木走日記

場末の時事評論

メディア相転移説実践編(1)〜中国反日デモをブログ検証してみる

 今日の朝日新聞社説から。

八方ふさがりの日本外交 小泉首相の責任は重い

 中国との関係がここまで悪くなることを、少し前までだれが予想できただろうか。両国の国交が正常化して33年がたつが、これほど「反日」が燃え上がるのは前代未聞のことである。

 アジア、とりわけ中国との関係は、日本の外交にとって最重要の柱のひとつとなってきた。侵略戦争の過去をどう清算するかというだけではない。体制の違いを超えて隣の大国と安定した関係を築くことは、将来の日本の安全と繁栄のために欠かせないという判断があったからにほかならない。

 そうした思いから、歴代の首相や野党も含めた政治家、外交官たちが、ひとつずつ石を積み重ねるようにつながりを深めてきた。経済関係はかつて想像できなかったほど太くなり、両国関係の土台はますます固まってきたはずだった。

●根底には首相の靖国参拝

 それが、どうしてこんなことになってしまったのか。

 一連の反日運動の広がりには、中国側の事情による部分もあるに違いない。

 急速な経済発展を通じて、貧富の差をはじめ、すさまじいスピードで社会変化が進んでいる。そのことへの不安、不満が人々の間に蓄積され、国連安保理常任理事国入りを掲げた日本が標的にされたのかもしれない。90年代に強調された愛国教育が、若者たちの心に反日意識を植えつけた面も否めない。

 そうした点は、中国にも十分考えてもらわなければならない。わけても暴力の取り締まりについて、中国に強く注文をつけるのは当然である。

 しかし、日本政府はそうした中国の問題点を見据えたうえで、効果的な外交をしてきただろうか。残念ながら逆だったと言わざるを得ない。その根底にあるのが小泉首相靖国神社参拝だ。

 首相は「戦没者に追悼の誠をささげ、不戦を誓う」と説明する。だが、中国侵略の責めを負うA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社である。参拝をやめてほしい、という中国側のたび重なる要請を聞き入れず、なお参拝に意欲を見せるという姿勢が、どれほど中国の人々の気持ちを逆なでし、「過去を反省しない日本」という印象を広げてきたか。

●つまずく常任理事国入り

 国内ですら少なからぬ批判のある靖国参拝を繰り返すことによって、中国との関係をこじらせ、首脳同士の相互訪問は途絶えたままだ。その外交面での得失を、首相はどう考えているのだろうか。

 中国だけではない。韓国とは、竹島と歴史教科書であつれきが噴き出した。

 盧武鉉大統領は、かつてない厳しい表現で歴史問題に対する日本の取り組みを批判した。これにも、韓国の国内事情があったかもしれない。しかし、国民の反発を承知で「私の任期中は歴史問題を争点とする気はない」とまで言っていた盧大統領の豹変(ひょうへん)を招いた裏に、日本外交の思慮の乏しさもあったのではないか。そこにも靖国参拝が影を落としている。

 首相は昨年9月の国連総会で、安保理常任理事国入りを目指す決意を表明した。だが、韓国は支持どころかはっきりと反対で動き始めた。中国ではこれが反日デモの火をつけてしまった。肝心のアジアの支持を得られないで、どういう戦略が描けるというのだろうか。

●アジア重視のリアリズム

 首相は、先月の予算成立直後の記者会見で外交の行き詰まりを聞かれて、「八方ふさがりとは、全然思っていません。日韓も日中も日ロも、前進しております」と答えた。あきれた話である。

 今年初めといわれたロシアのプーチン大統領の訪日はめどがたっていない。北朝鮮の核問題や拉致問題も身動きできないままだ。これは、八方ふさがりというしかないではないか。

 拉致問題北方領土などについて、少しでも日本の立場への後押しがほしい時、中国はおろか韓国まで味方にできないのは、外交の失敗にほかならない。

 戦争に敗れたはずの日本が経済大国として発展し、国際社会の中で大きな存在感を持っていることに、近隣国の人々は複雑な思いを抱いている。だからこそ、謙虚な姿勢を見せることが、日本がこの地域で認められるために必要な外交のリアリズムである。

