木走日記

場末の時事評論

問題はあっても『9月始業』の大胆な決断を支持〜大学や短大・専門のこれ以上の授業開始延期は、各種国家資格試験制度が事実上瓦解してしまう

安倍総理大臣は新型コロナウイルスの感染にともなって学校の休校が長期化していることに関連し、入学や新学期の時期を9月に遅らせることも選択肢の一つという考えを国会にて示しました。

長年、教育現場に従事させていただいている私ですが、基本的にこのタイミングでの『9月入学』に賛成いたします。

私の賛成する理由を説明させていただきます。

私が外来講師をしている学部から、4月からの授業開始を5月12日以降に延期する旨のメールが最初に届いたのは4月1日のことでした。

続いて新しい学事予定(年間スケジュール)表が届きまして、関連して私が担当する科目の「シラバス」を早急に再作成してメールするように指示がありました。

シラバス」とは教師が学生に示す講義・授業の授業計画のことですが、新しいスケジュールに合わせて授業計画を微調整するのでした。

新しい学事予定(年間スケジュール)表は、当たり前ですが、授業開始が1ヶ月遅れていますので、それを取り戻すべく、夏休みが大幅に短縮されていました。

ほとんどの東京の大学・大学院や短大・専門などで、授業開始を1ヶ月延期することによる授業計画変更がなされているはずです。

しかし、もし授業開始をもう1ヶ月延期となるとなれば、夏休みが無くなるだけでなく、後期授業日程(10月〜)に影響を与えることは必至です。

そしてそのような小刻みな授業開始時期の延期は、教育現場に深刻な混乱(一部取り返しのつかない悪影響)をもたらすことでしょう。

これ以上のリスケジュールは無理があるのです。

一例を挙げましょう。

今日本で最も必要とされる技師資格のひとつが、に臨床検体採取業務を行うことができる『臨床検査技師』という国家資格があります。

次の厚生労働省 医薬・生活衛生局の『新型コロナウイルス感染症 PCR 検査にかかる職員の募集について』でも、明確に応募資格に『臨床検査技師』有資格者とうたわれています。

f:id:kibashiri:20200429144629p:plain
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/PCR_bosyuyoko.pdf

臨床検査技師は国家資格で、臨床検査技師になるには、臨床検査技師国家試験に合格する必要があります。

その受験資格を得るには、「臨床検査学科」(4年制大学、3年制短大・専門学校)で国指定の臨床検査技師養成課程を修了することが条件になります。

で、臨床検査技師国家試験は毎年2月に実施されています。

臨床検査学科の前期授業をこれ以上遅らせると、来年2月の国家試験までに、臨床検査技師養成課程を修了することが困難になってしまうのです。

国会試験実施月を後ろに回すなど配慮が必要ですが、3月卒業のスケジュールから、実は後ろに延ばすことは事実上不可能なのです。

別に『臨床検査技師』だけではないでしょう、大学や短大・専門のこれ以上の授業開始延期は、多くの国家試験取得が極めて困難になってしまう可能性が大きいのです。

ですから、5月6日以降も学校開始が延期されるのだとすれば、その可能性は大きいと思いますが、ならば、これ以上教育現場の混乱を防ぐために、大胆に9月始業に舵をきるべきです。

もちろん、各国家試験の開催月も5ヶ月シフトし対応するなど、その影響は社会全体で非常に大きいモノがあり、特に半年伸びる学生の学費の問題は、大きな政治判断が求められることでしょう。

それでも、ジリジリと授業開始が伸び伸びになり、結果各種国家資格試験制度が事実上瓦解してしまうよりは、問題はあっても『9月始業』の大胆な決断を支持いたします。

ただし、その決断すらジリジリ遅れるとするならば、教育現場にとり対応不可能となり最悪となりましょう。



(木走まさみず)

政府はただちに妊婦用マスク50万件全品回収し、不良品を生産・納入したメーカーを特定・公表すべき

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って政府が妊婦向けに発送した布マスク50万枚から不良品がおよそ3万枚見つかり、配布が一時停止されています。

