木走日記

場末の時事評論

「汚れた鳩」と「きれいな鷹」〜鈴木宗男と小泉純一郎

kibashiri2005-10-08




●外務省:ムネオ・マニュアルの存在認める

 今日の毎日新聞朝刊の小さな記事から・・・

外務省:ムネオ・マニュアルの存在認める

 外務省は7日、新党大地鈴木宗男衆院議員への対応マニュアルを作成したことに関し同氏から内容証明郵便で事実確認を求められたのを受け、「(マニュアルとして)作成したものを幹部に示したのは事実」との回答を同氏あてに郵送した。

 回答書では、鈴木氏の逮捕後に政と官の適正な関係を求めた「02年の閣僚懇談会申し合わせ」の趣旨を踏まえてマニュアルを作成したことを認めたうえで、「内部文書で、対外的に公表していない」と説明した。【大貫智子】

毎日新聞 2005年10月8日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20051008ddm005010016000c.html

 やっぱり、外務省は認めましたか『ムネオ・マニュアル』の存在を・・・

 ・・・

 それにしても、外務省のこの素早い対応には呆れました。
 だって鈴木宗男氏が外務省に回答要求したのは昨日のことですよ。

鈴木宗男氏:マニュアル作成で外務省に回答要求

 外務省が、新党大地鈴木宗男衆院議員への対応マニュアルを作成していたことを受け、鈴木氏は6日、同省の塩尻孝二郎官房長あてに、(1)作成した事実があるか(2)配布対象範囲−−の2点について36時間以内に文書で回答するよう求める通知書を内容証明郵便で送付した。

毎日新聞 2005年10月7日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20051007ddm005010025000c.html

 ハハーン、なるほどムネオ先生が「36時間以内に文書で回答するよう」指定したので大慌てで回答したのですね・・・

 それにしても笑止ですね。
 外務省さんは本当にムネオ先生が怖いんですねえ(苦笑
 よっぽどばらしてもらっては困る痛いこと握られているのでしょうか?

 よーし、今日のマクラ話はこのムネオマニュアルの件を与太話風に検証してみちゃいましょうか。



●早くも恫喝復活だぁ!!〜サンスポは「ハト」派ムネオ先生に失礼ですぞ!

 我らがムネオ先生は、自他共に認める「ハト」派ですぞ。
 そんな恫喝紛いなことするわけがありません。

 そもそも、9月30日にこのマニュアルの存在を一部報道で知った宗男氏は「緊急のお知らせ」を報道各社にファクス送信したのがことの発端でありますが・・・

 10月1日サンケイスポーツの失礼な記事から・・・

宗男議員“宣戦布告”!!外務省の対応マニュアル作成に憤慨

早くも恫喝復活だぁ!! 外務省=写真右下=内に権勢を誇りながら、汚職事件で刑事被告人となった鈴木宗男衆院議員(57)=顔写真=が衆院選で“復活”したため、同省が幹部職員向けに“ムネオ対策”マニュアルを作成、配布したことが30日までにわかった。「会食は当面辞退を」など“触らぬ神に祟りなし”の内容。これを知った宗男氏は「今後、私の知る外務省の実態を明らかにする」と怒り心頭でブチ上げたのだ。

鈴木宗男衆議院議員からの依頼等に対する対応ぶり」。こう題した(秘)文書が外務省内で作成・配布されていた。

例えば、宗男氏からの説明要求に対しては特別扱いせず「原則的に対応する」として、「強い意見表明があった場合などは、官房総務課に相談する」よう指示。

また、会食や陳情への立ち会いなど「事務的な説明を超える接触」は、原則行わないと指導。宗男氏側から会食の誘いがあった場合は、過去の経緯を説明したうえで「当面辞退させていただきたい」という回答例も明記。事実上の“特別扱い禁止命令”“親しいお付き合い拒否通達”だ。

「やりとり内容は文書にして報告する」とも。念には念を入れた宗男氏対策。外務省幹部は「鈴木氏から当選後、働きかけがあったという事実はまだない」としているが、したたかに復活した宗男氏へのビビりぶりがアリアリだ。

宗男氏はかつて「影の外相」と呼ばれ、外交政策や人事を通じて同省に強い影響力を行使。北方四島支援事業に絡む「ムネオハウス」(国後島の「友好の家」)入札疑惑など外務省関連の疑惑が噴出して平成14年3月に自民党を離党。直後の同6月、あっせん収賄容疑などで逮捕された。因縁の間柄なのだ。

