木走日記

場末の時事評論

中国反日デモ〜海外メディアの「南京大虐殺」報道

 このブログでも、過去11回に渡り考察・検証してきました今回の中国反日デモ関連ですが、今日は海外メディアの「南京大虐殺」報道について考えてみたいと思います。

<関連テキスト>

●メディア相転移説実践編(1)〜中国反日デモをブログ検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050412
●中国反日デモを新聞コラムで検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050413
●中国反日デモについて「世界の民の声」をBBCで検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050414
●中国反日デモ〜国際的に日本支持を広めるために
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050416
●中国反日デモ〜問われる日本の民度
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050417
●中国反日デモ〜ニューヨークタイムスのマッチポンプ報道を検証する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050418
●中国反日デモワシントンポストに対する読売新聞のプチ偏向
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050420
東シナ海ガス田〜共同開発という中国の手中にはまる愚策
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050422
●小泉スピーチと日本が有する対中国2つのアドバンテージ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050424
●小泉スピーチ〜日本に残された課題
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050426
●中国反日デモ〜中国の歴史教育について考察してみる(追記
●中国反日デモ〜中国の歴史教育について考察してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050504

 現在は中国当局の厳しい規制もあり沈静化しつつあるデモ活動ですが今年は抗日戦勝60周年の年でもあり中国政府の反日愛国姿勢はむしろ今後強まるという予測もあるようです。



●海外メディアで気に掛かる日本に対するマイナスイメージ

 当ブログの過去のエントリーにおいて、海外メディアの論調を検証してきましたが、私が検証した限り、概ね日本に対し好意的である論調の記事には、日本は中国に対し主に二つの点で優れていると指摘されているようです。

 (前略)

 一点目は小泉スピーチにもあるように、この国の戦後のすばらしい国際貢献実績です。

 (中略)

 そして、今現在の日本を正しく評価してもらうことです。戦時中の行為の反省を明示した上で、過去50年間の実績をおおいに主張すべきです。

 日本国内では今まであまり重要視されていなかったのですが、過去50年間の日本の平和国家としての実績は、海外では極めて高く評価されているようです。

 過去50年間一度も戦争も内線も経験していないこと、ODAはじめ国連などを通じた国際支援の実績、これらは世界全体でみても比類無きすばらしい実績であります。

 過去50年間、中国は何回戦争をしたでしょうか? 何回内戦もしくは内戦にちかい弾圧をしたでしょうか?

 実は、60年以上前の戦時中の議論を蒸し返されるより、この50年間の事実を客観的に国際社会に訴えれば、はるかに簡単に日本支持の輪は広がっていくと思われるのです。

 第二点目は、日本が開かれた民主主義社会であることです。現状の日本と中国を比べれば、報道の自由ひとつ考えても雲泥の差があるわけです。

 この国が有する多様な価値社会が、例えば今回のような問題を柔軟に対処することを可能とするのであり、反論を認めない体制が軌道修正することが難しい事実の対局として、国際的には評価されているようです。

 (後略)

●小泉スピーチと日本が有する対中国2つのアドバンテージ より抜粋
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050424

 ただ、正直、日本に好意的な論調の中にも、靖国問題や教科書問題など、過去の戦争に関わる事柄に関しては、概して日本に対して厳しい論調が多いのは事実でありました。

イギリス「The Guardian紙」4月11日のレポートより抜粋

The march was spurred by Tokyo's approval of a new history textbook which whitewashes Japan's wartime atrocities, including the forced recruitment of thousands of sex slaves, and biological weapons experiments on civilians.

日本の戦時下の、何千人もの性的奴隷の強制連行および民間人の生物兵器実験などを含んでいる残虐行為を美化した、新しい歴史の教科書に関する日本政府の承認が、デモ行進に拍車をかけました。

●中国反日デモ〜国際的に日本支持を広めるために
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050416

アメリカ ワシントンポスト 4月11日のレポートより抜粋

There's no doubt, as Premier Wen implied, that some Japanese have a hard time admitting the terrible things their troops did in China, Korea and other occupied Asian countries before and during World War II. Apologies sometimes seem to be mumbled, and textbooks sometimes minimize past crimes.