現在布マスクは各自治体で保管されていますが、自治体側からは「このままでは妊婦に配布できない」「不良品だけでなく、すべてを送り返したい」という声も出ているということです。

(関連記事)
妊婦向け布マスク 不良品3万枚に
2020年4月28日 5時46分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200428/k10012408271000.html

この件で何点か不思議なことがあります。

まず、マスクのような衛生用品で、不良率が50万件中3万件、つまり6%という有り得ない数値を出しているのですから、自治体側の要求「不良品だけでなく、すべてを送り返したい」は、まったく正論です。

政府はただちに50万件全品回収すべきです。

これですね、食料加工品や衛生用品を扱う民間業者で例えれば、例え不良品が1品発覚したとしても、大変な事態のはずです。

不良品の製造ロット(いつどの工場で生産したかわかる番号です)から、同一ロットの全製品をすべてすみやかに回収するのが鉄則です。
今回は不良品が1つではありません、3万件もあるのです。製造ロットの特定など回収しなければできません。

政府はただちに50万件全品回収し、その上で、その不良品の製造ロットから、マスク納入業者4社に対し、輸入品であろうと国産であろうと、不良品を製造した工場と日付までさかのぼり、不良品の発生理由を特定させ報告させるべきです。

そしてどこのメーカー(複数かもですが?)のどこの工場(輸入製品であってもです)で納品したマスクが、いついかなる理由で不良品を生産してしまったのか、国民にすべて報告すべきです。

繰り返します。

まずは、政府はただちに妊婦用マスク50万件全品回収すべきです。

その上で生産・納入したメーカーとその不良発生事由を特定・公表すべきです。

これは民間では当然のリスク管理の鉄則です。

政府が何をためらっているのか、理解できません。



(木走まさみず)

感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証する

さて、主要国の中で、ここへ来てロシアで感染者数が急増し、数的「感染者爆発」が発生しています。

ロシア政府によりますと、26日、1日としては最も多い6300人以上の感染が確認され合わせて8万人を超えています。

現時点でその増加率が世界最速というペースにより、ロシアは感染者数の多い国上位10ヵ国に4月26日ランクされました。

このロシアの数値動向は、統計的にかなり特異な動きを示していると思われ今回取り上げてみたいです。

なお以降、感染者数・死者数等の基礎的情報ソースは以下のサイトよりを参照いたします。

人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan

外務省海外安全情報ホームページ
各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

それではロシアの動向を統計的におさえていきます。

26、27日の両日の感染者数の動きを国際比較で国別にまとめます。

感染者数の多い11ヵ国と参考までに日本を含めた12ヶ国の2日間の動向をまとめてみます。

■感染者数上位国11ヵ国+日本の2日間の動向
f:id:kibashiri:20200428055117p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

1日当たりの増加数を見ると、米国の26873人が突出していることが見て取れますが、2番目がロシアの6346人なのであります。

米の分母が93万人を超えていることを考慮するとロシアの値は特異であり、それは1日当たりの感染者増加率に表れています、グラフで確認します。

■感染者数上位国11ヵ国+日本の感染者増加率
f:id:kibashiri:20200428055141p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

増加率としては、ロシア(8.52%)、ブラジル(5.78%)が高く、中国(0%)はほぼ止まり、スペイン(0.79%)、イタリア(1.19%)、ドイツ(1.14%)、フランス(0.37%)は1%前後以下と「感染者爆発」がとりあえず収まりつつあることがわかります。

対して、米国(2.88%)、英国(3.01%)は、母数(感染者数)が大きくなっているにもかかわらず、増加ペースがいまだ収まってはいません。

さてロシアです。

統計的なロシアの数値動向特異性は、その死者数を分析するとより明確になります。

感染者数の中でどのくらいの割合が死に至るかを『致死率』といいます。

『致死率』は次式で求まります。

致死率 = 死者数 × 100 ÷ 感染者数 (%)

