木走日記

場末の時事評論

子供を亡くした母親達と不快なエセ宗教家達についての一考察

 今日はこのブログではおそらく初めての宗教にからんだ話をしたいと思います。



●「キリストの再臨」を自称する男が、子供たちの復活を「予言」〜ロシア学校テロ

 今日の朝日新聞から・・・

「キリストの再臨」自称、学校テロ遺族を惑わす ロシア

 昨年9月に子供ら300人以上が死亡した学校テロの現場となったロシア・北オセチア共和国のベスランで、「キリストの再臨」を自称する男が、子供たちの復活を「予言」し、事件に対する政府の対応に不信感を持つ遺族らを惑わせている。その言葉を信じる母親と批判する母親との間で、遺族の会が分裂状態に。事件関係者を見舞った新たな悲劇に、ロシア社会は戸惑いを隠せない。

 「今年10月に子供たちが復活する」と主張するのは、超能力による治療などを売り物にするグリゴリー・グラボボイ氏(41)。ロシア紙などによると、同氏が16日、モスクワ市内のホテルで開いた信者の集会には、学校テロの遺族で作る「ベスランの母親委員会」から15人が参加。口々に「私たちは奇跡を信じる」と、帰依を誓った。

 15人の中に、母親委員会を代表して2日にプーチン大統領と面会した3人が含まれていたことが、大きな衝撃を与えている。集会では3人は、大統領との面会時とはうってかわって穏やかな表情を見せていたという。

 モスクワに事務所を置くグラボボイ氏と信者らは、2カ月ほど前からベスランでの活動を活発化させた。氏の活動に批判的な母親委員会のメンバーは27日、ウスチノフ検事総長に取り締まりを要請した。

 帝政末期の怪僧ラスプーチンのように、ロシアでは超能力治療者が草の根の人気を保ってきた。今回は、事件の真相解明の遅れや、遺族の心の傷を癒やす社会的な取り組みの不足も背景にありそうだ。

2005年09月29日18時44分 朝日新聞
http://www.asahi.com/international/update/0929/009.html

 ・・・

 強烈な記事であります。

 記事によれば、不幸なテロにより子供を失った母親達が、口々に「私たちは奇跡を信じる」と、帰依を誓ったそうでありますが、親としてそのような奇跡にすがりたい気持ちは痛いほど良くわかりますし、彼女たちが集会で「穏やかな表情を見せていた」のも、彼女たちの幼い子供を残虐なテロで失った悲しみで傷ついた心が、奇跡を信じることにより、癒されている面もあるだろうことも十分に理解できます。

 しかし、このニュース、後味がとても悪いのです。

 グラボボイ氏が偉大な超能力治療者であるのか、本当に「キリストの再臨」なのか、私には知る由もないことですが、「今年10月に子供たちが復活する」と主張するのは、いかがなものなのでしょう。

 その予言にすがるように癒されている不幸な母親達の心情を想うととてもやりきれなくなるのです。



●私には宗教観など語る能力はないですが・・・

 私は典型的な宗教に疎遠な日本人であります。日々の生活の中で宗教的な行事は死んだ父の法事の時ぐらいでありまして、自分の家が浄土真宗であることも7年前の父の葬儀の時に再認識したぐらいであります。

 正月には神社で初詣をし、お彼岸の日にはお寺で先祖を供養し、クリスマスにはキリスト生誕を家族で祝いケンタッキーチキンなどを食しているわけであります。(苦笑

 そういえば結婚式は信者でもないのにキリスト教の教会でしたし、おそらく私の葬式は仏式なのでしょう。

 まあ、とにかく私には宗教観とかまじめに語る資格も能力も有してはいないです。ただ、工学系科学をいちおう学府で修めた人間として、非科学的な幽霊とか宗教的奇跡の話は、まったく受け付けていません。その意味では早稲田大学大槻教授と同類の石頭野郎です。

 科学が万能でないことも良く理解していますし、現在の科学では解明できていない現象もたくさんあることは認める中で、TVや映画などでおもしろおかしく扱われる心霊現象とかは、全く信じていません。

 早稲田の大槻教授ももし目の前で心霊現象や超能力現象を見せてくれたら大学教授を辞職するといつもTVで公言していて背広には絶えず辞職願いを携帯しているそうですが、まあ、当然ながら彼が辞職することはこの先もないようです。(苦笑

 そんな私ですが、家庭も持ちまがりなりにも社会人として生活してきて、いろいろな人達にお世話になり、またいろいろな人達と社会生活の中で悲喜こもごもの経験を共有する中で、宗教観などというおおげさなモノではないですが、宗教的な儀式(?)の意味するモノを自分なりに考えれるようになってきました。

