木走日記

場末の時事評論

またあう日まで、さらば民進党〜おそらく最後だろう民進党代表選におもう

 さて民進党代表選であります。

 21日放送のTV朝日報道ステーションで、コメンテーターでジャーナリストの後藤謙次氏が、枝野幸男氏と前原誠司氏を「民進党の飛車角」と表現していました。

 元共同通信政治部長で現大学教授の後藤謙次氏のこの「飛車角」の表現をTVで聞いて、私は素直に頷いて「確かに飛車と角、最後に残った2枚看板の戦いだな」と思いつつ、しかし一向に盛り上がらない民進党代表選に「これで飛車と角ともこの戦いがこのまま盛り上がらず国民から無視され続けたら、こりゃ無駄死にだよな討死だとしたら、どちらが勝ってももう将棋にならないなあ。飛車角落ちじゃ民進党はもう戦いにならんよなあ」とだらだらと民進党のこの先の悲しい顛末について邪推してしまったのであります。

 最後の飛車角を投入しての代表選、こいつが空振りしたら、国民から無視されたら、もう野党第一党としての政党としてのその命はつきてしまうのではないのか、そう憂いたわけであります。

 日本には自民党の政策に対抗しうる政策立案能力のある健全な野党が必要であります。

 そのような有能な野党が存在すれば、国会の論戦も緊張感がみなぎり有益な議論が展開され、ときに政府案はその欠点が修正もしくは改正され、結果、この国の立法府の能力向上、すなわち良質な法案が多く成立され、最終的には国民の利益にも貢献することでしょう。

 その意味で当ブログでも過去、何度か民進党民主党)にエールを送ってきました。

 未読の読者はご一読あれ。

2016-03-08 この国に健全な野党が生まれるためにはどうすればいいのか?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20160308

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 この国で野党が打倒自民を目指し政権を奪回しようとするならば、野党第一党は「保守回帰」すべきであり、間違っても共産党についてはダメだと、当ブログは考えます。

 当ブログが野党の立場ならば、民進党の立場ならば、自民党に対抗するには、政権を奪取するためには、共産党と協力するのとは真逆のベクトルを取ります。

 ズバリ、『保守回帰』であります。

 以前もその理由をエントリーしましたが、少しお付き合いください。

 今の選挙制度のもとでは、野党が自民党に代わり政権奪取するためには、唯一の戦略であります。

 野党の『保守回帰』こそが政権奪取の唯一の戦略であること、その理由は、2大政党制を目指しこの国に小選挙区制を導入されたことを今一度よく考えて見れば自明なのであります。

 限られた小さな選挙地区を2大政党で議席を競うとすると、選挙に勝つためには両党の主張は競うように中庸(ちゅうよう)に寄り合うことになるからです。
 
 ゲーム理論で理論的な説明を試みます。

 ゲーム理論を思いついた人はハンガリー出身の数学者で近代コンピュータの父祖とも言われるジョン・フォン・ノイマンであります。

 それを発展させたのは、アメリカ出身の数学者ジョン・F・ナッシュでありました。

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 ビーチのアイスクリーム屋の話です、少しの間お付き合いください。

 ある浜辺で商品も価格も同じアイスクリームを売ろうとしているAとBがいて、いま浜辺のどこに店を構えれば一番売り上げが伸びるかを考えています。

 浜辺は直線で客は均等に存在しています、夏の炎天下の浜辺のことです、客はもっとも近い場所にあるアイスクリーム屋から買うことが想定されます。

 さてA,Bはお店をどこに立地すれば相手より売り上げを上げることができるか思案します。

 結論から言うとA,Bともに浜辺の中央、ど真ん中に並ぶように店を構えることになります。

 最初Aは浜辺の左側4分の1ほどの位置に、逆にBは浜辺の右側4分の1ほどの位置に店を構えたとしましょう。

 この状態では、浜辺の左半分にいる客たちはAの店に、右半分にいる客たちはBの店にいくことでしょう、客は均等に存在していますから売り上げも均等、AとBの店は仲良く棲み分けられます。

 しかし、どちらか少し賢ければどうでしょう、必ず店を中央よりに移し始めるはずです。

 たとえばBの店が中央に移り、Aの店が左4分の1の場所のままだったら、Bの店が浜辺の8分の5の客にとって最寄の店となり売り上げを伸ばすことでしょう。

 こうしてこの条件では、A,B両方の店は浜辺の真ん中中央に並ぶようにくっついて店を立地することになります。

 売り上げを重視しライバルに負けないためのこれしかない戦略です。

 これがこのゲームにおける均衡点なのです、このような均衡点をナッシュ均衡と呼びます。

 それぞれ左右のイデオロギーを有する2つの政党が、閉じた地域で1議席を争う場合、ライバルより1人でも多くの有権者を引き付けるために、最初は左右に分かれていたその主張が中庸(ちゅうよう)にシフトしていく、戦略上浜辺のど真ん中に店が並ぶように、ゲーム理論によれば議席獲得のために2つの政党は小選挙区制では似たような中庸の政策を掲げざるを得なくなるわけです。

