木走日記

場末の時事評論

就活生のために一経営者からのアドバイス〜デモに参加したとかしないとか関係ないよ、もっと大切なものがある、あ、でも金髪はダメ(苦笑)ね

 ジャーナリストの津田大介さんがツイッターで語った内容が、ネット上で話題となっているようです。

キャリコネニュース
2015年07月30日 18:37
「デモ参加は就活で不利」に津田大介氏がコメント 「トータルで見れば悪影響なんて出ない」
http://blogos.com/article/125538/

 安保法制に反対するデモが全国各地で開かれ、多くの大学生も参加していて、政治活動を行う学生たちに対し「就職活動で不利になる」といった言葉も一部で囁かれているわけですが、こうした考えに対してジャーナリストの津田大介さんがツイッターで語った内容が、ネット上で話題となっているようです。

https://twitter.com/tsuda/status/626317675585638400

 「トータルで見れば就活に悪影響なんて出ませんよ」うむ、その通りだと思います。

 私は零細とはいえ企業経営者として長年学生諸君の面接をしてまいりました。

 今どき、デモに参加したとか就職活動で本人が自ら告知しない限り、そんなこと調べる企業などまずないでしょう。

 私の場合、デモに参加したとかしないとかなどよりも、あくまでも本人本位、人物本位で判断いたします。

 あ、一言だけ言っときますが、就活生のみなさん、デモ参加なんかどうでもいいですが、一般企業の就活に津田さんのような金髪はアウト(苦笑)ですから、注意してね。

 余計なお世話ですか、そうですか、すみません。

 さて、今回は就活生の参考になるかどうか自信ありませんが、一経営者の考えを開陳いたしましょう。

 ・・・

 私は面接の際、特にその人のガバナビリティ能力は厳しくチェックします。

 私は組織人として極めて重要な能力として、"governability"(ガバナビリティ)、被統治能力を挙げたいのです。

 ガバナビリティは日本ではよく指導力とか組織力とかの間違った意味で誤用されることが多いのですが、その正確な意味は「ガバナンスされる能力」、支配される能力という意味になります。

 悪く言えば「従順さ」といってもいいでしょう、しかしこの英語の本来の意味はもっと積極的で肯定的なニュアンスを持っています。

 よく海外では、戦後のドイツ復興と日本復興において、「同じ占領軍に支配され国土が廃墟の中でそれぞれ奇跡の経済復興を遂げたのは、ドイツ人と日本人がガバナビリティが極めて高かったからだ」というような評論を見受けます。

 この場合、ガバナビリティの使われ方は「従順」のような消極的意味では必ずしも無く、両国民は占領軍に支配される能力が高くその力を源泉に復興を遂げたのだという肯定的な意味合いがあるわけです。

 国という単位ではなく会社、あるいはチームといった小規模のグループにおいても組織構成員のガバナビリティは組織の命運を握るほど重要な要素となります。

 私はよく経営者セミナーの講師などでガバナビリティの話をするとき例に出す話があるのですが、世界ヨットレースに出場するほどのレベルのヨットチームの構成員のガバナビリティの高さです。

 ヨットチームを構成する構成員(クルー)は練習のときからそれぞれの持ち場で最高のパフォーマンスを出せるように自身の能力の向上に努めますが、と同時にリーダー(キャプテン)の指示を以下に忠実に実現するべく全神経を集中して命令を実践することをトレーニングいたします。

 ちょっとした風向きの変化などでリーダーは迅速に自分のヨットが一番有利になるような操舵をしなければなりません、それに対して構成員は自分の持ち場の範囲で最高のパフォーマンスで応えることで、チームの勝利という共通の目的に向かってまい進する訳です。

 日本ではこの被統治能力を語るとき、どうしても「社畜」とか「会社の奴隷」とか負のイメージがつきまとうことが多いです。

 しかし、そのような「従順さ」を競うようなマイナス面ではなく、ひとつの能力としてガバナビリティは特に海外では肯定的に論じられることが多いのです。

 私は会社経営のかたわら、大学や専門学校、ときに商工会の経営者セミナーなどで講師をさせていただいています。

 そのとき本当に感心するのは、中小企業の経営者のみなさんの受講中のガバナビリティの高さです。

 限られたセミナーの時間内で私のつたない講義を一言一句聞きもらさないという緊張感が教室にみなぎっています。

 私語ひとつありませんし、講義後のQ/Aタイムでは何人も積極的に講義内容に関する自分の抱いた疑問点をぶつけてきます。

 中小企業経営者の皆さんは理想的な「生徒」さんなのであります。

 このエピソードを話すのは、能力としてのガバナビリティが持つ意味を積極的に再定義するのに、多くの示唆に富んでいる事例だと私が解釈しているからです。

 普段、小さいとはいえ会社を経営されている社長さんは立派なリーダーです、構成員(メンバー)の頂上に位置する統治する側の人間です。

 その彼らが経営者セミナーの受講生となったとき、いち構成員として極めて高いガバナビリティを私(講師・リーダー)に示してくれるわけです。

 つまり構成員としてのガバナビリティの高さとリーダーとしてのリーダーシップは極めて相関しているというのが私の印象です。

 組織の中でよき構成員(被統治能力が高い)はよき指導者(統治能力が高い)になりうるということです。

 ガバナビリティが高い社員は、自分のために、組織の利益のため与えられた役割を自己の能力を最大限発揮して結果を出していきます。

 ポイントは自分のためであるというところです。

 ビジネスマンに求められる能力のひとつとしてガバナビリティはもっと注目されて良いのではないかと、私は思っています。

 このつたないエントリーが就活生のみなさんの参考になれば幸いです。



(木走まさみず)