高校生のみなさん。徴兵制に反対なら安全保障関連法案に賛成すべきでは。
うむ、朝日新聞記事などによれば、安全保障関連法案に反対する高校生らのグループ(主催者発表5000人)が2日、東京・渋谷でデモを行ったとのことです。
渋谷で高校生デモ「安保法制反対」 SNS通じ集まる
2015年8月2日20時16分参院特別委員会で審議中の安全保障関連法案に反対する高校生らのグループが2日、東京・渋谷でデモを行った。制服姿の参加者もおり、約5千人(主催者発表)が軽快なリズムにあわせて「民主主義ってなんだ」と声を上げた。
「SEALDs」と学者の会が合体 反安保法案共同デモ
主催したのは、高校生らが立ち上げた「ティーンズ ソウル」。大学生の団体「SEALDs(シールズ)」の活動で顔見知りになり、「選挙権が18歳に下げられる中で、高校生も自分らしい言葉で意思表示したい」とSNSを通じて集まった。友達を誘って参加したという都立高1年の古川はすさん(15)は「人の命を左右することなのに、国民の意見を聞かずに決められてしまいそうで納得いかない」と話した。渋谷では2日、保育士らの団体が主催するデモもあった。
デモを取材したBLOGOSの田中龍作氏の記事によれば、「僕たちが戦争に行かなきゃならなくなる。徴兵制は絶対ダメ」と、徴兵制反対の声も高校生から聞かれたようです。
都内の高校2年生(男子)はストレートに危機感を表した。「(安保法案が)通っちゃうと僕たちが戦争に行かなきゃならなくなる。徴兵制は絶対ダメ」と。
(参考記事)
田中龍作
2015年08月02日 19:44
【安保法制】高校生デモ「僕たちが戦争に行かなきゃならなくなる」
http://blogos.com/article/125995/
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さて、選挙権が十八歳に引き下げられる今、高校生も政治に関心を持つことは、たいへんに良いことです。
誰だって戦争になんか参加したくないし、ましてや将来日本に徴兵制がひかれたら真っ先に戦場に駆り出されるのは、若い諸君の世代であります、この機会に真摯にこの国の安全保障の問題について若い世代が真剣に考えることは、たいへん意義深いことだと評価いたします。
そのうえで、どうか感情に走らず、事実に基づいて冷静に論理的に考察を深めてもらいたい、と願っています。
今回は、夏休みということもあります、10代の若い世代を対象に想定して、この問題で、感情に流されることなく、冷静に論理的に考察を深めていただくために、ひとつの考え方を提示してみたいと考えます。
若い世代のみなさん。
みなさんはスイスが「永世中立国」であるのはご存知でしょう。
そのスイスのパンは非常に不味いことが有名なのですが、まずはその話から進めましょう。
なぜ「永世中立国」スイスのパンは非常に不味いのか?
諸君の中には、「永世中立国」であるスイスは非武装中立国と思っている人が多いと思いますが、実はスイスは武装独立と国民皆兵制を国防戦略の基本に据えているのです。
国民皆兵制をしいているスイスではもちろん「徴兵制」であります。
男子は19歳もしくは20歳になると、初年兵学校で15〜17週間の新兵訓練を受けなければなりません。
その時に受領した小銃は、自宅に持って帰って格納することになります。
なぜ武器を自宅に格納するのか、そこには後述する深い理由があります。
その後、予備役という有事動員要員として、毎年3週間の訓練を10回に分けて受けます。
訓練期間の日当と費用は、スイスの企業が80パーセント負担しているのです。
たとえ海外で生活をしていても、帰国をして新兵訓練、予備役の訓練は受けなければなりません。
もし意図的にその訓練に参加をしなかった場合には、最悪の場合はスイス国籍を剥奪されてしまうのです。
またスイスでは、自宅に核シェルターがほぼ100パーセント完備をされています。
そしてスイスのパンは不味いことで有名なのですが、なぜスイスのパンは不味いのか。その理由は、スイスでは、その年に獲れた小麦は、すぐには使わず、備蓄に回し、古い小麦から使うという政策を実施しているので、スイスのパンは不味いのであります。
(参考記事)
スイスの徴兵制存続に見る日本人との国防意識の違い