このマニュアルの存在を一部報道で知った宗男氏は30日、「緊急のお知らせ」を報道各社にファクス送信し、「報道が事実なら、外務官僚が行政府と立法府の基本的関係を履き違えている」と怒り大バクハツ。

さらに「今になって考えると、私は(過去に)守ってはいけない外務官僚の特権を守ったり、スキャンダル隠しに手を貸してしまったりしたことを深く反省」としながら「今後は国会の場やマスコミなどを通じて、私の知る外務官僚、外務省の組織の実態を明らかにし、国民の知る権利を確保するために尽力する」と宣言。早くも得意だった外務省への“恫喝”を再開したとも言えそうだ。

宗男氏は首相指名選挙で小泉首相に投票し、「圧勝した力で北方領土問題を少しでも動かしてほしいという願いを込めた」と説明するなど、外交政策への関与には意欲マンマン。
中国の恫喝による腰抜け外交から人事刷新で脱却を図る外務省は、宗男氏の呪縛からも解き放たれるか…。

2005.10.01 更新 サンケイスポーツ
http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200510/sha2005100103.html

 何でしょう、この意図的な失礼な記事構成及び文章は。

 サンスポは「ハト」派ムネオ先生に失礼ですぞ!(怒

早くも恫喝復活だぁ!!
・・・
これを知った宗男氏は「今後、私の知る外務省の実態を明らかにする」と怒り心頭でブチ上げたのだ。
・・・
「報道が事実なら、外務官僚が行政府と立法府の基本的関係を履き違えている」と怒り大バクハツ。
・・・
早くも得意だった外務省への“恫喝”を再開したとも言えそうだ。
・・・
外交政策への関与には意欲マンマン。

 「早くも恫喝復活だぁ!!」とは何ですか、健全な抗議声明でありましょう。

「怒り心頭でブチ上げた」だの「怒り大バクハツ」だのずいぶん偏向した悪意のある描写ですね。

 揚げ句は記事の結語、

中国の恫喝による腰抜け外交から人事刷新で脱却を図る外務省は、宗男氏の呪縛からも解き放たれるか…。

 プンプンですぞ!(怒り

 「ハト派」ムネオ先生の健全な抗議活動を中国の恫喝と一緒にするなと言いたいです。
 そりゃムネオ先生の場合、ちょっと「汚れたハト」かも知れないけれど(爆笑

 不肖・木走の『木走日記』では根拠の無い戯れ言にはだまされませんぞ。



●「ムネオ日記」をアツク読め!〜「緊急のお知らせ」だって・・・ん?

 ムネオ先生もブログ書いているんです。そこに先生の純粋でピュアなこの国を憂う一人の「鳩派」政治家としての心情が綴られていますぞ。

2005年10月4日(火) 鈴 木 宗 男

 昨日、外務省の谷内事務次官の記者会見で、「ムネオ対応マニュアル」なるものについて質問が出たことが、新聞に載ったり、テレビで流されているが、是非ともそのマニュアルなるものを見てみたいものである。私としては、報道では知っているが、現物げんぶつを見ていないので何ともいえない。外務省に心ある人がいるなら、是非とも「リーク」してほしいものである。
 私は特に気にしていないが、マスコミ関係者が取材に来るので戸惑っている。外務省には、どうか私につかうエネルギーを、八方ふさがりの外交を打開することに向け、国益の為に十分な力を発揮して戴きたいと心から願うものである。国民もまた、同じ考えと思うのだが。
 「新党大地」は、単位のつかないもの、お金で計算できない価値・重みを、選挙中訴えてきた。それは「優しさ」「思いやり」「慈いつくしみ」「愛情」である。怨念とか私怨とは全く関係ない、血の、心の通った政治を、私は訴えていく。必ず時が解決してくれることであろう。
 外務省にも一生懸命国益を考え、体を張って頑張っている人を、私は何人も見てきたし、尊敬もしている。真面目に働いている人が公平に評価される社会や組織にすることが、また政治家の務めではないかと思う。今回話題を提供してくれた、外務省の一部の人に感謝したい。
 根室沖でのサンマ船当て逃げ事故は、イスラエル船籍ZIM社のイダン・イフェル会長がイスラエル日本大使館に謝罪に行き、同社の社長、日本支社長が本日海上保安庁に謝罪、更に今後のことについて述べられているが、スピード解決で本当に良かった。亡くなられた方々、ご遺族のことを考えると、なお心が痛むが、船の持ち主であるイスラエル側の潔さも評価したい。
 同時に、今回の事故で海上保安庁はじめ、根室海上保安部の皆さんの懸命な努力も忘れてはいけない。特に、横浜、横須賀にある特殊救難隊員と巡視船潜水士の活躍により、奇跡的に一人が救助されたのであり、この厳粛な事実を多くの人にわかってもらいたい。海の守りをする海上保安庁の皆さんに、心から感謝したい。