 実際、それが戦後日本の「アジア重視」外交の底流となってきた。だが、今の日本社会では、「毅然(きぜん)」や「断固」といった威勢のいい言動が好まれがちだ。政治家にも同じ傾向がある。

 しかし、首相には大きな国益を考えてもらいたい。靖国神社に参拝し続けることに、どのような国益がかかっているのか。譲るものを持たずに、どうして相手にだけ誠意ある対応を求めることができようか。

 22日からインドネシアで開かれるバンドン会議50周年の会議の際、中国の首脳らとの会談が検討されている。6月には訪韓して盧大統領と会う予定だ。

 首相はことあるごとに「世界の中の日米同盟」を強調する。だが、アジアでの足元が定まらないままでは、結局、米国の力にすがるだけの国になってしまいかねない。

 首相の思いきった決断を期待したい。

朝日新聞 4月12日 社説
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?t

 うーん。いつも思うことなんですが、朝日新聞の社説って誰を想定して語っているのでしょうか? 小泉首相? 日本国民? 中華人民共和国政府?(苦笑)

 「首相の思いきった決断を期待したい」と結んでいますが、自身のNHKとのバトルはどうしたのでしょうか? 文春の広告を言論統制気味に黒塗りしちゃった武富士5000万円問題はどうなったのでしょう。

 木走としては、こんな箸にも棒にもひっかからないような社説書く暇があるなら、NHKの公開質問状に全問具体的に回答し、武富士5000万円問題の詳細な経緯説明をするよう、朝日新聞自身の「思いきった決断を期待したい」のでありますが、まあ、無理ですよねえ。

 この社説もそうですが日本のマスメディアの中国報道はなんか深みがない感じがあるのですよね。確かに中国や朝鮮半島の人々の反日感情の遠因として小泉首相靖国参拝問題もあるのでしょうが、今回の反日デモに関してもセンセーショナルに国民の危機意識を煽るだけで、そのデモの背景・実体を冷静に分析しているところが極めて少ないのであります。

 メディア相転移説(いつからそんな名称になったんだ?)を唱える木走としては、ここはネットメディア論的に中国反日デモを実践ネットメディアしてみましょう。

 メディア相転移説(しつこくないか?)で述べさせていただきましたが、ネットメディアはローカルな出来事を面的にカヴァー可能なはずですから、今回の北京の反日デモに関しても北京在住のブロガー情報を網羅すれば、テレビなどが垂れ流している表層的なデモ情報とは違ったリアルな状況を押さえられるはずです。

 残念ながら木走は中国語を理解できませんから、北京在住邦人のブログだけではありますが、見つかったところから・・・

●「ぺきん日記 中国・北京より」
http://beijing.exblog.jp/

北京全体が危険に曝されているわけではありませんが....

数年来メールを出しても返信すらして来ないような旧友から、「大丈夫か」と言うメールが来ました。とにかく北京に居る私の安全を心配してくれている知人が多いのに驚きました。ほんと、ありがたいことです。
2003年のSARS(新型肺炎)流行のときも去年のサッカー・アジアカップ勝戦のときも、安否確認はありましたが、こんなに多くはありませんでした。日本では「北京が危険だ」と言う報道が相当されているのでしょう。確かにNHKニュースで反日集団の破壊活動の映像とその痕跡を見てしまうと、大変危険な感じがします。でも、広い北京或いは広大な中国のごくごく一部の地域で一部の人たちが起こした行動なのです。

きょうの北京は、フツーに生活している限り、いつもと同じように平穏です。いくつかの事実を紹介しておきましょう。
きのう(4月10日・日曜日)の午後、私は北京市東部にあるイトーヨーカ堂に買い物に行きました。入口付近のガードマンはいつもより少し多めだった感じですが、警察関係者は見かけませんでした。いつもの土日と同じように、北京の人たちで大変な混雑でした。日本ブランドビールも日本から輸入の食材コーナーも、お寿司コーナーもお刺身コーナーもいつもと変わりませんでした。北京の人たちはいつもと同じように買い物をしていました。

