木走日記

場末の時事評論

大阪市役所および職員を糾弾する!〜この国の公僕は死んだのか

●ふざけるな大阪市役所!大阪市職員!

 大阪市が、市政改革マニフェスト案を発表しました。

大阪市役所ホームページ
市政改革マニフェスト(市政改革本部案)について
http://www.city.osaka.jp/keieikikakushitsu/kaikaku/kaiken/shiryo/mani20050927.html

 昨年11月に職員のカラ残業が発覚して以来、条例に規定のないヤミ退職金・年金、五種類のヤミ昇給厚遇の福利厚生費ヤミ組合専従などなど、民間企業では考えられない数々の不正が後から後から発覚しているでたらめな大阪市政であります。

 優良企業でもありえないこのような高待遇や不正が財政破綻寸前の自治体で行われているのでは、納税者はたまったものではありません。

 今日の朝日新聞産経新聞では両紙にしては珍しく、同質の怒りの論調で大阪市役所ならびに職員を糾弾しています。

朝日新聞社説】大阪市役所 すべてをさらけ出せ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
産経新聞社説】大阪市改革 納税者はまだ怒っている
http://www.sankei.co.jp/news/editoria.htm

 本当にふざけるなと言いたいです。
朝日新聞社説】は指摘します。

 ところが、早くも市議会からは「事前の説明がない」、職員組合からは「これでは職員の士気が上がらない」といった声が上がっている。彼らがこれまでいかに市政を食い物にしてきたのか。まったく反省がないと言わざるをえない。

 改革案に不満なら、市議会も組合も対案を示せばいい。それができないなら、改革にきちんと協力すべきである。

 本来なら、関淳一氏も市長を辞職すべき事態だ。改革案を現実のものにできるかどうかが問われている。

 もっともです。民間なら当然責任者が辞職するべき不正問題です。

 改革案には盛り込まれていないが、関市長には、まず実行してもらいたいことがある。ヤミの退職金や年金のために職員の互助組織につぎ込まれた税金を市に全額返還させることだ。

 市が設置した調査委員会によると、市には313億円の損害が生じた。互助組織は132億円を返したが、181億円の損害が回復されていない。調査委員会は全額を返すよう求めた。

 互助組織を市といっしょにつくっている職員組合は、時効を盾に取ったり、手元に金が残っていないことを挙げたりして応じようとしない。

 しかし、筋が通らない金は、すべて返すのが市民の常識だろう。

 市民の目が届かないところで労使でヤミの制度をつくり、税金をつぎ込む。そんなことを繰り返させないためには、過去の行為をあいまいにしてはいけない。

 そのうえで、給与の実態をすべて公開してほしい。係長なのに課長補佐の給与を支払う「わたり」のような慣行はやめるべきだ。

 破綻した第三セクターについても税金をつぎ込むことをただちにやめて、解散や民間への売却を考えた方がいい。

 「ヤミの退職金や年金のために職員の互助組織につぎ込まれた税金を市に全額返還させること」も当然です。
 このような当然の事すらまだ対処できていないことに呆れてしまいます。

 一方【産経新聞社説】は、公務員の甘えの体質を鋭く指摘しています。

 改革を貫くためには住民に痛みを求めざるを得ないこともある。しかし、それには肥大して硬直した組織・財政・人事などを正そうという職員をはじめ当局の不退転の決意が住民に理解されることが前提である。

 なぜ役人天国と呼ばれるのか。国も地方もすべての公務員は今こそ真剣に自らに問いただしてほしい。

 国と地方の公務員の総人件費は三十兆円を超している。景気変動の影響を受けることなく、身分や待遇が保障され、リストラや収入減の不安と無縁の立場にいることを公務員は当然だと思ってはいないだろうか。

 公金を浪費し続けた大阪市の事例は、程度の差こそあれ他の自治体にも見られる。納税者である住民は厳しい監視を続けたい。

 この指摘も当然です。「なぜ役人天国と呼ばれるのか」、「すべての公務員は今こそ真剣に自らに」問わねばなりません。

 【産経新聞社説】の結語、

 公金を浪費し続けた大阪市の事例は、程度の差こそあれ他の自治体にも見られる。納税者である住民は厳しい監視を続けたい。

 まさに大阪市役所の不祥事が何故全国民が注目しているのか、それはこのような不正行為が「程度の差こそあれ他の自治体にも見られる」ことを納税者は確信しているからです。

 今問われているのは、一地方自治体のローカルな不正問題ではないのです。ここに現出した日本の公務員の悪しき体質そのものが糾弾されているのです。

 しかし・・・



●まったく当事者意識が欠落しているあきれた大阪市役所労働組合の言い分

 大阪市役所労働組合のホームページを是非ご覧下さい。

大阪市役所労働組合ホームページ
http://homepage1.nifty.com/osaka-shiro-so/

 これはどうしたことでしょう、 人事院勧告が史上最悪であるという批判をトップに掲げ、市民に対する反省もお詫びもあるいはそれに類する自己批判が一切発信されていないではないですか。

 職員のカラ残業、ヤミ退職金・年金、五種類のヤミ昇給、厚遇の福利厚生費、ヤミ組合専従、どの不正を取り上げても市労組が深く関与していたことは自明であります。

 しからば、単に組織として改革することでお茶を濁せる性質のモノではなく、職員一人一人の当事者としての真摯な自己批判と反省の上で改革していかなければ、何も本質的な改善はできないではないですか。

 あきれるほどの当事者意識の無さが特に顕著なのは、以下に紹介する大阪市役所労働組合書記長の藤原一郎氏の談話であります。

大阪市における「カラ残業」問題について(談話)
http://homepage1.nifty.com/osaka-shiro-so/top/karazaigyo-danwa.htm

