木走日記

場末の時事評論

『菅外交』の今後の優先順位がわかりやすく出現している電話会談の順番が興味深い

菅電話会談外交が始まりました。

どの国の首脳とどの順番で会談するのか、その電話会談の順番が興味深いのです。

検証いたしましょう。

まず20日、同盟国・米と準同盟国・豪の首脳を皮切りにいたします。

(関連記事)
モリソン豪州首相及びトランプ米国大統領との電話会談についての会見
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202009/20kaiken.html

首相が初日の相手として会談を申し入れた米国は同盟国であり、外交・安全保障政策の基軸と位置付けています。

20日の会談で首相が「日米同盟は地域や国際社会の平和と安定の礎であり、日米同盟をトランプ氏とともに一層強化していきたい」と呼びかけると、トランプ氏は「全く同感だ」と応じています。

オーストラリアも米国の同盟国であるだけでなく、安倍晋三政権で安全保障協力が大きく前進した準同盟国であり、安倍前首相は価値観を同じくする国との連携を重視して「自由で開かれたインド太平洋」を推進、菅首相も安倍路線の継承を掲げています、10月にはインドを加えた日米豪印4カ国の外相会議を、東京都内で開催する方向で調整しています。

同盟国・米と準同盟国・豪を外交的に優先することで、安倍政権の『自由で開かれたインド太平洋』政策を継承している『菅外交』を内外に印象付けました。

次に自由と民主主義の価値観を共有する友好国、まず、22日にドイツのメルケル首相、続いてEUヨーロッパ連合のミシェル大統領とも電話で会談いたします。

(関連記事)
菅首相が独首相と電話会談新型コロナ対策などで連携確認
2020年9月22日 20時38分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200922/k10012630121000.html

興味深いのは報道によれば、日独両首脳は、新型コロナウイルス対策をはじめとした国際社会の課題への対応や、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、引き続き緊密に連携していくことを確認しています。

菅外交は欧州でも「自由で開かれたインド太平洋の実現」を全面に押し出していることが見受けられます。

さらに、菅首相は、23日午後にIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長とイギリスのジョンソン首相と相次いで電話で会談いたします。

さてここで、台湾をめぐって中国とひと悶着がありました。

7月に死去した李登輝元総統の告別式に参列するため訪台した森元首相は18日、蔡総統と会談し、機会があれば電話などで話したいとの菅首相の言葉を伝えました。

これに中国が敏感に反応します。中国外務省は19日夜、日本側に説明を求めたところ、そのようなことは「決して起きない」との説明があったと、わざわざ記者会見で内外に明らかにします。

台湾の蔡英文総統も20日、菅氏との電話会談は予定していないと述べます。

(関連記事)
台湾総統菅首相と電話会談予定せず 森元首相発言に中国が懸念
https://jp.reuters.com/article/taiwan-japan-china-idJPKCN26C0IT

米中対立が激化する中で、本件により中国政府は電話会談による『菅外交』、菅内閣が継承する「自由で開かれたインド太平洋」政策を、反中国包囲網外交政策としてナーバスになりはじめます。

これを受けて、菅義偉(すが・よしひで)首相が中国の習近平国家主席と首相就任後初の電話会談を25日に実施する方向で最終調整していることが22日、分かります。

(関連記事)
菅首相習近平中国主席と25日に電話会談へ 就任後初
2020.9.22 20:49国際中国・台湾
https://www.sankei.com/world/news/200922/wor2009220032-n1.html

『菅外交』のここまでの動きを整理するとなかなかしたたかです。

まず20日「自由で開かれたインド太平洋」の要である、同盟国・米、準同盟国・豪と会談を行います。

続いて22、23日、欧州などの友好国、独・EUIOC会長をはさんで英首脳と会談いたします。

同盟国・準同盟国・欧州友好国と固めた上で、台湾関係でナーバスになっている中国の国家主席と25日電話会談することを決定します。

この段階で、『菅外交』の電話会談の順番は、見事に、同盟国・準同盟国>友好国>ナーバスになっている中国と、並んでいるのです。

しかしここで中国を会談予定にいれてしまったことで、大きな問題が発生しました。

「自由で開かれたインド太平洋」政策ではほとんど期待していない、アジアにおける日本の「友好国」である韓国が会談予定からオミット(除外)されてしまう形になってしまうからです。

そこで、中国国家主席との会談を25日に決定した後、日本政府は面子を重んじる韓国政府のために、最後の最後に、韓国大統領との電話会談を24日午前に滑り込ませます。

(関連記事)
【独自】日韓首脳 24日電話会談へ 2019年12月以来
https://www.fnn.jp/articles/-/87682

いかがでしょう。

菅電話会談外交が始まりました。

どの国の首脳とどの順番で会談するのか、その電話会談の順番が興味深いのです。

検証したとおり、電話会談は、

米国・豪州>独・欧州・英国>韓国>中国の順番です。

『菅外交』の今後の優先順位がわかりやすく出現していると思いました。



(木走まさみず)