次に、『人口百万人あたりの死者数』は感染者数や人口に依拠しないでその国(地域)の死者数をとらえます。

『人口百万人あたりの死者数』は次式で求まります。

人口100万人あたりの死者数 = 死者数 × 100万人 ÷ 人口総数

感染者数上位11ヵ国+日本の、感染者数、死者数、致死率、100万人あたりの死者数を表でまとめます。

■感染者数上位国11ヵ国+日本の死者数と致死率など
f:id:kibashiri:20200428055156p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

ここで注目していただきたいのはロシアの驚異的致死率の低さです。

グラフで確認します。

■感染者数上位国11ヵ国+日本の致死率
f:id:kibashiri:20200428055210p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

桁違いに低いことが確認できます。

これは『人口百万人あたりの死者数』をグラフで確認しても、同じ傾向が見て取れます。

■感染者数上位国11ヵ国+日本の100万人あたりの死者数
f:id:kibashiri:20200428055226p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

今検証したとおり、このロシアの数値動向は、統計的にかなり特異な動きを示していると思われます。

ロシアでは、感染者数としては欧米並みの「爆発」を起こしつつ、その死者数は現時点では「爆発」が抑制されている推移を示しています。

今後のロシアにおける感染者・並びに死者数の推移に注目したいと思います。

なぜなら、理由はわかりませんが、今回の欧米諸国とアジア諸国に見られる明白な死亡率の違い、そしてロシアの統計的に特異な動向、私は統計学的には有意性を持っている可能性は大きいと考えています(つまり科学的な理由がきっとあるはずと睨んでいます)。

今後の日本の先行指標としてロシアの数値動向は参考になる可能性があるはずです。

本エントリーが、読者の皆様の少しでも参考になれば幸いです。



(木走まさみず)

日本と東京の『人口100万人あたりの死者数』を国際比較してみる〜欧米諸国とアジア諸国に見られる明白で桁違いな死亡率の違い

今回は新型コロナウイルスによる死者数について、取り上げたいです。

さて、23日、日本国内では新たに29人の死亡が確認され、1日に公表された死者の数としては過去最多を更新いたしました。

死者数は累計328人となり、300人を超えました。

東京都では、6人が亡くなり、死者は計87人となりました。

(関連記事)
新型コロナ、国内新たに436人 死者数300人超に
https://www.asahi.com/articles/ASN4S03VRN4RUTIL02K.html

死者数ですが人口の多い国(地域)は当然多くなりますので、より公正な人口の大小に依拠しない国際的な指標、『人口100万人あたりの死者数』がよく用いられます。

そこでまず日本の総人口と東京都の人口をおさえます。

総務省統計局のサイトが日本の人口推計速報値を公表しています。

人口推計(令和元年(2019年)11月確定値,令和2年(2020年)4月概算値) (2020年4月20日公表)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html

【令和2年4月1日現在(概算値)】<総人口>1億2596万人と推計しています。

東京都も東京都の人口推計を公表しています。

「東京都の人口(推計)」の概要(令和2年1月1日現在)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/01/31/06.html

東京都の人口総数は13,951,636人と推計されています。

『人口100万人あたりの死者数』は次式で求まります。

人口100万人あたりの死者数 = 死者数 × 100万人 ÷ 人口総数

よって、

日本の『人口100万人あたりの死者数』= 328人 ×100万人 ÷ 1億2596万人 = 2.60(人/100万人) となります。

また、

東京の『人口100万人あたりの死者数』= 87人 ×100万人 ÷ 13,951,636人 = 6.24(人/100万人) となります。

この『人口100万人あたりの死者数』日本2.60人、東京6.24人という数値の意味についてさらに考察します。

これらの死者数を国際比較いたします。

比較データは以下のサイトより情報ソースを参照いたします。

人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan

4月23日時点の主要25ヶ国の『人口100万人あたりの死者数』を表にまとめます。

f:id:kibashiri:20200425171236p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

