木走日記

場末の時事評論

戦略なき民主党と共産党の候補者調整〜ベクトルを180度間違えている岡田代表

 民主党岡田克也代表が共産党との候補者調整に前向きです。

岡田克也
2015年09月28日 21:16
共産党との協力─政権はかなりハードル高いが、候補者調整は重要
http://blogos.com/outline/136360/

 野党第一党民主党として、当選が一人だけである小選挙区をにらめば、自民党に対抗するために野党各党が候補者を乱立しないがために野党統一候補を一人に絞り込むことは、選挙「戦術」としては正しいでしょう。

 当ブログとしては保守の立場から、この共産党が言い出しっぺの野党協力を「支持」しております。

2015-09-20 日本共産党主導の「戦争法廃止の国民連合政府」構想を断固支持する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150920

 このエントリーは皮肉を込めて、「ゴミは集めたほうが焼却処分しやすい」と保守派としての支持理由を明記したのでありました。

 ゴミは集めたほうが焼却処分しやすいでしょ、ってことです。

(中略) 

 実現可能性は限りなくゼロに近いと思われますが、当ブログとしては、この日本共産党の「夢」の戦争法廃止の国民連合政府構想を全面的に支持するものであります。

 共産党主導の国民連合政府構想など、「実現可能性は限りなくゼロに近い」と指摘したのですが、民主党代表が共産党との候補者調整に前向きであるとは驚きなのであります。

 目の前の選挙「戦術」のみを意識して、肝心の政権奪取の大きな「戦略」が全く描けていない、岡田克也という男の、失礼ながら野党第一党民主党党首としてのその赤子のような無垢さ、バカ正直な政権奪取「戦略」の無さに、口があんぐりしておるわけです。

 当ブログは別に民主党支持者でも共産党支持者でもありませんが、今回は野党支持者のための「打倒安倍政権」の「戦略」を開陳したいと考えます。

 ・・・

 当ブログが野党の立場ならば、民主党岡田代表の立場ならば、自民党に対抗するには、政権を奪取するためには、共産党と協力するのとは真逆のベクトルを取ります。

 ズバリ、『保守回帰』であります。

 今の選挙制度のもとでは、野党が自民党に代わり政権奪取するためには、唯一の戦略であります。

 野党の『保守回帰』こそが政権奪取の唯一の戦略であること、その理由は、2大政党制を目指しこの国に小選挙区制を導入されたことを今一度よく考えて見れば自明なのであります。

 限られた小さな選挙地区を2大政党で議席を競うとすると、選挙に勝つためには両党の主張は競うように中庸(ちゅうよう)に寄り合うことになるからです。
 
 ゲーム理論で理論的な説明を試みます。

 ゲーム理論を思いついた人はハンガリー出身の数学者で近代コンピュータの父祖とも言われるジョン・フォン・ノイマンであります。

 それを発展させたのは、アメリカ出身の数学者ジョン・F・ナッシュでありました。

 ・・・

 ビーチのアイスクリーム屋の話です、少しの間お付き合いください。

 ある浜辺で商品も価格も同じアイスクリームを売ろうとしているAとBがいて、いま浜辺のどこに店を構えれば一番売り上げが伸びるかを考えています。

 浜辺は直線で客は均等に存在しています、夏の炎天下の浜辺のことです、客はもっとも近い場所にあるアイスクリーム屋から買うことが想定されます。

 さてA,Bはお店をどこに立地すれば相手より売り上げを上げることができるか思案します。

 結論から言うとA,Bともに浜辺の中央、ど真ん中に並ぶように店を構えることになります。

 最初Aは浜辺の左側4分の1ほどの位置に、逆にBは浜辺の右側4分の1ほどの位置に店を構えたとしましょう。

 この状態では、浜辺の左半分にいる客たちはAの店に、右半分にいる客たちはBの店にいくことでしょう、客は均等に存在していますから売り上げも均等、AとBの店は仲良く棲み分けられます。

 しかし、どちらか少し賢ければどうでしょう、必ず店を中央よりに移し始めるはずです。

 たとえばBの店が中央に移り、Aの店が左4分の1の場所のままだったら、Bの店が浜辺の8分の5の客にとって最寄の店となり売り上げを伸ばすことでしょう。

 こうしてこの条件では、A,B両方の店は浜辺の真ん中中央に並ぶようにくっついて店を立地することになります。

 売り上げを重視しライバルに負けないためのこれしかない戦略です。

 これがこのゲームにおける均衡点なのです、このような均衡点をナッシュ均衡と呼びます。

 それぞれ左右のイデオロギーを有する2つの政党が、閉じた地域で1議席を争う場合、ライバルより1人でも多くの有権者を引き付けるために、最初は左右に分かれていたその主張が中庸(ちゅうよう)にシフトしていく、戦略上浜辺のど真ん中に店が並ぶように、ゲーム理論によれば議席獲得のために2つの政党は小選挙区制では似たような中庸の政策を掲げざるを得なくなるわけです。

 議席獲得のためには最も多くの支持を得られる政策を取らざるを得ないわけで、2大政党の政策は似たもの同士にならざるを得ないのです。

 さて現状ですが、護憲派リベラルの論客諸氏は自民党安倍政権を「極右」との現状評価をしていますが、この現状認識こそが根本的に誤りなのです。

 自民党安倍政権の政策は、欧米の極右政党の主張と比べれば極めて「リベラル」なのであり、今回の安保法制にしても大きな「自衛権」のくくりの中での法制化にすぎません。

 安倍政権は安全保障政策で支持を得ているわけではなく、「アベノミクス」などの経済政策などが中心に支持を集めているわけです、その何よりの証拠として安保法案が国会で可決されても政権の支持率は大きく落ち込むことはありませんでした。

 日本に極右政党など存在しないのです、すなわち安倍政権は保守の範疇の中でも政策的には極めてリベラルよりであると言えるのです。

 つまり、現状は保守自民党が多くの支持を得ている状況なのです。

 浜辺でいえばこの感じです。

 この状況を野党が挽回するには、自民党と見紛うばかりの政策の『保守回帰』しかありません。

 自民党政権が最も恐れているのは、自民党と見紛うばかりの現実主義で対抗する責任野党の存在です。

 ・・・

 岡田さんが共産党と野合するのは、保守派の当ブログとすれば、選挙「戦術」としてはありなのでしょうが、政権奪取の「戦略」としては、ベクトルを180度間違えている点で、大歓迎なのであります。

 自民党に対抗するべき責任野党が存在しないことは、この国にとって誠に残念なことではあります。



(木走まさみず)