木走日記

場末の時事評論

野党のみなさんのトンチンカンな政権攻撃が残念〜問題の本丸は長年続いた行政による明確な統計法違反

 私は学生の時、厚生省(当時)の外郭団体の『厚生統計協会』でアルバイトをしていました。

 現在は一般財団法人『厚生労働統計協会』となっています。

厚生労働統計協会
https://www.hws-kyokai.or.jp/

 東京の六本木にあるこの協会で、学生の私は統計処理のお手伝いをしていました。

 印象的だった統計では、前年に亡くなられた人の死亡診断書(死体検案書)を総数入力し各種統計処理をしていろいろな資料を作成したことでした。

 死因統計は国民の保健・医療・福祉に関する行政の重要な基礎資料として役立つとともに、医学研究をはじめとした各分野においても貴重な資料となっています。

 手書きの死亡診断書から、生年月日、性別、都道府県、死因など統計処理に必要なデータを入力していきます。データ量が膨大なのでその入力には多くの時間が掛かったと記憶しています。

 死因統計は基幹統計なので全数調査が基本でした。

 全数を統計とれば理論的には誤差が発生しないからです。

 工学系学生だった私は当時統計オタクだったので、入力作業のほか統計処理作業など嬉々として働いていました。

 さて。

 当ブログは統計不正問題で野党には政府を批判する資格はないとエントリーしました。

野党に統計不正問題で安倍政権を批判する資格などない
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2019/02/08/093811

 エントリーより抜粋。

 時系列で考えただけでも「アベノミクスの偽装」などありえません。

 確かにときの政権である安倍政権にもこのような不正を見逃していた責任はあるでしょう。
 
 しかしだとすれば少なくとも2004年以降の歴代の政権にも、不正を見逃していた同等の責任があるはずです。

 民主党は2009年から2011年までは与党で民主党政権を築いていたではないですか。

 本件で安倍政権を批判している枝野氏も玉木氏も原口氏もみなさん元民主党議員ではないですか。

 民主党政権時代厚労省の統計不正問題を見過ごしてきた野党の議員たちに、この統計不正問題で安倍政権を批判する資格などないのです。

 繰り返します。

 この重大な問題は与野党一致して取り組むべき問題です。

 しかるにです。

 一部メディアや野党の議員は全くあさっての方向の政権の責任追求に精を出してしまっています。

 この問題は二重の構造をなしています。

 まず野党が上滑りの追求をしているのは政府の合法的「統計手法の変更」です。

 野党が新たに矛先を向けているのが、勤労統計のうち、抽出方式で調査対象を入れ替える中規模事業所の調査手法を、昨年1月に見直した経緯です。

 それまでは2~3年ごとに調査対象を総入れ替えし、サンプル変更の影響を補正するため、過去にさかのぼってデータを修正していた。この方法に対し、首相秘書官が15年3月、「改善の可能性を考えるべきではないか」と指摘。同年6月に厚労省は見直しの検討を始め、昨年の変更に至ったわけです。

 確かに厚労省が開いた検討会の経過には不自然さがあります。

 途中まで総入れ替え継続の方向で議論が進んでいたのに突然、厚労省側が「部分入れ替えを検討したい」と表明。調査方法の変更につながりました。4年前の検討会にもかかわらず、この国会で問題となるまで議事録も一部しか公表されていませんでした。

 政府にはていねいな説明が求められますが、一方この変更は野党がどんなに追求したとしても統計法にのっとった手続きを踏んでおり合法なものです。

 政権側がサンプルに景気のいい業種・会社を入れんとあがいたのかもしれませんが、手続き的には合法にすすめられています。

 所得をあげようとしたわけしょうが、本来の不正による所得減少による雇用保険労災保険の給付減少とは、逆方向の動きであることも指摘しておきます。

 この問題の本丸はそこではありません。

 2004年以来、おそらく組織的に行われていただろう勤労統計の不正の問題です。

 こちらは役人がこっそり統計手法を変更しなおかつそれを外部に知らせなかったという、明確な統計法違反なのであり、雇用保険労災保険の給付が本来より少なくなる被害も生みました、その原因究明、責任の明確化こそが与野党問わずの政治の責任のはずです。

 本来より所得が低く算出されてしまっていたわけです。

 勤労統計では、従業員500人以上の大規模事業所はすべて調査するのがルールですが、厚労省は04年から、東京都分を勝手に抽出調査に変えていました。

 データを本来の全数調査に近づける統計処理も長年怠っていましたが、昨年1月、中規模事業所の調査手法見直しに合わせてひそかに補正するようになりました、確信犯ですね、

 省内で問題が認識されたのは、いつからなのか?

 どの範囲の職員が不正を実行することをいつ決定したのか?

 なぜ長年不正は黙認され続けたのか?

 おそらくですが、この不正は組織犯罪であり、複数の職員が関わっていた可能性が大きいです。

 こうした行政の組織犯罪、無責任な体制、組織の問題点こそ、国会で厳しく追及しなければなりません。

 繰り返します。

 問題の本丸は長年続いた行政による明確な統計法違反です。

 いつもながらの野党のみなさんのトンチンカンな政権攻撃が残念でなりません。



(木走まさみず)