21位の日本2.27人ですが、直近24日に29人と過去最多の死者を確認しており、2.60人まで跳ね上がっていますことに留意してください。(20位のインドネシアを抜いているかも知れません。)

さて東京都を人口1300万のひとつの国とみなせば、東京の6.24人という値は、12位メキシコと13位韓国の間にランクされます。

さてこの死者の表ですが、いくつか特徴的な点が表出していますので、確認しておきます。

まず、色分けさせていただきましたが、死者数の多い10ヵ国のうち、9ヶ国が欧米諸国が占めていて、しかも文字通り「桁違い」に、下位の諸国とは死者数が多いことです。

対してアジア諸国は、韓国の4.68人を筆頭にして9ヵ国すべてがひと桁の死者数で抑えられているのです。

それだけではありません。

北米で隣接しているアメリカ(141.3人)とメキシコ(7.52人)で、また中東で隣接しているイラン(64.18人)とイラク(2.06人)で、なぜこれほど死亡者数に差が出るのでしょうか?

医療体制としては、アメリカに比しメキシコの方が、イランに比しイラクの方が、いずれも劣悪なはずなのにです。

さらに細かい点ですが、あえて欧米諸国から外したオーストラリアとニュージランドの大洋州2ヵ国の白人国家ですが、3.32人と2.9人と、アジア諸国並みに死者発生数がなぜかひと桁に抑えられているのです。

私は医療関係者ではなく、仕事柄データサイエンスに関わっているだけなので、この表に見られるいくつかの明らかな傾向について、疫学的に説明することができません。

しかし、この欧米諸国とアジア諸国に見られる明白な死亡率の違いなどは、私は統計学的には有意性を持っている可能性は大きいと考えています(つまり科学的な理由がきっとあるはずと睨んでいます)。

本エントリーが、読者の皆様の少しでも参考になれば幸いです。



(木走まさみず)

東京都下の感染者発生数を市区町村別に分析〜23区南西部に局所的に『10万人あたりの感染者数』上位10区が集中

さて東京都の公式サイト『都内の最新感染動向』はこちらです。

都内の最新感染動向
最終更新 2020/04/21 11:00
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

このサイトは大変良くデータがまとめられており、かつCSV形式などで誰でもダウンロードできるように公開されております。

このサイトでは東京都下市区町村別のデータも公開されています。

今回は、直近の東京都下の感染者発生数を市区町村別に分析しましょう。

東京都公開データより、23区+感染者発生数上位10市、あわせて33市区の感染者数を表にまとめて、グラフ化してみます。

f:id:kibashiri:20200422111535p:plain
f:id:kibashiri:20200422110525p:plain
※東京都公開データ(2020/04/20 19:45 更新)より『木走日記』作成

世田谷区が293人とトップですが、ご承知のように世田谷区は人口90万人のマンモス区ですから、当然感染者数も多いと推測できます。

そこで各市区の人口を押さえて、感染者数を人口で割った『10万人あたりの感染者数』を求めてみます。

まず33市区の人口グラフです。

f:id:kibashiri:20200422110551p:plain
住民基本台帳をベースにしたものです(2018年1月1日現在)
※『木走日記』作成

次に感染者数を人口で割って『10万人あたりの感染者数』の多い順に図表を作成してみます。

f:id:kibashiri:20200422114444p:plain
f:id:kibashiri:20200422110609p:plain
※東京都公開データ(2020/04/20 19:45 更新)より『木走日記』作成

