木走日記

場末の時事評論

「人類の普遍的価値」と「国際社会の原則」を守る国だと?

 ブログで取り上げるのも気が重いのですが、さて韓国です。

 14日からソウル市内では、プラスチック製の慰安婦像を乗せた路線バスの運行が始まりました。

 路線バスの座席に置かれた少女像に手を触れながら、朴元淳ソウル市長は「バスに乗りながら少女像を見て、慰安婦として犠牲になった多くの人々を追悼することができる」とご満悦です。

時事通信記事)

ソウルの路線バスに少女像=「慰安婦追悼できる」と市長

 【ソウル時事】韓国の首都ソウルで14日、慰安婦を象徴する少女像を1体ずつ座席に設置した路線バスが運行を始めた。少女像はプラスチック製で高さ約1.3メートル。市内の日本大使館近くを通る路線バス5台の座席に置かれた。少女像を乗せたバスは9月末まで運行される。

 運行を開始したのは民間企業「東亜運輸」(ソウル)。韓国メディアによると、14日に乗車した朴元淳市長は「わざわざ少女像を訪れなくても、バスに乗りながら少女像を見て、慰安婦として犠牲になった多くの人々を追悼することができる」と述べ、少女像設置バスの走行を歓迎した。また、慰安婦問題をめぐる日韓合意について「時間がかかっても、わが国民が情緒的に納得できる新たな合意が必要だ」と主張した。(2017/08/14-11:48)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017081400483&g=int

 ところでこの8月14日ですが、韓国では最近「世界慰安婦の日」と位置づけられています。

 で、「世界慰安婦の日」のイベントとして、元慰安婦の支援団体が、ミニチュアの金色の慰安婦像500体をソウル市内で展示しました。

 さっそく朝日新聞が速報しています。

朝日新聞記事)

ソウルに500人分のミニ少女像 「世界慰安婦の日」で

 韓国で元慰安婦を支援する市民団体は14日、ソウルなど各地で少女像の除幕式や記者会見などを相次ぎ開いた。市民団体は、1991年に元慰安婦が初めて名乗り出た「8月14日」を「世界慰安婦の日」に位置づけている。

 ソウル中心部の清渓川(チョンゲチョン)広場では、市民団体が南北朝鮮などに在住していたとする元慰安婦500人分の少女像のミニチュア像を展示した。

 文在寅(ムンジェイン)韓国大統領は14日、大統領府で独立運動などにゆかりのある214人を招いて昼食会を開いた。大統領府は「献身と感謝のための意思疎通の場」として、元慰安婦と元徴用工4人も特別に招いたと説明した。

 この日はまた、ソウル市内を循環する151番バスの座席に、慰安婦問題を象徴する少女像のプラスチック製レプリカが設置された。朴元淳(パクウォンスン)市長も同日朝、バスに乗って視察した。(ソウル=牧野愛博)

http://www.asahi.com/articles/ASK8G5JFRK8GUHBI01C.html

 上記朝日新聞記事にもあるとおり、文在寅(ムンジェイン)韓国大統領はこの日、元慰安婦と元徴用工4人を含む民間人たちを特別に大統領府に招いて昼食会を開いてます。

 そもそも文在寅大統領は慰安婦、徴用工について「日本の指導者の勇気ある姿勢」を強く要求しています。

 北朝鮮が核ミサイルをちらつかせグアム近海に4発試射するとアメリカを威嚇し、アメリカも「軍事的行動の準備はできている」と激しく反応、緊張が極度に高まっている中での、文在寅韓国大統領による、元慰安婦と元徴用工との昼食会であります。

 文大統領、就任以来このタイミングでの北朝鮮との対話路線を唱えてはみたものの、北朝鮮にも完全に無視され、アメリカからもあきれられ、国際的にもその外交センスに大きな疑問符が付けられているわけですが、この局面でも対日本に関しては執拗です、慰安婦と徴用工の問題には異常なほどの執着を見せているわけです。

 で、15日の光復節をむかえるわけです。

 ここで文大統領、なんと「北朝鮮との対話路線」と「慰安婦と徴用工の問題には異常なほどの執着」を合体させて、とんでもない演説をするのです。

 徴用工で「強制動員の南北共同調査を」北朝鮮に提案するのです。

産経新聞記事)

