木走日記

場末の時事評論

朝鮮日報コラム「韓国人よ、おまえたちにはもうだまされないぞ」が興味深い〜韓国人学生によるカンニングと崔順実(チェ・スンシル)氏による国政私物化の共通点

 さて、韓国であります。

 韓国では17日、約60万人が参加の大学修学能力試験が実施されたわけです。

 日本以上に出身大学が将来に著しく影響する学歴社会である韓国では、例年この日は受験生が交通渋滞に巻き込まれて遅刻しないように、銀行や公共機関は社員の出勤時間を通常より1時間遅い午前10時に変更したり、パトカーが受験生を遅刻させないために緊急出動したりと、大騒ぎなわけです。

 で、今年は朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人、崔順実(チェ・スンシル)容疑者の娘の不正入学疑惑に対して、受験生の親からは怒りを新たにする声が聞かれたようです。

 受験生の母親曰く、「(崔容疑者の娘が)裏口で入学できるなんて腹立たしい。朴大統領も大統領の資格は無い」と憤ります。

(関連記事)

韓国で大学入試 不正入学疑惑に怒りの声
2016/11/18 1:00
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H5H_X11C16A1FF1000/

 韓国の親達の憤りも理解できますのは、このような過酷な受験競争の末になんとか大学に進学・卒業できたとしても、その後に待っているのは、過去最悪レベルの若者失業率なのであります。

 今年の6月の若者の失業率が10.3%となり、同月基準では1997年のアジア通貨危機直後に次ぐ高い数値を記録します。韓国メディア・マネートゥデイはこの状況を「『若者の失業』から抜け出す出口が見えない」と表現し伝えています。

(関連記事)

韓国 若者の失業率がアジア通貨危機時に次ぐ最高値を記録
http://news.livedoor.com/article/detail/11763711/

 いきおい、優秀な韓国の学生は海外留学、中でもアメリカ留学を目指すことになります。

 もちろん就職を有利にするためもありますし、海外就労の後に海外永住を選択可能なことも大きな魅力なようです。

 さてアメリカが受け入れている外国籍留学生は100万に届かんとしています。

 IIE(Institute of International Education:国際教育研究所)は、の米国への留学生受入れ状況についてとりまとめた「Open Doors 」を毎年公表しています。

 IIEは1919年に創設された国際教育交流を推進する米国の非営利機関であります、アメリカ留学の経験ある人にはお世話になった方も多いことでしょう。

 さて直近の各国からのアメリカへの留学生の総数ですが、IIEの公式サイトによれば、昨年ついに104万3839人を数えたのであります。


http://www.iie.org/Research-and-Publications/Open-Doors/Data/International-Students/Leading-Places-of-Origin/2014-16

 上位10か国の数字を確認しておきましょう。

TOP 25 PLACES OF ORIGIN OF INTERNATIONAL STUDENTS| 2014/15 & 2015/16

順位 国名 人数
1 China(中国) 328547
2 India(インド) 165918
3 Saudi Arabia(サウジアラビア 61287
4 South Korea(韓国) 61007
5 Canada(カナダ) 26973
6 Vietnam(ベトナム 21403
7 Taiwan(台湾) 21127
8 Brazil(ブラジル) 19370
9 Japan(日本) 19060
10 Mexico(メキシコ) 16733
-- Others(その他 302414


※IIEの公式サイトの公表数値より当ブログ作成

 近年中国からの留学生の伸び率がすごいことになっておりますが、韓国ですが人口が日本の半分にも満たない5000万にもかかわらず、留学生数は第四位の61007人と第九位の日本の19060人の3倍以上なのであります。

 さて少しだけ余談ですが、外国籍の学生がアメリカの大学や大学院に留学するためには、アメリカの大学が指定する主に三つの団体のテストのいずれかの点数の提出が義務付けられています。(米国内のアメリカ人に対しても、米国外からの留学生に対しても平等に SAT か ACT の得点が要求されます。)

 同様にアメリカの大学院へる留学するためには、GREジーアールイー、Graduate Record Examination)という共通試験が用意されています。

 アメリカという国は、伝統的に優秀な外国人留学生の受け入れに積極的ですから、上記のSAT やACT、GREといったアメリカの大学や大学院へ留学するための必須試験は、カナダや日本をはじめとしたアジア諸国中南米諸国などアメリカ留学希望者の多い海外の国でも、毎年試験を実施しています。

