木走日記

場末の時事評論

中国反日デモを新聞コラムで検証してみる

 昨日、当ブログで朝日新聞社説を批判しましたが、早速今日の産経新聞のコラム『産経抄』が取り上げてますね。

産経新聞 『産経抄』平成17(2005)年4月13日[水]
http://www.sankei.co.jp/news/column.htm
 中国での反日暴力デモの傍若無人、「責任はなし」とする中国政府。あきれはてるばかりだが、きわめつきが昨日の朝日新聞の社説だった。反日の根底にあるのは靖国神社参拝という、いつものお題目につけた見出しがなんと「小泉首相の責任は重い」。

 ▼やれやれというほかない。一足先に竹島や教科書問題でのろしを上げた韓国ともども、反日行動の種はつきない。今回は日本の国連安保理常任理事国入り問題が背景にあることが目新しいといえる。

 ▼追いつけ追い越せと日本へのライバル意識をむき出しにしてきた韓国。日本との経済格差が縮まらないまま大国意識だけが膨張する中国。こちらは国際政治の場での日本抑え込みと既得権益の死守というわけだろうが、両国の心を一言でいえば嫉妬(しっと)である。

 ▼嫉妬は一人の人間の感情とは限らない。「国家も国家を嫉妬するのである」(山内昌之「嫉妬の世界史」、新潮社)。山内氏によれば、一九九〇年から翌年にかけての湾岸戦争は、産油大国クウェートに対するイラクフセイン大統領(当時)のねたみに加え、アラブ世論のやっかみがもたらしたという。

 ▼十一日にはドイツ、インド、ブラジルの常任理事国入りにそれぞれ反対するイタリア、パキスタン、メキシコなどが、日本を拒否する韓国と共闘してニューヨークで会合を開いて気勢を上げた。まさに国家の嫉妬が渦巻いている。

 ▼日本としては、これまでの国連活動への貢献を粛々と訴えていくしかない。山内氏はこうもいう。ねたみを恐れ「他人に中傷され非難されたときに、いたずらに沈黙を守り意味不明な笑いを浮かべるようでは、人間としての尊厳に欠ける」。中韓両国に対する日本の態度についてもいえることだろう。

 「まさに国家の嫉妬が渦巻いている」そうなのですが、まあ産経らしい論調ではあります。

 この新聞1面のコラム欄ですが、朝日の『天声人語』、読売の『編集手帳』、毎日の『余録』、産経の『産経抄』、日経の『春秋』とありまして、まあ、それぞれの論説委員クラスが書いているようなのでありますが、ときに社説よりもすばらしい情報を発信していたりします。まあ、社説というのはその新聞社の公式主張でもあり、当たり前ですが慎重に推敲した上でそんな変な記述は書かないものであります。 ところが、このコラム欄には社説に書けないような、その新聞社のホンネが見え隠れするトンでもない主張が載ったりするわけです。

 各紙の社説を読んでもあまり有益だとは思えませんので、今日は各紙のコラム欄から中国反日デモがらみの主張を集めてみてリテラシーしちゃいましょう。

 産経に続いてはまずはやはり朝日の天声人語からチェックしてみますと・・・

朝日新聞 【天声人語】2005年04月10日(日曜日)
http://www.asahi.com/paper/column20050410.html

 19世紀末、アイルランドにチャールズ・ボイコットという名の農地管理人がいた。強権ぶりに小作人たちが反発し、示し合わせて、彼の発する命令はおろか朝夕のあいさつも無視する作戦に出た。不参加とか不買の抗議行動を意味するボイコットはこれに由来する。

 日本製品に対するボイコットが中国で激発している。きっかけは教科書検定や国連改革など最近の日本の動きにあるようだが、狙われる側はたまらない。アサヒビールや味の素などが一部の店で撤去された。ジャスコやイトーヨーカ堂は窓や広告板を割られた。昨日、北京では「日本製品排斥」を叫ぶデモ隊が、日本大使館和食店に押し寄せた。

