鮮于鉦(ソンウ・ジョン)記者は香ばしい韓国メディアにおけるいっぷくの清涼剤〜韓国作家三島由紀夫作品パクリ騒動を一刀両断する良コラムを称える
韓国を代表する人気の女流作家・申京淑(シン・ギョンスク)氏(52)の短編小説が三島由紀夫の作品の盗作であるといって大騒ぎになっています。
ことの顛末が大変興味深いことになっていますので、今回はこの話題を取り上げたいと思います。
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ベストセラー小説「母をお願い(Please Look After Mom)」でアジアの権威ある文学賞「マン・アジア文学賞(Man Asian Literary Prize)」を12年に受賞した申氏は、韓国文学を代表する存在であります。
発端となったのは、文学評論家イ・ウンジュン(Lee Eung-Jun)氏がインターネット上の投稿で、申氏が1996年に発表した短編小説「伝説(Legend)」に三島の1960年の作品「憂国(Patriotism)」の一段落が含まれていると指摘したことでありました。
この疑惑を受け、韓国では激しい議論が巻き起こり、ソウルの検察当局に詐欺罪で申氏を捜査するよう求める活動家まで現れました。
まず興味深かったのは、版元の出版社が当初、「彼女の描写の方が三島のものより比較優位にある」といって盗用を擁護したことであります。
これぞ韓国メンタリティーといえましょうか、いくらなんでも無断でパクった作品の方が「比較優位」はないでしょ、と思うのではあります。
さすがにこの版元出版社の言い分は韓国世論の猛反発を受け数日で発言撤回に追い込まれたのでありますが、当のご本人である申氏は「憂国」は読んだことがないと述べ盗作を否定、そして公の場から雲隠れするのであります。
で、しばらくの雲隠れののち、ついにご本人、23日に韓国紙・京郷新聞(Kyunghyang Shinmun)のインタビューに応じます。
さすがに盗作を明確に認め謝罪するだろうと思っていたら、彼女の言い分がまたおもしろいのです。
「問題となった三島由紀夫の小説・憂国の文章と、自身の短編小説・伝説の文章を何度も照らし合わせた結果、盗作という指摘はもっともだと思った」とこうです。
「『憂国』は読んだことがない」というそれまでの言い分と整合性がないため「盗作という問題が提起されるのはもっともだと思い、私も自分の記憶が信じられない状況になった」という説明です。
「自分の記憶が信じられない状況」って、著名な文化人が公的な場で説明したわけです。
つまり盗作であることを明確には認めてはいないものの、「盗作という指摘はもっとも」「自分の記憶が信じられない」と曖昧な釈明をしたわけです。
なんだかなあ、誰が読んでもパクリであるのが明瞭なのだったら、素直に「パクリました、すいません」と謝罪すればいいのに、謝罪まで「自分の記憶が信じられない」と文学的(苦笑)なのは往生際が悪いとしかいえませんですね。
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で、ここからが今日この件を取り上げたかった本題であります。
まあ、少なからずの日本の技術や文化をパクってきた韓国のことですから、今回の騒動も、ああまたか、やれやれだなとため息をついていたところ、いっぷくの清涼剤のようなさわやかなコラムが韓国メディアに掲載されていたのであります。
【コラム】韓国の道徳性は本当に日本より優れているのか
国際部=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)部長
www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/06/26/2015062600431.html
朝鮮日報の鮮于鉦(ソンウ・ジョン)記者といえば、長らく東京特派員も勤めていて日本語も大変流ちょうな知日派記者でありまして、彼のコラムは反日で偏向しまくっている韓国メディアの中では、冷静で論理的、感情に流されることが少ない良質なものが多いのでありますが、今回のコラムは秀逸であります。
関心のある読者は是非上記リンク先で直接お読みください。
コラムの結びから。
韓国人は「日本を超えた」と言っている。1990年代から韓流ドラマ・携帯電話・半導体・自動車などで日本をしのぐ成果を挙げてきたのは事実だ。しかし、他人が真剣に悩んで生み出した結果物を恥じることなくまねる習慣、問題が発生したら外国のシステムから拝借する習慣は大して変わらない。「まじめな努力と蓄積」という一流の条件がまだ不十分なのだ。「日本に比べ優位」と自慢している分野のほとんどが今、中国に追い付かれ、追い越されているのもこのためではないだろうか。渦中の出版社「創批」による「日本に比べ優位」という反論を聞くと、韓日国交正常化50周年を迎えた韓国の現実と内実を素直に省みずにはいられない。
どうでしょう、自国のパクリ文化を「他人が真剣に悩んで生み出した結果物を恥じることなくまねる習慣」と一刀両断です。
もちろん知日派の彼をもってしても、コラムタイトルの「韓国の道徳性は本当に日本より優れているのか」からして、我々日本人から見れば「何を言っているんだか」となるわけで、このコラムも、ん?と疑問に思う箇所が何カ所かあり、それを揚げ足取りしようと思えばできるわけですが、日本以上に閉鎖的でましてや親日的態度は御法度である韓国社会において、この内容の記事を掲載することは大変勇気のあることだと評価したいのであります。
鮮于鉦(ソンウ・ジョン)君。
君は香ばしい韓国メディア内のいっぷくの清涼剤であります。
(木走まさみず)