きょうは日系企業が入居しているオフィスビルのいくつかに、北京市公安局のおまわりさんが訪ねてきました。知人のオフィスにも北京市公安局外事部所属の制服のおまわりさんが二人でやって来て、日本人の勤務者に対して、安全の確認をし、何かあったらここに連絡するようにと外事部の連絡先を書き残して行ったそうです。私のオフィスは日系企業が入居するようなビルではないので、安全確認のおまわりさんはやってきませんでしたが。

また、来週4月16日に第2波の反日デモを計画しており参加を呼び掛けるようなメールも、今朝あたりから出回っているそうです。メールが届いた大学生の知人によると4月9日の反日デモの参加呼び掛けとは違うアドレスからで、聞いたことの無い団体名だったそうです。一部の大学では、大学当局がデモへの参加とメール転送の禁止を文書で掲示しているそうです。

北京は相当危険らしい、大丈夫か、生きてるか、と心配してくれている知人には、次のように説明しています。東京で喩えるなら....
秋葉原の駅前広場で"りんご"フリークがアンチ"窓"と"窓"の創設者ビル君の排斥集会を始めました。「”窓"は使いにくくてスグにフリーズするOSだ」「ウィルスに弱いのに対策が甘い」「ビル君一人だけに儲けさせてどうなる」「オレたちアーティストはみんな"りんご"を支持している」みたいな事を叫びながら、秋葉原の電気街で「"窓"は買うな、"りんご"にしよう」と行進していきます。"窓"のウィルスやフリーズにイラついていた秋葉原の買い物客の一部も賛同して、そのデモ隊に加わります。どんどん熱くなって、とうとう初台の"窓"の会社の日本ビルまでたどり着きました。そして一部の過激な"りんご"フリークが、手にしていたペットボトルを甲州街道からオフィスビル目掛けて投げ放ちました。
こんな出来事、テレビニュースで目にしない限り、浅草や銀座や渋谷でお買い物している人たちは知りえませんし、他の人たちはフツーに生活し続けているわけです。
もちろん、"りんご"フリークがヒートアップしているところで、「オレは"窓"が好きだ!"りんご"なんて子どものオモチャだ!」なんて叫んだら、きっとボゴボゴにされてしまうかもしれません。でも、そんな特別な行動をしない限り、"りんご"フリークは一般人を攻撃してこないでしょ....

このたとえ話で言うなら、いまの北京はいたるところに"りんご"フリーク(というかアンチ"窓"派)が存在するわけですが、彼らは一人二人では大それた行動を起こしません。何人か集まるとちょっと怖くなっていきます。そんな感じですから、自分からすすんで「オレは"窓"派だ」と主張しない限り、危険はほとんど及ばない、と考えて良いのではないでしょうか。
北京に旅行や出張をご予定の方、ご参考になりましたでしょうか。もちろん、日本人の行動次第では危険な状況に陥ることは確かです。不用不急の観光旅行などを計画の方は、慎重に考えたほうがよろしいと思います。

 なるほど、冷静な分析であります。

●「北京ダック北京生活」
http://blog.goo.ne.jp/pekingduck_2005/e/f6270c683b7bc6943ec4f9cee3344a5d
反日運動に怯える在留邦人=私???

怯えちゃあいないが。

随分と気をつけて暮らしてはいる。 
9日、つまり北京の反日デモがあった当日も、言うまでも無く近くになど行かなかった。 ただ、中国人の夫が一緒に居たので、近所に食事や買い物に行ったりはしていた。 

と、思ったのだが。

夕方近く家からは少し離れている、「女人街」というマーケットに、タクシーで花を買いに行ったところ、何故か
デモに遭遇。 
そこでハタと気がつく。 女人街は、我が日本国大使館領事部の近くだった。
首都北京には勿論大使館があるが、日本国大使館と領事部は別の場所にある。 大使館には近づかないようにしようと思っていたのだが、これはうっかり。 領事部のことは忘れていた。 大変私らしいことである。
タクシー内だったので、怖いことはなかった。  