 不買の標的とされた企業の大半は、中国紙に「歴史を歪曲(わいきょく)する教科書に援助した」と名指しされているが、これは誤報である。和食店やスーパーはたまたまデモの沿道にあり、日本の象徴として目についたらしい。

 日貨排斥は明治末期からアジア各地で何度も起きた。70年代初め、タイでは日本の象徴としてデパートの大丸が狙われた。米国との貿易摩擦の季節には、日本車がこれ見よがしにたたき壊された。

 その米国もいま息の長いボイコットを浴びる。イラク政策に憤る不買の波は、中東だけでなく欧州や南米でも静かに続く。外食ではマクドナルド、飲料ならコカコーラあたりが常に標的となる。

 あのボイコット氏は結局、小作人の抵抗で土地を追われ、不名誉を歴史に刻んだ。今回の事態も、対応次第ではさらにこじれてしまう。なにより外交の機敏さ、冷静さが問われる。

 へええ、チャールズ・ボイコット氏がボイコットされちゃったからボイコットっていうんですか、勉強になりますです。

 しかし、全体的に何を主張したいのか意図がわかりません。

 ・日貨排斥は明治末期からアジア各地で何度も起きた
 ・米国製品もいまだ各地でマクドナルドやコカコーラあたりが標的にされている
 ・ボイコット氏は結局、小作人の抵抗で土地を追われ、不名誉を歴史に刻んだ
 ・だから日本も不名誉な歴史を刻まないように外交の機敏さ、冷静さが問われる

 こういうこと言いたいのでしょうか?

 もしそうなら、かなりの駄文ですねえ。(汗

 次は、毎日新聞「余録」から・・・

毎日新聞 余録 2005年4月12日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/yoroku/archive/news/2005/04/20050412ddm001070001000c.html

 9・11テロの年のことだ。米誌タイムの「今年の人」のインターネット投票に、その年スキャンダルを起こした日本の芸能人の名が大量に送りつけられた。票数は2位のビンラディンを上回り、タイム誌のサーバーをパンクさせたという▲これはネット上の集団行動で参加者が盛り上がる「祭り」の典型的事件とされる。仕掛け人は掲示板で、面白半分の投票を呼びかける。その扇動に応じて多数の人が自動投票のソフトで膨大な投票を行ったのだ。この「祭り」は時にネットを飛び出て、現実世界のイベントにもなる▲インターネットは今まで人々を隔てていた壁を越えて新しいコミュニケーションを可能にしてくれた。だがそれで人々の間の相互理解が促進されたかといえば、必ずしもそうもいえない。逆に悪意や憎悪のネットワークを新たに生み出しもした▲日本大使館への投石や日本人留学生への乱暴など、暴徒化の様相をみせた中国の反日デモも、ネットで増幅された敵意の産物だった。デモは反日運動組織のホームページの呼びかけから、掲示板での書き込みやメールによる情報交換を通してその参加者を雪だるま式に増やした▲ネット上の盛り上がりが街頭に広がる「祭り」の力学が働いたのは、反日行動が人々の日ごろの社会的不満のはけ口となったからだともいわれる。少人数のデモも厳しく規制されている北京でも1万人規模のデモである。日常のタブーを破る無礼講も「祭り」の特徴である▲つかの間の「祭りの興奮」によって危うくするには、日中関係は双方国民にとって重大すぎる。その悪化が大多数の両国民の利益にならないことは誰の目にも明らかだ。インターネットが敵意の壁も越えるところをネット市民は示してほしい。

 うーん、朝日の天声人語よりはるかにましですが、「インターネットが敵意の壁も越えるところをネット市民は示してほしい。」っていう結語はいただけませんねえ。

 ネット市民の一人として毎日新聞におたずねしたいですね。

 「どうすりゃ、いいのさ?」(苦笑)

 次は日経の「春秋」です。

日本経済新聞 春秋(4/12)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20050411MS3M1101711042005.html

 北京で知り合ったその青年は大学を出て政府機関に就職したばかりだった。ブランドものが似合ういかにも当世風の端正な若者だが、日本人の大人なら知っている有名な漢詩の断編さえほとんど知らないのにいささか驚いた記憶がある。