http://www.data-max.co.jp/2013/09/24/post_16455_hmg_1.html
「永世中立国」であるスイスは、「中立」を守るために、NATOなどいかなる軍事同盟にも永久に加盟しないことを憲法で決められています。
そのために、万が一他国が侵略してきたら、スイス正規軍だけでなく国民皆が自宅に有する武器を手にして「群民蜂起」する、小国とはいえハリネズミのような国民皆兵制を国防戦略の基本としているのです。
「永世中立国」としていかなる軍事同盟にも加盟せず自国一国の国防力だけで「中立」を維持するために、スイスはこのようなハリネズミのような国防戦略を取りました、このおかげで、第二次世界大戦中も、あのヒトラーが率いるナチスドイツですら、スイスには侵略してきませんでした。
もちろん、スイスにおいても 他国の脅威にさらされているわけでもないのに、莫大なコストが掛かる「徴兵制」を続けるのは時代遅れだとの批判も長年おこってきています。
二年前の2013年10月、スイスにおいて徴兵制の是非を問う国民投票が実施されました。
スイス国民が徴兵制を望んだ理由
永世中立の小国スイスは、人口800万人にもかかわらず、15万人という大規模な軍隊を持つ。19〜34歳の男性全員に兵役を課す国民皆兵制を国防の基盤としてきたためだ。
だが他国の脅威にさらされているわけでもないのに、莫大なコストが掛かる徴兵制を続けるのは時代遅れだとの批判が噴出。先週、徴兵制の是非を問う国民投票が実施された。
結果は有権者の73%という圧倒的多数が徴兵制の廃止に反対し、26州すべてで廃止反対派が勝利。今後も一部の職業軍人ではなく、国民全体で国防を担うとの意思が示された。
国防能力が損なわれるとして徴兵制撤廃に反対していた政府も胸をなで下ろしている。マウラー国防相は「軍隊と安全保障の強化に対する信任だ」と語り、来年予定されているスウェーデン製戦闘機グリペン22機購入の国民投票に意欲を見せた。
国民投票を呼び掛けた平和団体「軍隊なきスイスを目指す会」も、この結果を予想していたようだ。「軍隊はスイス人のアイデンティティーの一部。事実より(感情が)勝るものだ」と、広報担当者は語っている。
[2013年10月 8日号掲載]
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2013/10/post-3068.php
結果は、記事にもある通り、「有権者の73%という圧倒的多数が徴兵制の廃止に反対し、26州すべてで廃止反対派が勝利」と、スイス国民の圧倒的多数が、コストがかかることは承知の上で「徴兵制」維持を支持したのです。
なぜか、それはスイス国民の多くがこの徴兵制を廃止して国民皆兵制を止めてしまったら、スイス一国で「永世中立」など維持できない、NATOなどの軍事同盟に加盟せざるを得ず、個別自衛権ではなく集団的自衛権を容認せざるを得ない、と強く危惧しているからです。
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高校生の皆さん。
みなさんがしっかりと論理的な思考を経てこの国の安全保障を考えるならば、少なくとも、集団的自衛権の行使容認を含めた安倍政権の掲げた安全保障関連法案は、この国に「徴兵制」をしいてハリネズミのように一国で国防をする道とは、真逆であることが理解できるはずです。
集団的自衛権行使容認は、スイスとは真逆で、「徴兵制」などの軍備増強を日本一国で負担することを軽減し、同盟国同士で集団で平和を維持していこうというものです。
将来日本に「徴兵制」がしかれることを強く危惧しそれに反対するのは、みなさんの自由意志です。
ならば、スイスの例を示しましたが、みなさんが将来の「徴兵制」に反対するのならば、論理的には一国の軍備の負荷を軽減する集団的自衛権を容認する、今回の安全保障関連法案の現実的な側面もしっかり考えてみてください。
大きな経済的な負担を伴いながら一国だけで国防力を維持する、これ個別自衛権とも言いますが、今までのような考え方では、逆に日本が「徴兵制」を取らざるを得ないような状況を招く恐れがあることを、どうか考えてください。
それほど、スイスよりも日本の置かれた地政学的環境(東アジア情勢)のほうが、はるかに厳しくなっていることを、理解してください。
(木走まさみず)