せっかくなので、デモの様子をちょいとお伝え。 夫が、「写真撮ろうなんて思わないように(既にデジカメに手をかけていた私)。 ジャーナリストビザでもないのにそんなことしたら、メモリースティック没収だよ。」と言ったため、残念ながら画像は無いけど。 以下、デモ終点近くの、やや疲れて人数も減った感もあるデモ模様。
1.デモ参加者の多くは男性であり、また平均的北京市民の皆様よりも身なりが粗末だった。
2.報道されたほどの過激さは感じられなかった。 アサヒ買うな、正しい歴史を知れとか書かれた紙を持っている人がちらほら。
3.武装警察・警察共にそこら中にいて、大変ものものしかった。 
はっきり言って、デモ自体よりも警官たちの方が余程異様だったわけ。
武装警察って、所謂機動隊のアレである。盾&メット装備。 そんな目立つ兄さんたちが隊列組んで走っていた。 重そうね・・・じゃなくて、あんな人が出張って、投石も止めなかったなんて不思議である。 何しに行ったわけ?

デモ100%放置しました、って言うわけにもいかないし、武装警察が出たほうが 派手派手しいから出張ったのだろうか?

女人街の、いつも行く花屋・食器屋・カフェで働く、顔見知りの中国人たちは、普段と変わらなかった。 日本人の私が好んで通う店は、「サービス」がどういうことかを知っている、ある意味商売上手な人々。 女人街はまあマシな方だけれど、北京の多くの店では激しい値段交渉が不可避で、最初の価格は恐るべき大ボッタクリなのだが、通っているうちに賢い店が見えてくるのだ。 良心的にやっていれば、客はリピートするし、他の客を連れてもくる。 経済が発展すれば、まともに商売する人間だって増えると思うんだけどな。
国がこういう状況でもちゃんと働きちゃんと笑うひとびと。 彼らは、悪くない。

 女性ならではの視点からのレポートでありました。

●「じゃんす的北京好日子」
http://plaza.rakuten.co.jp/jiangsi/diary/

反日デモ 16時半現在は工人体育館付近 [ 北京で驚いた体験 ]
今日北京で1、2万人規模の大きい反日デモがあるので注意するようにとのアラーとがありました。それで、今日はカンフーも休んだし、日本人の食事会も中止になりました。部屋で「ごくせん2(もう販売されてた)」をずーっと見てました。

しかし夕飯の買い物くらいはしますから、近所のスーパーにいったときのことです。工人体育館近くの工人北路がものすごい渋滞していて、パトカーや大量の警官隊がいます。最初は十字路ででかい事故でもあったのかなと思って見に行くと、なにやら叫んでいる大量の集団がいます。プラカードに「打倒日本帝国主義」や「日貨排斥」などとあったので例の反日デモだとすぐにわかりました。

デモは海定区のほうで行われると聞いてたので、海定区から車で30分程度かかるこっちのほうでは関係ないだろうと思ってましたが、こっちまで来てました。もしくは別の集団だったのかもしれません。

テレビなどのメディアで見たことはありましたが、生で見たのは初めてでした。何人いたのかわかりませんが工人北路は6車線ある広い道路なんですが、そこを埋めて長い列になってました。野次馬が好きな北京の人々ですから、「なんだなんだ」とみんな見物しています。一緒に歩道からぞろぞろとついていく人も多いです。自分もおとなしくしてようと思ってたのですが、遭遇してしまった以上よく見てみたくなりますから歩道からついていきました。

日本人とばれたら囲まれたりするんだろうかと思いましたが、言わなきゃばれないし、また、そういう物騒な雰囲気でもなかったです。デモ隊は「加油中国人!」と叫んだり、国家を歌ったりしていましたが、あまり過激なことは言っていませんでした。周りの中国人は物珍しそうについていってはいますが、一緒に混ざろうという人はいませんでした。

デモ隊はどんな感じの人達なのかなと見てみると、若い人が多かったです。学生中心のようですね。道路の端を歩いている人は「もう疲れちゃったよ」という感じでたらたら歩いている人も結構いました。

 日本の浅草サンバ祭りにちかいノリなのでしょうか?

