木走日記

場末の時事評論

安倍首相とトランプ大統領の『規格外の特別な』関係

 朝日新聞記事がおもしろいです、安倍首相とトランプ大統領が仲がいいのは5つの共通点があるからではないかと指摘しています。

首相・トランプ氏、共通点続々 ゴルフ・肉好き/経済好調…
2017年11月6日05時00分
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13215296.html?rm=150

 記事は、「2人の親密ぶり」の「その背景を探る」と切り出しています。

 5日に来日したトランプ米大統領安倍晋三首相は、ともに「ゴルフ好き」で知られる。2人の親密ぶりに注目が集まるが、その背景を探るとほかにも様々な共通点が浮かび上がる。

 5つの共通点は、「ゴルフ好き」、「肉好き」と続き、3つ目は共に支持率低迷も野党が弱くて救われている点、4つ目が共にそれでも株式市場などの経済指標は好調な点であります。

 で朝日らしいなあと苦笑したのが5つ目の共通点、共に「疑惑を抱える点」なのだそうです、モリカケ疑惑とロシア疑惑であります。

 記事の結びより。

 両氏は疑惑を抱える点でも似通う。首相は森友・加計(かけ)学園問題をめぐり国会で野党の追及を受ける。トランプ氏は昨年の大統領選をめぐる「ロシア疑惑」の捜査が本格化している。

 ゴルフ好き、肉好きというあまり頭脳とは関係ない共通点から入りモリカケ疑惑とロシア疑惑を抱えている政治家だと批判的にまとめているわけですが、記事全体が安倍さんとトランプさんに対してシニカルで冷笑的なのであります。

 この記事は、あたかも安倍とトランプ、悪い点も含めて単細胞の似た者同士だから仲良しなのである、と主張しているように読めるのであります。

 シニカルで冷笑的で、5つの共通点には何ら合理的な因果は示されず、結局何が言いたいのかよくわからないあまり論理的とは言えない記事ですが、まあ、『安倍晋三のすることはなにがなんでも反対』が社是である朝日新聞とすれば、ある意味でアンチなわかりやすい記事でもあります。

 さて、今回はこの朝日新聞も皮肉るほどの安倍首相とトランプ大統領の蜜月関係について、取り上げてみたいのです。

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 安倍首相とトランプ氏の振る舞いをシニカルで冷笑的に単純化して捉える記事は、別に朝日新聞の専売特許ではありません。

 そもそもトランプ外交は米国メディアに大不評であります。

 トランプ氏から「フェイク」と罵倒され敵対視されている米国メディアでは、大統領就任以来直情的とも言えるトランプ外交に批判的な論調が多いわけです。

 就任直後の1月に、ツイッターに投稿した「暴言」によりメキシコ大統領を会談中止に追い込んだ頃は、米国メディアのトランプ外交批判は絶頂でありました。

 トランプ氏がメキシコ大統領との会談直前に「壁の建設費用をメキシコが払わなければ、会談を中止した方がいい」などと自身のツイッターに投稿したため、メキシコ国内で猛反発が起こり、ペニャニエト大統領は会談中止声明の発表を余儀なくされたわけです。

 「アメリカファースト」を単純に唱えるトランプ大統領は、メキシコ国境壁構築やTPP即時脱退にも見られるように国際協調には消極的です、当然ながらイギリスのEU脱退に喘ぐヨーロッパに於いては同調する指導者はイギリスを除いて見い出せていません、ドイツのメルケル氏などは露骨に警戒しています。

 このように、国際的に孤立化しつつあるトランプ大統領でありますが、そのような状況の中で、日本の安倍首相とは特に北朝鮮問題を通じて極めて特別に仲が良い関係を構築しているわけです。

 このドナルドとシンゾーの特別な「蜜月関係」は、米国メディアでも今回の来日前から注目されています。

 もちろん好意的な記事から否定的に扱われる記事までニュアンスはいろいろですが、そもそもトランプ外交に冷笑的だったメディアではこの「蜜月関係」もシニカルに捉えている記事も少なくありません。

 例えば、8月16日付けのこのウォールストリートジャーナル(WSJ)の記事です。

Trump’s Loyal Sidekick on North Korea: Japan’s Shinzo Abe

https://www.wsj.com/articles/trumps-loyal-sidekick-on-north-korea-japans-shinzo-abe-1502875805

 記事タイトルの"Trump’s Loyal Sidekick on North Korea: Japan’s Shinzo Abe"ですが、安倍首相を"Trump’s Loyal Sidekick"、「トランプの従順な側近」と表現しています。

 「北朝鮮(問題)でトランプの従順な側近である日本の安倍」という意味です。

 タイトルからしてシニカルでしょう。

 そっくりな記事をもうひとつご紹介します。

 こちらは、9月5日付けのニューヨークタイムス(NYT)の記事です。

Trump’s Phone Buddy in North Korea Crisis: Shinzo Abe

https://www.nytimes.com/2017/09/05/world/asia/japan-trump-north-korea-abe.html

 こちらの記事タイトルの"Trump’s Phone Buddy in North Korea Crisis: Shinzo Abe"ですが、今度は安倍首相を"Trump’s Phone Buddy"、「トランプの電話友達」と表現しています。

