木走日記

場末の時事評論

戦後政権動向を徹底分析〜阿倍長官に次期総理の目は無し!

●ポスト小泉争いに異変「麻垣平三

 今日(1日)のスポーツ報知から・・・

ポスト小泉争いに異変「麻垣平三
 第3次小泉内閣が31日発足し、注目された小泉純一郎首相(63)の後継争いで明暗が分かれた。「麻垣康三」4氏のうち、福田康夫官房長官(69)が入閣せず、総務相に起用された竹中平蔵氏を加えた「麻垣平三」に絞られた格好だ。

 自ら「改革続行内閣」と称した小泉首相による最後の人事。意中の後継候補を枢要ポストに据えると明言された「麻垣康三」4氏のうち、後継レースにエントリーできたのは麻生太郎(65)、谷垣禎一(60)、安倍晋三(51)の3氏だけだった。

 これまで閣僚経験のない安倍氏を「しっかりと研さんを積み重ねて欲しい」と最重要ポストの官房長官に登用。先週の経済財政諮問会議で一喝し「脱落した」とみられていた谷垣氏も、将来の消費税率引き上げの環境整備を担うことになる財務相を続投させた。

 タカ派とされる麻生氏はあえて外相に起用。対中、対韓関係が冷え込むことを懸念する麻生氏に対し「タカ派がいるぐらいでちょうどいい」と話し、悪化しているアジア外交の修復を任せ、手腕を試そうという狙いをちらつかせた。

 一方、官房長官を去って以降、自らに距離を置く福田康夫氏(69)は入閣させず。福田氏は首相に事前に固辞する意向を伝えていたとされ、首相も「後継の有力候補の一人だ。私だって無役だった。活躍の場はたくさんある」と弁護したが、同じ森派でも安倍氏に大きく存在感で水を開けられるのは確実な情勢だ。

 代わりに急浮上したのが、郵政後のセールスポイントとなる公務員制度改革を担当する総務相に起用された竹中平蔵氏(54)。新たに「麻垣平三」が後継候補に名乗りを上げた格好だ。経済財政諮問会議を仕切る金融・経済財政担当相の与謝野馨氏(67)にも展開次第でチャンスが出てきた。

 こうした“ポスト小泉”レースを演出、閣内での改革競争を加速し、政権の「レームダック(死に体)化」を回避したいのが首相の本音だ。とはいえ解散、人事とカードをすべて使い果たしたのは事実で、求心力を失う危険もあり、その場合「無役の福田が面白い」(閣僚経験者)の声も上がっている。

◆麻生氏熱弁、安倍氏と谷垣氏も遠回しにアピール

 入閣を果たした“ポスト小泉”組からは、控えめな表現ながらも意欲が見え隠れするせりふが飛び出した。

 次期首相に明確に名乗りを上げたのは麻生外相。「意欲は?」との問いに明るい声で「そうでしょうねえ」とひとごとのように言い切った。北朝鮮北方領土などの懸案事項に関する質問にも「即解決する話ではない」と余裕を見せながら回答。持ち時間の3分間を大幅に超える約15分間の熱弁で存在感を示した。

 安倍官房長官はやや緊張した面持ちで、ほおを紅潮させ「特にポスト小泉を意識したことはない」と一応否定。一方で「小泉首相はしっかり職責を果たすことで次世代の存在感を示してほしい、という気持ちだろう」とアピールした。

 谷垣財務相は「1年は長い。どういうポジションにいようと(担当する財政構造改革の)責任は取らないといけない」と遠回しの言い方に思いを込めた。ライバルを横目でにらみながら首相への忠誠心と、改革の成果を競う究極の神経戦―。来年9月の次期総裁レースが、ついに幕を開けた。

スポーツ報知 11月1日
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/news/index.htm

 なんだかなあ、世間ではもうポスト小泉の話題で持ちきりなのでありますが、この報知記事によれば『「麻垣康三」4氏のうち、福田康夫官房長官(69)が入閣せず、総務相に起用された竹中平蔵氏を加えた「麻垣平三」に絞られた格好だ』そうであります。

 ・・・

 麻生太郎(65)、谷垣禎一(60)、安倍晋三(51)の各氏に、総務相に起用された竹中平蔵氏(54)を加えて、「麻垣平三」ですか。

 ふーん。福田康夫氏は可能性無くなったのですね。

 そういえば世間では官房長官になった安倍晋三氏について、これは実は阿倍氏の可能性をつぶす謀略説などもあるようですが、さてこのポスト小泉レース、どう展開するのでしょうかねえ。