●「北京ビジネス最前線」
http://plaza.rakuten.co.jp/beijing/diary/200504120000/

Apr 12, 2005
反日運動、中国側パートナーからかけられる圧力。 [ NEWS ]
暴力を伴う過激な反日運動は一旦収束に向かうのではないか、という観測が現地では主流になりつつあります。
4月11日には中国商務省の魏建国副大臣は「日中両国の経済的協力には、いまのところ異常な現象は起きていない。私たちは、(中国)人民に冷静さを保つように求めたい。中国政府も日本企業の合法的権益を保護するだろう。但し、私たちが明確に指摘しているのは、中国を侵略した歴史問題について、日本政府が正確にかつ適切に処理する必要があるということだ。」と発言しています(錦程物流網=中国語)。多くの日本人にとっては、"但し"から後の発言が余分で、耳障りに感じられるのでしょうが、全体として経済問題に進展させたくない中国政府当局の本心が色濃く出ていると思います。ただ、こうした発言は見事なまでに日本のメディアに無視されており、中国のメディアでもあまり大きな扱いをされていません。
したがって、反日デモなど週末の出来事を知っている中国企業上層部の人たちは、政府が日本企業との取引きを奨励していることよりも、回りの中国の人たちの意見のほうに目を向けている気配すら感じます。

反日運動の日系企業への影響は、BtoC(消費行動)としての「不買」もさることながら、BtoB(企業間取引き)の分野で面倒なことになってきています。前回のエントリーでも触れましたが、日系企業とのバルク取引きを巡り"反日ムード"を交渉カードとして、有利な条件を引き出そうとしている中国企業の話を既に耳にしました。
日本ブランドの消費者向け製品を取り扱う中国の卸・小売などの流通企業は、むしろ日本メーカーに同情的な傾向が強いようです。売れ筋日本ブランドが市場から排斥されれば、その流通に関わる中国企業も儲からないわけですから、ある意味で"運命共同体"なのです。
そのいっぽうで注意が必要なのが、部品、原材料、素材などの取引きです。日本企業が販売する側であっても、購入する側であっても、いまの中国の雰囲気を盾に、中国企業に有利な商談に持ち込まれる危険性が高いからです。
また、中国の国有大企業と合弁事業を行っている日本企業で、中国側パートナーから圧力をかけられているケースも既にあるようです。特に謂れも無いのに中国のメディアで名指しで取り上げられた日本企業などは、「日本企業である御社と合弁事業を行っていることでいろいろ影響が出てきている、どうしてくれるんだ」という論理で、いろいろと無理難題を押し付けられています。

こうしたBtoBへの影響は、純粋に「反日ムードが高まる中で日本企業と親密な経済活動を推し進めている中国企業までが攻撃の対象になりかねない」という雰囲気から起因しているケースもありますが、この際だから取引条件や合弁事業で有利な立場に立ちたい、とする"火事場泥棒"的なケースもあるように思われます。
前者の場合はいずれ時間が解決してくれるのかもしれませんが、後者の場合は、将来に遺恨を残すような対応は避けるべきではないでしょうか。

 ほほう、ビジネスシーンにも影響が出始めているのですね。反日デモすらも"火事場泥棒"的に利用しちゃうとは、さすが中国4000年の歴史的商魂であります。

●「北京暮らしを始めてみれば」
http://blog.goo.ne.jp/kacchanyama/e/b26f7d3f197a1ae0d20fcf3d6e6442aa

警備が続く北京

 昨日のデモ騒動から一夜明けた今日。デモ隊は見られないが、武装警察の警備は続いている。写真は大使公邸付近。公邸の門の前には武装警察が整列し、塀の周りも等間隔で警察が立っている。付近には警察の車も止まっており、デモ隊は近づけない状態になっている。

 マンションの真向かいの道路にも武装警察が配備されていた。日本のテレビでも放送されたが、例の日本車をひっくり返された場所はおそらくここだろう。武装警察が立っていることを除けば普段と変わりないのだが。

