木走日記

場末の時事評論

暴走運転で尊い2人の命を奪った男を「さん」付けで報道する日本のメディア

妻と3歳の娘を亡くした夫が会見で訴えた全文です。

「少しでも運転不安な人は考えて」 池袋暴走、遺族の夫(会見全文)
https://www.asahi.com/articles/ASM4S5VMQM4SUTIL05T.html?iref=com_rnavi_r1

お悔やみ申し上げます。

そしてこの悲劇の中で告別式当日というタイミングでの、まだ心を癒やすほどの時が全然十分には流れてはいないはずなのに、できうるかぎりの感情を抑制した冷静な会見に、心打たれました。

さてです。

今回は日本のメディアの事件報道について一言いいたいのです。

朝日新聞報道によれば、車を暴走させた男(87才)は最近は車庫入れも覚束なかったとの近所の目撃談が出ています。

 飯塚さんと同じマンションの住人男性は今年、飯塚さんが駐車場にうまく車を止められず、前後に何度も動かす様子を見たという。「奥さんが外に出て『もっとハンドル切って』などとやっていた」。男性は「事故を心配していた。ショックです」。

「運転やめる」告げていた87歳 猛スピードの目撃情報 より
https://www.asahi.com/articles/ASM4M5CQTM4MUTIL037.html?ref=huffpostjp

上記記事で事故を起こした男を「飯塚さん」と敬称付きで呼称していることにすごく違和感があるのですが、なんだろうこの男の暴走運転で二人も尊い命が奪われたというのに「さん」ですか。

逮捕された神戸バス事故の運転手は呼び捨てか容疑者扱いです。

逮捕=有罪、逮捕されない=無罪ではもちろんありません、日本のメディアのわからない基準のひとつに『容疑者』という言葉が多く使用されていますが、しかし、逮捕されていない被疑者については『容疑者』と言わずに他の表現がされることが散見されます、「氏」とか「さん」とか「メンバー」とか「院長」とかです。

一般論でいえば、逮捕されていれば、その人物が捜査対象となっていることが明らかですが、逮捕されていなければ、犯罪の疑いをかけられて捜査の対象となっているかどうかを一義的に判断する基準がないため「容疑者」使用を躊躇するようです。

しかしながら、今回の飯塚幸三の場合、現場の状況から「犯罪の疑いをかけられて捜査の対象」になっておるのは明白であり、そのような容疑者に敬称を付ける報道に理解できません。
彼が逮捕されないのは「事故後けが(胸部骨折)で入院している」ためだけでしょう。

逮捕されていない飯塚幸三には敬称「さん」を付け、逮捕された神戸の運転手には敬称なく報道されるのです。

暴走運転で尊い命を2人も奪った男を「さん」付けで報道を繰り返す日本のメディアの曖昧な基準に怒りを覚えるのです。



(木走まさみず)