木走日記

場末の時事評論

米戦略国際問題研究所から「ねえ次のコイズミまだあー」と揶揄されるこの国の内閣の短命さ

●国内から「政権たらい回し」と酷評〜海外からは「次のコイズミは誰か」と注目

 2日付け時事通信記事から。

「政権たらい回し」を酷評=民間9団体、自公政権実績を検証

 有識者でつくる「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)は2日午後、都内のホテルで自民・公明の連立与党が政権を担った4年間を評価する「政権実績検証大会」を開催し、経済団体やシンクタンクなど9団体が「政権運営」と「政策」について採点した。政権運営に関しては、任期途中の首相退陣が相次ぎ、国民の審判を受けないまま政権の「たらい回し」が続いたことに批判が集中、辛口の評価が並んだ。
 検証大会は、2005年9月の「郵政選挙」で与党が掲げたマニフェスト政権公約)の達成状況をチェックし、次期衆院選有権者の判断に役立てるのが目的。経済同友会全国知事会、連合、日本青年会議所、言論NPO、PHP総研、日本総研構想日本、チーム・ポリシーウォッチの9団体が参加した。 
 政権運営に関して最も評価が厳しかったのは、民主党の支持組織である連合で、100点満点で20点。安倍晋三元首相、福田康夫前首相と任期途中の政権投げ出しが続いたことは「政治の停滞と国民不信を招いた」と断じた。他のどの団体も、選挙を経ない首相交代が政権の弱体化を招いたとして批判的で、最高点の全国知事会の評価も58点にとどまった。政策に関しても「内閣交代の際に政府・与党内でマニフェストの継承が再確認されていない」(経済同友会)といった理由から評価は一様に厳しく、最低は連合の30点、最高はPHP総研の58点だった。
 個別政策では、郵政民営化の実現に一定の評価が寄せられたほか、全国知事会地方交付税の増額を歓迎。一方、「財政面のみを優先させ、結果的に社会保障機能を弱体化させた」(連合)、「歳出削減の取り組みが後退した」(言論NPO)などと厳しい意見が目立った。(2009/08/02-17:14)

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009080200103

 「任期途中の首相退陣が相次ぎ、国民の審判を受けないまま政権の「たらい回し」が続いたことに批判が集中、辛口の評価が並んだ」とありますが、ここ4年で小泉・安倍・福田・麻生と4人の総理大臣でありますから、まあこの批判は当然でしょう。

 民主だ自民だと言う前に総理大臣の寿命が1年しか持たないというのは異常国家と表現してもよろしいでしょう。

 理由はどうあれ、こうコロコロ最高責任者が変わってしまっては、民間会社にたとえてもこれで中期的課題をこなせというほうが無理なのであります、会社の赤字は膨らむばかりであります。

 ましてや一国の首相が1年しか持たないというこのような混乱が続けば、一貫した外交・防衛政策が求められる国際外交舞台で日本の国益を中期的に守ることなどとても難しいことでしょう。

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 電子化されていないようですが、2日付けの日経新聞紙面にて、米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部副部長 ニコラス・セーチェーニ氏が、米国からみた衆院選の今回の注目点をズバリ「次のコイズミは誰か」として米国の同盟国として日本の本格長期政権を希望しています、大変興味深いのでテキスト化してここでご紹介。

 次のコイズミは誰か〜米国からみた衆院選

 米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部副部長 ニコラス・セーチェーニ氏

 民主党マニフェストでは日米関係の表現を修正した点に注目している。日米地位協定改定は従来の「着手」から「提起」に、米軍再編は「見直しの方向」とあいまいにした。中道路線へ動いたという印象だ。
 背景には、1.外交問題が争点になるのを避けた、2.党内の意見調整が終わらなかった、3.政権政党を視野に入れた柔軟性を持つようになった、の3つの理由があったとみる。
 もし民主党政権が誕生するなら、明確な政策を示す必要がある。マニフェストの「対等な日米同盟関係」とは何を指すのか。思いやり予算やインド洋給油問題はどうなるのか。何か新たな枠組みをつくりたいのか。明確なビジョンがなければ日米関係の政策課題をつくることはできない。
 自民党は日米関係の重要性をうたい、対北朝鮮集団的自衛権など各論も我々がよく知る内容だ。自民党の方が民主党よりも米国にとって良いということではなく、ワシントンからみて予測しやすいということだ。
 今回の衆院選で米国が知りたいのは、選挙が終われば「ねじれ国会」による問題が解決するかどうかだと思う。アフガニスタン、中東情勢、経済問題など課題は多く、オバマ政権は多忙だ。
 日本と連携したくても、短期政権ばかりなら「日本にエネルギーを使うのは無駄だ」との考えが浮上する可能性がある。混乱が続けば政権与党が自民党であれ民主党であれ日米関係は難しくなる。小泉政権が5年超も続いたことは、日本でも長期政権が可能であることを示した。次のコイズミは誰なのかに米国は注目している。(ワシントン=弟子丸幸子)

