木走日記

場末の時事評論

いつの日か多用途運用護衛艦「いずも」をその実力どおり空母と呼びたい

 すばらしいです。

 ついに「防衛計画の大綱」に向けた与党の作業チームは、自衛隊最大の護衛艦「いずも」を「多用途運用護衛艦」として改修し、事実上「空母化」することについて、導入を了承しました。

 11日の会合で政府は、自衛隊最大の護衛艦「いずも」を改修して、「空母」の役割も担わせる「多用途運用護衛艦」には、短い滑走路でも離陸し、垂直に着陸できる最新鋭のステルス戦闘機、F35Bで構成する部隊は、常時搭載しないなど、「攻撃型空母」とは異なると説明しました。

(関連記事)

護衛艦「いずも」の“空母化” 防衛大綱の骨子 与党が了承
2018年12月11日 18時31分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181211/k10011743401000.html

 一隻当りに搭載するF35Bの数は12〜16機、「いずも」と「かが」で20機以上のF35Bを運用することになる予定です。

 「多用途運用護衛艦」これですね、公明党がどうしても「空母」とか「母艦」とか「母」が付く呼称は「攻撃型空母」を想起するので認めないとしたので、「多用途運用護衛艦」となったわけなのですが、「いずも」は素人目にも誰が見ても「空母」なわけで、ましてや最新鋭ステルス戦闘機F35Bを載せるのに「護衛艦」とは、もはや「言葉遊び」の領域なのではあります。

 さっそく韓国ハンギョレ新聞は空母そのものだろが、と突っ込み記事を掲載します。

空母ではない?…日本、空母に「多用途運用護衛艦」呼称つける

http://japan.hani.co.kr/arti/international/32293.html

 記事では、命名のいきさつが細かく書かれています。

 自民党は、当初は「防御型空母」という名称使用を考慮していた。日本政府は専守防衛(攻撃を受けた時にのみ防衛力を行使し、その範囲は最小限とする)原則のために、攻撃型空母は保有しないという立場を維持しているためだ。しかし、連立与党の一軸である公明党が「空母という言葉はだめだ」と反対した。その後5月に自民党は「多用途運用母艦」という表現を持ち出した。公明党は「母艦」という表現が「空母」を連想させるとして再び反対した。

 さて一方の中国メディアでは、呼称はともかく日本の空母の戦闘能力に警戒感をあらわにしています。

 中国メディアの「日本の空母はアジア最強になる可能性」との報道を報じるサーチナ記事から。

日本の空母はアジア最強になる可能性、日本の軍事的野心を過小評価するな=中国
http://news.searchina.net/id/1672927?page=1

 記事は「多用途運用母艦」と「いずも」の呼称を間違えていますが、それはともかく「空母」と呼べないのはそれが「憲法違反」だからだと指摘します。

 記事は、日本がいずも型護衛艦を改修し、事実上の空母として運用しても「多用途運用母艦」という呼称を使用するのは、日本の憲法では攻撃型空母の保有は許されないと解釈されているためであり、「空母を保有することが日本にとって憲法違反になるためだ」と主張した。

 さらに「F−35Bは世界先端のステルス戦闘機」だから、「それを艦載する時点で日本の多用途運用母艦は中国の空母・遼寧艦の戦闘能力を上回る」と指摘します。

 続けて、F−35Bは世界先端のステルス戦闘機であり、それを艦載する時点で日本の多用途運用母艦は中国の空母・遼寧艦の戦闘能力を上回ることになると指摘。いずも型護衛艦が現時点で何機のF−35Bを艦載できるかは不明であると指摘する一方、保守的に見積もっても12機は可能であり、16機ほど艦載できたとしても意外なことではないと論じた。

 日本の「いずも」は戦闘力で中国の空母を上回ると主張するこの記事ですが、その主張の正誤はここでは踏み込みません(というか軍事知識が素人の当ブログには踏み込めません)。

 がしかし、中国など諸外国から見れば「攻撃型」もなにもなく、どう見立てても「いずも」は立派な空母なのであり、日本以外で「いずも」を「多用途運用護衛艦」と呼称してくれる国は皆無ではないでしょうか。

 ・・・

 まとめます。

 専守防衛にこだわり例えば「敵基地攻撃能力」保持の明記を今回の大綱も見送りましたが、北朝鮮の核・ミサイルの脅威は減じていません。

 そんな北朝鮮は自国を標的とする米国の懲罰的・報復的抑止力を恐れましたが、その力を持たない専守防衛の日本の頭上には平然とミサイルを何発も撃ったのです。

 そもそも「空母」は攻撃的です。

 空母は敵基地攻撃や敵艦隊攻撃に中心的に使用されてきましたことは、太平洋戦争から、フォークランド紛争時のイギリス空母の攻撃、最近のイラクリビアにおける米空母艦隊の攻撃を見れば明らかです。

 今も昔も空母は攻撃艦の主力なのです。

 その意味で、全国紙でただ一紙、社説で「いずも」空母化に反対した、11月30日付け朝日新聞社説は、その内容はともかくタイトルは正しいのです。

(社説)防衛大綱改定 「空母」導入には反対だ
2018年11月30日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S13791107.html?ref=editorial_backnumber

 朝日社説は「空母であることは明白なのに、言葉を言い換える」な、とお怒りです。

 事実上、空母であることは明白なのに、言葉を言い換えることで本質から目をそらそうとする。安倍政権下で何度も繰り返されてきたことである。

 まったくなあ、不毛な言い換えでありますことは認めざるを得ません。

 攻撃的でない空母など練習艦ぐらいではないでしょうか。

 一日も早く「いずも」を空母と呼べるために、憲法改正を急がねばなりません。



(木走まさみず)