 先程のWSJに負けず劣らずシニカルですが、"Phone Buddy"のこの場合のバディは単に友達ではなく仲間とか相棒とか親近感ある表現ですね、日本語だと「ママ友」とか「メル友」の「友」に近いかもしれません。

 WSJの記事もNYT記事も内容は安倍首相に対して批判的というわけではまったくないのですが、いかんせん「あの」トランプ氏の「お友達」扱いなのは否めません。 

 今回の来日では、アメリカのメディアだけでなく広く世界で二人の特別な「蜜月関係」が注目されているようです。

 英国のデイリーメール紙でありますが、社会階層によって購読する新聞がはっきり分かれている英国では、タイムズやガーディアンなど富裕な上流層を対象とするリベラル寄りの高級紙に対し、中下流の読者層をターゲットとしている大衆紙であります。

 編集傾向はバリバリの右派寄りで、はっきり反リベラリズムの傾向を示しています。

 そのデイリーメール紙が今回のトランプ来日を報じた長文のオンライン記事がこちらです。

Trump touts 'extraordinary' relationship with Japan's Abe during night out with the PM and first lady Melania at trendy Tokyo restaurant where courses cost at least $200

http://www.dailymail.co.uk/news/article-5051437/Trump-touts-extraordinary-relationship-Japan-s-Abe.html

 5日夜の"trendy Tokyo restaurant where courses cost at least $200"「コースが200ドルはする人気の東京のレストラン」で、"Trump touts 'extraordinary' relationship with Japan's Abe"、トランプが日本の安倍との『規格外の特別な』関係をしつこく売り込む」と、こうです。

 "'extraordinary' relationship"ですが「『規格外の特別な』関係」と訳しましたが、普通でないという意味から、異常な、途方もない、桁外れのといったニュアンスが醸し出される単語なのですが。

 記事は長文ですが写真も多く、全体的には驚きも込めて、好意的に書いてあります、未読の読者は一見の価値ありです、写真からだけでも二人の"'extraordinary' relationship"が伝わってきます。

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 まとめます。

 世界が注目するトランプ大統領と安倍首相の『規格外の特別な』関係について、以上各国報道を取り上げてきました。

 この関係を一部アメリカのメディアがシニカルに捉えている点は留意しつつですが、当ブログとして、これは安倍首相の驚異の外交力の賜物であると、全面的に高評価いたします。

 当ブログは第二次安倍政権発足時から、安倍さんの外交力を高く評価してまいりました。

 当時のエントリーをご紹介、お時間ある読者は一読あれ。

2013-09-08 東京開催で見せつけた安倍晋三のその外交力の異様な高さ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130908

 「安倍晋三の英語によるスピーチ」を絶賛したのですが、このエントリーで私は「独裁者アドルフヒトラーのそれを彷彿とさせるパワー」というとんでもない喩えを用いてしまい、一部与党支持者からお叱りを受けた(苦笑)のでした。

 当時のエントリーの当該部分を抜粋。

 例えが良くないのは承知の上で申せば、手振り身振りを交えて自信に満ちて堂々とスピーチする安倍さんのその姿は、独裁者アドルフヒトラーのそれを彷彿とさせるパワーを感じます(少し言い過ぎでしょうか(苦笑))

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 今回のオリンピック東京開催成功の要因はいろいろ分析できましょうが、当ブログとしては安倍晋三の圧巻のスピーチを評価したいです。

 今回改めて再評価されるべきは安倍晋三のその外交力の異様な高さであります。

 彼はへたに国会などに戻って税金上げちゃったり変な法律つくったりするぐらいなら、世界中を飛び回ってトップ外交に明け暮れたほうが国益に叶うと思われますほどです。 
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 今回、安倍政権が掲げる外交方針「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向けて日米両国が協力を強化することで一致したことが明らかになっています。

 安倍首相が以前より唱えてきた外交戦略に米国トランプ大統領が乗ってきたわけです。

 2代目ブッシュ政権下で大統領補佐官や副大統領首席補佐官を務め国務、国防両省で対日政策に関わったルイス・リビー氏(現ハドソン研究所副所長)は両首脳関係の基礎として安倍首相の世界観までを指摘しています。

 「安倍氏は10年も前から日本にとっての安全保障の厳しいチャレンジを理解して米国だけでなくインドやオーストラリアなどとの有志連合的な協力態勢を固めようとした。その延長としてトランプ大統領には早い時期から英知ある外交技量で接近し、強固なパートナーシップを築くことに努めた。安倍氏のその世界観はトランプ氏の『原則ある現実主義』という対外政策にも合致した」

トランプ大統領はなぜ格別に安倍首相を信頼するのか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51480?page=3

 北朝鮮の核開発問題や軍備や経済で膨張する中国の諸問題を抱える東アジアにおいて、日米同盟を強化しつつ日本の国益を守るための外交努力をする、安倍外交はまさに現実的な選択として、平和憲法を有し軍事的選択肢を有さない日本をして最善を尽くしていると評価いたします。

 今回は 朝日新聞も皮肉るほどの安倍首相とトランプ大統領の蜜月関係・『規格外の特別な』関係について、取り上げてみました。

 当ブログとして、これは安倍首相の『規格外の特別な』外交力の賜物であると、全面的に高評価いたします。



(木走まさみず)