 日本経済新聞 2009年8月2日(日曜日) 紙面5頁 マニフェスト特集 より抜粋

 セーチェーニ氏の指摘するオバマ政権が「日本と連携したくても、短期政権ばかりなら「日本にエネルギーを使うのは無駄だ」との考えが浮上する可能性」というのは説得力があります、現に2月ほど前サミット直前にオバマ政権関係者の間で「G8には日本とカナダはもはやいらない」といった怪文書というかメモが出回ったという報道が一部でありましたが、毎年のように首相が変わっては、アメリカでなくても日本との外交交渉は「政権与党が自民党であれ民主党であれ日米関係は難しくなる」と判断することでしょう。

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●平均5年以上の主要国トップ在職期間

 いまさら感はありますが、戦後の主要国の政治トップの在職期間を検証しておきましょう。

 まずは任期4年の大統領制アメリカから。

■表1:戦後歴代米国大統領一覧表

No 大統領名 在職期間
01 ハリー・トルーマン(Harry S. Truman) 1945年4月12日〜1953年1月20日
02 ドワイト・アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower) 1953年1月20日〜1961年1月20日
03 ジョン・ケネディ(John Fitzgerald Kennedy) 1961年1月20日〜1963年11月22日
04 リンドン・ジョンソン(Lyndon Baines Johnson) 1963年11月22日〜1969年1月20日
05 リチャード・ニクソン(Richard Milhouse Nixon) 1969年1月20日〜1974年8月9日
06 ジェラルド・フォード(Gerald Rudolph Ford Jr.) 1974年8月9日〜1977年1月20日
07 ジミー・カーター(James Earl Carter) 1977年1月20日〜1981年1月20日
08 ロナルド・レーガン(Ronald Wilson Reagan) 1981年1月20日〜1989年1月20日
09 ジョージ・H・W・ブッシュ(George Herbert Walker Bush) 1989年1月20日〜1993年1月20日
10 ビル・クリントン(William Jefferson Clinton) 1993年1月20日〜2001年1月20日
11 ジョージ・W・ブッシュ(George Walker Bush) 2001年1月20日〜2009年1月20日
12 バラク・オバマ(Barack Hussein Obama II) 2009年1月20日

 現在のバラク・オバマ大統領はトルーマンから数えて戦後12代目の大統領であり、過去11人の平均在職期間は約5.8年であります。

 同じく大統領制のフランスから。

■表2:戦後歴代フランス大統領一覧表

No 大統領名 在職期間
01 ヴァンサン・オリオール(Jules-Vincent Auriol) 1947年1月16日〜1954年1月16日
02 ルネ・コティ(René Jules Gustave Coty) 1954年1月16日〜1959年1月8日
03 シャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle) 1959年1月8日〜1969年4月28日
04 ジョルジュ・ポンピドゥー(Georges Pompidou) 1969年6月15日〜1974年4月2日
05 ヴァレリー・ジスカールデスタン(Valéry Giscard d'Estaing) 1974年5月19日〜1981年5月10日
06 フランソワ・ミッテラン(François Mitterrand) 1981年5月10日〜1995年5月17日
07 ジャック・シラク(Jacques Chirac) 1995年5月17日〜2007年5月16日
08 ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy) 2007年5月16日〜

 フランスは戦後の混乱期はありましたが、第四共和制・第五共和制を通じて現在のサルコジ大統領が8代目であり、過去七人の
平均在職期間は約7.3年であります。

 もちろん大統領が国家元首であるこれらの国は固定期間任期制を取っています、では単純に日本と同様、国家元首ではない首相が政治の最高責任者でありその任期は不定期な、議会制立憲君主制を取るイギリスの首相を見てみましょう。