▼10年も前のことだ。日系の商店や日本大使館にまで被害が及んだ中国各地の反日デモの群衆の中にあの若者が含まれているとは思いたくないが、政治教化に重きを置いて自国の古い文化や伝統を置き去りにしたこの国の教育の断面を垣間見る思いがした。「反日」を掲げたその愛国主義の暴走は理不尽で見苦しい。

▼大衆運動はきずながゆるんで人々の結合が弱まった社会に起こりやすいといわれる。学歴や収入の格差に失業などで中国の若者の間に不満が高まり、過去の植民地支配や経済的な影響力の高まりから日本を標的に暴動が広がった。解せないのは群衆の投石や破壊などの暴力を、中国当局が黙認し続けたことである。

社会主義の平等な秩序が崩れて市場経済のもとでの競争が地方などさまざまな階層に浸透する。豊かな消費生活の象徴である日系の企業やスーパーはその怨恨(えんこん)を晴らす格好の目標だろう。暴力を見過ごして安全確保を怠り、「反日」を民衆の不満転嫁のカードに使うなら国際社会の信頼を確実に損なうことになる。

 「暴力を見過ごして安全確保を怠り、「反日」を民衆の不満転嫁のカードに使うなら国際社会の信頼を確実に損なうことになる 」のは当然であります。

 木走としては、ようやく普通の論調のコラムにたどり着けたような安堵感があります。 変なコラムばっかりだったら今日の企画はオオハズレのとこでした。

 ん?

 こ、これは?・・・・・・

●読売新聞4月12日付・編集手帳
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050411ig15.htm

 深海魚の体は大きな圧力に耐えられるようにできている。いきなり海面に引き上げられると水圧から解放され、内臓が口から出たり、眼球が飛び出したり、悲惨なことになるという(倉嶋厚「季節おもしろ事典」、東京堂出版)◆相手が魚でも気味が悪いが、海を隔てた隣人となればなおさらである。途上国から海面に急浮上した中国という深海魚の体内からは、「貧富の格差」などさまざまな矛盾が飛び出そうとしている◆苦痛の悲鳴が政治体制に向かわないよう、中国政府は「日本憎し」の反日教育によって国民の目をそらしてきた。反日デモの乱暴狼藉(ろうぜき)を黙認したのも、さして驚くにはあたらない◆日本人はどこぞの国とは違って、サッカーの試合でよその国の国歌を侮辱するようなまねはしない。国旗を燃やさない。大使館にも石を投げない。領海侵犯はしない◆過去の歴史を日本人が真剣に学んできた証しでもある。歴史に学ぶとはそういうことであって、「歴史の奴隷」として中国人の前で際限もなく頭を垂れつづけることとは別だろう◆差しあたり日本の側に、悔い改めるべき非は見あたらない。“官製”暴徒の取り締まりを官に促すのは少々むなしいが、再発防止を中国政府に厳しく求め、あとは深海魚の生態をじっと観察しているしか手はあるまい。静かに、冷たく。

 これは、強烈でありますね。

 「内臓が口から出たり、眼球が飛び出したり、悲惨なことになるという」、「途上国から海面に急浮上した中国という深海魚の体内からは、「貧富の格差」などさまざまな矛盾が飛び出そうとしている」って、いいんですか、こんな過激な表現しても・・・(汗

 「あとは深海魚の生態をじっと観察しているしか手はあるまい。静かに、冷たく。 」

 ・・・・す、すごいコラムの締め方であります。

 なんか、読売は産経より過激なのでありました。

 まあ、今回の反日デモの原因は、日本の常任理事国入り表明がきっかけでありますが、『産経妙』でも以下のように指摘されています。

 ▼十一日にはドイツ、インド、ブラジルの常任理事国入りにそれぞれ反対するイタリア、パキスタン、メキシコなどが、日本を拒否する韓国と共闘してニューヨークで会合を開いて気勢を上げた。まさに国家の嫉妬が渦巻いている。