 父の仏前で手を合わせるとき、私の隣で幼い娘が見よう見まねで小さな手を合わせているとき、死んだ父の面影を偲びながら、不思議な癒される感覚をおぼえるのであります。
 この世に生を授かったことへの感謝の念とか言葉にするとなにやら崇高な話になってしまうのですが、もう少しくだけたおおらかな漠然とした感覚なのですが、父が一生懸命に生きてそして家庭をつくりやがて死に至る、そして父のおかげで生を受けた私の中には彼の遺伝子が半分刻まれている、そして横で小さな手を合わせている娘にも・・・

 宗教家でもない私が仏前で手を合わすことで、心癒され「生きとし生きるものが全て幸せでありますよに」とガラにもないことを思うのであります。



●10年程前の不快なエセ宗教家の話。

 10年ほど前、仕事である地方自治体の道路保全システムの構築業務をお手伝いしていた時、とっても悲しいしかし不快な話を耳にしました。

 当時私がお手伝いしたのは、自治体内の幹線道路や村道、私道を含めて道路保全行政のデータベースシステム化を諮る仕事でありまして、数日をかけて地区内の幹線道路を自治体職員と車で巡回しながら実地検分計測していました。

 とある県道と村道の交差点付近で、一人の女性がしゃがみこみ花瓶に花を差している姿が目にとまりました。

 その時は何気なく「ああここで交通事故に合ってしまった方のご遺族かな」とか考えつつ気にも留めていませんでした。

 数日後、終日雨が降り続く悪天候でしたが、たまたま同じ交差点を私達の車が通過しようとしたとき、私は意外な光景を目にしました。

 あの同じ女性がどしゃぶりの雨の中、しゃがみ込んで花を差し替えているのです。

 私は不思議に思い同行している県職員に思わず尋ねました。

 県職員が話してくれた彼女の話は、とっても悲しいしかし不快なモノでした。

 ここ数年、この交差点では人身事故が多発していたとのこと。で、誰かが夜中ここを通過するとき幽霊を見たといったうわさが広まり、東京のテレビ局が関心を持ち、有名な霊能力者を伴い取材に来たそうです。
 その時その霊媒師が霊視をした結果、「ここには7年前にダンプに跳ねられて死亡した子供の霊が成仏できないで地縛霊として彷徨っていて、その霊が原因で多くの事故が多発している」といった主旨のことをいったのだそうです。

 で、その霊媒師が何やら除霊の儀式をして、それから数週間後、この取材にもとづいたTVのワイドショーが放送されたそうです。

 TVの放送の話はこれで終わったのですが、ダンプに跳ねられて死亡した子供の母親こそ、あの毎日花を添えてお祈りしている女性だというのです。

 その放送を観て以来、彼女は自分の子供がしっかり成仏するように毎日花を添えているのだそうです。

 これはつらいむごい話だと思いました。

 TV局のスタッフもエセ宗教家霊媒師もひとつの取材に過ぎなかったのでしょうし除霊の儀式をすれば済んだつもりなのでしょうが、これは幼い子供を交通事故で亡くしたこの哀れな母親に対するなんというむごい仕打ちなのでしょう。

 この話を聞いてとても不快でとても悲しい気持ちになったのでした。



●人の心は弱いモノだし、宗教は確かに人の心を癒す力を持っている。しかし・・・

 人の心は弱いモノです。

 ましてや幼い子供を亡くした母親の心情はいかばかりでしょう。

 この哀れな母親が今でも交差点に毎日花を添えているのかは知りません。10年も前の話であります。

 ・・・

 しかし、宗教は確かに人の心を癒す力を持っていることは認めますが、私はこのエセ宗教家霊媒師のでたらめな霊視とやらは、絶対に信じられません。むしろ、強い憤りさえ感じてしまうのです。

 私には、土砂降りの中花を添えて一心に手を合わせているあのかわいそうな母親の姿が脳裏に焼き付いているのです。

 ・・・

 ロシアの自称「キリストの再臨」が、10月に子供たちの復活を「予言」するのは、勝手です。しかし、信じたあわれな母親達にもし「予言」がはずれたならばなんと説明するつもりなんでしょう。
 宗教の名を借りて、人の心の弱さにつけ込むようなマネだけはしてもらいたくないと強く思うのです。

 みなさまは、このニュースいかがお感じになられましたでしょうか?



(木走まさみず)