木走日記

場末の時事評論

蟷螂(とうろう)が斧(おの)を取りて隆車(りゆうしや)に向かう〜今こそ撤収の時


東京地裁の決定がくだる〜ライブドアの申請認める

 各社速報によれば、本日、ライブドアが、ニッポン放送株を新たに取得できる権利(新株予約権)をフジテレビジョンに与えることの差し止めを求めた仮処分申請について、東京地裁は、差し止めを命じる仮処分決定をしました。 同放送側は決定を不服として、東京地裁保全異議を申し立てる見通しです。
 決定は、「特定の株主の支配権獲得で企業価値が損なわれる場合には、相当な防止策をとることが許される場合はあるが、今回は損なわれることが明らかとは言えない」として、ニッポン放送側の主張を退けました。

(参考URL)
朝日:新株予約権発行差し止めの仮処分 ライブドアの申請認める
http://www.asahi.com/national/update/0311/TKY200503110331.html

毎日:ニッポン放送新株予約権発行差し止め 東京地裁仮処分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050312k0000m020006000c.html

読売:新株予約権、発行差し止めの仮処分決定
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050311it11.htm

日経:ライブドアの仮処分申請認める・新株予約権発行差し止め
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050311AT1G1101M11032005.html

産経:新株予約権発行を差し止め ライブドアの申請認める
http://www.sankei.co.jp/news/050311/sha098.htm

地裁の下した≪新株予約権仮処分決定骨子≫は以下のとおりです。

 一、新株予約権の発行は、現経営陣の支配権の維持を主たる目的としており、許されない
 一、ライブドアの支配権取得により、ニッポン放送企業価値が著しく棄損されることが明らかとはいえない
 一、ライブドアが行った時間外取引は、証券取引法に違反しない
 一、したがって新株予約権の発行は、商法で差し止めの対象とされる「著しく不公正な方法」にあたる
 一、ライブドアの担保金は5億円とする

(共同)

●今こそ撤収の時

 これでライブドア側が主導権を取る形にはなったわけですが、いずれにしても、フジサンケイ側は上告して長期戦を狙ってくると予想されています。体力勝負に持ち込まれると資本力の弱いライブドア側にとって不利な状況は続くと思われます。

 ブログ『大いなる夢』さんが、『ライブドアを通して考える新しいジャーナリズムの形』http://blog.goo.ne.jp/ecotaka/e/1ae44bbf5b2e9df30ad71ac5a7c09612)で、ホリエモンはこのへんで撤退すべきであると主張されています。

フジテレビによるニッポン放送TOBは成功裏に終わり、ライブドア堀江さんの形勢不利は否ません。裁判を絡めた戦いは長期にわたるため、ライブドアのスピーディーなビジネス展開には全く相容れないものです。従って、今回の件について、私は昨日をもって堀江さんの名誉ある撤退を主張したいと思います。「想定内」だからこそ、余裕を持って撤退すべきです。

大いなる夢:『ライブドアを通して考える新しいジャーナリズムの形』より引用

 私も同感であります。おそらくこの後、長期戦になったら彼の勝ち目は薄いでしょう。ならば、東京地裁の裁定がライブドアに有利に下った今こそ、名誉ある撤収をする機会ではないでしょうか。堀江氏は名誉などいらないでしょうが、実利を取るにしても、今が最高のそしておそらく最良の撤収機会であると木走は考えます。

ホリエモンよ『蟷螂(とうろう)の斧(おの)』に貶められるな

蟷螂(とうろう)の斧(おの)
〔カマキリが前脚をあげて大きな車に向かってきたという「荘子」などの故事から〕自分の弱さをかえりみず強敵に挑むこと。はかない抵抗のたとえ。

三省堂提供「大辞林 第二版」より

 『蟷螂(とうろう)が斧(おの)を取りて隆車(りゆうしや)に向かう』の故事を持ち出すまでもなく、堀江氏がこれ以上この抗争を続けることは決して得策ではないと思われます。

 はたして、堀江氏の辞書に『撤退』の2文字は刻まれているのでしょうか?
 木走としては、引き続き成り行きを見守ってまいります。




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