 中国だけでなく韓国も反日的な活動をしているようですが・・・・

 よーし、コラムついでだ、韓国は中央日報の名物コラム【噴水台】を拝見・・・

●韓国 中央日報 【噴水台】2005.04.11
http://japanese.joins.com/html/2005/0411/20050411204818100.html

国連の滞納金

国連平和維持活動(PKO)は1948年5月29日に設けられたエルサレムの国連休戦監視機構(UNTSO)からスタートした。イスラエルが独立を宣布すると、周辺の4国との戦争がぼっ発し、間もなくして停戦になった。国連は、非武装の停戦監視要員を配置した。次は、インドとパキスタンの間のカシミール紛争。そこにも49年1月に非武装の監視団が配置された。

しかし、56年9月、第2次中東戦争を契機に様相が変わった。同年11月に配置された停戦監視団は、以前とは異なり、武装をした。軽い武装だが、初の武装国連軍だった。それが、こんにちのPKOに発展した。

PKO活動は、国連安保理が主管する。56年のイスラエル停戦監視団(UNEF−1)のときのみ総会が決議し、例外なく安保理の決議によって動いた。冷戦時代には、安保理常任理事国の米国・旧ソ連が対立していたために、活動があまりなかた。50年代に2件、60年代に5件、70年代3件、80年代5件だ。冷戦崩壊の後、PKO活動は爆発した。90年代に35件、2000年代半ば現在に6件だ。冷戦以前より200%が急増した。

このPKO活動には金がかかる。最初の二度の活動は、国連の経費であてたが、56年の「UNEF(国連緊急軍)−1」のときから変わった。金がかかり過ぎて、当時、国連は、特別基金を要求した。経費2億ドル(約200億円)は、米国(50%)と残りの加盟国(50%)に支払わせた。それ以降、加盟国の負担に定着したが、「世界平和」を他人事のように思っているせいか、財布の口を締めていて、滞納が非常に多い。04年末現在、米国は17億ドルのうち7億ドルを滞納している。滞納の割合が、中国(64%)、ドイツ(25%)、フランス(31%)、イタリア(31%)など厳しい状況だ。

韓国は、ソマリアアンゴラへの工兵部隊派遣などを契機に、93年に合流した。それ以降、東ティモールへの派遣など積極的に活動している。ところが、金を納める成績は、おう盛な活動ほどでははい。04年末現在、1億816万ドルにのぼる請求金額のうち7030万ドルが滞納されている。国連分担金の上位10カ国の中で、滞納の割合がトップ(65%)だ。

常任理事国の拡大に反対する国家の集い」が11日、国連で開かれた。過去の歴史をわい曲している日本が常任委入りを目指している時点に開かれるだけに、非常に重要な集いだ。ところが、韓国がPKO分担金を滞納しているのが気になる。日本は、誠実に全額を納めている。「金も納めていない」韓国が、「他国では立派な国に評価されている」日本を批判しなければならない状況になり、韓国外交団の責任が重くなっている。

安成奎(アン・ソンギュ)政治部次長

 産経さん、「金も納めていない」韓国が、「他国では立派な国に評価されている」日本を批判しなければならない状況になり、韓国外交団の責任が重くなっているそうですよ。


 今日は新聞コラム欄を読み比べてみました。
 うーん、昨日の北京在住ブロガー6テキストと、今日の新聞コラム6テキスト、読者のみなさんはいかがお感じになられたでしょうか?

 ブロガーさんのほうがはるかに冷静論理的であり、新聞コラムのほうはもう論理展開も感情論もごちゃごちゃ、めちゃくちゃな感じを受けたのは、私一人でありましょうか?

 それにしても、読売すごすぎ・・・



(木走まさみず)

<関連テキスト>
●メディア相転移説実践編(1)〜中国反日デモをブログ検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050412
●中国反日デモについて「世界の民の声」をBBCで検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050414
●中国反日デモ〜国際的に日本支持を広めるために
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050416
●中国反日デモ〜問われる日本の民度
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050417
●中国反日デモ〜ニューヨークタイムスのマッチポンプ報道を検証する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050418
●中国反日デモワシントンポストに対する読売新聞のプチ偏向
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050420