「ムネオ日記」
http://www.muneo.gr.jp/html/diary200510.html

 外務省の役人達はこのムネオ先生の大いなる慈愛に満ちたコメントを良く読みなさい。
 先生は恫喝などしていません、ただ「私は特に気にしていないが、マスコミ関係者が取材に来るので戸惑っている」だけなのであります。

 先生が選挙中訴えてきたことは、それは「優しさ」「思いやり」「慈いつくしみ」「愛情」でありますよ。

 先生の心は海のように深く大きいのであり「怨念とか私怨とは全く関係ない」のです。
 ・・・

 え? じゃあなんでマスコミ各社に『緊急のお知らせ』なんかFAXしたんだって?

 ・・・(汗

 そ、それは「外務官僚が行政府と立法府の基本的関係を履き違えて」ムネオマニュアルとかへなちょこの文書を作るから先生はたしなめてらっしゃるんです、たぶん。

 『緊急のお知らせ』は新党大地公式サイトで公開されていますぞ。

緊急のお知らせ

平成17年10月6日

1.
外務省が「鈴木宗男衆議院議員からの依頼等に関する対応振り」という文書を作成したという報道については承知している。

2.
憲法第43条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と規定されていることからも明らかなように、私を含む国会議員は全国民を代表する立場にいる。外務官僚が自己保身のため特定の国会議員を優遇する、あるいは逆に特定の国会議員を忌避するということは、全国民の代表者である国会議員を軽視することだ。1.の報道が事実であるとするならば、外務官僚が行政府と立法府の基本的関係を履き違えているとしか思えない。

3.
私はこれまで、外務省の組織、職員を守ることが日本の外交活動のために必要と思って行動してきた。しかし、今になって考えると、国益や国民の知る権利の観点から私は守ってはいけない外務官僚の特権を守ったり、スキャンダル隠しに手を貸してしまったことを深く反省している。今後は国会の場やマスコミ等を通じ、私の知る外務官僚、外務省の組織の実態を明らかにし、国民の知る権利を確保するために尽力するので、皆様の御理解と御支持を得たい。

以上

新党大地 代表
衆議院議員
鈴木 宗男

新党大地 公式サイト より
http://www.muneo.gr.jp/kinkyu.html

 どうです。この正当な抗議内容。

外務官僚が自己保身のため特定の国会議員を優遇する、あるいは逆に特定の国会議員を忌避するということは、全国民の代表者である国会議員を軽視することだ。

 うーん、素晴らしい正論でありましょう。

 ・・・

 ん?

 3.は、「恫喝」そのものじゃないかって?

私はこれまで、外務省の組織、職員を守ることが日本の外交活動のために必要と思って行動してきた。しかし、今になって考えると、国益や国民の知る権利の観点から私は守ってはいけない外務官僚の特権を守ったり、スキャンダル隠しに手を貸してしまったことを深く反省している。今後は国会の場やマスコミ等を通じ、私の知る外務官僚、外務省の組織の実態を明らかにし、国民の知る権利を確保するために尽力するので、皆様の御理解と御支持を得たい。

 ・・・(汗

 えーっと、こ、これはですね・・・

 「私の知る外務官僚、外務省の組織の実態を明らかにし、国民の知る権利を確保するために尽力する」のであり、決して外務省を「恫喝」しているわけじゃないのです。(たぶん)

 だって、先生は「汚れた」とはいえ「鳩派」なんですから。
 (↑理由になってないじゃないか(苦笑))