並びが大きく動いたことに着目してください。

赤坂・六本木を抱えた港区が83.583人とダントツで、それに新宿66.317人、渋谷52.519人と続いています。

さらに中央区、目黒区、・・・、台東区と、東京都下の『10万人あたりの感染者数』上位10区を地理的に見ると、興味深い傾向がみてとれます。

感染者数30人以上の上位10区をマップでまとめてみます。

f:id:kibashiri:20200422110626p:plain0
※東京都公開データ(2020/04/20 19:45 更新)より『木走日記』作成

ご確認いただけるように、港、新宿、渋谷を中心に、23区南西部に局所的に『10万人あたりの感染者数』上位10区が集中していることがみてとれます。

ウイルス感染が人の動きと共に拡散・拡大する事実を考慮すれば、赤坂・六本木・新宿・渋谷と東京有数の人の動きが活発なターミナル(繁華街)を抱えている自治体とその周辺で感染者数が拡大していることは、予測できる状況なのかもしれません。

今回は、直近の東京都下の感染者発生数を市区町村別に分析いたしました。



(木走まさみず)

東京都の感染者数倍加時間10日の持つ意味

■指数関数的増加と倍加時間

最近、新型コロナウイルスの「感染者爆発」という言葉に関連して「指数関数的」や「倍加時間」といった専門的な言葉が報道で使われています。

再度「指数関数的」増加と「倍加時間」について、わかりやすく説明いたします。

細菌の増殖を例に説明します。

細菌の増殖は速く、まな板を洗い流しても洗い方が悪いと数時間後にはその数は元に戻ってしまいます。

いったん細菌が培地に適応すると、数的な増加が指数関数的(exponential)に起こります。

理想条件下では1個のバクテリアでは7時間で 2,097,152個まで増殖することができます。

最初1個の細菌は20分で分裂して2個に増殖します。

この個数が倍増する時間(20分)を倍加時間(doubling time)と呼びます。

したがってバクテリアでは1時間(60分)に2×2×2=8個に増殖します。

f:id:kibashiri:20200409111637p:plain]
※『木走日記』作成

つまり数学的にはバクテリアは一時間に2の3乗倍増殖しますので、7時間では2の21乗倍(2,097,152個)にまで爆発的に増加するわけです。

グラフにすると以下のとおり。

f:id:kibashiri:20200409115019p:plain
※『木走日記』作成

したがって、ある現象が「指数関数的」に増加しているとすれば、その「倍加時間」を求めれば、今後の時間経過ともに増加する変化を予測することができるはずです。

ちなみに個数が倍になる時間は「倍加時間」ですが、逆に個数が指数関数的に減衰して半分に減少する時間半減期と呼びます。



■東京都内の感染者数の「倍加時間」を求める

さて東京都内の感染者数が「指数関数的」な感染者爆発を招くのか、その倍加時間を最新データより求めます。

まずは東京の現在までの感染者数を月別の表でまとめます。

f:id:kibashiri:20200421083354p:plain
※『木走日記』作成

1月24日に最初の1人が確認されて以来、4月20日まで3186人の感染者が発生しています。

過去50日(3月1日〜4月20日)の日別発生数をグラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200421083328p:plain
※『木走日記』作成

過去50日(3月1日〜4月20日)の累計発生数をグラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200421084540p:plain
※『木走日記』作成

この累計発生数のグラフは日々の発生数の積み重ねですから、当然右肩上がりのグラフになりますし、日別発生数が増加傾向にあれば、指数関数的に増加していくことになります。

では東京都感染者数の最新の倍加時間を求めていきます。

求め方は簡単で直近の3186人(4月20日)を2で割った人数(1593人)が記録された日付にさかのぼり日数を数えます。最初の表で確認すれば、1593人を記録したのは、4月9日(1516人)〜4月10日(1704人)であることがわかります。
つまり感染者数はこの11日間で倍増したことがわかります。よって最新の東京都の倍加時間は11日なのであります。

このように倍加時間は毎日計算して求めることができます。

過去50日(3月1日〜4月20日)の東京都の感染者数の倍加時間の推移をグラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200421102453p:plain
※『木走日記』作成

