木走日記

場末の時事評論

「人権をないがしろにするトランプ政権」(日経社説)に少し反論する〜人権、人権と、青臭い「正論」をたてにすれば北朝鮮のような人権軽視のならず者国家とは、交渉の糸口すら見いだせないのもまた事実


 さて国連人権理事会からの脱退を表明したアメリカ政府に対し、日経新聞が23日付け社説で批判しております。

人権をないがしろにするトランプ政権
2018/6/23付
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO32156010T20C18A6EA1000/

 社説は冒頭から「トランプ政権の人権意識の乏しさはいまに始まったことではないが、だからグッドバイではまるで駄々っ子」と痛烈批判を展開しています。

 米国が国連人権理事会からの脱退を表明した。トランプ政権の人権意識の乏しさはいまに始まったことではないが、だからグッドバイではまるで駄々っ子だ。人権の尊重は、人類が生んだ英知のひとつである。弱肉強食の時代に戻さないためにどうすべきか。日本にもできることがあるはずだ。

 そもそも「押しつけがましい面もあったが、世界に人権意識が広がる過程で米国の果たした役割は大きかった」と、これまでは過去米国は人権を重視してきたはずだと指摘します。

 米国は宗教的弾圧を逃れた移民が中心になってつくった国だ。基本的人権の擁護を、民主主義や市場経済とともに重視してきた。押しつけがましい面もあったが、世界に人権意識が広がる過程で米国の果たした役割は大きかったといえよう。

 しかし「トランプ大統領は人権に言及することはほとんどない。むしろ人権をないがしろにしている」と批判します。

 だが、トランプ大統領は人権に言及することはほとんどない。むしろ人権をないがしろにしているといってよい。

 社説の結びは、安倍首相はトランプと親しいのが自慢なのだから、いますぐ直言すべきであると要請して終わっています。

 安倍首相はしばしばトランプ大統領との距離の近さを強調する。だとすれば直言ができるはずだ。するならばいまである。

 「人権をないがしろにするトランプ政権」ですか。

 ご指摘至極ごもっともながら、何をいまさら朝日社説のような青臭い「正論」を日経は社説に掲げたのでしょう。

(22日付け朝日新聞社説)

(社説)米国と人権 大国の原則軽視を憂う
2018年6月22日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S13550928.html?ref=editorial_backnumber

 トランプ大統領オバマ前大統領のように人権重視派だったとすれば、北朝鮮金正恩党委員長とハグし合ったり、国を愛する立派な指導者と持ち上げたりは絶対にしないでしょう。

 人権をないがしろにするトランプ政権だからこそ、今回のような電撃的米朝会談という大胆なアプローチが可能だったともいえましょう。

 アメリカ大統領と北朝鮮委員長は「人権をないがしろにする」者同士という同じ香り漂う指導者ということでしょう。

 人権、人権と、青臭い「正論」をたてにすれば北朝鮮のような人権軽視のならず者国家とは、交渉の糸口すら見いだせないことでしょう、かってのオバマ政権のように。

 ここは蛇の道は蛇と申しましょうか、同類同士で話し合うことによって前に進展するのであるならば、トランプ政権が人権をないがしろにするとしても、ある程度は目をつむることが、この重大局面(北朝鮮の核放棄をどう履行させるか方法論をつめる)では必要なのではないでしょうか。

 もっともご本人は「日本では私は英雄」とまくし立てていますが。

トランプ氏「日本では私は英雄」 北朝鮮の脅威低下と強調 米テレビインタビューで

 トランプ米大統領は23日に放映されたキリスト教系放送局TBNテレビのインタビューで、12日の米朝首脳会談により北朝鮮の核・ミサイルの脅威が低下したと強調し、「日本では私を世界的な英雄だと思っている」と述べた。

 トランプ氏は米朝首脳会談以降、「核の脅威は去った」と繰り返し発言。北朝鮮が核放棄に踏み切るか懐疑的な見方が根強い中、楽観的な見解を示している。

 トランプ氏はインタビューで、米主要メディアが米国が北朝鮮に譲歩したと批判していることについて「憤りを感じる」と話した。かつては「独立記念日の花火のように打ち上げられていた」北朝鮮弾道ミサイルが、過去数カ月間、日本上空を通過していないと説明し、「アジアの人々は理解している。感激している」とした。

 金正恩朝鮮労働党委員長に関しては「気が合う」と信頼関係が築けたとの見方を示し、「彼は北朝鮮にとって良いことをするだろう」と非核化の進展に期待を示した。(共同)

http://www.sankei.com/world/news/180625/wor1806250001-n1.html

 金正恩朝鮮労働党委員長に関しては「気が合う」ですと。

 無邪気なものです。

 日経新聞は「人権をないがしろにするトランプ政権」を社説にて批判していますが、ご本人は、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が低下したと強調し、「日本では私を世界的な英雄だと思っている」とまくし立てています。

 ここは蛇の道は蛇であります。

 対北朝鮮トランプ外交の成り行きをもう少しの間、見守りましょう。


(木走まさみず)