「偏向」していることをもはや隠さなくなった朝日新聞〜露骨な刷り込み(Imprinting)手法(集団的自衛権を問う)シリーズ徹底検証
日本のマスメディアはクロスオーナーシップの弊害で、新聞はTVを、TVは新聞を批判しません、できません。
マスメディア自身の自己批判もタブーですのでメディア批判の論説をメディアで見ることはほとんど絶望的です。
例えば悪名高い日本の新聞の「押し紙」問題をTVが取り上げることは皆無ですし、逆に免許制にあぐらをかいたTV電波利権の大問題を新聞が積極的に取り上げることもありません。
これらメディア批判はTVに出演する、あるいは新聞に論説を載せる、コメンテーターや評論家にとってもタブーとなります。
『木走日記』としての一つのテーマがマスメディア評論です。
朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、日経新聞、当ブログでは系列テレビ局も含めてマスメディアは全て批判対象としてきました。
ネット上の個人ブログでマスメディア批評をする理由は、個人的に当ブログはマスメディアと利害関係が全くないので遠慮なくタブー無しで批判的に対峙できることからです。
この辺りの当ブログのスタンスについては以前エントリーしましたので、お時間のある読者はご一読ください。
2013-06-04■田原総一朗氏とファフィントン・ポストの限界性について〜『木走日記』が朝日新聞批判を止めない理由
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130604/1370321225
さて、ブログというツールはマスメディア批評しやすい利点を有しています。
インターネットという媒体の特性を最大限に生かせるのです、すなわち紙媒体なら量的制約、TVやラジオならば時間的制約を受けるのですが、情報ソースをリンクで示しながらネットでは量的制約無しに徹底的に検証できることです。
・・・
本日は朝日新聞が6月18日より紙面で連日連載している(集団的自衛権を問う)シリーズを取り上げてメディアリテラシー的に徹底検証いたしたいのです。
本日(7月15日)まで27人のインタビューが記事になっています、ネット上のリンクを全てご紹介。
(集団的自衛権を問う)「殺す側」の覚悟あるのか 南丘喜八郎さん
2014年6月18日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11195476.html
(集団的自衛権を問う)「普通の国」失敗の歴史 茂木健一郎さん
2014年6月19日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11197550.html
(集団的自衛権を問う)「国益のため」一番危険 石川文洋さん
2014年6月20日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11199482.html
(集団的自衛権を問う)身内で決めるのはダメ 山本晋也さん
2014年6月21日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11201385.html
(集団的自衛権を問う)借金1000兆円、戦争できる? 高村薫さん
2014年6月22日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11203173.html
(集団的自衛権を問う)急ぐ真意、はっきり言えば UAさん
2014年6月23日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11204545.html
(集団的自衛権を問う)平和憲法、台無しになる ジャン・ユンカーマンさん
2014年6月24日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11205909.html
(集団的自衛権を問う)拡大防げず徴兵制招く 小池清彦さん
2014年6月25日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11207782.html
(集団的自衛権を問う)手出せば倍返しされる 蛭子能収さん
2014年6月26日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11209678.html
(集団的自衛権を問う)言葉にごまかされるな アーサー・ビナードさん
2014年6月27日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11211691.html
(集団的自衛権を問う)安倍ちゃん、なぜ急ぐんだ 内田裕也さん
2014年6月28日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11213667.html