 何人かの日本人が、戦前と第二次世界大戦中に日本軍が中国、韓国と他の占領されたアジアの国でしたひどいことを認めるのに難渋しているのは、温家宝首相が含意していたように、疑う余地は全くありません。謝罪は時々もごもごはっきり聞こえないように思えます、そして、教科書は時々過去の犯罪を矮小化しています。

Recently, for example, Japan's education ministry approved a textbook that refers to the 1937 Nanjing Massacre as an "incident" during which "many" Chinese were killed, though some estimates of civilian deaths run as high as 300,000. News of these textbooks helped spark the anti-Japanese riots in Chinese cities.

 例えば、最近日本の文部省は、いくつかの推定では民間人死者数は30万人ともされている1937年の南京大虐殺を、「多く」の中国人が殺された「事件」として扱った教科書を承認しました。これらの教科書に関するニュースは、中国の都市の反日暴動を大いにかきたてるのを助けました。

●中国反日デモワシントンポストに対する読売新聞のプチ偏向
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050420

 親日的な論調が多いワシントンポストの記事においてさえ、このように日本の戦争犯罪について触れているわけです。

 中でも、木走としてどうしても目に付かざるを得なかった言葉が、"Nanjing Massacre"、いわゆる「南京大虐殺」です。

 日本人の私達が想像している以上に、この「南京大虐殺」という言葉は欧米、特にアメリカでは残念ながら「歴史的真実」として一般人も含めて広く浸透しているようです。



●海外メディアで「南京大虐殺」が「歴史的真実」として扱われる理由

 そもそも、「南京大虐殺」が「歴史的真実」なのかどうかは、日本国内でも大論争を巻き起こしているのは読者のみなさんも既知であると思います。

 私が市民記者登録させていただいてますインターネット新聞JANJANにおいても激論が戦わされています。

南京大虐殺」を考える〜インターネット新聞JANJAN掲示板より
http://www.janjan.jp/bin/bbs/0505/0505106849/1.php

 肯定派・否定派入り乱れての激論が続いているのですが、70年近く前の外国でしかも動乱の戦時中に起こった事件ですから、科学的検証作業はなかなか難しいようです。
 
 さて、私はまだこの問題に関してそう多くの知識を持ち合わせていないので、事件そのものについての詳述をしたり評価をしたりするのは現段階では当ブログでは避けたいと思います。

 ここでは、「南京大虐殺」が実際にあったのか、なかったのかを考察するのではなく、何故海外メディア、特にアメリカですが、日本批判の際に"Nanjing Massacre"がよく利用されるのか、事実関係だけ押さえておきます。

 第一に極東国際軍事裁判いわゆる東京裁判において、「南京大虐殺」が「事実」として取り上げられ、戦勝国により一方的に日本の戦争犯罪として認知されたことです。

 第二に、アメリカで100万部のベストセラーになった「ザ・レイプ・オブ・南京」(The Rape of Nanking 著者:アイリス・チャン)などの、主に反日活動家による"Nanjing Massacre"に関する書籍・写真集などが数多く出版されてきたことです。

 もちろん、日本国内においては、「ザ・レイプ・オブ・南京」は、その内容の信憑性や掲載写真の真贋をめぐって、国内の否定派学者から、たとえば、東中野修道氏・藤岡信勝氏による「『ザ・レイプ・オブ・南京』の研究―中国における「情報戦」の手口と戦略」などにおいて、強く批判されているわけです。

 ここでは、この本の内容の詳細と評価は省きますが、個人的にはやはり写真の誤用や意図的な記述の誤謬があり、歴史書としては問題があると感じています。

 しかし本の内容の真贋より重要なことは、一般外国人向けのポピュラー本としてアメリカにおいてすでにベストセラーとなってしまっていることです。

 多くの欧米人は、南京事件に専門的な知識を有しているわけではなく、せいぜい東京裁判の結果と、「ザ・レイプ・オブ・南京」や「虐殺写真集」などから、「南京大虐殺」を「歴史的事実」として認識しているわけです。