 ・・・

 なんか、マクラ話が長くなってしまいました(苦笑



●「汚れた鳩」と「きれいな鷹」〜鈴木宗男小泉純一郎

 で、ここから真面目な話をさせていただきます。

 鈴木宗男氏とともに逮捕された元外交官の佐藤優氏が国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社)という暴露本を出版したのであります。

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて 佐藤 優 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104752010/249-7085663-6919510

 で、田原総一朗が週間朝日のコラムで興味深いこの本の書評を書いています。

田原総一朗のギロン堂
    〜「汚れた鳩」から「きれいな鷹」の時代へ〜

 いま、ジャーナリストたちの間で話題を独占し、売れ行きがすこぶる好調なのが「国家の罠」(新潮社)。著者で元外交官の佐藤優は、「すごい」という形容詞が当てはまる数少ない`情報のプロ`である。


(中略)

 その佐藤が面白いことを言った。国民はきれいな鳩で、政治もきれいな鳩であることを望んでいる、と。もちろんハト派タカ派のハトのことである。
 そこからの佐藤の説明が面白い。「鳩」は通常の手段を使っても、権力など握れない。権力を取ろうとすれば、汚れるしかないというのだ。  

(中略)

 汚れた鳩。それが田中角栄竹下登金丸信、そして鈴木宗男に至る系譜を指していることは疑う余地はない。  「ところが」と、佐藤は言う。  国民は、初めのうちは、鳩が汚れるのは仕方がないと大目に見てきたが、だんだん汚れた鳩にうんざりしだした。拒否反応を覚えた国民は「きれい」な部分に重点を置く。「汚れた鳩」よりも、「きれいな鷹」を求めるようになったのだ。佐藤はそう指摘した。  鈴木宗男の逮捕、橋本龍太郎平成研究会(旧橋本派)の幹部が絡む日歯連日本歯科医師連盟)からの1億円のヤミ献金問題などで、「汚れた鳩」は沈んでいった。  代わりに浮かび上がったのが「きれいな鷹」。小泉純一郎、それに続く安倍晋三ら高い支持率を誇る政治家たちである。  確かに、時代が「汚れた鳩」から「きれいな鷹」に移り変わったということなのだろう。  佐藤はさらに鋭い指摘をした。「汚れた鳩」がいなくなって、次に汚れるのは鷹であるが、「汚れた鷹」ほど危険極まりない存在はないというのである。

週刊朝日 平成17年7月15日号】 より抜粋
http://www.muneo.gr.jp/html/index.html

 「汚れた鳩」とはおもしろい表現です。旧経世会の系譜、田中角栄竹下登金丸信、そして鈴木宗男に至る系譜ですが、確かに外交政策では「親中」「ハト派」路線であり、穏健派なのですが、いかんせんそのイメージは汚職まみれ、不正まみれでありまして、小泉率いる「きれいな鷹」達に、すっかり時代が移り変わったのは否めないでしょう。
 現在、旧経世会は壊滅的状態であり、その意味で鈴木宗男こそ最後の「汚れた鳩」なのかも知れません。

経世会の落日に一つの時代の終焉を見る〜積年の闘争に勝利した小泉純一郎
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050825/1124950177

 旧福田派(現森派)は田中派全盛の時代から自民党傍流の地位に追いやられていたことから当時の田中派独占の利権からは確かに距離を置いていました。また現在の小泉純一郎安倍晋三 に至るその系譜は、利権がらみの汚職とは無縁でしかし外交政策的には強硬派であり、まさに「きれいな鷹」なのでしょう。

 時代が「汚れた鳩」から「きれいな鷹」に移り変わったということなのでしょう。

 佐藤の鋭い指摘、「汚れた鳩」がいなくなって、次に汚れるのは鷹であるが、「汚れた鷹」ほど危険極まりない存在はない、には安易に同意できませんし、いまさら「汚れた鳩」達に群をなしてもらって時代を逆行されても困るのであります。

 しかし、鈴木宗男という一人の男は「汚れた鳩」の最後の生き残りとしての存在価値はますます増しているように思えるのです。

 「汚れた公僕達」が「汚れた鳩」の復活にマニュアルまでつくっておびえるのも、大いに頷けるのであります。

 とりあえず鈴木宗男氏を少し応援したくなるのは、私だけでしょうか?



(木走まさみず)