木走日記

場末の時事評論

BCGワクチンが新型コロナウイルスに有効「仮説」について

あくまで現段階では「仮説」であることをお断りしておきます。

報道によれば、オーストラリアの研究機関は、新型コロナウイルスに有効かどうかを確認するため、結核予防に使われるBCGワクチンの臨床試験を行うと発表しました、臨床試験は、オーストラリア各地の医療従事者4000人を対象に行われます。

豪 BCGワクチン 新型コロナウイルスに有効か臨床試験
2020年3月27日 22時56分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200327/k10012354671000.html

BCGワクチンは、人間の免疫機能を高める作用があるということで、これまでの研究では、類似したウイルスに感染した人にBCGワクチンを使うと、ウイルスの数を減少させる効果が認められたとしています。

もしも、新型コロナウイルスにBCGワクチンの有効性が確認できれば、これは画期的なことです、一気にこの世界を覆わんとしている新型コロナウイルスの惨禍を一網打尽し劇的に事態を改善できる可能性があります。

少し調べたら現在世界で使用普及しているワクチンに使用されているBCGの菌の株は何種類かあるのですが、その中にBCG Tokyo 172という日本株があり、この株を用いたワクチンの効用について注目されているようです。

以下の小レポートはBCGワクチンにおける日本の医学者と培養株の世界貢献がたいへんわかりやすくよくまとめられています、お時間のある読者は一読の価値ありです。

結核ワクチンBCG─日本の貢献
日本BCG研究所 戸井田一郎
https://www.kekkaku.gr.jp/pub/Vol.86(2011)/Vol86_No6/Vol86No6P603-606.pdf

さて、なぜこのタイミングでBCGワクチンが新型コロナウイルスに有効なのではないか、この「仮説」が注目されているのでしょうか。

統計的事実から押さえておきましょう、外務省が公開しているデータから最新の各国の感染者数を確認します。

各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況
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https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

米国やイタリヤがものすごい勢いで中国を抜いて拡大していることがわかります。
スペイン、ドイツ、フランス、イラン、英国、スイスが続いています。

次に世界各国のBCGワクチン接種を義務付けているかどうかの地図を確認します。

国別のBCGワクチン接種方針を示す地図
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※ A:BCGワクチン接種国  B:BCGワクチンを現在は推奨していない国  C:一度もBCGワクチン接種を推奨していない国
https://www.researchgate.net/figure/Map-displaying-BCG-vaccination-policy-by-country-A-The-country-currently-has-universal_fig2_50892386

さきほどの感染者爆発を起こしている各国をこの地図でチェックするとほぼすべてBかCの国であること、ほぼ見事に相関していることに着目してください。

初期の頃、感染者爆発した中国や韓国でその後収まっているのも、この地図で説明可能です、BCGワクチン接種が功を奏してきたのだと推測できます。

さらに細かくチェックするといくつかの謎が氷解するのですが、ひとつは陸続きのポルトガルとスペインでスペインでは感染者爆発が起きていて隣のポルトガルでは起きていないのですが、この地図で納得できます、ポルトガルはBCGワクチン接種を実施していたのです。

次のドイツの感染者拡散図はさらに印象的です。

2020 coronavirus pandemic in Germany
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https://en.wikipedia.org/wiki/2020_coronavirus_pandemic_in_Germany

明らかに旧西ドイツ側で感染者の発生数が多く、旧東ドイツ側では少ないのが見て取れます。象徴的なのは旧東ドイツ側で例外的に感染者数が多い地域がありますが、ベルリンですね、旧西ベルリンがあった場所です。

この違いは、旧西ドイツ側と東ドイツ側で使われていたワクチンの株のちがいではないか、ソ連から導入された日本型のBCGを義務づけていた旧東ドイツ地域では感染率が低かったのではないのかと推測されています。

さらに感染者が少ないイラクと隣国の感染者爆発したイランの違いも注目しましょう。

世界各国のBCGワクチンの株種
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https://www.jsatonotes.com/2020/03/if-i-were-north-americaneuropeanaustral.html

感染者爆発したイランはパスツール1173株で、隣国イラクは東京172株であります。

イラクは長い戦乱によりイラン以上に医療体制は貧弱なのですが、この新型コロナウイルスの惨禍から逃れているのです。

幸いアフリカ諸国で感染の広がりが抑えられているのもBCGワクチンを義務化していることと関連があるかもしれません。

以上、あくまでも仮説ですが、BCGワクチンが新型コロナウイルスに有効である可能性がこれまでの多くの統計データから推測できるのです。

なかでも日本株の有効性が、ドイツやイラクの状況から強く示唆されています。

さて、現在、WHOの事前認定を受けUNICEFにBCGワクチンを供給しているBCG製造所は、日本BCG研究所、デンマークのStatens Serum Institut(SSI)、インドのSerum Institute of India,Ltd.(SII)、ブルガリアのBB-NCIPD,Ltd.の 4 製造所だけであります。

欧米諸国が相次いでBCGワクチン製造から撤退したため,自国で製造できない世界の国々へBCGワクチンを提供する日本の責務はますます重大であろうと思います。

そもそも日本株は、用量あたり生菌数が多く(力価が高い),副反応が少なく安全な、耐熱性の高いワクチンであることはWHOにも認証されていることです。

今回は、BCGワクチンが新型コロナウイルスに有効かどうか、この「仮説」について取り上げてみました。

本エントリーが、本件に関する読者の知見が深まる一助になれば幸いです。



(木走まさみず)