(集団的自衛権を問う)戦後が水泡に、今が岐路 永井愛さん
2014年6月29日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11215496.html
(集団的自衛権を問う)不戦の価値、示す政治を 平野啓一郎さん
2014年6月30日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11216985.html
(集団的自衛権を問う)聞いて、戦場行く世代の声 木梨夏菜さん
2014年7月1日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11218400.html
(集団的自衛権を問う)米と一緒に戦争、許されぬ むのたけじさん
2014年7月1日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11218411.html
(集団的自衛権を問う)戦争知らぬ政権、危うい 清水信次さん
2014年7月3日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11222047.html
(集団的自衛権を問う)戦争を防ぐ堤、一つずつ 加藤登紀子さん
2014年7月4日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11224107.html
(集団的自衛権を問う)苦渋なき保守に危機感 山崎行太郎さん
2014年7月5日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11225949.html
(集団的自衛権を問う)あきらめが一番怖い 湯山玲子さん
2014年7月6日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11227900.html
(集団的自衛権を問う)「自衛」信じられない 市原悦子さん
2014年7月8日05時00分
(集団的自衛権を問う)言論封じられる不安 山本雄二郎さん
2014年7月9日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11231525.html
(集団的自衛権を問う)痛み知る人の声こそ 中村里美さん
2014年7月10日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11233635.html
(集団的自衛権を問う)引き返す機会、まだある 半藤一利さん
2014年7月11日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11235682.html
(集団的自衛権を問う)戦争はつくられる 藤本幸久さん
2014年7月12日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11237674.html
(集団的自衛権を問う)行使、むしろ遠のいた 佐藤優さん
2014年7月13日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11239632.html
(集団的自衛権を問う)米軍基地の固定化進む 大田昌秀さん
2014年7月14日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11241523.html
(集団的自衛権を問う)二度と加害者になるな もず唱平さん
2014年7月15日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11243327.html
それぞれの記事冒頭部分を全てご紹介。
(興味のあるインタビューがあれば是非上記リンクで記事全文をご確認ください)
■「月刊日本」主幹・南丘喜八郎さん(68歳)
私たちの雑誌の巻頭言で、「同盟国に使嗾(しそう)(指図しそそのかす)され戦争に参加することがあっては断じてならない」と書いた。集団的自衛権の行使容認が「国益」にかなうと安倍政権は言うが、詭弁(きべん)だ。米国追従の強化にほかならず、私は絶対反対だ。
明治維新以来、日本は周回遅れの「普通の国」をめざして、失敗してきた。植民地にされるとおびえ、西洋文化を輸入して富国強兵に突き進んだ。周回遅れの植民地獲得競争に参加したあげく、中韓との歴史問題という負の遺産を抱え込んでしまった。
集団的自衛権の行使を認めよう…
■報道写真家・石川文洋さん(76歳)
安倍晋三首相は、国民の安全を守るのが政府の義務と言っている。それが国益につながると。ただ、この国益というのが一番危険なのです。日中戦争や真珠湾攻撃も、すべて国益という名の下で行われた。4年間取材したベトナム戦争では200万人もの民間人が殺されました。これも米…
■映画監督・山本晋也さん(75歳)
