木走日記

場末の時事評論

安倍首相の「苦渋の決断」に非礼を返す韓国メディア〜安倍出席当然視かつ外交的無礼者扱いする韓国左派社説の非礼

 やれやれです。

 この局面での五輪出席、産経コラムが「安倍晋三首相の平昌五輪出席は論外である」と喝破したのは、つい一週間前なのに、であります。

安倍晋三首相の平昌五輪出席は論外である 1月19日
http://www.sankei.com/column/news/180119/clm1801190003-n1.html

 それなのにの心変わりであります。

 なぜこのタイミングで安倍首相は平昌五輪開会式への出席を表明したのでしょうか。

 出席表明が官邸発表ではなく、24日産経新聞のスクープインタビュー記事であったことも意味深長であります。

 韓国の朝鮮日報の以下の読みも、あながち的外れではないかもしれません。

 平昌五輪への出席が、首相官邸からの公式発表ではなく、右翼傾向の産経新聞とのインタビューを通じて明らかになったことも注目される。さまざまな状況を考慮した上で平昌五輪への出席を決めたものの、喜んで出席するわけではないという本音をにじませたと解釈できる。

平昌五輪:安倍首相は「渋々出席」、韓日関係の改善は 記事より抜粋
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/01/24/2018012403195.html

 こたびの五輪出席は、産経インタビューでも苦渋の決断であることを匂わしている、やむをえなかった、というわけです。

 出席の理由はいくつか報道されていますが、やはりアメリカからの強い要望があったことは大きな要因のひとつだったと思われます。

 それに安倍首相の出席を熱望していた韓国政府に対して恩を売るという計算もあったかもしれません、2020年の東京オリンピック開催も念頭に置きつつ。

 しかしです。

 今回の安倍首相の五輪出席の受け止めは、韓国内では「恩を売る」などの日本的価値観からは程遠いひどいものです。

 韓国の左派系メディアハンギョレ新聞の社説を分析すれば一目瞭然です。

[社説]安倍首相の「平昌五輪」出席が韓日関係復元の出発点になることを願う
登録:2018-01-25 04:53 修正:2018-01-25 08:05
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/29599.html

 タイトルこそ「韓日関係復元の出発点になることを願う」と友好的ですが、その内容がひどいのです。

 まず安倍首相の出席は、米中露国家元首欠席の中歓迎すべきなことでしょうに、社説は、日本の首相が来るのは当然だと、欠席するほうが「不自然」と言い放ちます。

 遠くフランスのエマニュエル・マクロン大統領など、多くの国家元首が出席するのに、隣国の日本の首相が欠席するのは不自然だ。

 また、安倍首相が「文在寅(ムン・ジェイン)大統領に、慰安婦合意に対する日本の立場を確実に伝えたい」と発言したことに対して、「五輪の準備に余念がない隣国に対する礼儀でもない」と、安倍首相は礼儀を知らないと断じます。

 「前政権の合意内容を守るべき」という日本の立場は分からなくもない。また、韓日首脳会談で、安倍首相がそのような主張を展開するのも驚くべきことではないだろう。

 しかし、久しぶりの訪韓であり、五輪開幕式への出席を控えた状況で、「まず不満を聞いてもらう」というのは適切でない。五輪の準備に余念がない隣国に対する礼儀でもないだろう。

 慰安婦問題は「短期間の外交交渉で一気に解決できる事案ではない」と二年前の日韓合意を完全に無視して、安倍首相を批判します。

慰安婦問題」をめぐる軋轢が主な原因であることは明白だ。しかし、すでにタスクフォースが明らかにしたように、「慰安婦問題」は短期間の外交交渉で一気に解決できる事案ではない。この問題は単純な外交懸案ではなく、人類普遍の人権問題でもある。女性の人権の観点から、長期的な視野で意見の相違を解決していく、至難な過程を経なければならない。

 「恩を売る」どころか、要するに米中露の大国ならしかたないが隣国日本の首相は来て当たり前、来ないと逆に不自然であると、完全に見下しています。

 また安倍さんの「文在寅(ムン・ジェイン)大統領に、慰安婦合意に対する日本の立場を確実に伝えたい」と発言したことに対しては、「五輪の準備に余念がない隣国に対する礼儀でもない」と、安倍首相は外交的礼儀を知らないと断じます。

 そして慰安婦問題は時間がかかる、ツートラックで韓日関係を進展させる姿勢が求められるとしているのです。

 ・・・

 このハンギョレ社説で論じられている非常識な論説は、文大統領の属する韓国左派が有する代表的なものであります。

 隣国日本ごときの首相は来て当然、来なければ不自然。

 平和の祭典オリンピックで慰安婦に執着する安倍は外交的に非礼。

 そもそも慰安婦問題は長期的課題、日韓合意などまったく役立たず。

 このような国にこの局面で安倍首相は五輪開会式出席を決断したのであります。

 おそらく米国ほか韓国以外の国との関係も考えての決断なのでありましょう。

 その点を理解した上で、苦渋の決断だったのだと思います。

 しかしです。

 相手は「オリンピックで慰安婦に執着する安倍は外交的に非礼」とまで論を展開し始めています。短期に理解しあえることなど不可能でしょう。

 また理不尽なことを言われることでしょう。なんとまあ非建設的です。

 安倍首相の「苦渋の決断」に非礼を返す韓国メディアなのでした。

 ご苦労様です。

 はあ。



(木走まさみず)