木走日記

場末の時事評論

韓国が中国のご機嫌をうかがわなければならない経済的理由

 中国メディア・BWCHINESE中文網が報じているところ、北京で日中首脳会談を実施したことについて、韓国がショックを受けているのだそうです。

 14日付けサーチナ記事から。

「韓国がショックを受けている」  日中首脳会談の実現で=中国メディア
2014-11-14 14:21

 中国メディア・BWCHINESE中文網は11日、習近平国家主席安倍晋三首相が10日に北京で首脳会談を実施したことについて、韓国がショックを受けているとし、その理由について論じた記事を掲載した。

 記事は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議期間中の日中首脳会談実現に向け、日本側がさまざまな政界関係者を派遣してアプローチを仕掛けてきたとし、先日福田康夫元首相が訪中した「秘密外交」を行い、今月5日には安倍首相の腹心である谷内正太郎国家安全保障局長が北京に赴いて会談実現のために「最後の努力」を行ったと紹介した。

 日本側の努力を伝えたうえで、中国にとっては「決して日中首脳会談はAPEC会議における『メインディッシュ』ではなかった」とし、温度差があったと論じた。その一方で、中国の隣国である韓国にとっては日中首脳会談の実現が大きなインパクトを持ち、韓国人はショックを覚えてすらいるとした。

 その理由として記事は、当初中国は韓国と同様に日本との首脳会談開催を拒み続け、両国が安倍政権に対して「歴史問題で約束をしなければ、会談は行わない」という共通の立場を取っていたことを挙げた。そのうえで、韓国側の反応を紹介。政府関係者が「ホストとして習主席が安倍首相に簡単なあいさつはすると見ていたが、25分間の首脳会談をしたことはいささか想定外」とコメントしたと伝えた。

 また、日中首脳会談実現により日中韓3カ国間の外交構図に変化が生じることは必至で、日中関係が協力の軌道に乗れば、韓国の外交は孤立する可能性が高いとの見方が韓国メディアから出たことを併せて紹介した。(編集担当:今関忠馬)(写真はイメージ。「CNSPHOTO」提供)

http://news.searchina.net/id/1549659?page=1

 うむ、例えば10日付け朝鮮日報記事は「日本の対韓包囲網、対応迫られる韓国外交」と題して危機感をあらわにしています。

日本の対韓包囲網、対応迫られる韓国外交

 中日首脳会談の開催合意(7日)と北朝鮮の米国人人質解放(9日)はいずれも10日に北京で開幕するアジア太平洋経済協力会議APEC)首脳会議を前に報じられた。自ら外交的な対立や衝突を招いてきた日本と北朝鮮が多国間外交の季節を迎え、積極的な「実利外交」に転換している。一部には歴史問題における韓中間の協調、北朝鮮の核と人権の問題をめぐる韓米間の協調にひびが入り、日本と北朝鮮の韓国に対する離間策が効果を上げたのではないかとの見方もある。韓国政府は「特に問題はない」との立場だが、急変する北東アジア情勢を緊密に注視して対応していく必要性が指摘されている。

■日本の韓国包囲戦略

 日本は今年に入り、さまざまなルートを通じて、韓日首脳会談を要求してきた。中国の台頭に対抗し、韓米日3カ国の協調を目指す米国も行き詰まった韓日関係を懸念している。しかし、韓国政府は「過去の歴史問題に対する日本の誠意ある態度が先決だ」との立場を強調してきた。国民感情から言って当然なことだが、中国との歴史問題における強固な協調体制が維持されているという信念がかなり作用した結果だった。

 これに対抗し、日本は米国など国際社会に向かって、韓国の「狭量さ」が韓日関係行き詰まりの原因であるかのように宣伝してきた。こうした状況で中国が日本との首脳会談に同意したことを受け、日本はこれまでの外交宣伝をさらに強化できる余裕を得た。中日首脳会談が「儀礼的な水準に終わる」という韓国政府の予想に反し、実質的な成果を上げた場合、問題はさらに大きくなる。強固な米日同盟を背景に北朝鮮と中国に接近してきた日本の「対韓包囲戦略」がある程度成功したことになるからだ。そうなれば日本は首脳会談など韓国との関係回復を急ぐ必要性が低下する。

(後略)

李竜洙(イ・ヨンス)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/11/10/2014111000598.html

 うーむ、「強固な米日同盟を背景に北朝鮮と中国に接近してきた日本の「対韓包囲戦略」がある程度成功した」ですと、日本の「対韓包囲戦略」って初めてそんな戦略を知りましたが、ちょっとばかり自意識過剰じゃないのかしらん、あいかわらず韓国メディアではあくまでも世界の中心は韓半島(苦笑)なのでありますね。

