木走日記

場末の時事評論

EUの渡航解禁リストに選ばれし日本〜だがしかし発生感染者密度がいまだ10倍以上の開きがある現状

欧州連合(EU)27ヵ国は7月1日から渡航を解禁する域外14カ国の「安全リスト」を公表しました。

観光や出張目的での渡航制限が解除されるのは日本のほか、アルジェリア、オーストラリア、カナダ、ジョージアモンテネグロ、モロッコニュージーランドルワンダセルビア、韓国、タイ、チュニジアウルグアイ

中国については、EUからの渡航が認められれば、受け入れ対象国となるのだそうです。

(関連記事)
ロイター
2020年07月01日 09:14
EU、日本など14カ国の渡航解禁リスト公表、米は含まれず
https://blogos.com/article/468350/

ロイター記事によれば、米国のほか、ロシア、ブラジル、トルコは、新型コロナウイルス制御を巡る状況がEUと同等の水準に至っていないとして、渡航解禁は見送られたそうです。

少し引っ掛かったのは「状況がEUと同等の水準に至っていない」というところです。

今回は「EUと同等の水準」について、人口当たりの新規感染者数という公正な指標で検証してまいりましょう。

なお最新の感染者数(死者数)情報は米ジョンズホプキンス大学のサイトをデータソースとし、各国の人口推計は国連人口部の2019年の推計をデータソースとします。

ジョンズホプキンス大学(JHU)のシステムサイエンスおよびエンジニアリングセンター(CSSE)によるCOVID-19ダッシュボード
https://coronavirus.jhu.edu/map.html

国連人口部の推計人口統計「World Population Prospects, 2019 Revision」ベース。
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/

さて、中国を含めたEUに選ばれし15ヶ国の、直近1日の新規感染者発生数
は次のとおり。

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※上記情報ソースより『木走日記』作成

それぞれ人の数が違いますので、本来は人口当たりの新規感染者数という公正な指標で見ると、例えば人口1.26億人の日本では、人口10万人当たりの新規感染者数は0.102人となります。

10万人あたり0.1人、つまり100万人に一人の割合なんですよね、現在の日本の新規感染者比率は。

この15ヶ国は、比率が一番高いカナダでも10万人あたり0.582人と、新規感染者数が抑制されている国ばかりなのであります。

で、EU27ヵ国です。

直近の発生者数は次のとおり。

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※上記情報ソースより『木走日記』作成

U27ヵ国で総数6014人になるわけです。

それにしてもスウェーデンの2536人と突出ぶりは、やはり政府の政策の失敗なのでしょうか?

(関連記事)
スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に、死亡率も世界屈指
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/1-157.php

EU発生数上位10ヵ国と日本において、公正な指標である人口10万人当たりの新規感染者数で比較してみましょう。

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※上記情報ソースより『木走日記』作成

U27ヵ国で総数6014人になるわけですが、EUの総人口が4.45億人ですから、EUでは、人口10万人当たりの新規感染者数は1.35人となります。

中国を含めてEUの渡航解禁リストに選ばれし15ヵ国ですが、今日本を例に検証したとおり、「EUと同等の水準」より確かに新型コロナウイルスの感染者発生数が抑制(しかも桁違いにです)されているわけです。

外交は相互主義なのは理解はしていますが、EUの渡航解禁リストに選ばれたからといって、日本にとって喜ばしいことなのかどうか。

発生感染者密度が10倍以上の開きがある限り、日本も対EU渡航解禁とはいきません。

時期尚早でありましょう。



(木走まさみず)