木走日記

場末の時事評論

権力チェッカーとしては無能であるのに政権批判を展開するマスメディアの厚顔無恥

 週刊新潮が「小渕優子経産相のデタラメすぎる「政治資金」」スクープ記事を2014年10月23日号に掲載し政界に激震が走った10月17日、当ブログは「事実なら速やかに安倍さんは小渕さんを斬るべし」というエントリーを起こしました。

2014-10-17 政党や性別関係なし!事実なら速やかに安倍さんは小渕さんを斬るべし
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20141017

 このエントリーで当ブログとして「記事内容が正しいとしたら、」「おそらく大臣辞任では済みますまい、議員辞職まで至る可能性が大」と予測しています。

 記事の内容がどこまで真実なのか、ここは小渕優子議員の詳細な説明が待たれますが、記事内容が正しいとしたら、「ひな壇から一気に地底へと堕ちかねないほどのデタラメ」ぶりです、残念ながら小渕優子さんの議員生命は完全にアウトです、おそらく大臣辞任では済みますまい、議員辞職まで至る可能性が大です。

 ネットでは、安倍政権の揚げ足取りうんぬん、女性閣僚の登用へのうんぬんが議論されているようですが、これですね、その次元の問題ではありますまい、政党や性別関係なく、議員としてアウトでしょう。

 小渕優子議員の報告が待たれますが、もし仮にこのスクープ報道の内容が事実であると判明したら、弁明の余地はありません、すみやかに大臣の職を辞し、国会議員の職も辞するべきです。

 これですね、下手に小渕氏の政治生命の延命を図るような姑息な事後対応をしてしまうと、安倍政権の今後に重大な禍根を残しかねません、ことはそれほど深刻だと思われます。

 さてここへ来て小渕氏の周辺で事態が動き出しています。

 30日付け読売新聞記事から。

小渕氏元秘書の前町長を任意で聴取
2014年10月30日 03時08分

 小渕優子・前経済産業相衆院群馬5区)の関連政治団体を巡る資金処理問題で、東京地検特捜部が、関連政治団体政治資金収支報告書を作成していた元秘書で、群馬県中之条町の折田謙一郎・前町長(66)から任意で事情聴取していたことが、関係者の話でわかった。

 複数団体の収支報告書に記載された支援者向け「観劇会」の収支のずれなどについて説明を求めたとみられる。

 小渕氏の関連政治団体を巡っては、「小渕優子後援会」など4団体で、2006〜11年分の収支報告書に記載された観劇会に伴う支出が、支援者から集めた会費収入を約5200万円上回っていることが判明。12年分は収支とも不記載だった。差額分を政治団体側が負担していれば、公職選挙法が禁じる有権者への寄付にあたり、虚偽記入を禁じた政治資金規正法に抵触する可能性も浮上している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20141029-OYT1T50145.html

 東京地検特捜部が動き出しました、ことの重大さに鑑み、その追求が元秘書に留まらず議員ご本人に至る可能性も大です。

 この動きを受けてでしょうか、30日付け産経新聞電子版速報記事から。

小渕氏、議員辞職の公算 自民党幹部見通し 不透明収支問題で

 小渕優子経済産業相の関連政治団体の不透明な収支問題で、小渕氏は29日、責任をとって議員辞職する方向で検討に入った。自民党幹部は同日夜、「この局面では議員辞職するしかない」と語り、小渕氏が議員辞職する公算が大きくなった。

 自民党幹部は「小渕氏の将来を守るためには、議員辞職しかない」と明言。別の小渕氏に近い幹部は「小渕氏は弱気になっている。周囲から辞職を促されたら、そう判断する可能性は高い」と語った。

 小渕氏の政治資金をめぐる疑惑は同氏の後援会など2つの政治団体が平成22、23年分の収支報告書で支持者向けの観劇会の収入として計742万円を記載。観劇費などの支出は2年間で3384万円と記載しており、収支で2642万円の差額が生じており、小渕氏側が負担していれば、利益供与を禁じている公職選挙法に抵触する可能性がある。

 観劇会は24年にも開かれたが、収支報告書に記載されていないことも後に判明していた。

http://www.sankei.com/politics/news/141030/plt1410300003-n1.html

 ・・・

 さてマスメディアですが、30日付けの読売社説は「政治資金問題 報告書監査の実効性を高めよ」と主張しています。

政治資金問題 報告書監査の実効性を高めよ
2014年10月30日 01時15分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20141029-OYT1T50153.html?from=yartcl_blist

