木走日記

場末の時事評論

「韓国起源でないなら国内のソメイヨシノを全て殲滅せよ」(韓国人専門家)

 さて今回はお隣の国韓国で巻き起こった珍騒動を取り上げてみたいのであります。

 韓国ではそもそも桜を愛でる文化は存在していませんでした、古い文献でも、桜を楽しんだ例は存在せず、過去の詩や絵にも見られません。

 その代わり中国の文化的影響のもと、梅、ツツジ、桃をはるかに強く愛し、詩と絵で礼賛し、また飲食品にも入れて楽しんだことが記録されています。

 韓国の人々が「日帝強占期」と呼んでいる日本統治時代に大量に植えられたソメイヨシノは、日帝の象徴として戦後ほとんど伐採されてしまいます。

 ところが、そのソメイヨシノが韓国の済州(チェジュ)島に自生する桜・ワンボンナム(王桜)が起源であるとの説が韓国で台頭します。

 ソメイヨシノ韓国起源説については、以下の読売新聞記事がくわしいです。

ソメイヨシノ」はどこからやって来たのか
2017年03月19日 10時53分
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170317-OYT8T50014.html?page_no=1

 なるほど、記事によればそもそもこの説は戦前に小泉源一・京都帝国大学教授が唱えられたのであります。

【昭和期・戦前】 韓国・済州島起源説

 昭和になると、韓国・済州島起源説が提唱された。植物分類学の第一人者だった小泉源一・京都帝国大学教授が、済州島産の桜の標本にソメイヨシノに似たものを見つけた。この桜は古くから同島で見られたといい、地元ではワンボナムと呼ばれていた。1932年(昭和7年)、小泉博士は済州島を現地調査し、ワンボナムの自生を確認。ワンボナムを済州島の古い別名エイシュウからとったエイシュウザクラと呼んだ。また、日本に生えているのと同じソメイヨシノ済州島に自生していたと報告。そのうえで、同島から日本に移入されたものではないかと推定した。

 この済州島のエイシュウザクラ(韓国名ワンボンナム)がソメイヨシノの起源だとする昔の説が韓国では今も復活して信じらているわけです。

 そこで韓国ではここ20年の間に、韓国中で大量のソメイヨシノが植えられ、桜まつりが各地で開催されるようになります。

 ソウルのサクラ祭り開催を伝える中央日報記事です。

10日からソウル・汝矣島でサクラ祭り開催
2015年04月05日11時32分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
https://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=198551&servcode=400§code=400

 三年前の記事ですが当時で11回目、ソメイヨシノ1641株と報じられていますから中々の規模と本数ですね。

汝矣島サクラ祭りは2005年から始まり今年で11回目を迎えた。汝矣島にはソメイヨシノ1641株をはじめ、ツツジレンギョウなど13種類の春の花が植えられている。

 日帝の残滓として戦後伐採されたソメイヨシノなのですが、済州島「起源」なのですからすべて韓国「原産」とみなされて、ここに大量復活となったわけであります。

 さて韓国の科学者グループは済州に自生する王桜(ワンボンナム)のゲノムを完全に解読いたします。

 王桜(ワンボンナム)とソメイヨシノをゲノムレベルで解析し、ソメイヨシノ韓国起源説を科学的に証明するのが目的でした。

 その研究結果を含む論文が世界的権威である科学ジャーナル『ゲノムバイオロジー』9月号に掲載されました。

 論文は英文ですがネットでも確認できます、こちらです。

Draft genome sequence of wild Prunus yedoensis reveals massive inter-specific hybridization between sympatric flowering cherries
https://genomebiology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13059-018-1497-y  

 その結果、ゲノム分析を通じて日本のソメイヨシノと済州の「ワンボンナム(王桜)」は全く異なる種であることが確認されたのであります。

 このソメイヨシノ韓国起源説が科学的に完全否定されてしまったというショッキングなニュースはすぐに韓国メディアで速報されます。

済州か日本か…ソメイヨシノ起源めぐる110年論争に終止符
https://japanese.joins.com/article/129/245129.html?servcode=400§code=400

 この記事の中で韓国メディアらしいなあと興味深い2点をご紹介。

 一点はなぜか韓国の科学力が「世界的でも初」めての到達点に達し「世界最高水準」であると、あまり関係の無い「韓国が世界一自慢」(苦笑)がまざります。

国立樹木園のチャン・ゲソン氏は「野生樹木のゲノムを完全に解読したのは世界的でも初めて。国内植物ゲノム解読と情報分析能力が世界最高水準であることを見せている」と評価した。

 そしてもう一点は、韓国「起源」ではなかったことが証明された韓国中に植えられてしまった何十万本ものソメイヨシノの将来です。

 韓国の専門家は韓国内のすべてソメイヨシノは伐採せよと訴えます。

北東アジア生物多様性研究所のヒョン・ジンオ所長は「韓国国内に庭園樹や街路樹として普及した王桜の大半は済州の王桜でなく日本のソメイヨシノである可能性がある」とし「日本のソメイヨシノを済州の王桜に変えていかなければいけない」と指摘した。

 いや、すごいです。

 こうして韓国のソメイヨシノは2度目の殲滅危機を迎えているのであります。

 ふう。



(木走まさみず)