トランプ氏の日米安保条約破棄発言について愚考する~「日米安保が破棄されたら日本が核武装するかも」と思わせるために
米国のトランプ大統領が6月26日、米テレビ番組で日米安全保障条約について、日本の米国防衛義務がない点を指摘し、不満を表明しました。
トランプ氏は番組で「日本が攻撃されれば、米国は第三次世界大戦に参戦し、米国民の命をかけて日本を守る。いかなる犠牲を払ってもわれわれは戦う。だが米国が攻撃されても、日本には我々を助ける必要がない。ソニー製のテレビで見るだけだ」と語りました。
前日の25日には、米通信、ブルームバーグが側近3人の話として、トランプ氏は日米安保条約が米国に日本防衛義務を課す一方、日本には米国防衛義務をがない点を「あまりに一方的」と指摘し「条約を破棄する可能性を示唆した」と報じたばかりでした。
28日から大阪で始まる主要20カ国・地域(G20)首脳会議の直前というタイミングを選んで、トランプ氏が日米安保条約について不満を表明したのは、安全保障問題で日本がより積極的な貢献と役割を果たすよう「揺さぶりをかけた」とみて、間違いありません。
今回のトランプ発言がトランプ政権全体の意思かと言えば、米政権内部で十分に検討したうえでの発言とは言えません。
とはいえ、このトランプ氏の日米安保破棄発言は、3年前の大統領選のときからの氏の持論でもあります。
2016年5月、トランプ氏は、米軍が駐留する日本や韓国など同盟国に駐留経費の全額負担を求めると表明します、応じなければ、米軍を撤退させる考えを示しました。
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2016/5/6 15:45
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同じ頃、トランプ氏は「米国は世界の警察官はできない。米国が国力衰退の道を進めば、日韓の核兵器の保有はあり得る」と述べ、北朝鮮や中国への抑止力として日韓の核保有を認めています。
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2016/3/27 19:34
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さてこのG20会議直前でのトランプ大統領の日米安保条約を破棄する可能性を示唆する発言でありますが、もちろんトランプ氏ならではのブラフ(こけおどし)と考えてよいでしょう、日本とのこの後の交渉を有利に持っていくためのハッタリみたいなものでしょう。
日本国内の政党でも反応を示したのは共産党ぐらいなものであります。
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共産・志位委員長「本当なら結構だ」 トランプ米大統領の「日米安保破棄」報道
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さて日本の安全保障について思考を巡らすよい機会といえます。
仮定の話ですがもし、日米安保条約が破棄され、日本列島から米軍が完全に撤退した場合、日本周辺国では誰が喜ぶのかは明らかです、中国、北朝鮮、ロシアでしょう。
日本に駐留する強大な米軍のその軍事力を恐れて日本には手を出せずにいた国々が、在日米軍のプレゼンスから解き放たれるのです、中国は間違いなく尖閣で軍事アクションを起こすでしょうし、あわよくば沖縄諸島の領有をも目論んでくるかもしれません。
なにせ、日米安保時代には、米軍は矛(ほこ)、日本は盾(たて)、すなわち攻撃系兵器はほぼ米軍に頼りきりでしたから、日本には敵基地攻撃能力はないわけです。
米軍が撤退したら日本は軍事的には、まるはだか、絶望的状況に陥ることでしょう。
トランプ大統領だけではなく、将来別の米国大統領がいつ日米安保条約破棄に動くかはわかりません、がしかし、私たちは何をどう備えておけばよいのでしょうか。
速やかに憲法を改正し日本も攻撃系兵器も有することが可能な「普通の国」にならなければなりません。
日米安保が有効なうちにです。
そして合理的帰結として、日本の核兵器保有論が台頭することでしょう。
私は日本が核兵器を保有することを是認するつもりはありません。
日米安保があるうちは米軍の「核の傘」に守られています、日本固有の核は必要ないでしょう。
しかし、日本は、法的にも技術的にも核兵器をいつでも保持できる状況を作り出し、周辺国に知らしめることは重要です。
日本は必要ならばいつでも核保有できるんだぞという警告です。
日米安保が破棄されたら日本が核武装するかもしれないぞと、国際的にシグナルを出しておくのです。
このシグナルは周辺国だけでなく、実はほかならぬ米国にも安保条約破棄を躊躇させるのに有効なことでしょう。
それがためにも、速やかに憲法を改正すべきです。
今回はトランプ氏の日米安保条約破棄発言について、もろもろ考えました。
(木走まさみず)