木走日記

場末の時事評論

感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証3

過去3回の以下のエントリーの続きです。
(未読でお時間のある読者は是非御一読あれ。)

2020-04-14
なぜか理由はわからないが、東アジア諸国では感染者数の爆発が抑制されており、また人口あたりの死亡者も欧米ほど増えていない事実
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/14/160555

2020-04-28
感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証する
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/28/065338

2020-05-06
感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証2
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/05/06/162040

ロシアの「感染者爆発」により、ついにアメリカに次いで感染者数が世界2位となりました。

そして驚くべき数値として、ロシアが公式に発表した致死率はイタリアやスペイン、米国と比較して桁違いに低くとどまっていることです。ここを正確な最新のデータで検証いたしましょう。

なお以降、感染者数・死者数等の基礎的情報ソースは以下のサイトよりを参照いたします。

人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan

外務省海外安全情報ホームページ
各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

感染者数上位15ヵ国と参考までに日本を加えた16ヶ国の感染者数と死者数等を図表にまとめましょう。

f:id:kibashiri:20200515122028p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

感染者数順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515122653p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

トップのアメリカが、139万人と、50万人分2回折り返しているところをご注意ください。

さてロシアです。

なぜロシアが注目されているかと言いますと、BCG接種国にもかかわらず「感染者爆発」を起こしているかなり特異な国だからです。

いわゆる「BCG仮説」です。

疫学的にBCG接種状況と死亡率の相関関係が指摘されています。日本では基本的に1951年以降生まれの人には接種されていますが、イタリアやアメリカはBCGの普遍的な接種プログラムがありません。またスペイン、フランス、ドイツなどはBCG接種が推奨されていません。

一方、中国、トルコ、ロシア(ここまでロシア株)、そして日本(日本株)はBCGが定期接種されております。
BCG株にはいくつかの亜種があるのですが、ヨーロッパでもちいられたのはデンマーク株であり、BCG株の種類による違いもあるようです(日本株とロシア株が有効?)。

話を戻します。

世界第二位の感染者数を数えるロシアなのですが、その死者数の少なさも特異です。

死者数順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515123641p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

感染者数は24万を超え世界2位にもかかわらず、その死者数はわずか2208名なのです。

ロシアの「致死率」が著しく低いのです。

致死率 = 死者数 × 100 ÷ 感染者総数 [単位:%]

致死率順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515125034p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

ご覧のように、ロシアの致死率0.91は、10.0を超えているヨーロッパ諸国に比較し桁違いに低いのです。

さて上記致死率のグラフを着目いただくと、BCG接種国の致死率が総じて低いことが見て取れます。

もうひとつ死者の割合を比較するのに『人口100万人あたりの死者数』という指標(人口の大小に依拠しない公正性をもつ)をみてみましょう。

『人口100万人あたりの死者数』高い順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515130119p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

この指標ではより明確にBCG接種国と非接種国が割れています。

ロシアが感染者爆発し世界第二位の感染者数を発生させながら、今のところ、致死率0.91という低さを維持しています。

まとめます。

BCGソ連株接種国とBCG日本株接種国はともに致死率が低く抑えられています。

特にBCG日本株は、日本(台湾、タイ、イラクなど)では、BCG接種を多くの人が受けていることで、ウイルスの増殖が抑えられ症状が出にくい、また感染者数そのものを抑制している可能性はあります。

一方BCGソ連株は、日本株より少し抑制効果が弱く、感染者数爆発を招いてしまったのかもしれません。

いずれにせよ、ロシアの今後の致死率の動向に注目です。

もしBCG接種国であるロシアによる感染爆発において、このまま致死率が抑えれれたとすれば、またひとつこの『BCG仮説』を裏付けるデータとなるかもしれません。



(木走まさみず)