■表3:戦後歴代英国首相一覧表

No 首相名 在任期間
01 クレメント・アトリー(Clement Attlee) 1945年7月26日〜1951年10月26日
02 ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill) 1951年10月26日〜1955年4月7日
03 アンソニー・イーデン(Anthony Eden) 1955年4月7日〜1957年1月10日
04 ハロルド・マクミラン(Harold Macmillan) 1957年1月10日〜1963年10月19日
05 アレック・ダグラス=ヒューム(Alec Douglas-Home) 1963年10月19日〜1964年10月16日
06 ハロルド・ウィルソン(Harold Wilson) 1964年10月16日〜1970年6月19日
07 エドワード・ヒース(Edward Heath) 1970年6月19日〜1974年3月4日
08 ハロルド・ウィルソン(Harold Wilson) 1974年3月4日〜1976年4月5日
09 ジェームズ・キャラハン(James Callaghan) 1976年4月5日〜1979年5月4日
10 マーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher) 1979年5月4日〜1990年11月28日
11 ジョン・メージャー(John Major) 1990年11月28日〜1997年5月2日
12 トニー・ブレア(Tony Blair) 1997年5月2日〜2007年6月27日
13 ゴードン・ブラウン(Gordon Brown) 2007年6月27日〜

 現在のブラウン首相が戦後13代目であります、過去12人の首相の在職期間の平均は約5.2年であります。

 大統領制アメリカの約5.8年、フランスの約7.3年に比べればさすがに短いですが、それでも英国首相は戦後平均すると5年は少なくとも在職してきたことになります。

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●みよ、この国の内閣の短命さを!

 で、日本。

■表4:戦後歴代日本国内閣一覧表

No 内閣名 在任期間
01 東久邇宮稔彦王内閣 (昭和20年8月17日〜昭和20年10月9日)
02 幣原喜重郎内閣 (昭和20年10月9日〜昭和21年5月22日)
03 吉田 茂内閣 (昭和21年5月22日〜昭和22年5月24日)
04 片山 哲内閣 (昭和22年5月24日〜昭和23年3月10日)
05 芦田 均内閣 (昭和23年3月10日〜昭和23年10月15日)
06 吉田 茂内閣 (昭和23年10月15日〜昭和29年12月10日)
07 鳩山一郎内閣 (昭和29年12月10日〜昭和31年12月23日)
08 石橋湛山内閣 (昭和31年12月23日〜昭和32年2月25日)
09 岸 信介内閣 (昭和32年2月25日〜昭和35年7月19日)
10 池田勇人内閣 (昭和35年7月19日〜昭和39年11月9日)
11 佐藤榮作内閣 (昭和39年11月9日〜昭和47年7月7日)
12 田中角榮内閣 (昭和47年7月7日〜昭和49年12月9日)
13 三木武夫内閣 (昭和49年12月9日〜昭和51年12月24日)
14 福田赳夫内閣 (昭和51年12月24日〜昭和53年12月7日)
15 大平正芳内閣 (昭和53年12月7日〜昭和55年7月17日)
16 鈴木善幸内閣 (昭和55年7月17日〜昭和57年11月27日)
17 中曽根康弘内閣 (昭和57年11月27日〜昭和62年11月6日)
18 竹下 登内閣 (昭和62年11月6日〜平成元年6月3日)
19 宇野宗佑内閣 (平成元年6月3日〜平成元年8月10日)
20 海部俊樹内閣 (平成元年8月10日〜平成3年11月5日)
21 宮澤喜一内閣 (平成3年11月5日〜平成5年8月9日)
22 細川護煕内閣 (平成5年8月9日〜6年4月28日)
23 羽田 孜内閣 (平成6年4月28日〜6年6月30日)
24 村山富市内閣 (平成6年6月30日〜8年1月11日)
25 橋本龍太郎内閣 (平成8年1月11日〜平成10年7月30日)
26 小渕恵三内閣 (平成10年7月30日〜平成12年4月5日)
27 森 喜朗内閣 (平成12年4月5日〜平成13年4月26日)
28 小泉純一郎内閣 (平成13年4月26日〜平成18年9月26日)
29 安倍晋三内閣 (平成18年9月26日〜平成19年9月26日)
30 福田康夫内閣 (平成19年9月26日〜平成20年9月24日)
31 麻生太郎内閣 (平成20年9月24日〜)

注意:吉田茂氏は返り咲きがあるので第一次と第二次で2回カウントされています。

 麻生政権が実に31代目、戦後平均の首相在職期間は、過去30人で平均約2.1年であります。

 特に平成に入ってからは、宇野さんから福田さんまで実に12人、平均約1.7年と2年を切ってしまっているわけです。

 もし麻生政権がこの選挙の結果終わるとすれば、さらに日本の首相の平均寿命は短くなるでしょう。

 ・・・

 ふう。

 民主だ自民だという政権選択以前にこの政治トップの異様な短命さは、どうにかならないものでしょうか、これでは中期的政策も講じられないでしょうし、国際政治で日本の発言力を強めることなど不可能です。

 第一これじゃ4年後の約束(マニフェスト)なんて守れませんでしょ、平均約1.7年じゃ4年後には自分がいない可能性が高いんですもの・・・

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 本格的長期政権を望みたいものです。



(木走まさみず)