 議席獲得のためには最も多くの支持を得られる政策を取らざるを得ないわけで、2大政党の政策は似たもの同士にならざるを得ないのです。

 さて現状ですが、護憲派リベラルの論客諸氏は自民党安倍政権を「極右」との現状評価をしていますが、この現状認識こそが根本的に誤りなのです。

 自民党安倍政権の政策は、欧米の極右政党の主張と比べれば極めて「リベラル」なのであり、今回の安保法制にしても大きな「自衛権」のくくりの中での法制化にすぎません。

 安倍政権は安全保障政策で支持を得ているわけではなく、「アベノミクス」などの経済政策などが中心に支持を集めているわけです、その何よりの証拠として安保法案が国会で可決されても政権の支持率は大きく落ち込むことはありませんでした。

 日本に極右政党など存在しないのです、すなわち安倍政権は保守の範疇の中でも政策的には極めてリベラルよりであると言えるのです。

 つまり、現状は保守自民党が多くの支持を得ている状況なのです。

 浜辺でいえばこの感じです。

 この状況を野党が挽回するには、自民党と見紛うばかりの政策の『保守回帰』しかありません。

 自民党政権が最も恐れているのは、自民党と見紛うばかりの現実主義で対抗する責任野党の存在です。

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 これは机上の空論ではありません。

 例えば大阪です。

 大阪では賛否はありますが「都構想」などの現実的改革を唱える維新の伸長が著しいわけです。

 維新のその主張は自民党のそれとかなり親和性を有しているのはご承知のとおりです。

 自民党と見紛うばかりの現実主義で対抗する責任野党が登場した結果、大阪府議会、大阪市議会における政党別議席数の構成は劇的な変化を遂げました。

 このとき維新は共産党に依らず独自の力で自民党を打倒し第一党の地位を勝ち取りました。

 この国の選挙で「ヤマ」が動くとき、それは自民党を緩やかに支持している多数派である「穏健保守層」が投票行動を変化させるときなのです。

 まったく同じ現象がこの度の東京でも起こりましたね。

 小池知事率いる「都民ファースト」のその主張は、ほぼ自民党のそれと同じだったのはご承知のとおりです。

 そして「都民ファースト」は自民を打倒し都議会第一党に躍進しました、もちろん非共産つまり共産党の力に頼ってはいませんでした。

 大阪でも東京でも、野党第一党である民進党はほぼ壊滅したことも指摘しておきたいです。

 つまりです。

 この国には自由民主党という保守政党があります。

 その自民党支持層の中の多数派であろう穏健保守層の何割かの支持を獲得できれば、大阪や東京のように、大きく「山」は動きます。

 かつて民主党政権が誕生した理由も、別に共産党などとの共闘などありませんでした、そうではなく自民党政権の経済政策の行き詰まりを主な理由に、穏健保守層の何割かが自民から民主に支持を変えたことが最大の理由です。

 繰り返しますが、自民党政権が最も恐れているのは、自民党と見紛うばかりの現実主義で対抗する責任野党の存在なのです。

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 まとめます。

 決断するにはもうあまりにも遅いのです。

 さて枝野幸男氏と前原誠司氏です。

 両者とも国会議員八期目のベテランであります。

 今日の民進党の現状にそれなりに責任を有しているキーパーソンであります。

 しかしながら、おそらくどちらが勝って代表になったとしても、時すでに遅しでありましょう。

 もう民進党というどろ船はとうに沈み始めており、汚らしい小物のネズミ共が逃げ始めています。
 沈没は避けれないでしょう。
 この二人、今だドロ船民進党に執着しているところが、政治家としての最大の欠点でしょう、こんなドロブネになんでしちゃったんだ、そしてなぜ放置し続けたんだ、政治家として重要な資質である危機管理能力がうたがわしいのであります。
 そして矛盾しますが、人間としての最大の長所は、逃げ出した卑怯者たちとは違い、ドロ船民進党と共に最後まで一緒にしずまんとしている、その潔さにありましょう。
 つまりお二人とも、人間としてはよく理解できますが、政治家としては危機管理能力に難があり、です。
 おそらく民進党としての最後の代表選でありましょう。
 お二人、そして代表選に関わる民進党の党員・党友のみなさま。
 ご苦労さまであります。 
 またあう日まで、さらば民進党


(木走まさみず)