 また13日付け中央日報社説は「韓国の対日・対北政策も柔軟になるべき」と韓国政府の硬直した外交姿勢に注文を付けています。

【社説】韓国の対日・対北政策も柔軟になるべき
2014年11月13日10時03分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] comment133Check hatena0Tweet

北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を契機に、域内の緊張緩和の動きが見え始めた。オバマ大統領と習近平国家主席は12日、米中首脳会談を開き、軍事分野での協力の枠を用意することで合意した。海上と空中での偶発的な軍事衝突を防ぐための対策の一環だ。両首脳は海洋紛争についても国際規範を通じて解決するべきだという意見で一致した。中国の積極的な海洋進出と米国のアジア再均衡政策による安保不安要素を減らす措置が出てきたことは歓迎する。域内の経済成長と発展は軍事衝突の可能性がないところから始まる。両首脳が以前から摩擦があった温室効果ガス削減目標にも初めて合意したのは、G2関係が対立と不信だけでなく協力と共生でも満たされているという点を感じさせる。米国か、中国かの二分法のワナから抜け出す時だ。

日中も関係改善の兆しを見せている。習主席と安倍首相は就任後初めて首脳会談をした。歴史認識尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐり対立構図はそのままだが、最悪の葛藤を避けるきっかけを用意した。会談前に合意した海上での連絡メカニズムについて実務協議をすることにした。米中合意と同じ脈絡だ。2年前の日本政府の尖閣諸島国有化以来続いてきた両国の対立関係が改善に向かうか注目される。

朴槿恵(パク・クネ)大統領は習主席との会談で韓中自由貿易協定(FTA)を引き出し、安倍首相とも対話をした。オバマ大統領との会談では北朝鮮で拘束された米国人2人の解放過程について説明を聞いた。しかし韓日、南北は関係改善の糸口をつかめずにいる。日本内閣の歴史修正主義北朝鮮の二重的態度が最大の問題だが、より積極的に柔軟になる必要がある。米中、日中間の新しい流れを逃してはならない。北東アジアの平和と繁栄を主導できる国は、過去の歴史、政治体制から自由な私たちだけだ。よりいっそうの外交的努力が求められる。

http://japanese.joins.com/article/640/192640.html?servcode=100§code=110&cloc=jp|main|ranking

 うーむ、「北東アジアの平和と繁栄を主導できる国は、過去の歴史、政治体制から自由な私たちだけ」って、この自信はどこからくるのか、ちょっとうらやましいです。

 さて、北京で日中首脳会談を実施したことについて韓国に焦りの色が出てきている模様ですが、これで韓国の対日外交戦略が少しばかり和らぐ可能性が出てきたことは事実でありましょう。

 しかしながら、韓国はもはや中国抜きでは国が成り立たないところまで経済的には中国依存してしまっています。

 残念ながら韓国は将来に渡り中国の顔色を見ながら、国際的諸問題では中国の言いなりになっていくことでしょう。

 ・・・

 韓国経済がいかに中国依存してしまっているのか数値で検証しておきましょう。

 韓国は日本同様国内に資源が乏しいので基本的には貿易収支を黒字にしていかなければなりません。

 最近日本の貿易収支は赤字が続いていますが、日本の経常収支が赤字にならないのは日本の対外純資産3兆2000億ドルで世界一であることによります。

 一方対外純資産がマイナス43億ドルの韓国は、貿易収支をマイナスにすることは韓国経済に死活的悪影響を及ぼします。

 10月26日付け朝鮮日報記事から。

低成長の沼に陥った韓国 対外純資産3兆2000億ドルの日本、マイナス43億ドルの韓国

欧州の特派員だったころ、大英博物館の特別書庫を訪れる機会があった。
一般人には公開されていないその書庫は、四面が棚で覆われており、レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロピカソなど西洋美術史に登場する有名画家たちが描いたスケッチが保管されていた。学芸員が開けて見せてくれた引き出しには、木炭で描いた下絵とみられるミケランジェロのスケッチが数十枚入っていた。
「1枚いくらくらいの価値があるのか」と尋ねると「さあ…。少なくとも100万ポンド(約1億7000万円)はするのでは」という答えが返ってきた。学芸員は、書庫にある巨匠たちのスケッチは全部で数万枚に達すると胸を張った。

 2011年の秋、欧州の債務危機を取材するためイタリアに出張した。経済省庁の次官と会い「負債が多すぎてデフォルト(債務不履行)が避けられないのでは」と尋ねると、次官はこう返した。
ベネチアにある家1軒がいくらか知っているか。4−5階建ての邸宅なら1億ユーロ(約136億円)だ。ワインの産地で有名なトスカーナ地方の田舎の家は基本的に1軒100万ユーロ(約1億4000万円)以上する。われわれの資産がこれほど多いのに、デフォルトだと?ばかばかしい」