 さて、今日スーパーへ行ったところ、私を見るなり男性店員が手招きして一言。「昨日のデモ、見たか??」 見たと言うと、早口でまくしたてた。「何でこんなことになったんや?日本人は今外に出て行かん方がいいぞ。絶対ののしられるからな。」 彼は別に悪意を持って言っているわけではなく、ニコニコしながら何となく今の状況に興奮している感じである。

 彼は続けた。「何で日本の政府は歴史を認めないんや。歴史は歴史やろ?? 欺人太甚や!(馬鹿にするにもほどがある!と言う意味)」 あまりに彼が一方的に言うので、それを聞いていたほかの店員さんが「ハオメイ(私の名)に言うても仕方ないやん!」となだめてくれたのだが、悲しい気持ちで一杯になった。

 「今回の件で中国人が嫌いになった?」と心配そうに聞いてきた店員さんもいた。悲しい気持ちではあるが、嫌いになるのとはまた別問題。その後店員同士で何やら討論していたが、詳しいことは聞き取れず、その場を離れて買い物を続けた。(が、戻ってきた時には何故か「おしん」の話になっていた。何故だ!? おしんの和服にはなぜ帯がないのかという話で質問攻めにあう私...)

 スーパーの彼も言っていたが、今回のことは新聞にはまったく出ていない。ニュースでも報道されていない。政府もどう扱っていいのかわからないのだろうか?昨日のデモを見る限り、武装警察を配備したものの暴動をただ見ていただけ。賛成も反対もしない、という立場なのだろうか?

 なにやら「おしん」話に変化していたのは微笑ましかったです。

●「Beijing日記」
http://d.hatena.ne.jp/getsukin/20050411

2005-04-11 中国のネットに

規制がかかった。デモを意味する「游行」という漢字が含まれている文章をアップすることが不可能になっている。反日系のHPでも意見が削除されたという話が見られる。中国政府は本気で事態の沈静化を計っているのだろう。

とはいえ、ヤフーチャイナで検索すると古い記事が引っかかる。それらも現在ではアクセス不可能になっているものばかりだが、キャッシュは今でも見られる。このあたりの不徹底はどう解釈するべきなんですかね。規制が本気でないということなのか、はたまたそこまでは手が回っていないということなのか。所詮ネットはどんなに規制しても必ず抜け道があるものだ。「游行」がだめなら、ということでピンインでyouxingと入力している例がある。政府も抑えきれないと諦めてるというのが妥当じゃないだろうか。

中国語が読める人なら、以下の記事がけっこう詳しい。いささか美文調に過ぎるから本当に事実に基づいているのかちょっと怪しいけれど、警察とのやりとりとかはけっこう生々しい。キャッシュなのでちょっとURLが長いですが。

ttp://202.43.217.123/search/cache.html?p=%E5%8C%97%E4%BA%AC+%E6%8A%97%E6%97%A5+%E6%B8%B8%E8%A1%8C&scch=on&ei=UTF-8&b=11&u=www.newsive.com/html/2005-4-10/200541085801.htm&w=%E5%8C%97%E4%BA%AC+%E6%8A%97%E6%97%A5+%E6%B8%B8%E8%A1%8C&d=EF8F011285&icp=1&.intl=cn

もう一つ、途中まで参加していた中国人のブログを見つけた。自分のデジカメがソニー製品なのを悔しがっている。でもこちらは日本から荒らしに行くやつがいると困るのでURLは貼りません。彼が同行したデモ隊は西直門まで歩いてから地下鉄に乗る予定であったように書いてあるが、彼はそこで用事があって帰ってしまったというから真相は分からない。彼もまた、自分のブログにアップしたいくつかの文章が削除されたことに怒りを表している。

日本語で読めるものとなると、おれのところなんかよりもこちらのほうが数段詳しい。八年いる人は流石に違う。ぺきん日記 / 中国・北京より

これらを総合すると、最初に海龍に集合して集会が済んだ後、いくつかの集団に分かれてそれぞれに行動したようだ。そして道々人が増えたり減ったりを繰り返していったのだろう。各種の報道が人数を正確に把握できないのも無理はない。たとえヘリを飛ばして取材したとしても実数の把握は不可能だろう。もっとも、中国人民は公称13億であるということもきちんと押さえておかなくてはならない。日本で数万人のデモと言えば相当のものだが、そもそも母数が違うのだ。