この表で着目していただきたいのは、都内感染者数の倍加時間は3月25日〜4月8日あたりで、倍加時間4〜6日で底をうっていることです。

この倍加時間5日という値は、例えば、ひと月(5日×6=30日)で2×2×2×2×2×2=64倍に数値が増加してしまう危険な値であり、4月7日に安倍首相が「東京、このままなら1カ月後に8万人感染」と記者会見したわけです。

「東京、このままなら1カ月後に8万人感染」首相が会見
https://www.asahi.com/articles/ASN476FLZN47UTFK02V.html

いずれにしても、グラフから現在の東京都感染者数の倍加時間は11日まで抑えられております。



■東京都の感染者数倍加時間10日の持つ意味

新型コロナウィルスに対して、世界各国が自国の感染者数の倍加時間(doubling time)にこだわっているのは、自国の倍加時間、感染者が倍増する日数が10日、5日、4日、3日、2日とそのペースが拡大していくと、自国の「感染者爆発」が現実味を帯びるからです。

国際比較すると感染者10万人を超える「指数関数」的な感染者爆発を招いてしまったアメリカやイタリアなどでは、倍加時間が2日で倍増するペースを記録しているからです。

AFP記事によれば、イタリアの感染者が2日間で倍増したのは3月2日のことです。

イタリアの新型コロナ感染者、2日間で倍増 計1694人に
2020年3月2日 11:13
https://www.afpbb.com/articles/-/3271081

イタリアに遅れて感染者が爆発したアメリカでは、3月19日には、2日で2.5倍を記録しています。

新型コロナ感染者、米でも1万人突破 2日で2.5倍に
2020/3/20 1:29 (2020/3/20 7:21更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57050020Q0A320C2000000/

ここに来て日本も感染者数が1万人を超えましたが日本全体の倍加時間は10日です。

驚くべきことに、上記記事にあるとおり、アメリカが1万人突破したときの倍加時間は、2日で2.5倍ですから倍加時間1.6日という値だったのです。

感染者が2日で倍増してしまえば、結果的にですが海外事例では感染者数10万人を突破する「感染者爆発」は避けられていません。

・・・

最後に東京の「倍加時間10日」という値について考察します。

この値を維持するとすれば、最初の細菌の増殖の例と同様の爆発がやがて起こりましょう。

10日で2倍なら、1月(30日)では、2の三乗すなわち8倍になります。

現在3000人の東京の感染者は1月後に24000人になります。

東京の感染者は、2ヶ月後には24000人の8倍、192000人と現在のニューヨーク並みに感染者は増加する予測が成り立つのです。

指数関数的に増加している限り、倍加時間が2日であろうと10日であろうと、それは拡大のペース(日数)の違いだけであり、やがて「感染者爆発」が起きてしまう危険な状態であることには実は違いありません。

だがしかし、倍加時間をできうるかぎり遅延させることで、実は指数関数的爆発を避けることが可能です。

現実には、グラフでは計上していませんが、その間、完治する感染者の割合が増えていくわけですから、疫学的には重要な意味があります。

次の式の右辺をマイナスにすれば「爆発」は避けられるわけです。

新規に増える感染者数 = 発生する感染者数 ー 完治する感染者数

今の中国や韓国が、右辺がマイナス、すなわち、発生する感染者数より完治する感染者数の方が大きく、アクティブな感染者総数が減ってきているのだと推測されます。

今週、来週の2週間の感染者数推移を見守りたいと思います。



(木走まさみず)

「新型コロナ 拡大のペース加速」だと?〜朝日新聞記事は数学的に完全なるフェーク記事

新型コロナウイルスの国内での感染者数が18日、1万人を超えました。

確かに「一万人」という響き自体インパクトがあります、留まるところを知らない勢いで日本中にウイルスが蔓延していくイメージ・恐怖心を多くの人が持つとしても致し方ないでしょう。