 韓国経済が成長エンジンを失い、長期にわたる低成長の沼にはまり込んでいるが、多くの国民は、韓国はそれでも大丈夫な国だと錯覚している。お隣の日本は、20年にわたる不況にも国がつぶれることなく持ちこたえた。
過去30年間の好況期に稼いでおいた資産が支えになったためだ。

 日本の対外純資産(企業や政府、個人が海外に保有している資産から負債を差し引いたもの)の残高は、今年3月末時点で3兆2000億ドル(約342兆円)に達する。一方、韓国の対外純資産残高はマイナス43億ドル(約4600億円)だ。
一生懸命稼いでも、いまだに資産よりも負債が多い。人に例えるなら、韓国経済は多額の借金を抱えるサラリーマンで、日本経済は資産の運用益だけでも十分食べていける銀行のプライベート・バンキング(PB)の顧客ということになる。
日本は昨年、資本収支だけで460億ドル(約4兆9000億円)の黒字(流入超)だった。これに対し、韓国の昨年の資本収支は2億ドル(約214億円)の赤字(流出超)だった。

 国内総生産GDP)の規模で見ると韓国は世界13位の経済大国だが、だからといって錯覚してはならない。GDPは1年間に国内で生産された物やサービスの総額だ。現在の現金の流れが少し良いだけで、資産が多いという意味ではない。

 もちろん、負債が多いからといって必ずしも国が駄目になるわけではない。米国は対外純資産残高がマイナス5兆ドル(約535兆円)に達する。だが、米国は基軸通貨国だ。印刷機でドルを刷るだけで、いくらでも負債を償還できる。
韓国は資源も、世界の富裕層が欲しがる田舎の家も、有名画家たちのスケッチもない。頼れるものは知識と労働だけだ。

 経済再生への期待をつないだチェ・ギョンファン経済副首相兼企画財政部(省に相当)長官率いる経済チームの景気浮揚策が、次第に勢いを失っている。
国会などに足を引っ張られ、これさえも効果を出せなければ、韓国経済の未来は暗い。まずは国民が危機意識を共有することから始めなければならない。
このままでは、国を奪われるという屈辱を味わいながらも発奮せず、子孫に何も残せなかった先祖と同じ轍(てつ)を踏むことになるだろう。

金洪秀(キム・ホンス)経済部次長

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/10/26/2014102600212.html

 韓国経済が貿易収支を赤字にすることが死活問題になるのは、対外純資産がマイナス43億ドルである点だけではないのです。

 国内市場が小さい韓国ではGDPに占める貿易額の割合「貿易依存度」がきわめて高いのです。

 以下のサイトで各国の貿易依存度がランキングされています。

貿易依存度 国別ランキング統計・推移
http://www.globalnote.jp/post-1614.html

 国内市場が大きい各国はイギリス47.87%、中国が47.78%、フランス47.60%、日本28.37%、アメリカ24.72%と貿易依存度はGDPの半分以下です。

 対して韓国は92.37%と貿易依存度がきわめて高いわけです。

 対外純資産がマイナスであること、貿易依存度がきわめて高いこと、この二点で決定的に韓国経済は日本経済と異なる体質になっているのです。

 つまり貿易収支は絶対に赤字にはできないのです。

 さて以下のサイトで昨年の韓国の貿易収支が確認できます。

韓国の貿易
http://ecodb.net/country/KR/trade/

 昨年の韓国の貿易輸入額は515,586.00(100万USドル)であり、貿易輸出額は559,632.00(100万USドル)でありますから、貿易収支は44046(100万USドル)すなわち440億ドルの黒字であります。

 輸出相手国は、中国 24.5%、アメリカ 10.7%、日本 7.1%と、中国に大きく依存しています。

 一方輸入相手国も、中国 15.5%、日本 12.4%、アメリカ 8.3%と対中国が一位なのであります。

 問題なのは対中国貿易収支です、輸入79916(100万USドル)、輸出137110(100万USドル)と、対中国だけで57194(100万USドル)すなわち572億ドルの黒字が計上されていることです。

 つまり韓国は中国との貿易がなければ貿易収支は130億ドルの赤字になってしまうわけです。

 韓国経済は対中国貿易に完全に依存していると言えましょう。

 ・・・

 まとめます。

 韓国経済がいかに中国依存してしまっているのか数値で検証しました。

 韓国はもはや中国抜きでは国が成り立たないところまで経済的には中国依存してしまっているわけです。

 残念ながら韓国は将来に渡り中国の顔色を見ながら、国際的諸問題では中国の言いなりになっていくことでしょう。

 韓国メディアはありもしない「日本の対韓包囲網」など気にしなくてよろしいのです。

 読者のみなさん、残念ながら当分韓国はその経済の中国依存からは脱却はできないでしょう。

 経済的には完全に中国の属国と化していると言えましょう。



(木走まさみず)