 やっかいなことに、欧米戦勝国では自分たちの裁いた事件でもあり、戦時中の敗戦国日本のふるまいについては、悪いイメージが定着していることを訂正する必要性を全く感じていないようです。彼らは、いかに親日的な人でもせいぜい昔の話は不問にしようという態度なのであり、決して心から、たとえば「南京大虐殺」はなかったと考え直すことはしないでしょう。



南京事件に関する過去の日本政府の対応の具体事例

 南京事件に関する過去の日本政府の対応を具体事例で検証してみましょう。 

 5年前の中国で起きた「中華工商時報反日意見広告事件では、日本政府はどう対応したのでしょうか?

 2000年1月23日中国紙「中華工商時報」において、海南の一人の青年の自費広告を掲載しました。その内容は、当時の日本の右翼の反中国集会に抗議し南京大虐殺の証拠提供を呼びかけたもので、この広告は大きな反響を引き起こしました。
 反響の大きさから、翌24日、「中華工商時報」は在中国日本国大使館に対し、南京事件に対する事実確認を含めた公開質問状を提起します。
 翌25日、日本国大使館は異例の早さで質問状に回答しています。

 そのやり取りの詳細が在中国日本国大使館公式ページに公開されていますので、引用してみます。

○いわゆる“南京事件”に関し、中国の新聞からの質問に対する当館からの回答(00.1.26)

  当館は、いわゆる“南京事件”に関し、中華工商時報の質問を受けこれに回答したところ、26日付けの「中華工商時報」に、回答の全文が掲載されました。その内容は以下の通りです。
  23日、本紙は、海南の一人の青年の自費広告を掲載した。これは、日本の右翼の反中国集会に抗議し南京大虐殺の証拠提供を呼びかけたものである。この広告は大きな反響を引き起こした。
  24日、本紙はこの件に関して在中国日本国大使館に対し以下の質問を提起した。
1. 海南の青年が広告を掲載した件に対しどのように考えるか。
2. 日本の右翼勢力が中国を侵略した歴史を否定し集会を挙行した件に対しどのように考えるか。
3. 海南の青年が広告を掲載したこの度の件は、中国において初めて日本右翼勢力に対し個人として自発的行為を行ったものである。これは、日本の右翼勢力の行動が 中国人民の感情をひどく傷つけたことを表している。これに対しどのように考えるか。
4. 間もなく21世紀を迎えるが、日本の戦争への反省の態度が日本とアジア各国の関係に影響を与えるか否か、日本の右翼勢力が猖獗を極めていることがアジアの政治的関係の安定に影響を与えるか否か、どのように考えるか。
 1月25日、在中国日本国大使館は、本紙の質問に対し以下のように回答した。


中華工商時報

1.質問1.及び質問2.に対し
 (イ)日本政府は、いわゆる「南京事件」に関しては、その事実関係を巡り種々の議論が存在していることは承知しているが、1937年の日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害あるいは略奪行為があったことは否定できない事実であると考えている。今次集会を行った団体の主張はこのような政府の考えとは異なる。集会で述べられたような意見は、大多数の国民が支持するものでは到底あり得ないと思う。事実、日中両国のプレスがこの集会の開催のことを大きく報道したにも関わらず、実際にこの集会に参加した者の人数は約400名弱に過ぎなかった。
 (ロ)歴史認識に関する政府の考え方は、1995年の内閣総理大臣談話に表明されている通りであり、日中間においても1972年の日中共同声明や1998年の日中共同宣言等において繰り返し表明してきている。
○1995年8月15日の村山総理談話
「我が国は、遠くない過去の一時期、(略)植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジアの諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。(略)この歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からお詫びの気持ちを表明いたします。」
○1972年の日中共同声明
「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」
○1998年の日中共同宣言
「日本側は、1972年の日中共同声明及び1995年8月15日の内閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した。」
 (ハ)このような政府の考えには何ら変更はなく、大多数の日本国民もこれを共有している。一般論として、このような集会の開催を認めるかどうかは各自治体の判断であるが、大阪府大阪市に対してはこれまで政府の考え方を十分伝えてあり、両自治体ともこうした政府の考え方を十分承知した上での総合的判断として今回の施設使用許可の決定を行ったと承知している。
 (ニ)貴紙が今回意見広告を執筆した青年に対し、このような日本政府の立場を明確に伝えて下さることを強く希望する。

