木走日記

場末の時事評論

米韓合同演習廃止で同盟すらディールで切り捨てるトランプ大統領〜そしてその米韓演習廃止を喜ぶ韓国大統領の絶望的無能さ

 米韓両政府は2日、ハノイで開かれた米朝首脳会談を受け、毎年春に実施してきた米韓合同の野外機動訓練「フォールイーグル」と指揮所演習「キー・リゾルブ」を廃止すると発表しました。 

 トランプ大統領朝鮮半島の非核化に向けた米朝協議を継続する姿勢を強調する狙いがあり、アメリカの提案に北朝鮮に友好的なシグナルを送りたがっていた文在寅(ムンジェイン)韓国大統領が飛びついたという所でしょう。

(関連記事)

朝鮮半島の緊張緩和へ」目的に 米韓定期演習の廃止
https://mainichi.jp/articles/20190304/k00/00m/030/029000c

 ここでひとつ着目すべき点は米韓大規模演習を「中止」ではなく「廃止」と将来に渡り行わないことを表明した点です。

 米韓は両演習に代わり、規模を縮小した形で合同演習を実施する方針ですが、定期的な大規模演習を廃止することで、即応能力が著しく低下することは必定です、韓国軍および在韓米軍の能力低下は北朝鮮に対する何よりのプレゼントになりましょう。

 さて文在寅韓国大統領は無邪気に喜んでいるかも知れませんが、今回のトランプ大統領による米韓軍事演習の未来永劫の「廃止」決定のその本心を正しく読み解くとき、はたして手放しで喜んでいいのか事態はもう少し深刻です。

 本件でトランプ大統領は例によってツイッターでささやきます。

 上記毎日記事より当該部分を抜粋。

 トランプ米大統領は3日、ツイッターで「韓国との合同演習を望まない理由は、膨大な金がかかるからだ。私は大統領になる前からそう主張してきた」と強調。「また、この時期に北朝鮮との緊張を緩和するのはいいことだ」とも指摘した。

 要するに膨大な金がかかるのが「廃止」の理由の第一であり北朝鮮との緊張を緩和はついでであることを明かしています。

 ここでこのトランプ発言を取り上げている毎日記事をリテラシしましょう。

 ツイッターによるトランプ発言のソースはこちら。

f:id:kibashiri:20190304112825p:plain
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1102302218903003141

 毎日新聞が訳さなかった部分を赤線付きでアップします。

f:id:kibashiri:20190304130535p:plain
https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1102302218903003141

 毎日新聞は「膨大な金がかかるから」と意訳していますが、実際にはトランプ大統領は下線部のとおりその莫大なお金は「(韓国から)米国に返済されていない」と表現しているわけです。

 トランプ大統領は、韓国との軍事訓練をやりたくない理由は、(韓国から)米国に返済されていない何億ドルものお金を節約するためだと主張しているのです。

 莫大なお金が掛かってきた米韓軍事演習の費用のほとんどを米国が負担してきた、韓国が本来負担すべき金額を米国への負債とみなしているのです。

 28日の記者会見でトランプ大統領は「合同演習をするたびに1億ドル(約112億円)かかる。きわめて高額」と発言しています。

トランプ大統領は記者会見で「合同演習をするたびに1億ドル(約112億円)かかる。きわめて高額」とし、「韓国が合同演習に関して米国を支援すべきだと考える」と話した。「我々は合同演習に数億ドル費やすが、それを補償されることもできない」とも話した。

トランプ氏「費用がきわめて高額」…韓米合同演習の終了、事実上主導 より抜粋
https://japanese.joins.com/article/810/250810.html?servcode=A00§code=A20&cloc=jp|main|inside_right

 国防総省は、毎年行われる合同演習の総費用を明らかにしていないので、トランプ氏が示すこの1億ドルという数字の根拠は不明ですが、いずれにせよ演習費用の大部分をアメリカが負担してきたことが、トランプ大統領の今回の決定の理由であるのは明らかであります。

 まとめます。

 今回の米韓合同演習廃止決定は、韓国の安全保障上の大問題だと考えます。

 第一義的には将来にわたる合同演習廃止は韓国の軍事力の弱体化を招きます。

 そしてトランプ氏の対韓国軍事ディールはここで終了する保証は一切ありません。

 今回トランプ大統領は軍事同盟ですら金額の出入りする取引(ディール)と見なしアメリカにとって損な取引(バッドディール)とみなせばばっさりと切り捨てる実行力を見せつけました。

 米メディアが予測するのが、在韓米軍駐留費用の見直し、さらには在韓米軍の規模縮小、在韓米軍完全撤退の可能性も、トランプ氏は金額ベースのディールとして次々と判断していく可能性があることです。

 このような一方的な朝鮮半島の南側による軍備縮小(弱体化?)に対し、現状北朝鮮はノーディル状態です。

 つまり北朝鮮の核ミサイル数十個、公表しているあるいは秘密の核基地並びに核関連施設、これらはすべて温存されたままです。

 米朝会談で北朝鮮に非核化の意思そのものがないことが確認済みです。

 今回の一方的米韓合同演習廃止決定は、アメリカのトランプ大統領にとってはお金の問題なのでしょうが、軍事的には北朝鮮にとってグッドディールなのであり、韓国にとってバッドディールなのは自明です。

 それにつけても自国のバッドディールを嬉々として喜んでいる文在寅韓国大統領の絶望的無能さです。

 これは韓国にとって悲劇です。



(木走まさみず)