加えて、参加者の質が一様でないことは昨日紹介した分析からも想像できる。あれは直接には深圳で商店を破壊した人間に対する分析だが、今度の北京のデモにもある程度は適用できるだろう。また、同じ掲示板に今日書かれた書き込みも紹介に値する。書き込み主を仮にDとするが、Dの妹が昨日、深圳で起きた二度目のデモに参加したことをDに興奮して伝えてきたというのだが、彼女の感想は「楽しかった!」だそうだ。彼女は路上を進むデモ隊を見て楽しそうだと思い、その場で隊列に加わったのである。日本に対する不満をぶちまけたから「楽しかった」というのではなく、お祭りで楽しかったということなのだ。Dは、その妹同様にお祭り気分にひかれて参加した人数も少なくなかっただろうと推測している。

ところで、今度のデモではバスが用意されていて行進が終わったデモ隊を送り届けたことから、今度のデモが中国政府主導のものとの説がいくつかネット上で見られたが、少なくとも中国のデモではバスが用意されるのは普通のことらしい。ソースはこちら。

no title

おれ自身も中国ではデモが禁止されているみたいな書き方をしたけれど、これはちょっと説明が良くない。一応合法ではあるのだ。ただ、これは中国人自身が言うことなのだが、中国では法律は至上のものではない。それゆえ合法とはいっても、自由にデモを申請してすぐに実行できるわけではない。一応法律はここ。

ttp://www.lwtjj.gov.cn/tjfg/jihui.htm:title

だいたいこの法律自体が天安門事件の半年後に制定されてる法律だし、現実には微妙なものがあるに違いあるまい。そういう意味で、日本はじめ諸外国のメディアで言われる「当局の暗黙の了解」というものがあると言っても間違いではないだろう。

ただ、おれが思うに官が絡むかどうかなんてどっちでもいいことだ。そもそも日本とは国家の体制も違うし、政権と民衆の距離感も違う。官民一体の策動みたいな見方をしたところで何が出てくるというのだ。確かに中国政府はある程度民衆を利用しているだろうが、中国人の言う「愛国」は「愛中国」ではあっても、必ずしも「愛中華人民共和国」ではない。デモ隊が外で騒いでいった土曜日の午後、WJはおれにそう言った。また昨日も書いたように、おれは確かに昨日中国人の友人二人に食事をおごってもらったし、LWには彼の車で大学まで送ってもらった。彼らも含めておれの友人たちは、おれがもしもトラブルに巻き込まれたときは必ず力になってくれるだろう。かといって彼らが日本の政策を支持しているわけではないのだ。帰りの車のなかでLWはおれに向かって靖国常任理事国などについて、いろいろな疑問をぶつけてきたものだ。

すくなくとも、今度のデモだけで中国を判断するのは間違いだし、デモやその他の反日的な言説の横行を理由に中国との付き合いをやめろとか言ってる連中を見てると反吐が出る。

 おお、この情報はすごいですね。中国当局が中国のネットに規制をして、「デモを意味する「游行」という漢字が含まれている文章をアップすることが不可能になっている」そうであります。

 6ブログを参照させていただきましたが、総じてみなさん冷静でありまして、やはり中国は広い、北京も広いのであります。1万人反日デモのその翌日に日系スーパーは変わらず中国人買い物客でごった返していたりするわけでして、日本のテレビ報道は例によって煽りっぱなしの表層的映像を垂れ流しているばかりなのがよく理解できました。

 最後にネットリテラシー的危惧をひとつ述べさせていただきます。

 今回の反日デモはインターネットによる一部愛国勢力の呼びかけがきっかけになったわけですが、中国当局が規制し始めているとの情報は、日本の立場としてはよろしいのかも知れませんが、木走は断固反対の立場であります。「反日」だから問題であるのではなく、例えば「反政府」の言論も規制対象になるのでしょう。当局にこんな規制をされ管制報道しか許されないならメディアとしては自殺行為なのであります。

