからない」と断言した「総合経営研究所」の胡散臭さ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051203/1133576168
●一にも二にも悪いのは売り主ではないのか(5)〜メディアは傍観者になるな!金亡者達を業界から駆逐せよ!
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051204/1133625004