しかし日本国内において、ここ一週間拡大のペースは数学的(指数関数的)には減速しています(後ほど具体的に検証いたします)。

感染者「1万人」という数値を闇雲に恐ることはないのです。

当ブログはこのようなときに、非科学的に国民の恐怖心を煽るような報道は、徹底的に科学的検証をしてその報道そのものを否定する必要があると確信しています。

例えば、朝日新聞の以下の記事です。

新型コロナ、国内感染者が1万人超す 拡大のペース加速
2020年4月18日 16時27分
https://www.asahi.com/articles/ASN4L5F9BN4LUTIL018.html?iref=comtop_8_03

「拡大のペース加速」が科学的に真っ赤な嘘、デタラメです。

記事より核心部分を抜粋(文中太字は『木走日記』付記)。

 国内で初めて感染が確認されたのは1月中旬。中国・武漢市から帰国した神奈川県内の30代男性に陽性反応が出た。感染者が100人を超えたのは、1カ月以上たった2月下旬。さらに感染者が1千人を超えたのはその1カ月後の3月下旬だった。1千人を超えてから1万人を超えるまでは、1カ月足らずで、感染拡大のペースが加速した。

徹底的に数字を検証しましょう。
国内で最初の感染者が確認されたは1月16日ですが、そこから4月18日までの全感染者を表で確認いたします。

f:id:kibashiri:20200418213636p:plain
※『木走日記』データ収集・図表作成

朝日記事のあいまいな日付を正確にしていきます。

「国内で初めて感染が確認されたのは1月中旬」は1月16日です。

「感染者が100人を超えたのは、1カ月以上たった2月下旬。」は2月21日です。

「さらに感染者が1千人を超えたのはその1カ月後の3月下旬だった。」は3月20日です。
正確な日付を表でチェックしておきます。

f:id:kibashiri:20200418213701p:plain
※『木走日記』データ収集・図表作成

正確に日付を数えれば、100人までは、1月16日〜2月21日まで36日です。

100人から1000人までは、2月21日〜3月20日まで28日です。

1000人から10000人までは3月20日〜4月18日まで29日です。

ご確認ください、100人から1000人までの28日から、1000人から10000人までの29日に実は、拡大のペースは落ちているのです。

朝日新聞は単純に各月の日付を比較してしまい、2月が29日までしかないことを「拡大のペース加速」とタイトルでうたいたいがためにでしょうか、無視してしまったのです。

ですから記事の核心部分は、数学的には全くのデタラメなのです。

 国内で初めて感染が確認されたのは1月中旬。中国・武漢市から帰国した神奈川県内の30代男性に陽性反応が出た。感染者が100人を超えたのは、1カ月以上たった2月下旬。さらに感染者が1千人を超えたのはその1カ月後の3月下旬だった。1千人を超えてから1万人を超えるまでは、1カ月足らずで、感染拡大のペースが加速した。

これはメディアの科学記事として驚くべき怠慢です。

なぜなら「拡大のペース加速」などしていないことは、グラフで一目瞭然、簡単に確認できるからです。

f:id:kibashiri:20200418215511p:plain
※『木走日記』データ収集・図表作成

①が36日、②が28日、③が29日、10倍になる「拡大のペース」は「加速」などしていません。

そもそもあまり使われない10倍になるペース(日数)を持ち出すこと自体、タイトルに何とか「拡大のペース加速」とうたいたい、朝日新聞の「悪意」を感じてしまいます。

なぜなら普通、指数関数的変化で「割合」を扱うには、2倍になるペース「倍加時間」を使用するからです。

ここ1ヶ月間の「倍加時間」を確認しましょう。

f:id:kibashiri:20200418215525p:plain
※『木走日記』データ収集・図表作成

倍加時間も、①7日、②7日、③10日と、明らかに拡大のペースは減少傾向にあることが分かります。

繰り返します。

感染者「1万人」という数値を闇雲に恐ることはないのです。

しかし当ブログはこのような非常時に、非科学的に国民の恐怖心を煽るような報道は、徹底的に科学的検証をしてその報道そのものを否定する必要があると確信しています。

この朝日新聞記事はその典型です、数学的には完全なるフェーク記事です。



(木走まさみず)