 おもしろいですね。

 ・・・

 今回は、過去データつまり戦後日本の政権取りの動向を徹底的に分析してこのポスト小泉を統計的に考察してみましょう。



●日本の戦後60年間の総理大臣の前職を徹底調査してみる

 まずは過去の事例を洗い出してみましょう。

 要は歴代の総理大臣が総理大臣就任直前の内閣でどのような役職に就いていたのか、これを実データで調べてみればよろしいわけです。

 以下の資料を分析すれば大方まとめれそうであります。

歴代内閣総理大臣一覧及び閣僚名簿(派閥別内訳付)
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/7643/naikaku_index.html

 しかし、この表だけでは自民党内の三役(幹事長・総務会長・政調会長)が載ってませんから、こちらの資料も分析させていただきましょう。

歴代執行部
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/seito_giminto_rekidaisshikobu.htm

 少し手間の掛かる作業(汗)でしたが、いくつかの表としてまとめてみました。

 で、まず歴代内閣一覧表です。

■表1:戦後歴代内閣一覧表

No 内閣名 在任期間
01 東久邇宮稔彦王内閣 (昭和20年8月17日〜昭和20年10月9日)
02 幣原喜重郎内閣 (昭和20年10月9日〜昭和21年5月22日)
03 吉田 茂内閣 (昭和21年5月22日〜昭和22年5月24日)
04 片山 哲内閣 (昭和22年5月24日〜昭和23年3月10日)
05 芦田 均内閣 (昭和23年3月10日〜昭和23年10月15日)
06 吉田 茂内閣 (昭和23年10月15日〜昭和29年12月10日)
07 鳩山一郎内閣 (昭和29年12月10日〜昭和31年12月23日)
08 石橋湛山内閣 (昭和31年12月23日〜昭和32年2月25日)
09 岸 信介内閣 (昭和32年2月25日〜昭和35年7月19日)
10 池田勇人内閣 (昭和35年7月19日〜昭和39年11月9日)
11 佐藤榮作内閣 (昭和39年11月9日〜昭和47年7月7日)
12 田中角榮内閣 (昭和47年7月7日〜昭和49年12月9日)
13 三木武夫内閣 (昭和49年12月9日〜昭和51年12月24日)
14 福田赳夫内閣 (昭和51年12月24日〜昭和53年12月7日)
15 大平正芳内閣 (昭和53年12月7日〜昭和55年7月17日)
16 鈴木善幸内閣 (昭和55年7月17日〜昭和57年11月27日)
17 中曽根康弘内閣 (昭和57年11月27日〜昭和62年11月6日)
18 竹下 登内閣 (昭和62年11月6日〜平成元年6月3日)
19 宇野宗佑内閣 (平成元年6月3日〜平成元年8月10日)
20 海部俊樹内閣 (平成元年8月10日〜平成3年11月5日)
21 宮澤喜一内閣 (平成3年11月5日〜平成5年8月9日)
22 細川護煕内閣 (平成5年8月9日〜6年4月28日)
23 羽田 孜内閣 (平成6年4月28日〜6年6月30日)
24 村山富市内閣 (平成6年6月30日〜8年1月11日)
25 橋本龍太郎内閣 (平成8年1月11日〜平成10年7月30日)
26 小渕恵三内閣 (平成10年7月30日〜平成12年4月5日)
27 森 喜朗内閣 (平成12年4月5日〜平成13年4月26日)
28 小泉純一郎内閣 (平成13年4月26日〜)

注意:吉田茂氏は返り咲きがあるので第一次と第二次で2回カウントされています。

 表1のとおり、終戦直後の東久邇宮稔彦王内閣から小泉純一郎内閣まで、日本では戦後述べ28人の内閣総理大臣が歴任してきたわけであります。

 で各内閣での直前での次期総理大臣の役職等を付加したのが次の表です。

■表2:戦後歴代総理前職一覧表

No 首相名 前内閣 前内閣での役職
01 東久邇宮稔彦王 終戦時内閣>
02 幣原喜重郎 東久邇宮稔彦王内閣 −−野
03 吉田 茂 幣原喜重郎内閣 外務大臣
04 片山 哲 吉田 茂内閣 −−野
05 芦田 均 片山 哲内閣 外務大臣
06 吉田 茂 芦田 均内閣 −−野
07 鳩山一郎 吉田 茂内閣 −−−
08 石橋湛山 鳩山一郎内閣 通商産業大臣
09 岸 信介 石橋湛山内閣 外務大臣
10 池田勇人 岸 信介内閣 通商産業大臣
11 佐藤榮作 池田勇人内閣 −−−
12 田中角榮 佐藤榮作内閣 通商産業大臣
13 三木武夫 田中角榮内閣 −−−
14 福田赳夫 三木武夫内閣 副総理
15 大平正芳 福田赳夫内閣 幹事長
16 鈴木善幸 大平正芳内閣 総務会長
17 中曽根康弘 鈴木善幸内閣 行政管理庁長官
18 竹下 登 中曽根康弘内閣 幹事長
19 宇野宗佑 竹下 登内閣 外務大臣
20 海部俊樹 宇野宗佑内閣 −−−
21 宮澤喜一 海部俊樹内閣 −−−
22 細川護煕 宮澤喜一内閣 −−野
23 羽田 孜 細川護煕内閣 外務大臣
24 村山富市 羽田 孜内閣 −−野
25 橋本龍太郎 村山富市内閣 通商産業大臣
26 小渕恵三 橋本龍太郎内閣 外務大臣
27 森 喜朗 小渕恵三内閣 幹事長
28 小泉純一郎 森 喜朗内閣 −−−