2.先方の質問3.に対し
 (イ)過去の問題についての日本政府の考え方は、1995年の村山内閣総理大臣談話などで明確に表明されている。すなわち、日本政府は、過去の一時期において、日本の植民地支配と侵略が、アジアを中心とする多くの諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことに対し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを持っている。
 (ロ)このような日本政府の考え方に今も何ら変更はないし、また、大多数の日本国民もこのような日本政府の立場を共有しているものと確信している。中国の方々には、こうした大多数の日本国民が先述の立場を支持し、また中国との友好関係を強化していきたいと心より願っており、かつ交流を推進するべく努力していることを十分理解していただきたいと思う。

3.先方の質問4.に対し
 政府の考え方は、前述の1995年8月15日の内閣総理大臣談話を基本とし、我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受け止め、これらに対する深い反省とお詫びの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていくというものであり、大多数の国民がこれを支持している。
 政府としては、このような考え方を踏まえ、関係諸国との信頼関係を一層強化していくとともに、責任ある国際社会の一員として国際協調を推進し、それを通じて、平和の理念と民主主義を推進していく所存である。
 当館としては、今後共日中友好の大局に立って両国関係の増進に努めていきたいと考えており、貴紙の理解と支持を得たいと考えている。


2000年1月25日
在中国日本国大使館広報文化部長
公使 吉澤 裕

http://www.cn.emb-japan.go.jp/jp/jinfor6.html

 以下の南京事件に対する日本大使館公式見解部分ですが、

 (イ)日本政府は、いわゆる「南京事件」に関しては、その事実関係を巡り種々の議論が存在していることは承知しているが、1937年の日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害あるいは略奪行為があったことは否定できない事実であると考えている。今次集会を行った団体の主張はこのような政府の考えとは異なる。集会で述べられたような意見は、大多数の国民が支持するものでは到底あり得ないと思う。事実、日中両国のプレスがこの集会の開催のことを大きく報道したにも関わらず、実際にこの集会に参加した者の人数は約400名弱に過ぎなかった。

 「非戦闘員の殺害あるいは略奪行為があったことは否定できない事実」として認めてはいますが、中国側が主張する「大虐殺」という規模を肯定も否定もしているわけではありません。
 かたや欧米で「大虐殺」のポピュラー本が広く出版されていて、今回の反日デモでも被害者数30万人という「大虐殺」として中国国内で扱われている現状を考えた場合、上記の日本大使館の回答は、中国側を不用意に刺激せずしかし日本政府としての立場を明確にするという意味で、現実的な冷静な対応として評価すべきではありましょう。



●またれる日中共同歴史研究

 南京事件について学問的・科学的に事実を検証していくことは極めて重要なことであり、さきに日本側が提案した日中共同歴史研究は是非実現してほしいですし、その共同研究において南京事件の真相が解明されることを期待したいです。

 しかし、そのような真実の探求作業は時間も必要とするでしょう。今現実に対処していかなければならない日本の外交戦術とは明確に分けたほうが、日本には得策であるようです。

 重要なことは、中国の扇動的なプロパガンダに煽られることなく、日本としては冷静に対処していくことでありましょう。



 みなさまのこの問題に対する考察の一助になれば幸いです。



(木走まさみず)