安倍さんは、自分の賛同者で固めた諮問機関の意見を聞き、閣議決定で集団的自衛権の行使を認めるという。そんな身内だけで決めるやり方は非常に問題だ。内閣総理大臣とは思えない。「権力を持った私人」がやることだよ。「国権の最高機関」の国会で1年も2年も時間をかけて、議論…
■作家・高村薫さん(61歳)
戦後69年間、日本は戦争で人を殺していないし、殺されていない。集団的自衛権を使う国になれば、その誇りを失う。私には耐え難いし、全ての日本人に覚悟があるとは思えません。
私の育った時代は戦争が身近でした。3、4歳のころに親と行った大阪駅前。手足を失った軍人が座ってい…
■歌手・UAさん(42歳)
福島の原発事故後、一家で関東から沖縄北部に移り住みました。国は原発の危険性や、事故後の放射能の影響についてきちんと説明してこなかった。だれも責任を取らず、国民に本当の情報が与えられないまま、再稼働へ向け、ぬるっと進んでいるように見えます。
集団的自衛権の問題も同じよ…
■映画監督、ジャン・ユンカーマンさん(61歳)
他国のために自衛隊が海外で戦う集団的自衛権。聞こえは良いが、実際は交戦権と同じ。憲法9条は「国の交戦権を認めない」と明記している。憲法解釈の変更だけで、使えるようにすることはできないのです。
集団的自衛権の行使にひとたび道を開いたら、拡大を防ぐ手立てを失うことを自覚すべきです。日本に海外派兵を求める米国の声は次第にエスカレートし、近い将来、日本人が血を流す時代が来ます。自衛隊の志願者は激減しますから、徴兵制を敷かざるを得ないでしょう。
■漫画家 蛭子能収さん(66歳)
集団的自衛権って、自衛隊が同盟国のために海外で戦うことなんですか。正直、難しいことはよく分かりませんが、報復されるだけなんじゃないですか。
「集団」っていう響きも嫌ですね。集団では個人の自由がなくなり、リーダーの命令を聞かないとたたかれる。自分で正しい判断がで…
■詩人 アーサー・ビナードさん(46歳)
言葉は何かを伝えたり、世界をおもしろく見つめたりするもの。日本語で詩を書いていて、僕はそう思っています。でも、「人をだます」ためにも使われることを忘れてはいけない。
米国は朝鮮戦争(1950〜53年)で宣戦布告していません。ずっと「警察行動」と言ってい…
大学生のアニキが、戦時中に学徒出陣で戦地へ行ったんだ。男前で運動もできて、大学は今の一橋大だった。戦地に行く前、3歳くらいの俺をだっこして、姉とみんなで写真を撮った。笑ってるでしょ、アニキ。
集団的自衛権のことを考えたら、アニキのことを思った。生還し…
■劇作家・演出家 永井愛さん(62歳)
画家だった私の父は、後に張鼓峰(ちょうこほう)事件と呼ばれた戦闘で、急病の上官に代わり小隊を率いました。
恐怖でパニックの兵士らは命令を待たず銃撃を始めた。「まだだ」と制止した父はソ連兵に胸を撃たれ、死線をさまよいました。92歳で亡くなるまで、父の胸には…
■作家 平野啓一郎さん(39歳)
安倍首相は憲法を蹂躙(じゅうりん)し、多くの国民の批判を無視することで、自分は信念を貫く立派な政治家だとでも勘違いしているのでしょう。
湾岸戦争の時に金しか出さなかったと批判されたトラウマから、国家として一人前であるためには、集団的自衛権を行使できるようにする…
■アイドルグループ 木梨夏菜さん(15歳)
「しゅうだんてき じえいけん」。その単語を初めて聞いたのは、中学の社会科の授業だったかな。「国民みんなで国を守ろう、という意味?」。でも、本や新聞で調べたらびっくり。よその国の戦争に首を突っ込む権利のことでした。
「集団的自衛権を認めたからって、どん…
■ジャーナリスト むのたけじさん(99歳)
戦後間もなくできた、自衛隊の前身となる保安隊は、戦車のことを「特車」と言っていました。戦争放棄の国に武器は必要ないから、そんな名前にした。でも実態は戦車です。武器のことを「防衛装備」と言っても実態は変わらない。
■ライフコーポレーション会長 清水信次さん(88歳)
岸信介元首相、安倍晋太郎元外相と親しくさせてもらった縁で、安倍晋三首相とも若いころから交流がある。ずけずけ意見する私は煙たい存在のようだが、集団的自衛権の行使に向けた動きも「優先順位が違う」と言わざるをえない。
いま一番大切なことは近隣諸国…
■歌手 加藤登紀子さん(70歳)
終戦を迎えたのは、旧満州(中国東北部)のハルビン。2歳になる前でした。のちに母に聞いたところでは、終戦直後の1945年8月23日、当時のソ連軍が戦車で街にやってきて、私たちは収容所に連れて行かれました。
直後からソ連兵が収容所にやってきて、身の回りの貴重品を略…
■文芸評論家 山崎行太郎さん(67歳)
集団的自衛権の行使を認めるにあたって安倍さんに「苦渋の決断」はあっただろうか。戦争に加わる恐れがある大転換なのに、軽すぎないか。戦後の保守政治家たちが多くの国民の命を戦争で失った歴史をわきまえ、国家の生き残りを考え抜いて、腹におさめてきたことだ。それを意気…
■著述家 湯山玲子さん(53歳)
3・11を機に多くの人が「政治の季節」を迎えた。私自身もそうです。原発事故を経て、国が国民を守ってくれるなんて大間違いだと身にしみてわかった。私たちの政治意識は、ここ数年で急速に育ってきていると感じます。
