木走日記

場末の時事評論

内閣府が国庫負担で管轄する組織の任命権が内閣総理大臣にあるのは当然のこと

政府から独立した立場で政策提言をする科学者の代表機関「日本学術会議」が新会員として推薦した候補者105人のうち、6人を菅義偉首相が任命しなかったことが明らかになりました。

学問の自由への政治介入との報道もあります。

(関連記事)
菅首相日本学術会議「推薦候補」6人の任命拒否 「共謀罪」など批判、政治介入か
https://mainichi.jp/articles/20201001/k00/00m/010/145000c

日本学術会議法』によれば、日本学術会議は「科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて」「世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし」、設立されたものであります。

日本学術会議

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000121

その第一条には、日本学術会議は、「内閣総理大臣の所轄」であり、「関する経費は、国庫の負担」と明記されています。

第一章 設立及び目的
第一条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。

また第七条で、日本学術会議の会員は「第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命」と明記されています。

第三章 組織
第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

その「第十七条の規定」とは、次のとおりです。

第四章 会員の推薦
第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

整理すれば、日本学術会議という組織は、「内閣総理大臣の所轄」すなわち内閣府内の組織のひとつであり、「関する経費は、国庫の負担」すなわち国民の税金が投入されているのであります。

従ってその会員候補者は、「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦する」(第十七条)が、最終的な任命権者は「第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命」(第七条)と内閣総理大臣であることが明記されているのです。

整理すれば、内閣総理大臣の所轄組織であり関する経費がすべて国庫負担である日本学術会議は、その会員の最終的な任命権者は国民の代表たる内閣総理大臣であるわけです。

法的には、任命拒否は国民の代表たる内閣総理大臣に与えられた権限なわけです。

日本学術会議が政府からの「独立組織」を真に目指すならば、そもそもその運営費すべてを国庫に完全に依存していること自体がおかしいのでしょう。

内閣府が国庫負担で管轄する組織の任命権が内閣総理大臣にあるのは当然のことなのだと考えます。



(木走まさみず)