木走日記

場末の時事評論

野田政権の政策のプライオリティはマカ不思議〜赤字会社なら間違いなく破産街道一直線

 ラインアンドスタッフ理論というものがあります。

 もともとは軍隊用語であり、ラインとは業務の遂行に直接かかわるメンバーで、階層化されたピラミッド型の命令系統を持ち、それに対しスタッフは、専門家としての立場からラインの業務を補佐いたします、軍隊ではスタッフのことを参謀と呼びます。

 企業では、ラインは商品を直接製作・販売・営業するのに対し(購買物流、経理事務等のサービス部門もラインに含まれる)、スタッフはその商品の企画や、購買層の調査、それによって得られた情報アドバイス、計数管理、人事、法務、総務等を行い、または直接的な制作の補佐や助言をします。

 要は利益を生み出すプロフィット部門がライン部門なのに対してノンプロフィット部門がスタッフ部門ということです。

 私は中小企業の経営コンサルを生業(なりわい)にしていますが、赤字会社を立て直すときのコツとして、このラインアンドスタッフ理論を活用して中小企業経営者達を指導いたします。

 まず超え太ったスタッフ部門からリストラしなさいと。

 スタッフ部門の最たるものは、会長、社長、重役達です、彼らは何の利益も生まないのに同族経営に近い赤字会社ほど高給取りが無駄に居並んでいます。

 会社にとって百害あって一理もありません。

 これらスタッフ部門を徹底的に人件費圧縮し、ライン(工場や営業)部門の一般社員に対するリストラ策はその後にします。

 この順番を間違えたら会社は回復できません、頭でっかち(スタッフの経費が太りすぎ)なのに体力を削ぐ(ラインを圧縮)のは組織として自殺行為だからです。

 この理論は国家に対しても適用できると私は考えています。

 国家においてスタッフとは、政府であり自治体であり公務員です。

 彼らは売上げ(税金)を生み出しませんが、ライン部門である納税者にサービスを供給することでライン部門の生産性の向上に貢献いたします。

 彼らの提供するサービスは、教育や警察、防衛など幅広いですが、もし国家財政が赤字に陥ったならば、まずこのスタッフ部門の見直しを徹底的に進め、その後でライン部門に対して負担を求める(増税)、という手順になります。

 企業の場合と同様、逆はあり得ません。

 今、欧州連合(EU)首脳会議において、ユーロ圏を中心に最大26カ国が財政規律の強化に向けた新条約への参加検討を表明しています。

 EU首脳会議で金融安全網や財政規律の強化で包括的な合意ができたことによって、市場の過度な不安は抑えることを目指しています。

 財政規律の強化について2012年3月までに新しい条約をつくることが決まり、予想より早く体制が整いそうです。

 財政危機に陥ったギリシャポルトガル、スペインなどでは、公務員総数削減、給与削減、年金削減など、それまで恩恵に浴し財政悪化の一因になってきた公務員に対して大幅な費用圧縮策を強行しています。

 その上で消費税や所得税増税を推し進めています。

 ラインアンドスタッフ理論からすれば、ギリシャなどはまさにスタッフ部門が無駄に膨れ上がった国家です、売上げ(税金)を生むライン部門を活性化させつつ、売上げを生まないスタッフ部門をできる限り費用圧縮する、この正攻法しか財政再建はありません、近道はないのです。
 
 ・・・

 さて、我等が野田政権は不思議なプライオリティを持っているようです。
 
 9日に閉会した臨時国会では、今年度の第3次補正予算や復興増税などを盛り込んだ「復興財源確保法」などが成立しましたが、国家公務員の給与を削減するための法案は、来年の通常国会へ先送りされました。

 これにより国家公務員ボーナスは4.1%増、平均支給額は61万7100円となります、時事通信記事から。

国家公務員ボーナス、4.1%増=給与削減法案未成立も影響

 国家公務員に9日、冬の期末・勤勉手当(ボーナス)が支給された。管理職を除く一般行政職(平均年齢35.8歳)の平均支給額は61万7100円で、前年比4.1%(2万4200円)の増加。支給月数が昨冬より0.05カ月増の2.02カ月となったことが要因だが、国家公務員給与を平均7.8%引き下げる特例法案が成立しておらず、平均0.23%引き下げの人事院勧告(人勧)の実施も見送っていることも影響している。
 総務省の試算では、特例法案が成立して今回のボーナスに反映されていれば、支給額は55万5400円で前年を下回る。人勧のみ実施した場合は、4月以降の月給引き下げ分がボーナスから減額されるため、61万5200円となる。給与問題が決着していないことでより多く支給されている格好だ。(2011/12/09-11:14)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011120900381

 また衆議院選挙の1票の格差を是正するために必要な法案の成立を目指しましたが、抜本改革と一体で議論すべきだとするほかの7党との意見の隔たりが埋まらず、これも通常国会に先送りされました。

 うむ、復興増税などを盛り込んだ「復興財源確保法」は成立を見て、公務員給与削減法案や国会議員定数削減改革は見送られたわけです。

 このタイミングでスタッフ部門(公務員・政治家)を優遇し、公務員待遇を手付かず(事実上アップ)にしておいてあわせて国会議員定数もさわらずに、ライン部門(納税者)にのみ、増税法案を成立させ負担を求めようとしているのです。

 野田政権の政策のプライオリティはマカ不思議です。

 増税をライン(国民)に強いるならば、その前にスタッフ(公務員や国会議員)自らが無駄をしっかりと削減し痛みを分かつことでライン(国民)の理解を得るべきなのに、その部分を見送ってしまうとは・・・

 赤字会社なら間違いなく破産街道一直線です。



(木走まさみず)