 で、韓国なのであります。

 ここに11日付けの朝鮮日報掲載のアン・ソクペ論説委員によるたいへん興味深いコラムがあります。

【萬物相】「韓国人よ、おまえたちにはもうだまされないぞ」
アン・ソクペ論説委員
朝鮮日報朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/11/11/2016111101684.html

 未読の読者は是非直接元記事をご一読くださいませ。

 お時間のない読者のために、当ブログがコラムを簡単にまとめれば、

 ここ数年アメリカの当局の試験本部が韓国でGRE留学試験を行う回数を大幅に減らした。理由は韓国人学生が問題を流出させたからで、韓国の学生たちは、日本に行って試験を受けるしかなかった。

 恥ずかしいことに韓国は国際的にカンニング大国として知られている。

 今年6月に米国大学進学適性試験(ACT)の問題が事前に流出し、試験当日に韓国での試験が突然中止となった。2013年にも別の適性試験であるSATが突然中止となっている。10年には警察が問題流出の捜査に乗り出し、07年にはタイで試験を受けてから韓国に問題を伝える「時間差カンニング」が摘発された。このときは韓国人学生900人の成績が取り消された。

 一連の事態を受けロイター通信は「韓国は試験における不正行為故にその悪名が高まりつつある」と報じた。

 韓国がカンニング王国となる理由は、「自分の子供さえうまくいけば後はどうなってもよい」と考える親たちがたくさんいるからだ。

 このような親たちが札束を積めば、塾なども親たちの要請に応じる。ある塾講師は「問題を事前に入手すれば、謝礼はいくらでも払うと言ってくる親もいる」と告白した。親から問題の事前入手を持ち掛けられるような塾は、2カ月の授業料が1000万ウォン(約93万円)を上回るようなところばかりだ。数年前に「フェンシングで優秀な実績を残せば米国の名門大学に進学できる」といううわさが広まると、留学の仲介業者は「フェンシング講座」を次々と開いた。

 朝鮮日報の8日付に「ワイヤできつく縛られたプラスチックかばん」の写真が掲載されますが、これは今の韓国の状況を端的に示しているとこのコラムはなげきます。

 そしてこの興味深いコラムは、このワイヤは「韓国と韓国人よ、おまえたちにはもうだまされないぞ」と言っているようだったとし、「崔順実(チェ・スンシル)氏による国政私物化問題にどこか共通点があるように感じられるのは記者だけだろうか」と結ばれています。

 米国の各種試験を主管する団体は、今年の秋に韓国で行われる試験のために問題用紙を送付する際、かばんを太いワイヤで縛り、そこに番号付きの大きな錠前をかけた。これまで試験の問題用紙は段ボールに入れて密封されるだけだったが、韓国で問題の流出が相次いだことから、今回はこのような対策が取られたようだ。ただ韓国以外の国では今も従来通り段ボールで送られているという。記者にはその錠前が「韓国と韓国人よ、おまえたちにはもうだまされないぞ」と言っているようだった。この問題と崔順実(チェ・スンシル)氏による国政私物化問題にどこか共通点があるように感じられるのは記者だけだろうか。

 ・・・

 米留学試験で韓国人学生により繰り返されるカンニング不正事件であります。

 なぜにここまでアツくなるのでありましょうや・・・

 何事にも過激にアツクなる韓国の国民性の悪しき事例と言えましょうか?

 ただこのような冷静なコラムがメディアに掲載されていることはひとつの救いではありましょう。

 韓国人学生によるカンニング事件と崔順実(チェ・スンシル)氏による国政私物化事件の共通点を冷静にとらえている韓国コラムなのであります。

 それはあたかも、崔順実(チェ・スンシル)氏を「(崔容疑者の娘が)裏口で入学できるなんて腹立たしい」と糾弾する韓国人庶民もまた、自分の子供のためなら不正をも辞さない熱情を有していないのか、実は両者は「同じ穴のムジナ」の可能性はないのか、と自戒を込めて問うているようでもあります。

 今回は考えさせられる興味深い韓国コラムについてご紹介いたしました。



(木走まさみず)