 社説は「政治資金には公金も含まれる」のだから「監査の実効性を高める方策を検討してはどうか」と、評論家風の論調です。

 政党交付金制度の導入で政治資金には公金も含まれる。

 女性2閣僚の辞任後も、問題が続出している。国民の政治不信を助長しかねない事態だ。

 国会議員の関係政治団体は、07年に改正した政治資金規正法によって、09年分の報告から、公認会計士や税理士らによる政治資金監査を義務づけられている。

 ただ、実態は、領収書通りに記載されているかなどの確認にとどまり、支出の適正性などはチェックされない。監査の実効性を高める方策を検討してはどうか。

 報告書を作成する会計担当者や秘書らの能力向上も欠かせない。自民党は、所属議員秘書らを対象に、報告書などに関する研修会を検討している。こうした取り組みを積極的に進め、幅広く定着させることが急務である。

 うむ、別に読売だけではないのですが、この国のマスメディアの厚顔無恥ぶり・無能ぶりを晒しているような呑気な主張で辟易してしまいます。

 20日に小渕氏が大臣辞任した翌21日には五大紙が一斉に社説にてこれを取り上げています。

【朝日社説】閣僚同時辞任―首相が招いた異常事態
http://www.asahi.com/articles/DA3S11412499.html?ref=editorial_backnumber
【読売社説】女性2閣僚辞任 早急に政権の態勢を立て直せ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20141020-OYT1T50160.html
【毎日社説】閣僚ダブル辞任 失態を謙虚に反省せよ
http://mainichi.jp/opinion/news/20141021k0000m070161000c.html
【産経社説】2閣僚辞任 「議員の資格」も疑わしい
http://www.sankei.com/column/news/141021/clm1410210003-n1.html
【日経社説】閣僚辞任の打撃は政策で挽回せよ
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO78661210R21C14A0EA1000/

 今回の小渕氏の政治スキャンダルは週刊新潮のスクープ記事に端を発しているわけですが、その事実にはほほかむりしてメディアスクラムで平気で政権批判しているわけです。

 例えば朝日社説は、「極めて異例、いや異常というべき事態」、「今回の疑惑がもはや国会で説明ができぬほど悪質だったことの裏返し」、「まさに小渕氏自身がいうように「知らなかったではすまされない」重大な行為」と、安倍首相と小渕氏をこれでもかと批判しています。

 2人の閣僚が、有権者への利益供与や寄付を疑われて同時に辞める。極めて異例、いや異常というべき事態である。

 安倍首相は「国民に深くおわびする」と頭を下げたが、その任命責任は極めて重い。

 小渕経産相は、疑惑が報じられてから5日目の辞表提出だ。苦しい言い訳を重ねた過去の例に比べれば、引き際はよかったと言えるのかもしれない。

 しかしそのことは、今回の疑惑がもはや国会で説明ができぬほど悪質だったことの裏返しだろう。

 閣僚を辞めても、小渕氏は衆院議員としての説明責任から逃れることはできない。

 いくつかの疑惑の中でもっとも重大なのは、後援会員の観劇会の費用の収支が大幅に食い違っていることだ。

 小渕氏はきのうの記者会見で、観劇の費用は「参加者から全額集めている」と説明。公職選挙法が禁じる選挙区の有権者への利益供与は否定した。だが、観劇会は毎年催されているのに、その収支が報告書に全く記載されていない年もあり、「大きな疑念があると言わざるを得ない」と認めた。

 報告書への不記載は政治資金規正法に違反するし、利益供与の疑いも晴れたわけではない。

 まさに小渕氏自身がいうように「知らなかったではすまされない」重大な行為である。

 ちょっと待っていただきたい。

 普段「社会の木鐸」として、国民の立場で政治権力のチェックすることを使命としているマスメディアが、一週刊誌がすっぱ抜いた「国会で説明ができぬほど悪質だった」この国会議員事務所の長年の単純な「疑惑」を、そろいも揃って見過ごしてきた自分たちの無能ぶりは、なぜ恥じないのか。

 今回の小渕事務所の疑惑は、少し調べればバンキシャならばすぐに押さえることができる、その程度の金額は派手ですが単純な「疑惑」でしょう。

 週刊誌よりもはるかに大人数の政治記者を抱えている大新聞が、そろいもそろって権力チェッカーとしては無能であることをまたしても世間にさらしていることに、なぜ気づかないのでしょうか。

 過去、この国の政治スキャンダルのほとんどは文春や新潮などの出版系週刊誌もしくは月刊誌がスクープしてきました。

 彼らは日本記者クラブには加盟していませんから、ときに裁判覚悟で政治スキャンダルをスクープします。

 一方朝日をはじめとする仲良しクラブ・日本記者クラブに属する大新聞の記者たちは、権力者の資金をチェックするよりもその御機嫌取りに追われています、事務所に出入り禁止にでもなったら、情報収集にも差し障りますし、第一上司に怒られるわけです。

 今回政治評論家よろしく、他人事のように小渕批判、安倍政権批判を展開しているマスメディアよ。

 その厚顔無恥ぶりに辟易します。

 マスメディアよ、自分たちの無能ぶりを恥じなさい。



(木走まさみず)