韓国の文在寅大統領が演説 徴用工で「強制動員の南北共同調査を」 日韓合意では再交渉に触れず「日本の指導者の勇気ある姿勢が必要」
http://www.sankei.com/world/news/170815/wor1708150030-n1.html

 産経記事によれば、大統領は「強制動員の苦痛は続いている」と徴用工などの問題に言及、続けて「被害規模の全ては明らかにされておらず、十分でない部分は政府と民間が協力し、解決せねばならない。今後、南北関係が改善すれば、南北共同での被害の実態調査を検討する」と述べたのです。

 その上で「解決には人類の普遍的価値や国民的合意の上での被害者の名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある」とし、「日本の指導者の勇気ある姿勢が必要だ」と訴えます。

 うーん、「人類の普遍的価値」と「国際社会の原則」のもと、この局面で徴用工で「強制動員の南北共同調査を」提案する韓国の文在寅大統領なのであります。

 すごいです。

 ・・・

 ・・・

 8月14日すなわち韓国以外誰も知らない「世界慰安婦の日」に、金色に輝くミニチュア慰安婦像500体が、豪華絢爛にソウル市内で展示され、同日、ソウル市内を循環する151番バスの座席に、慰安婦像が鎮座いたします。

 そして翌日15日の光復節で、文在寅大統領は世界に向かって高らかに演説するのです、人類の普遍的価値と国際社会の原則のもと、徴用工強制動員の南北共同調査を実施しようじゃないか、と。

 悪いジョークかとも思われるこのお隣の国で起きている一連の出来事ですが、我々日本人の感覚からすると現実離れしていますが、すべて実話なところが少し肌寒さを感じるわけです。

 「人類の普遍的価値」とか「国際社会の原則」とか、どの面(つら)がほざくのか、反論するのも嫌になりますが、一応しときます。

 文在寅大統領よ、国際原則を言うならば、そもそも国と国との約束を守りなさい。

 まず元慰安婦の問題は、今回まったく触れていない、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意で、解決済みです。

 また元徴用工の問題も、元徴用工などの個人請求権は1965年の日韓請求権協定で消滅しており、日韓政府間では52年前にすでに解決済みの問題です。

 「人類の普遍的価値」である国家間の約束事・協定で明文化されているのです、つまり「国際社会の原則」に法って解決済みの問題なのです。

 この緊迫した局面で当事国でもあるアメリカの同盟国である韓国の大統領にこんな低レベルの批判をすること自体、なんとも虚しいのですが、あまりにも常識がない主張なのだから仕方がありません。

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 さて、肝心の韓国大統領がこんなありさまですから、いきおい、アメリトランプ大統領は韓国を無視して同盟国日本との連絡を密にすることになります。

(関連記事)

日米首脳が電話会談 グアム沖の発射計画の対応協議 対北圧力強化で一致へ
http://www.sankei.com/politics/news/170815/plt1708150021-n1.html

 両首脳が電話会談を行うのは先月31日以来です。

 日米間の首脳レベルで頻繁に連絡を取り合うことで、北朝鮮や中国などに日米両国の連帯を示す狙いがあるのは当然です。

 そうすると、今度は韓国のメディアが、韓国大統領が日米から無視されていると騒ぎ出します。

朝鮮日報記事)

【社説】米日首脳の「文大統領パッシング」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/08/16/2017081600860.html

 社説は、韓国大統領が無視されている、こんなことは「前例がないこと」と憤ります。

 北朝鮮の核・ミサイル問題の当事者は、言うまでもなく韓国だ。衝突が起きるとしても、ここで起きる。ところが、米国の大統領が北朝鮮問題で日本の首相とはひんぱんに電話するのに、韓国の大統領は飛び抜かしている。前例のないことだ。

 ・・・

 この緊迫した局面で北朝鮮との対話路線にこだわってあさって外交してしまっているのだもの、電話会談が後回しにされてもそんなの自業自得なのに、それはそれで気に入らないようです。

 かってに「記念日」つくって、かってに「原則」振り回して、かってに「宥和政策」唱えて、かってに「無視するな」って怒って、すごく忙しい隣人なのであります。

 隣人なら引っ越せば済むんですが、国の場合そうはいかないのであります。

 読者のみなさん、どうでしょう、この隣国。

 なんか、少しでも関わるとすごく面倒くさいのです・・・

 やれやれなのであります。

 ふう。



(木走まさみず)