木走日記

場末の時事評論

まさに『策士策に溺れる』を地で行く都知事会見に拍手を

 舛添氏は、公正な目で見てもらう必要があるとし、事務所とは無関係で政治資金規正法に精通した弁護士などにチェックさせるとして、この日は一切、説明しませんでした。

記者から何を聞かれても、「第3者の厳しい目で見てもらう」の一点張りで、44回も壊れたレコードのように繰り返します、そして弁護士にだけヒアリングを受けると繰り返しました。

 舛添氏が弁護士を選ぶと偏った立場になるのではと突っ込まれても、そうでないように複数の弁護士に調査を打診していると答えるのみであります。

 拍手を贈りたいです、ブラボーです。

 お見事です。

 私は、多くの読者と同様、舛添氏のこの「素晴らしい」戦術は、ズバリ「保身」にあると読んでいます。

 まず橋下徹大阪市長が鋭く指摘しているように、「公私混同をいくら追及しても政治資金規正法上、違法にはならない」ことでしょう。

橋下徹
2016年05月21日 09:42
舛添さん問題、公私混同をいくら追及しても政治資金規正法上、違法にはならない。
http://blogos.com/article/176337/

 過去事例に照らしても、天下のザル法である政治資金規正法では、責任追及はせいぜい会計責任者止まり、まず政治家の管理責任までは追求の手が及ばないことは、過去散々「政治とカネ」の問題でほかの政治家を糾弾してきた舛添氏は熟知しているわけです。

 しかしここのところのメディアスクラム的な新たな「公私混同」疑惑がラッシュのように各メディアから噴出したのは、自信家の彼にとっても「想定外」だったわけです。

 そこで彼は法律の専門家をアドバイザーとして、今追求されている案件を、総ざらいに「精査」させて、どのように公表すれば自分自身にまで「法律違反」が及ばないか、仲間内でじっくり検討することにしたわけです。

 みみっちい彼のことです、都政など後回しにして、一生懸命に仲良しの弁護士と都合良く「精査」していくことでしょう。

 従って、この「第3者の厳しい目をもった弁護士」ですが、「政治的な機微に触れる」とか言い訳して、その名前はこれから先決して舛添氏の口からは出てこないでしょう。

 氏が選ぶおそらく彼と懇意にしているお友達の弁護士が、「第3者の厳しい目をもつ」ことなど有り得ないことなど自明なのであります。

 会見では極めて低姿勢で国民に反省した態度を見せながら、その実、肝心な疑惑の内容は「第3者の厳しい目で見てもらう」の一点張りで逃げまくったのであります。

 ・・・

 さて、冒頭で「拍手を贈りたい」と形容したのは、皮肉でも何でもなく当ブログの本心です。

 9年前から舛添氏の政治家としての資質について疑問を呈してきた当ブログとしては、前回「舛添要一知事は辞任させてはいけない」と主張していたからです。

(当該エントリー)

2016-05-16 舛添要一知事は辞任させてはいけない〜都知事在職のまま、平成の合法的「市中引き回し」の刑に処すべき
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20160516

 未読の読者のためにエントリーより結びの部分を抜粋。

 彼を簡単に辞任させることは反対です。

 会見を見る限り、彼は本当の意味での反省などしていません。

 この後に及んでも、小さな嘘やセコい責任転嫁に終始しています。

 彼には、これだけセコく公金の私物化を繰り返してきたその社会的責任を取らせるべきです。

 それには公的な立場に在職したまま。徹底的に疑惑を公の前で解明すべきです。

 都民のみなさん。

 それでは都政が停滞するではないか?と、ご心配の方もおられましょう。

 大丈夫です。

 石原、猪瀬、舛添ともう都政は十分に停滞しています。

 逆説的にいえば、都知事などダメダメでも東京都は十分に維持できています。

 読者の皆さん。

 舛添氏は都知事在職のまま、平成の合法的「市中引き回し」の刑に処すべきです。

 この「平成の合法的「市中引き回し」の刑に処すべき」という表現が、お下品、キバシリお前何様のつもりだと一部読者の反感を買った(苦笑)わけですが、そんな私的なことはどうでもいいのですが、今回の会見で、当ブログの期待通りの展開に舛添氏自らがはまりこみつつあるからです。

 彼のような自分が頭が良いと自覚する自信家は、庶民を完全に見下しているはずです。

 自分の戦術に揺るぎのない自信があるのです、知的レベルが低い庶民は自分の高等な策で完全に黙らせることができる、このように先を読んでいるはずです。

 今回も逃げおおせる、都知事を辞任する羽目にはならないと、彼は踏んでいるはずです。

 彼は都知事の地位に固執しているはずです、そうでなければあのような記者会見を開けるはずがありません。

 彼は、今回国民がいかに彼の振る舞いに呆れているのか、見くびって、どんどんドツボのような窮状に自らを落とし込んでいるわけです。

 この際です。

 彼には徹底的にそして「自信」をもって「精査」「言い訳」を繰り返していただきましょう。

 その過程で彼の政治家としてのその悪しき「資質」がさらにあぶりだされていくことでしょう。

 まさに、『策士策に溺れる』とはこのことです。

 自分が墓穴を掘っていることに気づいていないのです。

 そうは思いませんか、読者の皆さん。



(木走まさみず)