 「カラ残業」問題がマスコミに報道され、市労組書記長しての総括談話です。

市労組は、今回起こった問題についての事実を確認するとともに、併せて、1998年10月28日の「超過勤務手当返還訴訟」の和解に際して誓約した「市長は、市民の市政に対する信頼を損なった事実を厳粛に受け止め、今後は不適切、不透明な給与や手当が支給されないよう、地方自治法地方公務員法を遵守する」という和解条項を履行しなかった市当局責任を厳しく追及するものです。 

 なんですか、この総括は。

 和解条項を履行しなかった市当局責任を厳しく追及する

 ・・・

 厳しく追及されるのは職員側も同罪なのであり、「今回起こった問題についての事実を確認するとともに」などと他人事で表現されては全くもってたまったもんじゃないのであります。

 この談話の結語はこう結ばれています。

 これら国の悪政から住民の生活を守る防波堤としての自治体のあり方、役割がますます求められています。それだけに市民は、これらの期待と信頼に応える自治体=大阪市と住民奉仕のため懸命に働く職員の存在を強く願っていると考えます。
 市労組は、市当局の職員に対する時間管理・健康管理の責任を追及し、超過勤務命令簿の運用改善、人事委員会など労働基準監督機関による職場巡視や産業医による管理職研修の充実・強化、長時間労働に対する産業医の指導や検診などを含む具体的方策の策定を求め、実効あるものにするため運動をいっそうすすめるものです。

 「市当局の職員に対する時間管理・健康管理の責任を追及し、超過勤務命令簿の運用改善、人事委員会など労働基準監督機関による職場巡視や産業医による管理職研修の充実・強化、長時間労働に対する産業医の指導や検診などを含む具体的方策の策定を求め実効あるものにするため運動をいっそうすすめる」とは、当事者意識が皆無の呆れるばかりの「決意」であります。

 私は断じて、公務員とはいえ労働者としての当然の権利である、組合活動や労働環境の向上への運動を否定するモノではありません。

 しかし、このような不正が発覚ししかも市労組が深く関与していたことも明白であるにもかかわらず、納税者の怒りを自覚せず、世論の風を読むことも出来ず、まるで自分たちも被害者であるかの言い回しは、言語道断、断じて許されるモノではありません。



●公僕は死んだ〜納税者はもっと怒れ

 今日の読売新聞社会面に追い打ちを掛けるようにさらなる不正ニュースが掲載されています。

大阪市のOB厚遇、利益供与3億3800万に

 大阪市の職員厚遇問題を調査する「福利厚生制度等改革委員会」(委員長・大平光代助役)は28日、市からOB団体に対する助成金や独占的な事業委託などの利益供与が年3億3800万円に上るとした調査報告書を発表した。

 助成金の一部返還を求めるとともに、利益供与を全面的に見直す。改革委は今後、OBの天下りや、市と労働組合との関係について実態調査に乗り出す。

 報告書によると、昨年度、OB12団体のうち利益供与を受けていたのは8団体。うち、7団体が賛助会費や会報誌への名刺広告料などとして計964万円の助成を受けていた。

 交通局OBの「交通局退職者会」は四つの外郭団体から年計120万円の助成を受け、俳句や川柳などのサークル活動費や親睦(しんぼく)費などに充てており、同局は過去5年分600万円の返還を求める。

(2005年9月29日1時41分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050928it14.htm

 もはや驚きもしませんが、納税者の税金をここまで食い物にするとは、これはもう犯罪行為といってもよいのではないでしょうか。

 今日の読売新聞社会面でこの記事に並んでつらいニュースが掲載されています。

民間の平均給与439万円、7年連続でダウン

 民間企業に勤める人が昨年1年間に得た平均給与は438万8000円で、前年を5万1000円(1・1%)下回り、7年連続で減少したことが28日、国税庁がまとめた民間給与実態統計調査で分かった。

 景気は回復傾向が続いているが、サラリーマンらの給与には、まだ反映されていない。
 昨年1年間を通じて民間企業に勤めた給与所得者は、前年比13万人(0・3%)減の4453万人。給与総額は前年比2兆8529億円(1・4%)減の195兆4110億円で、こちらも7年連続で減少した。

 転職者が増加し、正社員からパートやアルバイトに切り替える企業が増えるなどの雇用形態の変化が、主な減少要因と見られる。

 平均給与の内訳は、給料・手当が370万1000円(1・0%減)で、賞与は68万7000円(2・0%減)だった。

 男女別では、男性が540万9000円で、前年より3万3000円(0・6%)減少。女性は273万6000円で、前年を1万2000円(0・4%)下回った。

 一方、源泉徴収による所得税額は8兆7988億円。前年比3339億円(3・9%)増で、4年ぶりに増加に転じた。これは、昨年から所得税配偶者特別控除(最大38万円)の一部が廃止されたことが要因とみられる。

(2005年9月28日20時13分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20050928i212.htm

 長引く不況にあえぎ、リストラや賃金カットを余儀なくされながら苦しみながら必死で働いている民間企業労働者の悲鳴が聞こえてくるようです。

 ・・・

こうぼく【公僕】

公衆に奉仕する者。あるべき姿としての、公務員をさす。

三省堂提供「大辞林 第二版」より

 もはや【公僕】という言葉は日本では死語になってしまったようです。

 この国の公僕は死んだのでしょうか。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●マクロ統計検証〜最も人が少なく最も金が高く最も赤字な日本の公務員
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050822/1124692959