 日本の一部のマスメディアの論調でも、ここぞとばかりネット批判を展開しています。

中国反日デモ 愛国系ネット扇動 匿名で無責任、暴徒化

 【北京=福島香織】北京、広州など中国各地で連鎖的に発生した今回の反日デモの大規模化に、ユーザー数九千四百万人を抱える中国インターネット社会が果たした役割は大きい。参加呼びかけは“現代の壁新聞”と化したネット掲示板で行われ、北京での「デモ成功」も即日、掲示板に載った。そうした伝達の速度や広域性もさることながら、ネットの匿名性が無責任な暴力行為を招いた点も見過ごせない。

 デモを企画したのは「愛国」を掲げる複数の民族主義組織とみられている。中国ネット上には「中国民間保釣(尖閣諸島防衛)連合会」「中国九一八愛国ネット」「中国鷹派連盟ネット」など、ざっと数えただけで百前後の非政府系愛国サイトや掲示板が存在、ネット上の反日署名やサイバー攻撃などを仕掛ける勢力を形成している。

 これらの組織に賛同するネット愛国主義者たちに関する統計はない。掲示板のアクセス数や登録会員数から推計すると多くて十万人ほどだろう。中国のネットユーザーは昨年末で九千四百万人、年内には一億二千万人に達するとされ、全体数からすれば少数派だ。

 ただ、これらのサイトの“住人”の主流は、反日愛国教育を大学で受けてきた三十歳前後の世代といわれ、流暢(りゅうちょう)な英語を話す者もいる。また、一万八千人余の登録会員を持つ保釣連合会の会長、童増氏(48)は投資会社の会長でもあり、資金面でも反日愛国活動を支えている。

 少数派ながら、それなりの戦略性と実行力を備えているうえ、ネットの伝達力や匿名性を十分に生かせば、かなりの影響力を発揮できるわけだ。

 実際、九日の北京デモへの参加呼びかけは、四月六日昼ごろから行われ、集合場所、時間のほか、「北京テレビが中継する。安心して参加を」「この掲示板を見たら二十人以上に知らせること」といった訴えが、匿名で行われている。

 主催者を不明にしたのは、愛国サイトが昨年夏に一度、当局の圧力で閉鎖される目に遭ったためのようだ。この呼びかけにネットカフェなどで掲示板を見た二十、三十代の学生や若者が集まった。

 主催者の匿名性は、デモが途中で暴徒化したことにも関係ありそうだ。当初、「理性的に」と呼びかけていた連合会メンバーは、集団が“暴走”し始めてからは群衆に紛れて責任を回避した。

 中国では、公式メディアのデモ報道は抑えているにもかかわらず、ネット世論が誘発したデモを対日圧力に利用しようとする意図もあるせいか、ネット規制は行き届いていない。これを当局容認と見なして、今週末も北京でデモが行われるとのうわさが流れている。
産経新聞 4月12日
http://www.sankei.co.jp/news/morning/12pol001.htm

 この記事も気持ちは理解できますが、「反日」ではなく「反政府」であるならば肯定的に記述したのでしょうか? 気になるところではあります。

 今日は「メディア相転移説実践編」と称して、北京反日デモに関しマスメディア情報にブログ情報をぶつけてみました。

 いかがでしたでょうか? 



(追記)上記で参考にさせていただいた以外の北京在住者のブログ情報がもしあれば、コメント欄を通して情報提供下さいませ。随時情報追加いたしたく思っています。



(木走まさみず)

<関連テキスト>

●ネットリテラシー考(1)〜メディアに構造相転移が起こっている
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050408
●ネットリテラシー考(2)〜構造相転移したネットメディアの優れた特性
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050410
●中国反日デモを新聞コラムで検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050413
●中国反日デモについて「世界の民の声」をBBCで検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050414
●中国反日デモ〜国際的に日本支持を広めるために
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050416
●中国反日デモ〜問われる日本の民度
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050417
●中国反日デモ〜ニューヨークタイムスのマッチポンプ報道を検証する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050418
●中国反日デモワシントンポストに対する読売新聞のプチ偏向
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050420