注意:前内閣での役職で−−−は与党内閣外、−−野は野党を意味します。

 いかがでしょうか。

 これは興味深い結果になりました。この表を元に、終戦時の東久邇宮稔彦王首相を除く27人の前職(前内閣での役職)を整理したのが以下の表です。

■表3:戦後歴代総理前職別分布表

前職 人数 首相名
閣外(与党) 6人 鳩山・佐藤・三木・海部・宮澤・小泉
外務大臣 6人 吉田・芦田・岸・宇野・羽田・小渕
閣外(野党) 5人 幣原・片山・吉田・細川・村山
通産大臣 4人 石橋・池田・田中・橋本
幹事長 3人 大平・竹下・森
総務会長 1人 鈴木
副総理 1人 福田
行政管理庁長官 1人 中曽根
27人

 以上過去データを分析集計してみましたが、これはおもしろいですね。



●過去データからは官房長官職の目は無し

 あくまで過去のデータですが、興味深い結果です。

 まず、戦後日本で前職が大臣で総理大臣になれたのは、12人いますが大蔵(現財務)大臣や官房長官で総理に直後になれた政治家は皆無です。一人もいません。

 12人中10人までが外務大臣(6人)か通産(現経産)大臣(4人)だけで、その他は中曽根氏の行政管理庁長官(1人)と福田氏の副総理(1人)であります。

 また自民党三役で総理大臣になれたのは、幹事長(3人)と総務会長(1人)の4名だけで、政調会長から総理大臣になれたのも皆無です。

 また閣外にいて総理大臣になれたのは小泉氏を含めて11人おりますが、そのうち5人は実質野党からの政権奪取ですから、与党内閣外からなれたのは6人になります。

 以上をまとめてみました。

■表4 ケース分類別分布表

ケース分類(現職で該当する人) 人数 過去の割合
 1:前職が大臣で総理大臣になれた人・・・ 12人     44.4%
   うち外務大臣(麻生氏)・・・・・・・  6人     22.2%
   うち通産大臣(二階氏)・・・・・・・  4人     14.8%
   うち行革担当(竹中氏)・・・・・・・  1人      3.7%
   うち副総理(該当者無)・・・・・・・  1人      3.7%
   うち官房長官阿倍氏)・・・・・・・  0人      0.0%
   うち大蔵大臣(谷垣氏)・・・・・・・  0人      0.0%
 2:前職が党三役で総理大臣になれた人・・  4人     14.8%
   うち幹事長(武部氏)・・・・・・・・  3人     11.1%
   うち総務会長(久間氏)・・・・・・・  1人      3.7%
 3:前職が閣外で総理大臣になれた人・・・ 11人     40.7%
   うち与党(福田氏他)・・・・・・・・  6人     22.2%
   うち野党(前原代表他)・・・・・・・  5人     18.5%

 まあ、あくまで過去データの分析結果ですが、ここからはそれに基づき予測してみましょう。

 「麻垣平三」の4人の中では、外相である麻生太郎氏が大きくリードして、竹中平蔵氏に僅かに可能性があるぐらいです。

 残念ながら、財務(旧大蔵)大臣の谷垣禎一氏と官房長官安倍晋三氏の目はありません。

 それよりは閣外になった福田康夫氏や経産大臣の二階氏のほうが可能性はあるようです。

 まあ、偉大なるYESマン幹事長や議席数の差から前原民主代表など現実的には可能性がほとんど無い人を、排除して過去データだけで予想すると、

 本命麻生氏、対抗に福田・竹中、大穴で二階氏というところでしょうか。

 もちろん、あくまで統計的いち考察に過ぎません。

 本日は、戦後日本の政権取りの動向を徹底的に分析してポスト小泉を統計的に考察してみました。



 この問題に対するみなさまの考察の一助になれば幸いです。



(木走まさみず)