その一方で、無関心層はまだまだ多い。実生活をこうしたい…
■俳優・市原悦子さん(78歳)
千葉市で暮らしていた戦時中、家の近くに爆弾が落ちました。四つ上の兄が見に行くと建物の壁に人の肉片が飛び散っていました。
親戚を頼り、家族で今の千葉県四街道市へ疎開。桑の実、ノビル、ザリガニ。なんであれ食べられるものをあさりました。大空襲で東京の空が真っ赤になるの…
■経済ジャーナリスト・山本雄二郎さん(83歳)
解釈改憲によって集団的自衛権の行使を認めることに反対している自民・村上誠一郎衆院議員に、雑誌の対談で会った。人事を握られて物言えない議員の実態を聞いて、戦中の言論弾圧の時代ですら、反軍演説をした斎藤隆夫衆院議員のような人物がいたのに、と嘆かずにはい…
■映画プロデューサー・中村里美さん(50歳)
――戦争は愛、正義、平和の名のもとで始まり、人々はかーっとなって踊らされる。国は罪なき人が犠牲になっても面倒をみず、戦争を繰り返す――。
広島での被爆体験を語り続けた沼田鈴子さん(2011年、87歳で死去)から教わった「戦争」です。原爆で左足を失い…
■作家・半藤一利さん(84歳)
「日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」。安倍晋三首相の言葉です。集団的自衛権の行使を認めることは、敵国から日本を守る「抑止力」につながるという。だが、14歳の時に東京大空襲に遭った私には、政治家の甘言としか思えない。
110年ほど前、日本はロシアを…
■映画監督・藤本幸久さん(60歳)
現代の戦争をテーマに、米国や沖縄でドキュメンタリー映画を撮影してきました。米国は第2次世界大戦後も、朝鮮、ベトナム、アフガニスタン、イラクと戦争を続けています。取材を通じて感じたことですが、戦争は国益や国際秩序を守る手段の一つだと、一貫して考えてきたのが米国で…
■作家・佐藤優さん(54歳)
安倍政権がこのタイミングで憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認に踏み込む理由がわからない。あえてロシア、中国、韓国を刺激することによる領土交渉などへの悪影響を軽視すべきではない。
公明党の山口那津男代表の記者会見と照らして閣議決定の内容を読み直すと、むしろ、集…
沖縄ほど憲法を大事に思っているところはない。私は皇民化教育を受けた学徒の一人として、沖縄戦の時、鉄血勤皇隊に動員された。戦地で見たのは、住民を迫害し、水や食料をめぐって互いを殺し合う日本兵の姿だった。
生き残ったが、何も信じられず、生きる意味を見失った…
■作詞家・もず唱平さん(75歳)
私は詞で「庶民」を描いてきました。戦争は、その庶民に害をおよぼす。戦争の時代を生きた父から受け継いだ「記憶のDNA」がそう教えてくれています。
・・・
27人の有名人がそれぞれの言葉で集団的自衛権について語っているわけです。
不思議なことに27人全員が集団的自衛権の行使容認に反対です、安倍政権を批判しています。
メディアリテラシー的に批評すればこの(集団的自衛権を問う)シリーズは、有名人のインタビューという体裁(ていさい)をととのえてはいますが、その実態は安倍政権の集団的自衛権の行使容認に強硬に反対している朝日新聞の主張そのものです、朝日の主張を補強している偏向報道記事シリーズです。
人気のある有名人たちに連日「集団的自衛権の行使容認に反対」をそれぞれの言葉で語らせる朝日新聞の狙いはただひとつです。
この偏向記事シリーズで、読者にこれだけ多くの有名人が一人の例外もなく「集団的自衛権の行使容認に反対」していることを連日読ませ、「反対」が国民の多数派であることを読者の脳に印象操作しているのです。
メディア論でいえば、いわゆる刷り込み(Imprinting)という手法であります。
ここでさらに踏み込んで分析すれば、朝日新聞にメディアとしての編集幅の余裕がなくなって来ているとも評価できそうです。
どんな主張を展開してもマスメディアでは主要な政治テーマでは賛成・反対の両論併記の体裁(ていさい)をとるのが一般的です。
マスメディアとして公正な客観的報道のポーズを取るためです。
テーマに対して賛否両論を、政治評論家や大学教授などの専門家に語らせるのです。
ところがこの朝日の(集団的自衛権を問う)シリーズでは、作家やタレント、15才のアイドルの女の子にまで、全員に「集団的自衛権の行使容認に反対」させています、賛成の意見は一人もありません。
政治素人を大量に活用している朝日の「偏向」手法はメディアとして正攻法ではなくたいへん嫌らしい報道姿勢で決して褒められたものではありませんが、ここまで露骨な「偏向」インタビューシリーズはとても珍しいです。
朝日新聞は「偏向」していることをもはや隠さなくなった、編集幅の余裕がなくなって賛成・反対の両論併記の体裁(ていさい)をとることを捨ててしまったのだと思われます。
朝日新聞が開き直ったとすれば、大変興味深いことです。
(木走まさみず)