発言内容に違和感を感じる「有田芳生議員・朝鮮日報インタビュー記事」
現在(24日15時)時点で日本語版韓国・朝鮮日報サイトでアクセスランキング第1位の人気記事は18日付けのこの記事。
有田芳生議員に聞く「嫌韓デモが増えた理由は?」
嫌韓デモに反対、ヘイトスピーチ規制法を推進する有田芳生議員
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/10/18/2013101800377.html
記事前半での有田芳生議員の発言を抜粋。
「韓国人に対して『出ていけ』『殺せ』などのスローガンを叫ぶデモの現場は、ナチス時代のドイツを連想させる。日本社会にファシズムが芽生えるのではないかと危機意識を感じた」
「ヘイトスピーチは言語暴力を越えた『ナイフ』だ」
「ヘイトスピーチを放置すれば、日本が戦前(1941−45年の太平洋戦争以前)に戻る可能性がある」
後半のインタビュー部分。
―韓国を標的にしたヘイトスピーチが増えた理由は。
「日本の景気が長期にわたり低迷する中、韓国企業が日本企業より優位に立つ分野が増えてきた。文化的な面でも女性を中心に韓流ファンが増え、日本人の優越意識が傷ついた。(国内の)経済格差などによる不満が外部に向かっているという面もある」
―韓国・中国について敵対的な記事を載せる雑誌も増えた。
「メディアが韓国と中国に対する差別をあおる記事を書くのは本当に問題だ。一部の週刊誌には『あなたの隣に中国人スパイがいるかも』などという記事を書いたものもある。記者さえも差別表現に関する認識が欠如しており、残念だ」
―規制法は国会を通過するか。
「自民党も反対するのは困難だろう。ただ、処罰条項の制定については、表現の自由に関する問題があるため、立法化が難しいかもしれない。こうしたことを踏まえ、まずは罰則条項のない規制法の制定を目指している。これは規制法を制定した後に処罰条項を設けた外国の事例を参考にした。規制法が成立すれば、関連調査機関を設置するなど有効性を裏付けられるようにしたい」
―韓日関係の悪化を懸念する声が高いが。
「両国の首脳が会って対話することが重要だ。韓国でも、日本大使館前で日本の国旗を燃やすなどの過激な行動を自制してほしいと思う。このような行動が『在特会』のような団体の活動の場を広げる可能性がある」
うむ、「韓国を標的にしたヘイトスピーチが増えた理由」は完全に日本側に有るとの見識のようです。
「日本の景気が長期にわたり低迷する中、韓国企業が日本企業より優位に立つ分野が増えてきた。文化的な面でも女性を中心に韓流ファンが増え、日本人の優越意識が傷ついた。(国内の)経済格差などによる不満が外部に向かっているという面もある」
興味深いのはこのロジックは本件をあくまで日本の国内問題として捉えているわけで、それは先に当ブログで検証したヘイトスピーチ訴訟に関する新聞社説の報道姿勢と一致するものです。
2013-10-08 違和感を覚えるヘイトスピーチ訴訟に関する新聞社説の報道姿勢
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20131008/1381199313
エントリーより抜粋。
この問題ではネット上の議論と新聞各紙の論説では大きく視点が異なっているように感じます。
ネット上の論説では本件は中国や韓国の激しい反日デモとの対比すなわちグローバルな問題としてで論じられていることが多いのに対し、検証した通り社説を掲げた新聞各紙は海外の反日デモは無視して本件をあくまで日本の国内問題として捉えているわけです。
ヘイトスピーチ訴訟に関して、ネット言論空間と既存メディアでたいへん興味深い乖離(かいり)が見られます。
ネット言論空間に一応関わっている当ブログとしては、海外の反日デモは無視して本件をあくまで日本の国内問題として捉えているマスメディアの報道姿勢に違和感を持たざるを得ません。
もちろん在特会の街宣活動は支持できるものではありませんが、このような鬱積した憤りの表現活動がなぜ出現したのか、その背景の分析がまったくなされていないことに、当ブログとしてマスメディアの報道姿勢に違和感を覚えるのです。
思うにこれらの論はヘイトスピーチは絶対悪であるという一点から批判論を展開しており、なによりも日本で発生した絶対悪な問題は他国に関係なく日本の国内の問題として処置すべきとの視点があるのだと思われます。
ヘイトスピーチは許されないという絶対化された価値観によるものと思われます。
当ブログも下品なヘイトスピーチに与するものではありません、ただこのような鬱積した憤りの表現活動がなぜ出現したのか、その背景の分析が必要だろうと考えるのです。
一連の在特会などによる街宣活動は、海外における特に中国や韓国における反日デモなどに触発されている面は否めないと思うからです。
海外のヘイトスピーチと相対化した分析があってしかるべきです。
有田芳生議員は朝鮮日報のインタビューの最後を次のように結んでいます。
「韓国でも、日本大使館前で日本の国旗を燃やすなどの過激な行動を自制してほしいと思う。このような行動が『在特会』のような団体の活動の場を広げる可能性がある」
有田芳生議員は日本のヘイトスピーチに関しては規制法の制定を主張しています、「表現の自由を守るためにヘイトスピーチを処罰する」という厳しいスタンスです。
一方韓国における「日本大使館前で日本の国旗を燃やすなどの過激な行動」は「自制してほしい」とのゆるいスタンスです。
日本のヘイトスピーチ発生の原因をすべて日本の国内問題と認識していながら、韓国メディアのインタビューに応えつつ、韓国の反日行動との相対化する視点なく、日本のヘイトスピーチのみを絶対化した価値観で悪とする論理に違和感を感じます。
(木走まさみず)